抗うつ薬と睡眠薬の併用は、不眠症を伴ううつ病に対し、有望な治療候補である。杏林大学の丸木 拓氏らは、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2025年3月20日号の報告。
対象は、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価した二重盲検ランダム化比較試験。2024年6月までに公表された研究を、PubMed、CENTRAL、Embaseより検索した。睡眠薬クラス(ベンゾジアゼピン、Z薬、メラトニン受容体作動薬)別に抗うつ薬単独療法と比較するため、メタ解析を実施した。
主な内容は以下のとおり。
・8件の適格研究(参加者1,945例、エスゾピクロン4件、ゾルピデム2件、トリアゾラム1件、ラメルテオン1件)が抽出された。
・Z薬の6件の試験に基づきメタ解析を実施した。
・抗うつ薬とZ薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法と比較し、12週間以内の短期間において、抑うつ症状の寛解率が高く、抑うつ症状および不眠症状の改善が大きかった。また、めまい以外の安全性アウトカムに差は認められなかった。
【抑うつ症状の寛解率】リスク比:1.25、95%信頼区間(CI):1.08〜1.45、p=0.003
【抑うつ症状の改善】標準化平均差(SMD):0.17、95%CI:0.01〜0.33、p=0.04
【不眠症状の改善】SMD:0.43、95%CI:0.28〜0.59、p<0.001
著者らは「抗うつ薬とZ薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法よりも、短期的に不眠症状に伴ううつ病治療に有効である可能性が示唆された。しかし、本研究では、長期的なZ薬補助療法のベネフィット/リスクは評価されていない。抗うつ薬とZ薬の併用療法の有効性および安全性について、明確な結論を導き出すためにも、長期的な研究が求められる。また、本結果が他の睡眠薬クラスにおいても適用できるかを評価するためにも、さらなる研究が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)