日本発エビデンス|page:2

第1/2世代EGFR-TKI後にCNS進行したNSCLCへのオシメルチニブ(WJOG12819L/KISEKI)/日本肺癌学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療の標準治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のオシメルチニブが用いられているが、第1/2世代のEGFR-TKIが用いられる場合もある。ただし、本邦では第1/2世代EGFR-TKIを用いた1次治療で進行が認められた場合、EGFR T790M変異が確認されないとオシメルチニブは適応とならない。そこで、第1/2世代EGFR-TKIを用いて治療を開始し、進行時にEGFR T790M変異が陰性(もしくは検出不能/検査困難)となったNSCLC患者に対するオシメルチニブの有用性を検討する医師主導の国内第II相試験「WJOG12819L/KISEKI試験」が実施された。

肥満とがん死亡率、関連する血液腫瘍は

 肥満は血液腫瘍を含む各種がんによる死亡率の上昇と関連しているが、アジア人集団、とくに日本人成人におけるこの関連のエビデンスは限られている。今回、北海道大学の若狭 はな氏らが、わが国の多施設共同コホート研究(JACC Study)で肥満と血液腫瘍による死亡の関連を検討した結果、日本人成人において肥満が多発性骨髄腫および白血病(とくに骨髄性白血病)による死亡率の上昇と有意に関連していることが示された。PLoS One誌2025年10月30日号に掲載。

どんな量でも飲酒は血圧を高める可能性あり

 量に関係なく、飲酒は血圧を上昇させる可能性があるようだ。新たな研究で、たとえわずかであっても飲酒量の増加は血圧の上昇と関連していることが明らかになった。この研究結果を報告した聖路加国際病院の鈴木隆宏氏らは、「飲酒をやめる、または飲酒量を減らすことで血圧が下がり、脳卒中や心疾患のリスクが低下する可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に10月22日掲載された。  これまで、少しの飲酒なら血圧に大きな影響はないと考えられていたが、この研究結果はそうした考えに疑問を投げかけるものだ。鈴木氏は、「血圧に関しては、飲酒量が少なければ少ないほど良好な状態になることが、われわれの研究で示された。そして、飲酒量が多いと血圧は高くなる」と指摘。「これまでは、少量のアルコールであれば問題はないだろうと考えられてきた。しかし、われわれの研究結果は、アルコールは全く摂取しないのがベストであることを示している。つまり、たとえ少量の飲酒であっても、禁酒することが男女を問わず心臓の健康に有益な可能性がある」と米国心臓病学会(ACC)のニュースリリースの中で述べている。

日本人EGFR陽性NSCLC、アファチニブvs.オシメルチニブ(Heat on Beat)/日本肺癌学会

 オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の標準治療として用いられている。ただし日本人では、オシメルチニブの有用性をゲフィチニブまたはエルロチニブと比較検証した「FLAURA試験」1,2)において、有効性が対照群と拮抗していたことも報告されている。そこで、1次治療にアファチニブを用いた際のシークエンス治療の有用性について、1次治療でオシメルチニブを用いる治療法と比較する国内第II相試験「Heat on Beat試験」が実施された。第66回日本肺癌学会学術集会において、本試験の結果を森川 慶氏(聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科)が報告した。なお、本試験の結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)でも報告されている(PI:帝京大学腫瘍内科 関 順彦氏)。

週末まとめて歩くvs.日々歩く、メタボ予防効果が高いのは?

 わが国では健康増進のために1日8,000歩以上歩くことが推奨されているが、1日平均歩数が同じ場合、週末にまとめて歩く人と日々歩く人で効果は同等なのだろうか。今回、愛媛大学の山本 直史氏らは、中高年の日本人において連続した7日間の歩数を調査し、メタボリックシンドロームとの関連を検討した結果、8,000歩以上の日数の割合より、7日間の総歩数がメタボリックシンドロームとの関連が強い一方、1日平均歩数が8,000~10,000歩の人では、8,000歩以上達成した日数の割合が高いほどメタボリックシンドロームのリスクが低いことが示唆された。Obesity Research & Clinical Practice誌オンライン版2025年11月2日号に掲載。

がん患者のメンタル問題、うつ病と不安障害で発症期に差

 がん患者におけるうつ病と不安障害の発症率と時間的傾向を明らかにした研究結果が、International Journal of Cancer誌オンライン版2025年8月29日号に発表された。九州大学の川口 健悟氏らは日本の14の自治体から収集された診療報酬請求データを用いて、がん診断後、最大24ヵ月間の追跡期間中にうつ病と不安障害を発症した例について調査した。  2018年4月~2021年3月に新たにがんと診断された2万2,863例を対象とした。粗発症率を算出し、ポアソン回帰分析を用いて月別発症率と時間的傾向を可視化した。全患者を対象とした分析と、性別、年齢、治療法、がんの種類別の分析が行われた。

頭痛は妊娠計画に影響を及ぼすのか?

 頭痛は、生殖年齢の人にとって社会経済的な負担となる一般的な神経疾患である。しかし、妊娠計画への影響についてはほとんど知られていない。埼玉医科大学の勝木 将人氏らは、日本における学齢期の子供を持つ保護者を対象に、頭痛の特徴と妊娠計画との関連性を調査した。The Journal of Headache and Pain誌2025年7月4日号の報告。  2024年に新潟県燕市の学校に通う生徒の保護者を対象に、学校を拠点としたオンライン調査をプロスペクティブコホートに実施した。調査項目には、年齢、性別、頭痛の特徴、急性期治療薬および予防薬の使用状況、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの急性期治療薬の使用日数(AMD)、頭痛影響テスト(HIT-6)、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)、子供の数を含めた。また、「頭痛のために妊娠を避けているまたは避けたことがありますか」という質問を通して、頭痛が妊娠計画に及ぼす影響についても調査した。この質問に対し「はい」と回答した人は、妊娠回避群と定義された。

EGFR陽性NSCLCへのオシメルチニブ+化学療法、日本人でもOS良好(FLAURA2)/日本肺癌学会

 国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」において、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を改善したことが報告されている1)。ただし、本試験のサブグループ解析において、中国人を除くアジア人集団のOSのハザード比(HR)は1.00(95%信頼区間[CI]:0.71~1.40)であったことから、日本人集団の結果が待ち望まれていた。そこで、第66回日本肺癌学会学術集会において、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が本試験の結果を報告するとともに、日本人集団のOS解析結果を報告した。また、本報告の追加資料において、日本人集団の患者背景とPFS解析結果も示された。

水分摂取量が日本人の認知症リスクに及ぼす影響

 適切な水分摂取は、高齢者の認知機能の維持に不可欠である。しかし、水分摂取量の促進を推奨する前に、解決しなければならない課題が残存している。まず、水分摂取量と認知機能の改善との関係は線形であるのか、そしてもう1つは、この関連性を媒介する根本的なメカニズムは何かという点である。これらの課題を解決するため、北海道・北斗病院の保子 英之氏らは、日本人高齢者を対象に、水分摂取量が認知症リスクに及ぼす影響を検討した。PloS One誌2025年10月6日号の報告。  対象は、高齢者向け介護施設に入所し、看護を受けている日本人高齢者33例。水分摂取量は、日常的な臨床診療の一環として記録した。認知機能は、入所期間中にミニメンタルステート検査日本語版(MMSE-J)を用いて2回評価した。さらに、超音波検査を用いて左右の総頸動脈の血流を測定し、約82.6±14.9日の間隔で評価した。除脂肪体重(LBM)当たりの水分摂取量、MMSE-Jスコアの変化、超音波検査パラメーター間の関係は、ノンパラメトリックブートストラップ法を用いたスピアマンの線形相関分析により解析した。

尿検査+SOFAスコアでコロナ重症化リスクを早期判定

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株の多くは軽症だが、重症化する一部の患者をどう見分けるかは医療現場の課題だ。今回、東京都内の病院に入院した842例を解析した研究で、尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)とSOFA(Sequential Organ Failure Assessment score)スコアを組み合わせた事前スクリーニングが、重症化リスク判定の精度を高めることが示された。研究は国立国際医療センター腎臓内科の寺川可那子氏、片桐大輔氏らによるもので、詳細は9月11日付けで「PLOS One」に掲載された。  世界保健機関(WHO)が2020年3月にCOVID-19のパンデミックを宣言して以来、ウイルスは世界中に広がり、変異株も多数出現した。現在はオミクロン株の亜系統が主流となっており、症状は多くが軽症にとどまる一方、一部の患者は酸素投与や入院を必要とし、死亡する例も報告されている。そのため、感染初期の段階で重症化リスクを予測する方法の確立が求められている。

都市と地方で違う?高齢者の健康に影響する「歩きやすさ」

 「歩きやすい街」は高齢者に優しいのか?今回、日本全国の高齢者を対象にした調査で、都市と地方でその効果に違いがあることが分かった。地域の歩きやすさ(ウォーカビリティ)は都市部では歩行の増加に寄与する一方、地方部ではウォーカビリティが必ずしも健康にプラスの影響を与えないことがあるという。研究は千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は9月21日付けで「Health & Place」に掲載された。  高齢化社会では、日常生活空間の環境が高齢者の健康や生活の質に大きな影響を与えることが注目されている。特にウォーカビリティは、歩道や交差点、施設へのアクセスなど複数の要素を含み、身体的活動や心理・社会的健康に関係するとされる。しかし、ウォーカビリティが都市・地方に与える影響の違いや、身体・心理・社会面から総合的に評価した研究は限られる。そうした背景を踏まえ、著者らは、日本の65歳以上の高齢者を対象に、ウォーカビリティと健康・生活関連アウトカムの長期的関連を都市・地方別に分析し、その包括的影響を明らかにすることを目的とした。

新しい肥満の定義で米国人の7割近くが肥満に該当

 肥満の新しい定義により、肥満と見なされる米国人の数が劇的に増加する可能性があるようだ。長期健康調査に参加した30万人以上を対象にした研究で、BMIだけでなく、余分な体脂肪に関する追加の指標も考慮した新たな肥満の定義を適用すると、肥満の有病率が約40%から70%近くに上昇することが示された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の内分泌学者であるLindsay Fourman氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月15日掲載された。  Fourman氏は、「肥満が蔓延しているだろうと考えてはいたが、これほどとは予想していなかった。現在、成人人口の70%が過剰な脂肪を持っている可能性があると考えられるため、どの治療アプローチを優先すべきかについての理解を深める必要がある」とニュースリリースで述べている。

日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。

肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義

 慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。

中年期に食事を抜くと将来フレイルになる可能性/長寿研

 高齢者にとってフレイルによる運動機能の低下は、日常生活に重大な悪影響を及ぼす。こうしたフレイルに明確な原因はあるのであろうか。この課題に対し、国立長寿医療センターの西島 千陽氏らの研究グループは、認知症のない65歳以上の高齢者5,063例を対象に若年期(25~44歳)および中年期(45~64歳)の食事抜きの習慣と老年期のフレイルとの関連性を検討した。その結果、若年期、中年期の食事抜きは、高齢期のフレイルに関連することがわかった。この結果は、Journal of the American Medical Directors Association誌2025年10月9日号に掲載された。

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、テゼペルマブの日本人データ(WAYPOINT)/日本アレルギー学会

 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)に対し、生物学的製剤の適応拡大が進んでいるが、生物学的製剤使用患者の約40%は全身性ステロイド薬を用いていたという報告があるなど、依然としてコントロール不十分な患者が存在する。そこで、抗TSLP抗体薬のテゼペルマブのCRSwNPに対する有用性が検討され、国際共同第III相試験「WAYPOINT試験」において、テゼペルマブは鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)を有意に改善したことが、NEJM誌ですでに報告されている。本試験の結果を受け、テゼペルマブは米国およびEUにおいて2025年10月にCRSwNPに対する適応追加承認を取得した。

日本人男性、認知機能と関連する肥満指標は?

 地域在住の日本人中高年男性において、さまざまな肥満指標と認知機能との関連を調査した結果、腹部の内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比(VSR)が低いと認知機能が低いことが示された。滋賀医科大学の松野 悟之氏らがPLoS One誌2025年10月23日号で報告した。  これまでの研究では、内臓脂肪組織が大きい人は認知症リスクが高く、内臓脂肪組織が認知機能低下と関連していたという報告がある一方、内臓脂肪組織と認知機能の関係はなかったという報告もあり一貫していない。この横断研究では、滋賀県草津市在住の40~79歳の日本人男性を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis)に参加した853人のうち、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)に回答し、CTで腹部の内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を測定した776人のデータを解析した。参加者をVSRの四分位群に分類し、共分散分析を用いて各四分位群のCASI合計スコアおよび各ドメインスコアの粗平均値および調整平均値を潜在的交絡因子を調整して算出した。

歯みがきで命を守る?手術2週間前の口腔ケアが肺炎予防に効果

 高齢患者や基礎疾患を持つ患者においては、術後肺炎をはじめとする感染症対策が周術期管理上の大きな課題となる。今回、愛媛大学医学部附属病院の大規模後ろ向き解析で、術前2週間以上前からの体系的な口腔ケアが術後肺炎の発症抑制および入院期間短縮に有効であることが示された。研究は愛媛大学医学部附属病院総合診療サポートセンターの古田久美子氏、廣岡昌史氏らによるもので、詳細は9月3日付けで「PLOS One」に掲載された。  近年、周術期管理や麻酔技術の進歩により、高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者でも侵襲的手術が可能となった。その一方で、合併症管理や入院期間の短縮は依然として課題である。術後合併症の中でも肺炎は死亡率や医療費増大と関連し、特に重要視される。口腔ケアは臨床で広く行われ、病原菌抑制を通じて全身感染症の予防にも有効とされる。しかし、既存研究は対象集団が限られ、最適な開始時期は明確でない。このような背景を踏まえ、著者らは術前口腔ケアについて、感染源除去や細菌管理、歯の脱落防止のために少なくとも2週間の実施が必要であると仮説を立てた。そして、手術2週間以上前からの口腔ケアが術後肺炎予防に有効かを検証した。

75歳以上の乳がん検診は過剰診断か~日本人での検討

 乳がん検診は死亡率低下と関連する可能性があるが、高齢者においては過剰診断が懸念される。今回、石巻赤十字病院の佐藤 馨氏らが、高齢化地域における75歳以上の女性において検討した結果、検診と死亡率低下に有意な関連はみられなかったものの、検診群において乳がんによる死亡は認められなかった。Preventive Medicine Reports誌2025年10月9日号に掲載。  本研究では、石巻赤十字病院で乳がんと診断された75~98歳(中央値81歳)の女性289例(2011~20年)を後ろ向きに解析した。患者を検診群(40歳以上の全女性を対象とした2年ごとの全国規模集団ベース乳がんスクリーニングで診断)と非検診群(症状で診断もしくはCTなどの他疾患の画像検査で偶然発見)に分類した。主要評価項目は全死亡率であった。比較にはMann-Whitney のU検定、カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定、生存率はKaplan-Meier法、log-rank検定、予後因子はCox比例ハザードモデルで解析した。

日本人における気圧の変化と片頭痛との関係

 獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、日本の健康保険請求データベースの大規模データと気象データを照合し、気圧変化の大きい季節が片頭痛発症に及ぼす影響を調査するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2025年9月10日号の報告。  本研究では、JMDC請求データと日本の気象データを用いて分析した。片頭痛の診断歴を有する患者を対象とし、片頭痛と最初に診断された医療機関の所在地に基づいて8つの地域サブグループに分類した。片頭痛発症までの期間(各季節の初日からトリプタンが処方されるまでの期間と定義)を、気圧変化が最も大きい季節と最も小さい季節で比較した。