日本発エビデンス|page:6

アルツハイマー病のアジテーション、日本におけるブレクスピプラゾールの長期安全性

 アジア人アルツハイマー病患者におけるアジテーション(攻撃的行動および発言、非攻撃的行動の亢進、焦燥を伴う言動等)の治療に対するブレクスピプラゾールの長期安全性および有効性は、明らかとなっていない。香川大学の中村 祐氏らは、第II/III相試験において10週間の二重盲検投与期間を完了した日本人患者におけるブレクスピプラゾール1mg/日または2mg/日を14週間投与した場合の安全性および有効性を評価した。Journal of Alzheimer's Disease Reports誌2025年4月16日号の報告。  本試験は、多施設共同第III相オープンラベル試験である。元試験において、プラセボまたはブレクスピプラゾール1mg/日または2mg/日の10週間投与を完了した患者を、本延長試験に組み入れた。主要エンドポイントは、有害事象の発現頻度とした。

日本における治療抵抗性うつ病患者と医師の重要視しているポイントの違い

 福岡大学の堀 輝氏らは、抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者の臨床成績に対する医師と患者が重視するポイントの違いを、臨床的に意義のある最小差(MCID)の概念を適用して調査した。Frontiers in Psychiatry誌2025年3月26日号の報告。  本研究は、うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg/日の増強療法を評価した52週間の非盲検多施設共同研究の事後分析として実施された。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコア、シーハン障害尺度(SDS)スコア、EuroQol-5 dimension-5 level (EQ-5D-5L)から導き出された効用スコアにおけるMCIDを決定した。医師と患者の回答におけるMADRS、SDS、効用スコアの曲線下面積(AUC)との相関係数を比較した。

コロナ入院患者の院内死亡リスク、オミクロン後もインフルの1.8倍超/感染症学会・化学療法学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン株流行以降、重症度が低下したとする報告がある一方、インフルエンザと比較すると依然として重症度が高いとの報告もある。国内の死亡者数においても、5類感染症移行後、COVID-19による死亡者数はインフルエンザの約15倍に上ると厚生労働省の統計で報告されている。こうした背景から、長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究グループは、COVID-19患者の入院中の死亡リスクをインフルエンザ患者と比較評価した。本結果は、5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、前田氏が発表した。

術後の吐き気、アロマセラピーで改善か

 術後の悪心・嘔吐(PONV)は、全身麻酔による手術を受けた患者の約30%で発生する。口腔外科手術では、PONVの発生する割合がさらに上がることが報告されているが、今回、アロマセラピーにより術後悪心(PON)の重症度が軽減されるという研究結果が報告された。北海道大学大学院歯学研究院歯科麻酔学教室の石川恵美氏らの研究によるもので、詳細は「Complementary Therapies in Medicine」に3月26日掲載された。  PONVの管理は、全身麻酔での手術後の予後と患者の治療満足度にとって重要な要素の1つだ。海外のPONVのガイドラインでは、女性や、高リスクの手術、揮発性吸入麻酔薬の使用といった複数のリスク因子を有する患者に対しては、3~4つの対策を講じることが望ましいとされている。しかし、国内では保険適用可能な薬剤の数が限られており、これらの高リスク患者のPONV管理においては、複数の対策を講じるための代替となる新しい手段の検討が必要である。

アトピー性皮膚炎への新規外用薬、既存薬と比較~メタ解析

 アトピー性皮膚炎に対する治療薬として、2020年1月にデルゴシチニブ、2021年9月にジファミラストが新たに承認された。長崎大学の室田 浩之氏らは、これらの薬剤と既存の標準的な外用薬について、臨床的有効性および安全性を評価するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施し、結果をDermatology and Therapy誌2025年5月号で報告した。  Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。

子宮頸がんワクチンの接種率は近隣の社会経済状況や地理に関連か

 子宮頸がんはほとんどの場合ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により発症する。HPVにはワクチンが存在していることから、子宮頸がんは「予防できるがん」とも呼ばれる。この度、HPVワクチンの接種率が近隣地域の社会経済状況、医療機関へのアクセスに関連するという研究結果が報告された。近隣地域の社会経済状況が高く、医療機関へのアクセスが容易なほどHPVワクチンの接種率が高かったという。大阪医科薬科大学総合医学研究センター医療統計室の岡愛実子氏(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室)、同室室長の伊藤ゆり氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に3月13日掲載された。

糖尿病や腎臓病リスクが高まる健診の未受診期間は?/H.U.グループ中央研究所・国循

 2型糖尿病の進展は、糖尿病性腎症や透析を含む合併症の発症など健康上の大きな問題となる。年1回の健康診断と健康転帰との良好な関係は周知のことだが、定期的な健康診断をしなかった場合の2型糖尿病および透析への進展に及ぼす影響についてはどのようなものがあるだろうか。この課題に対して、H.U.グループ中央研究所の中村 いおり氏と国立循環器病研究センターの研究グループは、年1回の健康診断の受診頻度と糖尿病関連指標との関連、および透析予防における早期介入の潜在的影響について検討した。その結果、健康診断を3年以上連続して受診しなかった人は、2型糖尿病のリスクが高いことが示唆された。

未治療の進行性肺線維症、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性・有効性(TOP-ILD)/日本呼吸器学会

 進行性肺線維症(PPF)に対する治療は、原疾患の標準治療を行い、効果不十分な場合に抗線維化薬を使用するが、早期からの抗線維化薬の使用が有効な可能性も考えられている。そこで、未治療PPFに対する抗線維化薬ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性と有効性を検討する国内第II相試験「TOP-ILD試験」が実施された。本試験において、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法は、治療継続率が高く、有効性についても良好な結果が得られた。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、坪内 和哉氏(九州大学病院)が本試験の結果について解説した。

中年患者へのスタチン使用、白内障リスク上昇

 近年、スタチンの使用が白内障の発症に影響を及ぼす可能性が示唆されている。そこで、日本人におけるスタチン使用と白内障の発症との関連性について、日本大学薬学部のKazuhiro Kawabe氏らが検討し、中年層でのスタチン使用が白内障リスクを約1.5倍高めることを明らかにした。Scientific Reports誌2025年4月19日号掲載の報告。  研究者らは、日本人の健康診断および保険請求データベースの2005年1月1日~2017年12月31日に記録されたデータを用いて後ろ向きコホート研究を実施。健康診断データの脂質異常症117万8,560例のうち72万4,200例をスタチン非使用群とスタチン使用群(新規使用)に分類し、未調整/年齢・性別による調整/多変量調整のハザード比(HR)を算出してCox比例ハザード回帰分析を行った。主要評価項目はスタチンの使用と白内障リスクの関連性を評価。副次評価項目として、使用されたスタチンの力価や特徴、スタチンごとの白内障リスクを評価した。

高齢の心不全患者が感染症で再入院にいたる因子とは

 心不全(HF)患者の再入院は、患者の死亡率上昇だけでなく、医療機関に大きな経済的負担をもたらす。高齢HF患者では、しばしば感染症による再入院がみられるが、この度、高齢のHF患者における感染症関連の再入院にフレイルと腎機能の低下が関連しているという研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬学実務実習教育分野の川田敬氏らの研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に3月11日掲載された。  世界でも有数の高齢化社会を擁する日本では、高齢のHF患者が大幅に増加している。高齢者では免疫力が低下することから、高齢HF患者の感染症による再入院率も増加していくと考えられる。これまでの研究では60代や70代のHF患者に焦点が当てられてきたが、実臨床で増加している80代以上の高齢HF患者、特に感染症による再入院に関連する因子については調べられてこなかった。このような背景から、川田氏らは、高齢化が特に進む日本の高知県の急性肥大症性心不全レジストリ(Kochi YOSACOI Study)のデータを使用して、高齢HF患者の感染症による再入院に関連するリスク因子を特定した。

歯痕舌と血圧が関連~日本人集団

 東洋医学では舌の周囲に歯形がついた歯痕舌は体液貯留を示し、高血圧と関連する可能性があるが、歯痕舌と血圧の関連を調べた疫学研究はほとんどない。今回、順天堂大学の謝敷 裕美氏らが日本の地域住民を対象にした東温スタディにおいて検討したところ、潜在的交絡因子の調整後も歯痕舌のある人は収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が高いことが明らかになった。American Journal of Hypertension誌オンライン版2025年4月17日号に掲載。  本研究は東温スタディ(愛媛県東温市における保健事業の評価、ならびに循環器疾患発症にかかる新たな危険因子の検索を目的とするコホート研究)に参加した30~84歳の1,681人を対象とし、歯根舌を舌画像により評価し、歯痕舌あり群と歯痕舌なし群に分けた。SBP≧140mmHgまたはDBP≧90mmHgまたは降圧薬の使用を高血圧と定義した。多変量調整ポアソン回帰分析を用いて、年齢、性別、肥満度を含む潜在的交絡因子を調整後、歯痕舌と血圧の関連を検討した。

若年層の大腸がん、その臨床的特徴が調査で明らかに

 大腸がんは日本人で最も患者数が多いがんであり、一般的に50歳代から年齢が上がるにつれて罹患率も上昇することが知られている。一方で、若年層における大腸がんに関する報告は少ない。しかし、今回50歳未満の大腸がんに関する臨床病理学的所見を調査した研究結果が報告された。大腸がんの好発部位や、スクリーニングの有用性が明らかになったという。研究は札幌医科大学医学部腫瘍内科学講座/斗南病院消化器内科の岡川泰氏らによるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に3月11日掲載された。  近年、高所得国を中心として50歳未満で発症する若年発症型大腸がんが増加している。さらに、若年発症型大腸がんは進行期で診断されることが多く、世界的に重要な懸念事項であるが、日本から若年発症型大腸がんについて報告された研究はわずかであり、その臨床病理学的特徴は不明のままである。このような背景から、研究グループは、若年発症型大腸がんの臨床病理学的所見を調査するために単施設の後ろ向き研究を実施した。

炭水化物を減らすと2型糖尿病患者の予後が改善/順天堂大

 2型糖尿病患者では、心血管イベントや死亡のリスクが高いことが知られている。今回、2型糖尿病患者における食事の栄養素と予後との関連性を調査した結果、炭水化物の摂取割合が高いほど心血管イベントや死亡のリスクが増大し、炭水化物を減らして動物性のタンパク質や脂質の摂取を増加させるとそれらのリスクが低減することが、順天堂大学の三田 智也氏らによって明らかになった。Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2025年3月21日号掲載の報告。  炭水化物制限は2型糖尿病患者の血糖コントロールに有用である可能性が報告されている。しかし、炭水化物の摂取割合が心血管イベントや死亡リスクに与える影響や、炭水化物の摂取量を減らしてタンパク質や脂質を増やすことによる影響など、依然として不明な点は多い。そこで研究グループは、2型糖尿病患者を対象に、食事の栄養素を含むさまざまな生活習慣と心血管イベントや死亡リスクとの関連性を、最大10年間にわたって前向きに調査した。

ピロリ除菌後の胃がんリスクを予測するバイオマーカー~日本の前向き研究

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後においても0.5~1.2%の人に原発性胃がんが発生する可能性がある。このような高リスクの集団を識別する新たなバイオマーカーとして、非悪性組織におけるepimutationの蓄積レベル(epimutation負荷)ががんリスクと関連していることが複数の横断的研究で報告されているが、前向き研究でリスク予測におけるDNAメチル化マーカーの有用性は確認されていない。今回、星薬科大学の山田 晴美氏らの研究により、epimutation負荷のDNAメチル化マーカーであるRIMS1がH. pylori除菌後の健康人における原発性胃がんリスクを正確に予測可能であることが示された。Gut誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。

早期肺がん患者の術後の内臓脂肪量は手術方法に影響される

 肺がん患者では、呼吸機能の低下だけでなく、体重、筋肉量、内臓脂肪量など、いわゆる体組成の減少により予後が悪化することが複数の研究で報告されている。この度、肺がん患者に対する肺葉切除術よりも切除範囲がより小さい区域切除術後で、体組成の一つである内臓脂肪が良好に維持されるという研究結果が報告された。神奈川県立がんセンター呼吸器外科の伊坂哲哉氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に3月4日掲載された。  近年行われた2cm以下の末梢型早期肺がんに対する区域切除術と肺葉切除術を比較した大規模な臨床試験JCOG0802/ WJOG4607Lでは、区域切除術が肺葉切除術よりも全生存率(OS)を改善した。この試験では、肺がより温存された区域切除群において肺葉切除群よりも、肺がん以外の病気による死亡が少ない結果であったが、その機序については未だ解明されていない。肺がん患者の良好な予後のためには、内臓脂肪を含む体組成を維持することが重要と考えられるが、肺葉切除と区域切除後の体組成変化の違いについても未だ明らかになっていない。このような背景から、伊坂氏らは肺がん患者における肺葉切除と区域切除後の内臓脂肪の変化量を比較し、予後との関連を明らかにするために、単施設の後ろ向き研究を実施した。

新型コロナ後遺症としての勃起不全が調査で明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者では、回復後も長期にわたりその後遺症に悩まされるケースがある。その後遺症の中には男性における勃起不全(ED)も含まれるが、後遺症としてのEDの有病率とそれに関連する根本的要因が示唆されたという。横浜市立大学附属病院感染制御部の加藤英明氏らが行った研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月21日掲載された。  COVID-19感染後のEDは、急性期における炎症性サイトカインや低酸素症による血管内皮障害が原因で進行する。また、身体的・精神的なストレスもEDに影響する。ワクチン接種や早期治療は、この感染症の後遺症の発症率を低下させる可能性はあるが、EDの発症を防ぐための予防策については不明である。加藤氏らは、COVID-19感染後のEDの有病率とその根本的な要因を明らかにするために感染患者を対象とした症例対照研究を実施した。

エサキセレノンは、高齢のコントロール不良高血圧患者にも有効(EXCITE-HTサブ解析)/日本循環器学会

 高血圧治療において、高齢者は食塩感受性の高さや低レニン活性などの特性から、一般的な降圧薬では血圧コントロールが難しいケースもある。『高血圧治療ガイドライン2019』では、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬が第一選択薬として推奨されているが、個々の患者に適した薬剤選択が重要である。このような背景のもと、自治医科大学の苅尾 七臣氏らの研究グループは、ARBまたはCa拮抗薬を投与されているコントロール不良の本態性高血圧患者を対象に、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のエサキセレノンと、サイアザイド系利尿薬であるトリクロルメチアジドとの降圧効果および安全性を比較する「EXCITE-HT試験」を実施した。

アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か

 インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。

不眠症を伴ううつ病に対する抗うつ薬+睡眠薬併用療法の有効性と安全性〜メタ解析

 抗うつ薬と睡眠薬の併用は、不眠症を伴ううつ病に対し、有望な治療候補である。杏林大学の丸木 拓氏らは、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2025年3月20日号の報告。  対象は、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価した二重盲検ランダム化比較試験。2024年6月までに公表された研究を、PubMed、CENTRAL、Embaseより検索した。睡眠薬クラス(ベンゾジアゼピン、Z薬、メラトニン受容体作動薬)別に抗うつ薬単独療法と比較するため、メタ解析を実施した。

整形外科における術後せん妄、幅広い20のリスク因子が明らかに~メタ解析

 術後せん妄(POD)は、外科手術を受けた患者によくみられる術後合併症である。発症率は診療科によって異なるが、とくに整形外科患者のPOD発症率は一般病棟入院患者と比較し大幅に高い。せん妄は、患者の転帰と医療システムの両方に重大な影響を及ぼす可能性があるため、PODのリスク因子を特定し、予防することが重要である。三重大学医学部附属病院のRio Suzuki氏らは、下肢整形外科手術後におけるPODのリスク因子を特定したことを報告した。PLoS One誌2025年4月1日号掲載の報告。