高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【泌尿器】/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2026/04/22

 

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。初版には泌尿器領域のCQはなかったため、すべて新規で尿路上皮がん(CQ15)、前立腺がん(CQ16)、腎がん(CQ17)の3つのCQが設定された。

CQ15 転移性尿路上皮がんに対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法や併用療法は、高齢者や超高齢者に対して推奨されるか?
推奨:転移性尿路上皮がんに対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法や併用療法を、高齢者や超高齢者に対して弱く推奨する。
推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨
エビデンスの強さ:D
 転移尿路上皮がんの標準治療は長らくシスプラチンを中心としたプラチナ製剤併用化学療法であったが、近年では免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性や安全性が複数のランダム化比較試験(RCT)によって示されている。しかし、高齢者におけるエビデンスは十分に確立されておらず、実臨床では個別に適応を判断しているのが現状である。そこで本CQでは、転移尿路上皮がんの高齢者(75歳以上と定義)・超高齢者(80歳以上と定義)に対して、ICIの投与を開始した群(介入群)と無治療あるいは化学療法の投与を開始した群(対照群)のアウトカムを評価した。RCTにおいて、全体集団ではICIによる全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、奏効率の優越性が示されているが、高齢者や超高齢者に限定しているものではなかった。2件の後ろ向き研究において、ICIを投与した75歳以上と未満の群間におけるOSに有意差は認めなかったが、設定した対照群に合致しなかった。75歳以上のPFSと治療中断・延期に関するデータを示した第II相試験が存在するが、75歳未満のデータは示されていない。コホート研究において高齢者でも同様の有効性が期待され、観察研究において高齢者での重篤な有害事象は示されなかったものの、RCTの結果を高齢者にそのまま適用できるかどうかの明確なエビデンスはないと判断された。

CQ16 転移性ホルモン感受性前立腺がんに対してタキサン系抗がん薬は、高齢者や超高齢者に対して推奨されるか?
推奨:転移性ホルモン感受性前立腺がんに対して、タキサン系抗がん剤を高齢者または超高齢者に使用することは、患者の全身状態、併存疾患、価値観、生活背景を総合的に考慮したうえで行うことが望ましい。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 転移性ホルモン感受性前立腺がんの1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)を基盤としたドセタキセル併用療法やアンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)の併用が推奨されている。第III相のRCTであるCHAARTEDやSTAMPEDEにおいて、ADTへのドセタキセル上乗せによる有意なOSの延長が示され、ARASENSによりADT+ドセタキセルへのダロルタミド上乗せの有用性が示されている。しかし、転移性ホルモン感受性前立腺がんは高齢者に多い疾患であるにもかかわらず、高齢者を対象としたドセタキセルの有効性や安全性に関するエビデンスは十分に確立されていない。そこで本CQでは、タキサン系抗がん剤の治療適応のある転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象に、高齢者(75歳以上と定義)・超高齢者(80歳以上と定義)に対してタキサン系抗がん剤の投与を開始した群(介入群)とタキサン系抗がん剤の投与を減量あるいは行わない群(対照群)のアウトカムを評価した。OSについては、CHAARTEDの70歳以上においてタキサン併用群ではADT単独と比較して有意な改善を認めた一方で、STAMPEDEの70歳以上では有意な延長は示さなかった。75歳以上を対象とした観察研究でもOSの有意差は認められなかった。PFSは、75歳以上を対象とした観察研究において、ADT+ドセタキセル併用群ではADT+アビラテロン併用群よりも有意に短縮した。1件のRCTでOS延長の優越性が示されたため一定の望ましい効果は期待でき、各RCTに高齢者・超高齢者は一定数含まれているため、適切な症例を選べば毒性は許容範囲内と評価された。

CQ17 転移性腎がんに対して免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法は高齢者や超高齢者に対して推奨されるか?
 進行腎がんの薬物療法では、9種の分子標的薬と4種のICIが保険適用となっており、1次療法として複合免疫療法(ICIを含む併用療法)が有効である。しかし、高齢者に限定した前向き試験は存在せず、後ろ向き研究も限定的であり、日常診療では若年者のエビデンスを高齢者に外挿しているのが現状である。そこで本CQでは、65歳以上を高齢者、75歳以上を超高齢者と定義し、それぞれの年代におけるICIを含む併用療法のアウトカムを評価した。高齢者に特化したICIを含む併用療法の有用性を検討した介入試験は存在しなかったため、高齢者サブグループ解析の結果をもとにシステマティックレビューとメタ解析を施行した。

(1)65歳以上の高齢者
推奨:65歳以上の高齢者の転移性腎がん患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法を行うことを弱く推奨する。
推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 メタ解析の結果、OS、PFS、奏効率のいずれにおいても、ICI併用群ではTKI単剤群と比較して有意に良好な結果が示された。重篤な有害事象については、両群で大きな差は認められなかった。ICIを含む併用療法は高齢者においても十分な有効性と許容可能な安全性を示しており、若年者と同様に標準治療として推奨できるが、エビデンスの確実性は低いと評価された。

(2)75歳以上の超高齢者
推奨:75歳以上の高齢者の転移性腎がん患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法は、エビデンスが乏しく、明確に推奨することはできない。個別の病状や価値観を考慮して行うことが望ましい。
推奨のタイプ:推奨なし
エビデンスの強さ:D
 OSとPFSはICI併用による明確な改善効果は示されなかったものの、奏効率はICI併用群で有意に良好であった。有害事象の発現頻度に有意差はなかった。75歳以上の高齢者については患者数が少なく、OS・PFSにおける明確な有効性があると結論付けることは難しく、「推奨なし」と評価された。

(ケアネット 森)