臨床病期IA期で最大腫瘍径2cm以下の肺野末梢小型非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性検証試験「JCOG0802/WJOG4607L試験」のpost-hoc解析の結果、複雑区域切除は単純区域切除と同様に、肺葉切除と比較して全生存期間(OS)改善傾向を示し、呼吸機能の低下も小さかった。一方、局所領域再発リスクは肺葉切除より高かった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、上垣内 篤氏(広島大学病院 呼吸器外科)が結果を報告した。
JCOG0802/WJOG4607L試験は、臨床病期IA期の肺野末梢小型NSCLC患者(最大腫瘍径2cm以下かつC/T比0.5超)を対象に、OSについて区域切除の肺葉切除に対する非劣性を検証することを目的として実施された。本試験において、区域切除の肺葉切除に対するOSの非劣性が検証されただけでなく、区域切除の優越性も示されたことが報告されている1)。ただし、区域切除のなかでも技術的難度が高い複雑区域切除が、単純区域切除と同様に肺葉切除と比較して、十分な治療効果を示すかは明らかになっていなかった。そこで、区域切除群のうち、両側S6区域、左上区域(S1-3)、舌区域(S4+5)の切除を単純区域切除、その他の区域切除を複雑区域切除と定義して患者を分類し、それぞれの集団を肺葉切除群と比較した。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は、肺葉切除群554例、複雑区域切除群318例、単純区域切除群234例であった。
・手術時間中央値は、肺葉切除群174分、複雑区域切除群216.5分、単純区域切除群182分であり、複雑区域切除群が最も長かった。出血量中央値はそれぞれ44.5mL、55mL、40mLであった。切除断端距離中央値は、それぞれ4.0cm、2.2cm、2.5cmであり、複雑・単純区域切除群で短かった。
・全体集団における5年OS率/10年OS率は、肺葉切除群91.1%/79.8%、複雑区域切除群93.7%/83.5%、単純区域切除群95.3%/83.5%であった。肺葉切除群に対するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、複雑区域切除群0.869(0.642~1.176)、単純区域切除群0.858(0.609~1.208)であった。
・術後1年時点の1秒量(FEV1)変化率中央値は、肺葉切除群-12.0%、複雑区域切除群-7.9%、単純区域切除群-9.0%であった。肺葉切除群と比較して、複雑区域切除群、単純区域切除群のいずれもFEV1低下が有意に小さかった(それぞれp<0.0001、p=0.0006)。
・術後1年時点の努力肺活量(FVC)変化率中央値は、肺葉切除群-10.7%、複雑区域切除群-7.3%、単純区域切除群-7.4%であった。FVCについても、複雑区域切除群、単純区域切除群のいずれも肺葉切除群より低下が有意に小さかった(それぞれp<0.0001、p=0.0001)。
・無再発生存期間(RFS)について、5年RFS率/10年RFS率は、肺葉切除群87.9%/78.0%、複雑区域切除群87.4%/76.8%、単純区域切除群88.8%/76.7%であった。肺葉切除群に対するHR(95%CI)は、複雑区域切除群1.034(0.782~1.365)、単純区域切除群1.073(0.790~1.458)であった。
・局所領域再発の5年累積発生率/10年累積発生率は、肺葉切除群4.7%/5.7%、複雑区域切除群8.2%/12.3%、単純区域切除群6.9%/10.1%であった。複雑区域切除群(HR:2.124、95%CI:1.327~3.399)、単純区域切除群(同:1.817、1.071~3.083)は肺葉切除群より局所領域再発リスクが高かった。
本解析について、上垣内氏は「肺野末梢小型NSCLCにおいて、複雑区域切除は単純区域切除と同様に、肺葉切除と比較してOSを改善する傾向が示された。複雑区域切除および単純区域切除は、いずれも肺葉切除と比較して呼吸機能の温存に寄与した。一方、局所領域再発リスクが高いことから、複雑区域切除を行う際には、十分な切除マージンを確保するよう細心の注意を払うべきである」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)