日本発エビデンス|page:2

「消化性潰瘍診療GL2026」、ボノプラザンの位置付けを強化/J Gastroenterol

消化性潰瘍では、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用が主要因である一方、除菌治療の普及や強力な酸分泌抑制薬の登場により、有病率や死亡率は低下している。しかし、特発性潰瘍や非H. pylori性ヘリコバクター(NHPH)感染による潰瘍の増加傾向が注目されている。日本消化器病学会(JSGE)は2026年4月に「消化性潰瘍診療ガイドライン2026(第4版)」を改訂、治療アルゴリズムの骨格は大きく変えず、H. pylori除菌治療について状況に応じた選択肢を整理するとともに、薬物療法ではボノプラザンの位置付けを強化した。本改訂内容は、ガイドライン作成・評価委員会の杉本 光繁氏らより論文化され、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年8月24日号に掲載された。

日本人入院患者のせん妄、その特徴とリスク因子は?

 せん妄は、入院中に生じる重篤な精神神経症状であり、単なる急性イベントというよりは、背景にある神経認知機能の脆弱性が顕在化したものであると考えられる。日本では、入院患者を対象に、あらかじめ定められたリスク因子を評価する「せん妄リスクの早期スクリーニング」を病院全体で実施することが、国の医療政策として義務付けられている。奈良県立医科大学附属病院のMegumi Matsuda氏らは、専門医へのコンサルテーションを経て確定診断されたせん妄と独立して関連する、患者の属性および臨床的因子の特定を試みた。PCN Reports誌2026年7月30日号の報告。

高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。

アルコール依存症患者の飲酒関連がん、遺伝的体質でリスクに差

 飲酒は頭頸部がんや食道がんなどの飲酒関連がんの重要なリスク因子として知られている。今回、日本人のアルコール依存症患者を対象とした研究で、アルコール代謝に関わる遺伝的体質によって、こうしたがんのリスクが異なることが明らかになった。研究は、国立病院機構久里浜医療センターアルコール内科の横山顕氏、国立保健医療科学院生涯健康研究部の横山徹爾氏によるもので、詳細は7月7日付の「Cancer Medicine」に掲載された。  飲酒は頭頸部がんや食道がん、肝がん、大腸がん、胃がんなどのリスク因子として知られている。

降圧薬による認知症リスクの低下、ARB vs.Ca拮抗薬~日本人大規模データ

 降圧薬の「種類」の違いが、血圧低下とは独立して認知症リスクに影響するかについては、十分に明らかになっていなかった。今回、統計数理研究所/総合研究大学院大学の野間 久史氏らが実施した65歳以上を対象とした標的試験エミュレーションの結果、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の新規開始はカルシウム拮抗薬(CCB)の新規開始に比べて、認知症、とくに血管性認知症のリスクが低いことが示された。Alzheimer’s & Dementia誌2026年8月号に掲載。  本研究では、19自治体の医療・健診情報を統合した約505万人の大規模医療データベースであるLIFE Studyの2014年4月~2024年9月のデータから、新規にARBまたはCCBによる高血圧治療を開始した65歳以上の認知症ではない成人を対象に、標的試験エミュレーションによりARB開始群とCCB開始群の認知症リスクを比較した。

胚移植の成功率を高めるための3つの手法、その効果は?

 体外受精(IVF)での胚移植は治療の最終段階であり、成功率を高めるためにさまざまな方法が試みられている。例えば、移植時の子宮の角度を改善する目的で膀胱を充満させる方法、移植前に子宮頸管粘液を除去する方法、カテーテル留置後に胚を装填する方法(アフターローディング法)などである。しかし、加藤レディスクリニックの産婦人科医である秋野亮介氏らが8月6日付で「Cochrane Database of Systematic Reviews」に発表した研究で、これらの3つの手法の有効性を裏付ける確実性の高いエビデンスは得られていないことが示された。秋野氏は、「ある意味では、エビデンスよりも慣習が診療を動かしている例と言える。

食事のタイミングと日本人の認知症リスクとの関係~LIFE研究

 食事のタイミングと認知症についてのエビデンスは限られている。九州大学の川口 健悟氏らは、深夜の夕食および朝食抜きと、認知症の発症との関連を検討した。GeroScience誌オンライン版2026年7月28日号の報告。  本研究には、2016年4月~2021年3月の19自治体におけるレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータが用いられた。深夜の夕食(就寝前2時間以内の夕食を週3回以上)および朝食抜き(週3回以上)については、健康診断時に評価し、「あり」または「なし」として解析した。

胃がん手術、低CXIは予後不良・再発リスクと関連

 「がん悪液質」は、筋肉量の減少や低栄養、全身性炎症などを特徴とし、患者の予後に影響を及ぼすことが知られている。今回、これらを統合的に評価するCachexia Index(CXI)が、胃がん手術患者の予後や再発リスクを予測する指標として有用である可能性が示された。研究は、東京大学医学部附属病院胃食道外科の小島晴樹氏、菅原弘太郎氏らによるもので、詳細は7月13日付の「Surgery Today」に掲載された。  胃がんの予後は病期が最も重要な決定因子とされる一方、患者の全身状態も術後の生存に影響することが知られている。

マラソン中の心停止、スタート時の気温が低いほどリスク上昇か

 マラソン中の心停止はまれではあるものの、生命を脅かす重大なアクシデントだ。今回、日本全国のフルマラソン約453万人の参加データを解析した研究で、スタート時の気温が低いほど心停止リスクが高い可能性が示された。一方、大気汚染物質との有意な関連は認められなかった。研究は、霞ヶ浦医療センター循環器内科の加藤穣氏らによるもので、詳細は6月30日付の「JACC:Advances」に掲載された。  マラソン中の心停止は、冠動脈疾患などランナー側の心血管疾患が主な原因と考えられている。一方、これまでの研究はランナー個人の特徴や基礎疾患に焦点を当てたものが中心で、レース当日の気象条件や大気汚染などの環境要因が心停止リスクに与える影響については十分に明らかになっていなかった。

LDL-C<55mg/dLでもMACE再発、リスク因子は?/ESC2026

動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防では、超高リスク患者においてLDL-C<1.4mmol/L(55mg/dL)の達成が推奨されている。一方で、LDL-Cを良好に管理しても動脈硬化の進展や心血管イベントの再発は起こりうる。今回、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後にLDL-C<1.4mmol/Lを達成した冠動脈疾患(CAD)患者におけるASCVD再発の臨床的特徴を検討した結果、主要心血管イベント(MACE)は6.2%に発生し、動脈硬化性疾患(polyvascular disease:PVD)がMACEと強く関連する一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/L(40mg/dL)の達成はMACEリスク低下と関連していたことが明らかになった。本研究結果は、国立循環器病研究センター 循環器内科の片岡 有氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)の2次予防のセッションで発表、Journal of Clinical Lipidology誌2026年8月号にも掲載された。

チルゼパチド、2型糖尿病治療の負担軽減に寄与か――実臨床研究で示唆

 2型糖尿病では、複数の糖尿病治療薬の併用や複雑なインスリン療法が必要となり、患者の治療負担が増すことがある。こうした中、2型糖尿病患者を対象としたリアルワールド研究で、チルゼパチドは従来のGLP-1受容体作動薬と比べ、血糖コントロールや体重を改善しながら、糖尿病治療の負担軽減につながる可能性が示された。研究は、浅ノ川総合病院内科/金沢大学大学院未来型健康増進医学分野の澤村俊孝氏らによるもので、詳細は6月30日付の「Endocrine Practice」に掲載された。  複数の薬を服用する「ポリファーマシー(多剤併用)」や複雑なインスリン療法は、2型糖尿病患者の治療負担を増大させるだけでなく、低血糖や転倒、入院などのリスクとも関連する。

研修医のどのくらいが臨床で生成AIを使用しているか/東大ほか

 生成AI(GenAI)は、われわれの日常生活にも広く浸透しており、臨床現場でも活用されている。では、臨床で医師、とくに研修医はどのくらいGenAIを使用しているのであろうか。このテーマについて東京大学大学院医学系研究科生体防御感染症学の三輪 俊貴氏らの研究グループは、研修医の臨床現場における検索エンジンとしてのGenAI使用状況を調査した。その結果、GenAIの使用は「知識の崩壊」を示唆するような自己申告行動とは関連しておらず、GenAIの非使用者におけるリテラシーは依然として限定的であることがわかった。JMIR AI誌2026年7月17日号に掲載。

ペムブロリズマブ投与後の好酸球割合、irAE発現リスク評価の手掛かりに

 免疫チェックポイント阻害薬はがん治療に大きく貢献している一方、免疫関連有害事象(irAE)への対応が課題となっている。今回、転移性尿路上皮がん患者を対象とした研究で、ペムブロリズマブ投与3週間後の好酸球割合が、irAE発現リスクを評価する手掛かりとなる可能性が示された。研究は名古屋市立大学大学院医学研究科臨床薬剤学分野の小田切州広氏、同大学医学部附属西部医療センター泌尿器科の内木拓氏らによるもので、詳細は7月1日付の「Cancer Medicine」に掲載された。

日本人片頭痛患者の特徴と治療パターンが判明~OVERCOME研究

 片頭痛が個人の生活に及ぼす負担は、その人の背景と関連している。しかし、日本においては、年齢、性別、就労状況、収入、家族の介護といった要因と患者報告アウトカム(PRO)や片頭痛の治療パターンとの関連に関するエビデンスは限られている。大分・おおば脳神経外科・頭痛クリニックの大場 さとみ氏らは、日本における片頭痛の疫学・治療・ケアに関する観察研究であるOVERCOME(Japan)第2回研究のデータを用い、人口統計学的サブグループごとの片頭痛による負担および治療薬の使用状況について解析を行った。Pain and Therapy誌オンライン版2026年7月14日号の報告。

食事速度は将来の体型に影響するか/藤田医科大

 「早食いは肥満や糖尿病のリスク」ということはよく知られている。食事の速度は体重の推移とどのように関連するのであろうか。このテーマについて藤田医科大学医学部臨床栄養学 主任教授の飯塚 勝美氏は、約56万例の健康診断データを解析し、食事速度と長期的な体重推移との関連を検討した。その結果、食事速度が長期的な体重推移の区分に関連する行動特性である可能性が示唆された。Nutrients誌オンライン版2026年7月24日号に掲載。

大腸がん検診60%目標、2028年達成は困難か

日本では大腸がん検診の受診率向上が公衆衛生上の課題であり、2028年までに受診率60%を達成する目標が掲げられている。一方で、都道府県や性別による受診率の差が目標達成に及ぼす影響は十分に定量化されていない。そこで、一橋大学のHasan Jamil氏らは、2013~22年の全国データを用いて、2028年に大腸がん検診受診率が60%目標に到達する可能性を都道府県別に予測した。その結果、全国の受診率は2028年時点で60%に届かず、多くの都道府県で目標達成確率が低いと推定された。本研究結果は、International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年7月27日号に掲載された。

研修医のメンタルヘルス、医師との結婚で良好か

 医師の婚姻状況はウェルビーイングやキャリア選択と関連する可能性があるが、結婚を含むライフステージと若手医師のウェルビーイングやキャリア選択との関係については、これまで十分に検討されていない。そこで、長崎 一哉氏(藤田医科大学)、西崎 祐史氏(順天堂大学)らの研究グループは、日本の卒後2年目研修医を対象に、婚姻状況と心理的ウェルビーイング、志望診療科との関連を全国横断調査で検討した。その結果、婚姻、とくに配偶者が医師であることは、抑うつ症状の少なさおよび仕事満足度の高さと関連していた一方、診療科選択との明確な関連は認められなかった。本研究結果は、Academic Medicine誌オンライン版2026年7月1日号に掲載された。

日本の心不全診療、2013年から転帰の改善状況は?(JROADHF)/Eur Heart J

 心不全(HF)診療では薬物療法や介入、退院後管理が進歩している一方、実臨床での診療内容の変化と患者転帰への影響は十分に明らかになっていない。米国・マサチューセッツ工科大学の遠山 岳詩氏らは、日本の2つの大規模HFレジストリを比較し、HF診療と転帰の変化を検討した。その結果、ガイドライン推奨治療や患者教育の実施率が増加し、1年死亡およびHF再入院はいずれも低下していた。本結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月8日号に掲載された。

日本人2型糖尿病へのGLP-1薬、MACE・死亡リスクへの影響は?

 日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究において、2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の使用は、心血管イベントにおいてほかの血糖降下薬との有意差は認められなかったが、全死因死亡率はGLP-1薬群で有意に低く、これらの知見は残余交絡を反映している可能性があることを、千葉大学の越坂 理也氏らが示した。研究成果はDiabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2026年8月11日号で発表された。  本研究は、約190万人規模の日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究である。

新規睡眠薬登場後、日本におけるBZD減量成功率は?

 不眠症に対するベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)の長期使用は、依存や認知機能低下などの有害事象と関連している。デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)やメラトニン受容体作動薬(MRA)などの新しい作用機序を持つ新規睡眠薬は、BZDよりも安全であるものの、BZDからの切り替えは簡単ではない。京都府立医科大学の綾仁 信貴氏らは、BZDの使用期間に着目し、新規睡眠薬の導入がBZDの減薬にどのような影響を与えるかを明らかにするため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2026年7月17日号の報告。  対象は、2021年5月~2022年4月、日本の2つの医療機関において新規睡眠薬による治療を開始したBZD使用中の外来不眠症患者。