軽度うつ病に対する抗うつ薬の有効性については、依然として議論が続いている。ガイドラインでは、まず心理社会的介入を推奨しているが、実際の臨床現場では抗うつ薬が処方されることが少なくない。杏林大学の浦田 実氏らは、軽度うつ病患者の精神科初診時における抗うつ薬の処方パターンを調査し、処方決定に影響を与える症状関連因子を特定することを目的に、レトロスペクティブカルテレビュー研究を実施した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2026年4月8日号の報告。
2020~24年に杏林大学病院でうつ病と診断された外来患者1,508例を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。そのうち、Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self Report(QIDS-S)の合計スコアが6~10点の軽度うつ病の診断基準を満たした患者171例を分析した。抗うつ薬を処方された患者と処方されなかった患者の間で、人口統計学的特性および症状レベルを比較するため、独立t検定とロジスティック回帰分析を行った。
主な内容は以下のとおり。
・対象患者171例のうち、初回受診時に抗うつ薬を処方された患者の割合は28.1%であった。
・人口統計学的特性および全体的な症状の重症度において、両群間に有意な差は認められなかった。
・QIDS-Sの項目である体重増加は、抗うつ薬群で有意に低かった(0.1±0.4 vs.0.3±0.7、p=0.03)。しかし、Benjamini-Hochberg法による偽発見率補正後およびロジスティック回帰分析においては、統計的に有意な差は認められなかった。
・単剤療法を受けた患者において、抗うつ薬の種類による有意な差は認められなかった。
著者らは「本調査の結果、軽度うつ病患者の約30%は、初回診察時に抗うつ薬を処方されていることが明らかとなった。どの症状項目についても、抗うつ薬処方との明確かつ確固たる関連性が認められなかったことから、実際の治療選択においては、特定の症状プロファイル以外の要因が、より決定的な影響を及ぼしている可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)