BRAF V600E変異陽性転移大腸がん(mCRC)は予後不良で知られ、従来の1次治療ではFOLFOX系またはFOLFIRI系±ベバシズマブが標準療法として用いられてきた。BREAKWATER試験では、BRAF阻害薬エンコラフェニブと抗EGFRモノクローナル抗体・セツキシマブの併用(EC)+mFOLFOX6が従来の標準療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善したことが報告されている。
一方、実臨床ではオキサリプラチン不適応例に対してFOLFOXに替えてFOLFIRIを併用するレジメンも用いられていることから、BREAKWATER試験では同レジメンとEC+FOLFIRIを比較する「コホート3」が設定された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)では米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz氏がコホート3の結果を発表し、既報のORRに加え、PFSおよびOSにおいても有意な改善が示されたことを報告した。この内容はAnnals of Oncology誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:未治療のBRAF V600E変異mCRC患者147例、ECOG PS0~1
・試験群:エンコラフェニブ+セツキシマブ+FOLFIRI(EC群:73例)
・対照群:FOLFIRI±ベバシズマブ(対照群:74例)
・評価項目:
[主要評価項目]ORR(既報:64.4%対39.2%)
[副次評価項目]PFS、OS、安全性など
・データカットオフ:2026年1月6日
主な結果は以下のとおり。
・PFSの追跡期間中央値はEC群18.0ヵ月、対照群14.4ヵ月であった。PFS中央値はEC群15.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:13.6~推定不能)、対照群8.3ヵ月(95%CI:6.9~9.8)であった。PFSのハザード比(HR)は0.44(95%CI:0.27~0.70、片側p=0.0002)であった。
・OSの追跡期間中央値はEC群20.6ヵ月、対照群20.7ヵ月であった。OS中央値はEC群で未到達(95%CI:21.0~推定不能)、対照群で20.3ヵ月(95%CI:13.2~推定不能)であった。OSのHRは0.56(95%CI:0.34~0.94)であった。18ヵ月時点のOS率はEC群72.0%、対照群54.5%であった。
・新たな安全性シグナルは認められなかった。Grade 3/4の治療時発現有害事象(TEAE)の発現率はEC群70%、対照群81%であった。重篤なTEAEはそれぞれ49%、44%であった。有害事象による化学療法中止率は14%と10%で、両群間に大きな差は認められなかった。
著者らは、「EC+FOLFIRIはORRおよびPFSを有意に改善し、OS延長も示した。安全性プロファイルは各薬剤で既知の範囲内であり、新たな安全性上の懸念は認められなかった」と結論付けた。今回の結果は、BRAF V600E変異陽性mCRCにおいて、既報のEC+mFOLFOX6に加え、EC+FOLFIRIという新たな1次治療の選択肢を提供するものであり、オキサリプラチン不適応例においてもBRAF阻害薬とEGFR阻害薬を組み合わせた治療戦略の有用性を支持する結果と考えられる。
(ケアネット 杉崎 真名)