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パンデミックで収入が減ると歯の痛みが増える―国内Web調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴い、仕事や収入が減った人や失業した人は、歯の痛みを訴えることが多いというデータが報告された。この関連の背景には、精神的ストレスや歯科受診の延期、間食の増加などが関与しているという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山祐輔氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of Dental Research」に4月1日掲載された。  経済状況や精神的ストレスが、歯痛などの口腔疾患の発症と関連していることが以前から指摘されている。現在のCOVID-19パンデミックは、経済状況の悪化やストレスの増大に加えて、歯科受診延期などの行動の変化を生じさせ、人々の口腔衛生に影響を及ぼしている可能性がある。松山氏らの研究は、その実態を明らかにするためのもの。

体重減少が脳卒中のリスクと関連、女性では体重増加もリスク―JPHC研究

 日本人男性では体重減少と脳卒中発症リスクの上昇に、有意な関連があるというデータが報告された。一方、女性では体重減少と体重増加の双方でリスクが上昇する、U字型の関連があるという。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Atherosclerosis」4月1日号に掲載された。  ある一時点のBMIと脳卒中や虚血性心疾患の関連については、数多くの研究結果が報告されている。しかし、研究対象者を一定期間追跡して、その間の体重の変化がリスクとどのように関連するかを調べた研究は少ない。こうした中、JPHC研究からは、過去5年間で体重が10%以上増加した女性は脳卒中の発症リスクが有意に高くなるというデータが既に報告されている。今回の研究ではさらに、脳卒中の病型別により詳しく分析し、かつ虚血性心疾患についての解析も行った。

アルツハイマー型認知症による国内コストは年間12.6兆円に及ぶ可能性

 国内のアルツハイマー型認知症の医療や介護に要するコストは、家族による無償の介護を金額に換算した額を含めると、最大で年間12兆6000億円を超えるとの推計値が報告された。国際医療福祉大学医学部公衆衛生学の池田俊也氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Alzheimer's Disease」に3月23日掲載された。  アルツハイマー型認知症は、認知症の50~75%を占めるとされ、最も頻度の高いタイプの認知症。2015年には国際アルツハイマー病協会が、世界の認知症の有病者数は4680万人であり、医療や介護関連のコストは年間約90兆円という推計値を報告。国内でのコストに関しては2014年時点で14兆5000億円との報告がある。しかし、認知症の中でも有病者数の増加が特に顕著なアルツハイマー型認知症の医療・介護コストに焦点を当てた研究は少ない。池田氏らはこの点を明らかにするため、政府が公表しているデータに加え、文献検索により入手したデータを用いて詳細な分析を行った。

病気による長期休業者の復職と退職の実態は?―J-ECOHスタディ

 国内の大手企業に勤める従業員が病気によって長期休業した後の復職率が明らかになった。国立国際医療研究センターが国内十数社の企業と共同で行っている「職域多施設研究(J-ECOHスタディ)」のデータを解析した結果であり、東京ガス(株)安全健康・福利室の産業医、西浦千尋氏らによる論文が、「Journal of Epidemiology」に3月13日掲載された。  病気治療のために長期間休業した従業員は、最終的に復職、退職、死亡のいずれかに至るが、その割合や復職・退職までの期間は病気により異なる可能性がある。しかし、国内企業従業員の長期休業者の実態は、これまで詳しく分かっていなかった。西浦氏らは、J-ECOHスタディのデータを用いてこの点を検討した。

コロナワクチン後の抗体価、上がりやすい因子と上がりにくい因子/千葉大

 千葉大学病院は6月3日、ファイザー社の新型コロナワクチンを2回接種した同病院の職員1,774人の抗体価を調べたところ、ほぼ全員で抗体価の上昇が見られ、同ワクチンの有効性が確認されたと発表した。千葉大によると、ワクチンへの抗体反応を調べる研究としては現時点で最大規模と見られるという。  本研究は、千葉大学医学部附属病院と千葉大学医学研究院が連携して設置した「コロナワクチンセンター」で実施された。ファイザー社の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を接種した同院職員を対象とし、1回目接種前および2回目接種後に各々採取した血液から抗体価を測定した。

精神疾患に対する向精神薬の投与回数と臨床アウトカム~メタ解析

 慶應義塾大学の菊地 悠平氏らは、精神疾患に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の有効性および安全性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年2月23日号の報告。  投与レジメンおよび向精神薬に関連するキーワードを用いて、2019年12月30日までに公表された文献を、MEDLINEおよびEmbaseよりシステマティックに検索した。精神疾患患者に対する向精神薬の1日1回投与と分割投与の臨床アウトカムを比較したランダム化比較試験を選択した。研究の中止、精神病理、治療による有害事象(TEAE)に関するデータを抽出した。

日本における認知症高齢者に対するエビデンスベースの作業療法の実践と影響要因

 日本では、認知症患者数が急速に増加しており、エビデンスベースの作業療法(EBOT)に対するニーズが高まっている。このEBOTについて、認知症に対する臨床的改善効果が報告されている。北海道大学の長谷川 愛氏らは、日本の認知症患者に対するEBOTの現在の実践状況を調査し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、検討を行った。Hong Kong Journal of Occupational Therapy誌2020年12月号の報告。  認知症患者の治療を行っている作業療法士432人を対象に、郵送にて匿名の自己報告アンケートを実施した。記述統計データを整理し、EBOTの実践に影響を及ぼす因子を明らかにするため、重回帰分析を行った。

CKDの原疾患によって高尿酸血症の転帰への影響が異なる―艮陵CKD研究

 原発性腎疾患や高血圧性腎症による慢性腎臓病(CKD)では、高尿酸血症の併存が心血管疾患(CVD)イベントや全死亡のリスクとなることが明らかになった。一方、その他の原因によるCKDの場合、高尿酸血症の併存はCVDイベントや全死亡リスクおよび腎転帰との関連が認められないという。聖路加国際病院腎センターの渡邉公雄氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に3月25日掲載された。  CKD患者の高尿酸血症が、腎機能低下やCVDイベントのリスク因子である可能性が古くから指摘されている。しかし研究の結果には一貫性が見られない。渡邉氏らは、研究結果が一致しない理由は、研究対象のCKDの原疾患が異なるためではないかと考え、尿酸値と腎関連エンドポイント〔末期腎不全(ESRD)への進行〕および非腎関連エンドポイント(CVDイベントと全死亡)との関連を、原疾患別に検討した。

国内コロナ患者へのCT検査実施率とVTE発症の実態は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者での血栓症が世界的に報告されている。日本国内でもその状況を把握するために種々のアンケート1)2)が実施されてきたが、発症率や未診断症例(under-diagnosis)に関する詳細は不明であった。そこで、京都大学の山下 侑吾氏らは画像診断症例を対象にCOVID-19症例の静脈血栓塞栓症(VTE)発症の実態を正確に調査するレジストリ研究を実施した。その結果、以下4点が明らかになった。

ビタミン摂取量が多い女性は身体的QOLが高い―志賀町研究

 ビタミンの摂取量と女性の生活の質(QOL)に有意な関連があることが、日本人対象の研究から明らかになった。全種類のビタミン摂取量が、身体的側面のQOLを表すスコアと正相関し、かつ、一部のビタミンの摂取量は精神的なQOLのスコアとも正相関するという。ただし男性では、ビタミン摂取量とQOLの間に有意な関連は見られないとのことだ。  この研究は、石川県志賀町で行われている生活習慣病に関する住民対象研究「志賀町研究」のデータを用いて、金沢大学医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学の成川暢彦氏らが行った横断研究。結果の詳細は、「Nutrients」に3月22日掲載された。

がん通院中患者の新型コロナ抗体量は低値、投与薬剤によって差も/国がん

 国立がん研究センターとシスメックスは、2021年6月2日、がん患者における新型コロナウイルスの罹患状況とリスクを評価するため、2020年8月から10月にかけて500人のがん患者と1,190人の健常人について新型コロナウイルスの抗体保有率と抗体量を調査した。  その結果、新型コロナウイルスの罹患歴のない対象では、がん患者、健常人共に抗体保有率は低く、両群で差がないことがわかった。一方、抗体の量は、健常人と比較し、がん患者で低いことが明らかになった。これは年齢、性別、合併症の有無、喫煙歴といった因子で調整しても有意な差を認めた。

あのエクササイズゲームの治療効果は?

 任天堂のエクササイズゲーム『リングフィット アドベンチャー(RFA)』は、慢性腰痛患者における痛みの自己効力感を高め、痛みを軽減する可能性があることが、千葉大学のTakashi Sato氏らによって報告された。著者らは「痛みの自己効力感の改善を目的にした治療プロトコールの開発が望まれる」としている。本研究は、Games for Health Journal誌オンライン版2021年4月22日号に掲載された。  近年、エクササイズの治療効果に関する研究が増加しているが、慢性腰痛症に対するこれらのタイプの介入に関する研究は多くない。したがって本研究では、エクササイズゲーム RFAが慢性腰痛患者に有用であると仮定し、前向き無作為化縦断研究を実施した。

日本においてアルツハイマー病の重症度が介護費用などに及ぼす影響

 アルツハイマー病は、社会的費用を増加させ、患者のADLやQOLを低下させる。東京大学の芦澤 匠氏らは、日本の高齢者施設におけるアルツハイマー病の重症度がADL、QOL、介護費用にどのような影響を及ぼすかについて、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌2021年号の報告。  対象は、47の高齢者施設に入所しているアルツハイマー病患者3,461例。患者のADL、QOL、アルツハイマー病の重症度は、それぞれBarthel Index(BI)、EuroQoL-5D-5L(EQ-5D-5L)、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて評価した。年間介護費用は、患者のレセプトデータを用いて推定した。対象患者は、MMSEスコアに従って、軽度(MMSE:21~30)、中等度(MMSE:11~20)、高度(MMSE:0~10)の3群に分類した。3群間の違いは、Jonckheere-Terpstraテストを用いて評価した。

日本の小児期自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対するアリピプラゾールの52週間市販後調査結果

 大塚製薬のYuna Sugimoto氏らは、日本の実臨床現場における小児自閉スペクトラム症(ASD)患者の易刺激性に対するアリピプラゾールの安全性および有効性について、市販後調査のデータを用いて評価した。BMC Psychiatry誌2021年4月22日号の報告。  本市販後調査は、52週間の多施設プロスペクティブ非介入観察研究として実施された。6~17歳のASD患者に対し、実臨床下でアリピプラゾール1~15mg/日を投与した。  主な結果は以下のとおり。

孤立している高齢者のメンタルを犬が救う?―大田区民での調査

 社会的に孤立した生活の高齢者はメンタルヘルスが悪化しやすいことが知られているが、犬を飼っている人や過去に飼ったことのある高齢者は、そのリスクが低いという研究結果が報告された。一方、猫を飼うことには、そのような効果が認められなかったという。東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏らの研究によるもので、詳細は「Animals」に2月24日掲載された。  ペットを飼うことによるメンタルヘルスへの影響を検討した研究は少なくないが、社会的に孤立した状態の高齢者での研究は少ない。池内氏らは、そのような高齢者でもペットを飼うことのメリットがあるとの仮説を立て、東京都大田区の住民を対象に行われている「大田元気シニアプロジェクト」のデータを用いて以下の検討を行った。

新型コロナ既感染者、1年後の抗体保有状況は?/横浜市立大

 横浜市立大学の山中 竹春氏(学術院医学群 臨床統計学)率いる研究グループは、「新型コロナウイルス感染12ヵ月後における従来株および変異株に対する抗ウイルス抗体および中和抗体の保有率に関する調査」の記者会見を5月20日に開催。回復者のほとんどが6ヵ月後、12ヵ月後も従来株に対する抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していたことを報告した。  本調査は同大学が開発した「hiVNTシステム」を用いて、新型コロナウイルス感染症からの回復者(2020年2~4月に自然感染した既感染者で、研究への参加同意を取得)約250例を追跡した国内最大規模の研究である。2021年3月末までの期間に採血・データ解析を行い、感染から6ヵ月後と12ヵ月後の抗ウイルス抗体と中和抗体の保有率を確認した。従来株(D614G)ならびに変異株4種[イギリス株(B.1.1.7)、ブラジル株(P.1)、南アフリカ株(B.1.351)、インド株(B.1.617)]を調査した。中和抗体の測定はシュードウイルス法を用いて行われた。

統合失調症に対する抗精神病薬治療の有効性と安全性~日本でのRCTを用いたメタ解析

 さまざまな人種や民族のデータをプールした解析では、生物学的および環境的な不一致性が問題となる場合がある。そこで、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、日本で実施された統合失調症に対する抗精神病薬治療のランダム化比較試験(RCT)のみを使用して、統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年4月30日号の報告。  Embase、PubMed、CENTRALより、文献検索を行った。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの改善およびすべての原因による中止とした。副次的アウトカムは、PANSSサブスケールスコアの改善、有害事象または効果不十分による中止、16種の有害事象発生率とした。平均差またはリスク比と95%信頼区間を算出した。

卵巣がん患者のペイシェントジャーニー共同研究/富士通・武田・国がん

 富士通および武田薬品工業は、2021年5月17日、国がん研究センターと卵巣がん患者がたどる「疾患の認識、診断、治療、その後の生活に至る道のり」であるペイシェントジャーニーの分析・可視化に関する共同研究契約を締結した。  同研究は、卵巣がんの個別化治療の質向上、および治療結果向上に寄与する臨床の課題抽出を目的として開始したものである。本研究では、国がん研究センター東病院が保有する電子カルテシステムから抽出した日々の診療や個人の健康管理などから得られるデータ(リアルワールドデータ)を用い、従来の臨床試験やレセプトデータといった手法では取得困難であった、卵巣がん患者のペイシェントジャーニーに関する情報を分析・可視化する。国がん研究センター東病院および先端医療開発センターにおいて2022年4月30日まで実施する。

日本におけるアルツハイマー病と歯数との関連

 日本人高齢者における残存または欠損している歯数とアルツハイマー病との関連について、日本歯科総合研究機構の恒石 美登里氏らは、レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて、横断的な分析を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。  歯周病(400万9,345例)またはう蝕(虫歯)による抜歯(66万2,182例)の治療を行った60歳以上の患者を対象に、歯科医療レセプトデータを用いて、残存または欠損している歯数に関するデータを収集した。これらの歯数に関するデータとアルツハイマー病の診断を含む医療データを組み合わせて分析を行った。残存する歯数および第3大臼歯(親知らず)を除く欠損している歯数は、歯科医療レセプトの歯科用式を用いて算出し、それぞれ3群に分類した。アルツハイマー病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、年齢、性別で調整した後、ロジスティック回帰モデルを用いた。

生活習慣病に対する薬物療法の実効的カバレッジが上昇

 生活習慣病リスク因子に対する、薬物療法の実効的カバレッジ(保健システムを通して、実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合)が上昇していることが、医薬基盤・健康・栄養研究所の池田 奈由氏らによって明らかにされた。LDLなどのコレステロール値はスタチン系薬剤によって効果的に抑えられている一方、降圧薬および糖尿病治療薬の有効性を改善するにはさらなる介入が必要だという。Journal of Health Services Research & Policy誌2021年4月号の報告。  保健システム評価指標を用い、日本における高血圧症、糖尿病および脂質異常症治療に対する健康介入の実効的カバレッジについて、その傾向を分析した。