転移のある膵がんは有効な治療が限られ、きわめて予後が悪いことで知られるが、ここに有望な薬剤が登場した。新規経口RAS(ON)阻害薬daraxonrasibは、KRAS G12D/V/Rを含む複数のRASを阻害することが特徴で、膵管腺がんの90%以上でRAS経路異常が認められる。daraxonrasibの有用性を検討したRASolute 302試験の結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションで発表され、米国・ダナファーバーがん研究所のBrian M. Wolpin氏による発表後にはスタンディングオベーションが起こり、結果はNEJM誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された。
・試験デザイン:第III相多施設共同非盲検無作為化比較試験
・対象:既治療の転移膵管腺がん(mPDAC)患者500例(92%がRAS G12変異陽性)、ECOG PS0~1
・試験群:daraxonrasib 300mgを1日1回経口投与(daraxonrasib群:248例)
・対照群:医師選択による標準化学療法(化学療法群:252例)
・評価項目:
[主要評価項目]RAS G12変異集団における全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]全体集団におけるOS・PFS、RAS G12および全体集団における奏効率(ORR)、安全性など
・データカットオフ:2026年2月10日
主な結果は以下のとおり。
・追跡期間中央値8.5ヵ月時点のOS中央値は、RAS G12変異集団ではdaraxonrasib群13.2ヵ月対化学療法群6.6ヵ月、全体集団では13.2ヵ月対6.7ヵ月であった。ハザード比(HR)は両群とも0.40であった。
・PFS中央値は、RAS G12変異集団では、daraxonrasib群7.3ヵ月対化学療法群3.5ヵ月、全体集団では7.2ヵ月対3.6ヵ月であった。HRはそれぞれ0.45および0.49であった。
・治療開始後に発生した有害事象は、daraxonrasib群の全例と化学療法群の97.7%で報告された。Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発生率は43.6%vs. 57.5%だった。Grade 3以上のTRAEは、daraxonrasib群では発疹13.7%、口内炎12.0%、化学療法群では好中球減少18.2%、貧血16.4%であった。TRAEによる治療中止はdaraxonrasib群1.2%と化学療法群11.2%だった。
・ORRはRAS G12変異集団では33.2%対11.8%、全体集団では31.6%対11.2%だった。
Wolpin氏は「既治療の転移膵がん患者において、daraxonrasibによる治療は、化学療法と比較してOSおよびPFSを有意に延長させた。この治療法は新たな標準療法になる可能性がある」とした。本試験には日本の施設も参加しており、本結果を受けて、daraxonrasibの承認申請に向けた動きが加速するとみられる。
(ケアネット 杉崎 真名)
O’Reilly EM, et al. N Engl J Med. 2026 May 31. [Epub ahead of print]