アリピプラゾールによるドパミン受容体シグナル伝達調整が抗うつ効果に及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/24

 

 即効性抗うつ薬であるケタミンは、解離作用を含む好ましくない精神異常作用を有する。現在、抗うつ効果を維持しながら、これらの副作用を抑制する効果的な戦略は存在しない。京都大学のDaiki Nakatsuka氏らは、マウスとヒトにおけるケタミンの精神異常作用と抗うつ作用に対するドパミンD2/D3受容体拮抗薬とパーシャルアゴニストの影響を調査した。Translational Psychiatry誌2025年3月8日号の報告。

 主な内容は以下のとおり。

・パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールにより、精神異常作用を減弱し、強制水泳試験においてケタミンの抗うつ作用の維持、増強が認められた。
・一方、拮抗薬であるracloprideは、マウスにおいていずれの作用も抑制した。
・Brain-wide Fos mappingおよびそのネットワーク解析では、腹側被蓋野がアリピプラゾールおよびracloprideの作用を区分するうえで重要な領域であることが示唆された。
・慢性ストレスモデルでは、腹側被蓋野へのraclopride局所注入により、ケタミンの抗うつ作用が抑制され、ドパミン作動性ニューロンの活性が認められた。これは、腹側被蓋野の活性化がケタミンの抗うつ作用を抑制することを示唆している。
・より拮抗薬に近い(Emaxが低い)パーシャルアゴニストであるブレクスピプラゾールやracloprideの全身投与は、ケタミンと併用した場合に、モデルマウスの腹側被蓋野のドパミン作動性ニューロンを活性化し、ケタミンの抗うつ作用を抑制したが、アリピプラゾールでは、抗うつ作用の抑制が認められなかった。
・これらの結果と一致し、うつ病患者9例を対象とした単群二重盲検臨床試験において、アリピプラゾール12mg併用により、ケタミンの抗うつ作用を維持したうえで、解離症状を抑制することが報告された。

 著者らは「これらの知見を総合すると、アリピプラゾールによるドパミン受容体シグナル伝達の微調整により、ケタミンの抗うつ作用を維持しながら、ケタミン誘発解離症状を選択的に抑制することが示唆された。これは、治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾールとケタミンの併用療法が有用である可能性を示している」とまとめている。

(鷹野 敦夫)