日本発エビデンス|page:6

1964年の東京五輪に参加した元選手にはサルコペニアが少ない

 前回の東京オリンピックに参加した元選手は、サルコペニアの有病率が低いことが明らかになった。特に、運動強度の高い競技に参加していたり、引退後にも運動を続けていた元選手は、有病率が顕著に低いという。ただし、身体機能が低下している人の割合は、一般住民よりも元選手の方が高いとのことだ。東京大学高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢氏らが報告した。  サルコペニアとは、加齢や疾患のために筋肉量や筋力が低下した状態のこと。転倒や骨折などのリスクが高く、要介護につながりやすい。若いうちに筋肉量を高めておくことが、サルコペニアの予防につながる可能性があるものの詳しくは不明。このような背景から飯島氏らは、東京五輪に参加した元選手と一般住民とで、サルコペニアの有病率に差があるかを比較検討した。結果の詳細は、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に1月18日掲載された。

コロナ流行下で小児のライノウイルス感染リスクが2倍超

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が1年以上続き、マスクや手洗いなどのコロナ感染予防はいまや一般常識レベルに浸透している。この対策はCOVID-19のみならず、あらゆる感染症予防に有用と考えられる。東京大学の河岡 義裕氏(医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野教授)は、共同研究グループと共にCOVID-19流行下の呼吸器感染症ウイルス検出状況を調査したところ、全年齢層においてインフルエンザをはじめとする代表的な呼吸器感染症ウイルスの検出率は低下していた一方、10歳未満の小児では、風邪を引き起こすライノウイルスの検出率が著しく上昇していたことを発見した。研究結果は、Influenza and Other Respiratory Viruses誌オンライン版2021年3月15日号に掲載された。

統合失調症患者の乳がん、術後合併症が多い~日本の全国データ

 統合失調症患者は一般集団より乳がん発症リスクが高いが、乳がんの術後合併症を調査した研究はほとんどない。今回、東京大学の小西 孝明氏らの研究から、統合失調症患者では精神疾患のない患者より乳がんの術後合併症発生率や入院の総費用が高いことが示唆された。British Journal of Surgery誌2021年3月号に掲載。  本研究は、全国的な入院患者データベースから、2010年7月~2017年3月にStage 0~III乳がんで手術を受けた患者を特定し、多変量解析を用いて統合失調症患者と精神疾患のない患者について術後合併症と入院費用を比較した。感度分析は、入院時の年齢・施設・年度で1:4にマッチングさせたペアコホート分析、抗精神病薬を服用していなかった統合失調症患者を除外した分析、意思に反して入院した統合失調症患者を除外した分析の3つを実施した。

日本人高齢者の認知症リスクと近隣歩道環境~日本老年学的評価研究コホート

 日常生活に欠かせない環境資源の1つである歩道は、身体活動を促進するうえで重要なポイントとなる。しかし、先進国においても歩道の設置率は十分とはいえない。東京医科歯科大学の谷 友香子氏らは、日本における近隣の歩道環境と認知症リスクとの関連を調査した。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年2月19日号の報告。  地域在住の高齢者の人口ベースコホート研究である日本老年学的評価研究の参加者を対象に、3年間のフォローアップ調査(2010~13年)を実施した。公的介護保険制度のデータより高齢者7万6,053人の認知症発症率を調査した。436ヵ所の住宅近隣ユニットの道路面積に対する歩道の割合を、地理情報システムを用いて算出した。認知症発症率のハザード比(HR)は、マルチレベル生存モデルを用いて推定した。

糖尿病予備群もがん死のリスクが高い―日本人対象の職域多施設研究

 糖尿病患者は、がんによる死亡リスクが高いことが近年注目されている。では、糖尿病予備群はどうだろうか? どうやらその答えは“YES”のようだ。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部のZobida Islam氏、溝上哲也氏らの職域研究チームが行ったコホート研究の結果であり、詳細は「Diabetes Care」に1月13日掲載された。  糖尿病は、心血管疾患やがんの発症リスク要因であり、それらによる死亡や全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクを高める。血糖値が高いものの糖尿病と診断されるほどではない前糖尿病(糖尿病予備群)については、心血管疾患の発症リスクとの関連が示唆されているものの、全死亡やがん死・心血管死のリスクを高めるか否かははっきりしていない。

緑茶が脳卒中や心筋梗塞後の死亡リスクを下げる?

 脳卒中や心筋梗塞で一命を取りとめたら、緑茶を摂取すると良いかもしれない――。緑茶やコーヒーの摂取量と死亡リスクとの関連を調べた、大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学の磯博康氏らの研究結果が、「Stroke」に2月4日掲載された。  この研究は、がんリスク評価のための共同コホート研究(JACC研究)のデータを用いて行われた。1988~1990年に参加登録された40~79歳の4万6,213人を18.5年(中央値)追跡。登録時に、脳卒中既往者478人、心筋梗塞既往者1,214人が含まれており、4万4,521人は脳卒中や心筋梗塞の既往がなかった。追跡期間中に9,253人が死亡した。

メンタル不調に市販薬での治療は是か非か―国内3千人の調査

 不眠や気分の落ち込みなどのメンタルヘルス不調時に、医療機関を受診せず、市販薬(OTC)を中心とするセルフメディケーションで対処することについて、国内ではその是非を問われることが多い。しかし、メンタルヘルス不調時のセルフメディケーションの実態がそもそも明らかになっておらず、実のある議論が進みにくいのが現状。そこで、千葉大学社会精神保健教育研究センターの椎名明大氏らは、このテーマに関する一般市民の意識調査を行い、その解析結果を「PLOS ONE」に1月25日報告した。  この調査は2019年10月に、Webアンケートサービス「楽天インサイト」を用いて行われた。調査回答時点でメンタルヘルス上の問題を抱えている「患者群」、過去にそのような問題を抱えていたことがある「元患者群」、そのような経験のない「非患者群」が、それぞれ1,000人(合計3,000人)になった時点で回答受付けを終了した。なお、本人または血縁者にメンタルヘルスの専門家や製薬企業社員がいる人は除外した。

潰瘍性大腸炎、患者の90%が持つ自己抗体を発見/京大

 潰瘍性大腸炎(UC)は、その発症に免疫系の異常が関連していると考えられているが、原因はいまだ解明されておらず、国の指定難病となっている。京都大学・塩川 雅広助教らの研究グループは3月9日、UC患者の約90%に認められる新たな自己抗体を発見したことを発表した。現在、この自己抗体を測定する検査キットを企業と共同開発中。Gastroenterology誌オンライン版2021年2月12日号に掲載。  本研究は、UC患者112例と対照患者165例が登録された。UCは、症状、内視鏡所見、組織学的所見、および代替診断の欠如の組み合わせによって診断。血清サンプルは、2017年7月~2019年11月までに京都大学医学部附属病院で採取され、UC患者112例と対照患者155例が、それぞれトレーニング群と検証群に分けられた。

飲酒と乳がんリスク~日本人16万人の解析

 欧米の研究から、飲酒が乳がんリスクを上昇させることが報告されている。しかし、日本人女性は欧米人女性より飲酒習慣が少なく、またアセトアルデヒドの代謝酵素の働きが弱い人が多いなど、飲酒関連の背景が欧米とは異なる。これまで日本人を対象とした大規模な研究は実施されていなかったが、今回、愛知県がんセンターや国立がん研究センターなどが共同で日本の8つの大規模コホート研究から約16 万人以上を統合したプール解析を行い、乳がんリスクと飲酒との関連を検討した。その結果、閉経前女性では飲酒により乳がん罹患リスクが上昇したことを愛知県がんセンターの岩瀬 まどか氏らが報告した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月26日号に掲載。

妊婦禁忌のドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース

 制吐薬ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、従来、妊婦禁忌とされてきた。しかし、つわりと知らずに服用し妊娠が判明した後に気付いて妊娠継続に悩む女性が少なくない。一方で、本剤は米国で発売されていないことから疫学研究も少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。今回、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と虎の門病院は、両施設が保有する1万3,599例もの妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを用いて、ドンペリドンの催奇形性を解析。その結果、妊娠初期に本剤を服用した例と、リスクがないことが明らかな薬のみを服用した例では、奇形発生率に有意な差は見られなかった。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月25日号に掲載。

研修医の勤務時間と自習時間に関連は?

 4月から医師の初期・後期臨床研修をひかえ、研修医の成長に必要なことは何であろう。研修医にとって十分な自習時間は、専門能力開発にとって重要であり、臨床知識の習得と自習時間は正の関係にあるとされている。2024年以降、わが国で研修医の義務勤務時間が制限されることもあり、水戸協同病院総合診療科の長崎 一哉氏らのグループは、研修医の勤務時間と学習習慣との関連を初期臨床研修医の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)を基に評価を行った。

味噌摂取量が多い糖尿病女性にはサルコペニアが少ない―京都府医大

 糖尿病患者はサルコペニアの頻度が高いことが知られているが、味噌の摂取量の多い患者はそうでない患者よりも、その有病率が低いというデータが報告された。ただしこの関連は女性のみで認められ、また女性でもタバコを吸う患者では有意でないという。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の橋本善隆氏、福井道明氏らの研究であり、詳細は「Nutrients」に12月28日掲載された。  人口の高齢化とともに、サルコペニアを併発している糖尿病患者が増加している。サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量や筋力が低下して、転倒や骨折などのリスクが高くなった状態のこと。糖尿病患者でのサルコペニア発症には、インスリン抵抗性や酸化ストレスの亢進などの関与が考えられている。一方、大豆食品、とりわけ発酵性大豆食品である味噌には、インスリン感受性や抗酸化作用を高める働きがあることが報告されている。

新たな認知症評価尺度ABC認知症スケールの妥当性

 認知症を評価するための新しいツールとしてABC認知症スケール(ABC-DS)が、日本において開発された。ABC-DSは、日常生活動作(ADL)に関するドメインA、認知症の周辺症状(BPSD)に関するドメインB、認知機能に関するドメインCについて同時に評価できる包括的なツールであり、簡便かつ迅速に実施することが可能であり、認知症の重症度および経時的変化を測定することができる。これまで、ABC-DSは、アルツハイマー型認知症(AD)の評価に有用であることが報告されているが、その他の認知症での研究はまだ行われていなかった。長崎大学の下田 航氏らは、さまざまな認知症のサブタイプや重症度に対するABC-DSの妥当性について再評価を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2021年2月12日号の報告。

双極性障害の再発に対する抗精神病薬併用の影響~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、気分安定薬(MS)と第2世代抗精神病薬(SGA)の併用療法で安定した双極I型障害におけるSGA中止による再発リスクへの影響を検討するため、二重盲検ランダム化対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Bipolar Disorders誌オンライン版2021年2月9日号の報告。  SGA+MS療法で安定した双極I型障害患者を対象に、維持期においてSGAを中止した患者(MS単独療法など)と継続した患者における再発リスクを検討した研究を、Embase、PubMed、CENTRALより、システマティックに検索した(2020年5月22日まで)。主要アウトカムは、6ヵ月間の気分エピソード再発率とした。副次的アウトカムは、6ヵ月間の躁/軽躁/混合エピソードとうつ病エピソードの再発率およびすべての原因による治療中止とした。また、1、2、3、9、12ヵ月での再発率も調査した。

肩こりと腰痛が両方ある人はQOLがより低下している―弘前大

 肩こりや腰痛に悩まされている人は少なくない。いずれも生活の質(QOL)を低下させるが、両者が併存している人のQOLは、より大きく低下していることをデータとして明らかにした研究結果が報告された。弘前大学大学院医学研究科整形外科の熊谷玄太郎氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Musculoskeletal Disorders」に1月5日掲載された。  厚生労働省の「国民生活基礎調査」から、日本人の有訴者率(自覚症状を訴える人の割合)の高い症状の上位2位は、肩こりと腰痛の二つであることが分かっている。これらそれぞれの症状とQOLの低下との関連については既に報告されているものの、両者が併存する頻度や、併存した場合にQOLにどのような影響が現れるかは調査されていない。

双極性障害のうつ病エピソード再発に対する光曝露の影響

 光線療法は、双極性うつ病に対する効果が示唆されている治療方法であるが、うつ病エピソードに対する予防効果が認められるかは、よくわかっていない。桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、実生活環境における光曝露が、双極性障害患者のうつ病エピソードの再発に対する予防効果と関連しているかについて、評価を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年2月15日号の報告。  本研究は、2017年8月~2020年6月に日本で行われたプロスペクティブ自然主義的観察研究である。双極性障害外来患者202例を対象に、ベースラインから7日間連続して日中の光曝露を客観的に評価し、その後の気分エピソードの再発について、12ヵ月間フォローアップを行った。光曝露の測定には、周囲の光を測定できるアクチグラフを用いた。

日本における産後のうつ症状と妊娠中の体重増加との関係

 産後のうつ症状(PPDS)と妊娠中の体重増加との関係については、依然として議論の余地が残っている。福島県立医科大学の山口 明子氏らは、産後1ヵ月のPPDSと妊娠中の体重増加との関係について、妊娠前のBMIに基づいて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年2月2日号の報告。  2011~14年に日本人女性8万927人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠前のBMIに基づき、対象者をG1(18.5kg/m2未満)、G2(18.5~20.0kg/m2)、G3(20.0~23.0kg/m2)、G4(23.0~25.0kg/m2)、G5(25kg/m2以上)の5グループに分類した。PPDSに関連する不十分または過剰な妊娠中の体重増加の潜在的なリスク因子を特定するため、母体年齢、教育、年間世帯収入、喫煙、出産歴、分娩方法、母乳の中止、精神的ストレス、妊娠中のエネルギー摂取量で調整した後、各グループに対して多重ロジスティック回帰分析を行った。

女性の隠れ肥満は過活動膀胱のリスクの可能性―長崎大

 内臓脂肪が過剰に蓄積している女性は、過活動膀胱の有病率が高く、また内臓脂肪量と過活動膀胱の重症度に相関があることが報告された。一方で、皮下脂肪量やBMI、腹囲長などの肥満関連指標は、過活動膀胱との関連が有意でないという。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科の宮田康好氏、松尾朋博氏らの研究グループの研究によるもので、詳細は「International Journal of Urology」に12月29日掲載された。  過活動膀胱は頻尿や尿意切迫感の主要原因の一つ。国内の患者数は810万人と推計されていて、珍しい病気ではない。これまでに、肥満やメタボリックシンドロームが過活動膀胱のリスクであることが示唆されているが、詳細は明らかになっていない。そこで宮田氏らは、腹部CT検査で評価した内臓脂肪・皮下脂肪の面積や量と、過活動膀胱の有病率・重症度、超音波検査での残尿量などとの関連を詳細に検討した。

体外受精による新生児はテロメアが短い―島根大

 体外受精などの生殖補助医療による妊娠で生まれた新生児は、テロメア長が短いというデータが報告された。島根大学医学部産科婦人科の中山健太郎氏らの研究であり、詳細は「International Journal of Molecular Sciences」に12月18日掲載された。  テロメアは染色体の末端にあるDNAとタンパク質からなる構造で、染色体の安定性を維持していると考えられている。細胞分裂の回数に応じてテロメアが短くなることから、テロメアの長さは老化のマーカーとされ、テロメア長が寿命と相関することが知られている。

薬物依存リハビリセンターにおける日本人男性の薬物依存と性交との関連

 性行為と薬物使用を組み合わせて行うことは、薬物使用と性交の認知された相互依存(perceived interdependence of drug use and sexual intercourse:PIDS)を形成する可能性がある。また、薬物使用の重症度は、PIDSに有意な影響を及ぼす可能性があるが、この関連はよくわかっていない。国立精神・神経医療研究センターの山田 理沙氏らは、日本の薬物依存リハビリテーションセンター(DARC)の成人男性における薬物使用の重症度とPIDSとの関連について、調査を行った。Substance Abuse Treatment, Prevention, and Policy誌2021年1月7日号の報告。