医療一般|page:2

早期発症双極症の認知機能、躁病エピソード期と寛解期の比較

 トルコ・Konya Eregli State HospitalのCelal Yesilkaya氏らは、早期発症型の双極症の躁病エピソード患者と寛解期患者における認知機能の程度を調査し、比較検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2025年3月3日号の報告。  対象は、双極症の躁病エピソード患者55例、寛解期患者40例と健康対照者30例。さらに、躁病エピソード患者のうち、31例(56.4%)は寛解期と評価された。包括的な認知バッテリーを用いて、言語および視覚学習/記憶、注意力、抑制、問題解決、作業記憶、処理速度、言語流暢スキルを評価した。全体的な認知能力を推定するため、グローバル認知因子を算出した。心の論理(Theory of mind:ToM)の評価には、Reading the Mind in the EyesおよびFaux-Pasテストを用いた。

肝硬変患者において肝硬変自体はCAD発症リスクの増加に寄与しない

 冠動脈疾患(CAD)は肝硬変患者に頻発するが、肝硬変自体はCAD発症リスクの上昇と有意に関連しない可能性を示唆する研究結果が、「Journal of Clinical and Translational Hepatology」に2024年11月21日掲載された。  CADは、慢性冠症候群(CCS)と急性冠症候群(ACS)に大別され、ACSには、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、およびST上昇型心筋梗塞(STEMI)などが含まれる。肝硬変患者でのCADの罹患率や有病率に関しては研究間でばらつきがあり、肝硬変とCADの関連は依然として不確かである。

輸液バッグからマイクロプラスチックが血流に流入か

 医師や健康分野の専門家の間で、人体の奥深くにまで侵入するマイクロプラスチックに対する関心が高まりつつある。こうした中、医療行為でさえもこの微小なプラスチックへの曝露を増やす要因となり得ることが、新たな研究で示された。プラスチック製の輸液バッグから投与される液剤の中にもマイクロプラスチックが含まれていることが明らかになったという。復旦大学(中国)環境科学・工学部教授のLiwu Zhang氏らによるこの研究は、「Environment & Health」に2月14日掲載された。Zhang氏らは、「われわれの研究から、マイクロプラスチックが血流に入り込むという、人間に最も直接的に影響するプラスチック汚染の一面が浮き彫りになった」と述べている。

テレビを消すと糖尿病になりやすい人の心血管リスクが低下する

 2型糖尿病になりやすい遺伝的背景を持つ人は、心臓発作や脳卒中、末梢動脈疾患などのアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクも高い。しかし、そのリスクは、テレビのリモコンを手に取って「オフ」のスイッチを押すと下げられるかもしれない。香港大学(中国)のMengyao Wang氏らの研究によると、テレビ視聴を1日1時間以下に抑えると、2型糖尿病の遺伝的背景に関連するASCVDリスクの上昇が相殺される可能性があるという。この研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に3月12日掲載された。

膝OA患者のアウトカム改善、筋トレvs.ヨガ

 変形性膝関節症(膝OA)の運動療法として、ヨガと筋力増強トレーニングの有効性を比較検討した結果、両群ともに有意に膝関節痛を軽減し、ヨガ群では筋力増強トレーニング群よりも機能や硬直、健康関連QOLなどが良好であったことを、オーストラリア・タスマニア大学のBedru J. Abafita氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年4月8日号掲載の報告。  運動療法は、膝OAの疼痛、身体機能、日常生活機能の改善のために推奨されているが、異なる種類の運動の有用性を比較した試験は限られているため、最も効果的な運動の種類は明確ではない。また、ヨガはマインドフルネスや柔軟性、ウェルビーイングを高めることで疼痛の軽減が期待できるが、膝OAに対するヨガの有用性を示す質の高いエビデンスは少ない。そこで研究グループは、ヨガは筋力増強トレーニングよりも膝OA患者の膝関節痛を緩和し、身体機能やQOLを改善する運動として有用であるという仮説を立て、評価者盲検無作為化優越性試験を実施した。

指の動きを測定することで認知症の重症度が評価可能な可能性あり

 藤田医科大学の鈴村 彰太氏らは、アルツハイマー病患者の手の指の動きと認知機能との関連を推定するため、本研究を実施した。Brain and Behavior誌2025年3月号の報告。  国立長寿医療研究センターのもの忘れセンター外来でアルツハイマー病と診断された患者を対象に、15秒間の両手交互タップ課題を行い、手の指の動きを測定した。その後、アルツハイマー病の重症度により軽度または中等度に分類し、手の指の動きを比較した。両群間のパラメーターの比較には、マンホイットニーU検定およびエフェクトサイズを用い、算出されたp値をボンフェローニ法で補正した。手の指の動きと認知機能との関連を評価するため、スピアマン順位相関係数を用いた。認知機能は、ミニメンタルステート検査(MMSE)により評価した。

帯状疱疹、有害事象として報告が多い薬剤は

 米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、帯状疱疹の報告と関連薬剤を評価した後ろ向きpharmacovigilance研究の結果、複数の高リスク薬剤が特定された。さらに、これらの薬剤の中には添付文書に帯状疱疹リスクについての記載がないものがあることも明らかになった。中国・Xuzhou Medical UniversityのJiali Xia氏らによるFrontiers in Pharmacology誌オンライン版2025年3月26日号への報告。  本研究では、2004年第1四半期~2024年第3四半期までのFAERSにおける帯状疱疹に関する報告を解析し、とくに帯状疱疹発症の報告数が多い上位30薬剤を抽出した。また、薬剤と帯状疱疹との潜在的関連を評価するために、不均衡分析(disproportionality analysis)の手法を用いて、比例報告比(PRR)および報告オッズ比(ROR)を推定した。

未治療CLLへのアカラブルチニブ+オビヌツズマブ、6年PFSの結果(ELEVATE-TN)/Blood

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)に対するアカラブルチニブ単独またはアカラブルチニブとオビヌツズマブ併用の有用性を評価した第III相ELEVATE-TN試験において、追跡期間中央値74.5ヵ月での成績を米国・Willamette Valley Cancer InstituteのJeff P. Sharman氏らが報告した。アカラブルチニブ+オビヌツズマブ群の有効性と安全性は維持され、無増悪生存期間(PFS)は、高リスク患者を含めてchlorambucil+オビヌツズマブ群より延長していた。Blood誌オンライン版2025年4月8日号に掲載。

院外心停止、最も重要なのは心肺蘇生実施までの時間

 院外心停止者に対する心肺蘇生法(CPR)は、適切に行われる限り、医師や救急救命士か、経験のないバイスタンダー(その場に居合わせた人)かなどの実施者のタイプが生存に影響することはなく、迅速に行うことが何よりも重要な可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。トリエステ大学(イタリア)のAneta Aleksova氏らによるこの研究結果は、欧州急性心血管ケア学会議(ESC ACVC 2025、3月14〜15日、イタリア・フィレンツェ)で発表された。研究グループは、「CPR実施者のタイプにかかわりなく、迅速な心拍再開が院内生存にとって非常に重要であることが示された。バイスタンダーによる初期のCPRと救急医療サービスによるCPRを比較しても、長期生存については同等だった」と述べている。

赤ワインはがん予防につながらない?

 赤ワインには抗炎症作用と抗酸化作用のあるレスベラトロールが多く含まれているため、がん予防効果があると考えられてきたが、新たな研究から、そのような明確なエビデンスはないという結論が示された。米ブラウン大学のEunyoung Cho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nutrients」に1月31日掲載された。  ワイン摂取量とがんリスクとの関連を調査した研究結果はこれまでにも複数発表されており、そのメタ解析の報告もあるが、赤ワインと白ワインを区別して検討した研究は少ない。そこでCho氏らは、2023年12月までに文献データベース(PubMedまたはEMBASE)に収載された論文を対象とするレビューを実施した。

手術を受けるなら週末の前より後の方が転帰は良好

 金曜日に手術を受ける予定の人は、可能であれば手術の日程変更を検討した方が良いかもしれない。新たな研究で、週末直前に手術を受ける人は、週末直後に手術を受ける人に比べて死亡や合併症のリスクが大幅に高まる可能性が示唆された。米ヒューストン・メソジスト病院のRaj Satkunasivam氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に3月4日掲載された。  病院や医療システムは、週末に最小限の人員で運営される傾向があることから、週末に患者が受ける医療の質は、平日よりも低くなる可能性が懸念されている。このような現象は、一般に「週末効果」と呼ばれている。

FDAで承認された初の経口産後うつ病治療薬zuranolone

 産後うつ病は、世界的に重大な懸念事項となっており、ホルモンの変化、遺伝的影響、環境ストレスなど、さまざまな要因が関連しているといわれている。その標準的な治療は、これまで心理療法や抗うつ薬治療などであったが、有望な代替治療として、zuranoloneが米国食品医薬品局(FDA)より承認された。zuranoloneは、効果発現が早く、治療アクセス性の向上が期待される初の経口産後うつ病治療薬である。パキスタン・Dow University of Health SciencesのMuhammad Haris氏らは、症状緩和や患者アウトカムへの影響を考慮し、産後うつ病治療におけるzuranoloneの有効性および安全性を評価するためナラティブレビューを行った。Health Science Reports誌2025年3月2日号の報告。

多発性骨髄腫と共に“生きる”選択を―Well-beingから考える

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年4月4日、「多発性骨髄腫患者のWell-being向上も考慮した治療目標を」と題したメディアセミナーを開催した。多発性骨髄腫は、根治が難しいものの、治療の進歩により長期生存が可能となってきている疾患である。本セミナーは、患者が「治療と生活を両立」させるために必要な視点として「Well-being」に焦点を当て、医療者と患者双方の視点からその意義を共有することを目的として開催された。

転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒調査を5年間行った。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが示唆された。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。

高脂血症は術後せん妄のリスク因子か~メタ解析

 術後せん妄のリスク因子としての高脂血症の潜在的役割について、中国・Zigong Fourth People's HospitalのLi-Quan Qiu氏らがメタ解析で検討した。その結果、高脂血症患者は術後せん妄リスクが有意に高く、術後せん妄患者では総コレステロール、トリグリセライド、LDLコレステロールが有意に高いことが示され、術後せん妄リスク因子としての高脂血症の潜在的役割が示唆された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2025年3月18日号に掲載。

AIが早産児の完全静脈栄養を改善

 新生児集中治療室で治療を受けている未熟児のうち、消化器系の発達が不十分で腸管で栄養を適切に吸収できない児には、点滴で栄養を与えられることがある。これを、完全静脈栄養(TPN)という。TPNの処方は医師が行うが、残念ながら、処方の適切性を判断するのは困難であり、間違いも起きやすい。こうした中、人工知能(AI)が、未熟児の栄養管理を改善し、児が正常に成長し発達する可能性を高めるのに役立つことが、新たな研究で示唆された。米スタンフォード大学小児科准教授のNima Aghaeepour氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に3月25日掲載された。

チャットボットもトラウマ的な話に不安を感じる

 ChatGPTのようなチャットボットも、人間と同じように、戦争、犯罪、事故などの悲惨な話にさらされると不安を感じる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。また、マインドフルネスに基づくリラクゼーション法により、そのような不安が軽減されることも確認されたという。チューリッヒ大学(スイス)精神病院のTobias Spiller氏らによるこの研究結果は、「npj Digital Medicine」に3月3日掲載された。Spiller氏は、「特に、立場的に弱く、影響を受けやすい人が関わる場合には、メンタルヘルスにおけるこうした大規模言語モデルの使用について話し合うべきだ」とThe New York Times紙に語った。

iPS細胞移植、パーキンソン病患者の脳内でドパミン産生を確認/京大

 京都大学医学部附属病院と京都大学iPS細胞研究所とが連携して実施した、パーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植する第I/II相臨床試験において、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞は生着し、ドパミンを産生することが確認され、腫瘍形成などの重篤な有害事象は認められなかった。本結果により、パーキンソン病に対する安全性と臨床的有益性が示唆された。本結果はNature誌オンライン版2025年4月16日号に掲載された。

カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起/日本糖尿病学会

 「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を適応症として2024年5月に発売された経口AKT阻害薬カピバセルチブについて、日本糖尿病学会では2025年4月15日、高血糖・糖尿病ケトアシドーシス(DKA)発現についての注意喚起を発出した。以下に抜粋するとともに、これを受けて同日発表された日本乳癌学会からの見解についても紹介する。  インスリンシグナル伝達のマスターレギュレーターであるAKTを阻害するカピバセルチブにより、インスリン抵抗性が誘導され高血糖を発現するリスクが想定される。実際に臨床試験(CAPItello-291試験)では有害事象として16.9%に高血糖を認めており、わが国における市販直後調査(2024月5月22日~2024年11月21日)でも高血糖関連事象が33例報告され、そのうち1例がDKAにより死亡している(推定使用患者数約350例)。

非専門医による診療機会を考慮、成人先天性心疾患診療ガイドライン改訂/日本循環器学会

 成人先天性心疾患診療ガイドラインが7年ぶりに改訂され、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会で山岸 敬幸氏(東京都立小児総合医療センター 院長/日本循環器学会 理事/日本小児循環器学会 理事長)が改訂点などを解説した。  先天性心疾患は出生数に占める割合として1.3~1.5%で推移し、近年の少子化に伴い、その発症数は減少している。その一方で、診断技術の進歩や手術成績の向上により、患者の約90%が成人に達するようになり、生存期間中央値は、軽症84.1歳、中等症75.4歳、重症53.3歳と報告され、成人先天性心疾患の患者数は年間約1万例のペースで増加している。