医療一般

タルラタマブ、サイトカイン放出症候群の警告追記/厚労省

 タルラタマブについて、サイトカイン放出症候群が生じて死亡に至った症例が3例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は1例)報告されていることを受け、厚生労働省は2025年9月17日に添付文書の改訂指示を発出し、「警告」の項に追記がなされた。  改訂後の警告の記載は以下のとおり(下線部が変更箇所)。 1. 警告 1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

「また、にしない。まだ、にしない。」認知症早期対応のための合言葉を発表/リリー

 近年、認知症基本法の施行や、アルツハイマー病(AD)疾患修飾薬の登場などを背景として認知症診療は大きな転換期を迎え、かつての「症状が進行した後のケア」から、「MCI(軽度認知障害)を含む早期段階からの介入」へと、臨床現場の役割は大きく変化しつつある。こうした中、認知症月間である9月10日に、日本イーライリリーの主催で「『認知症に早めに対応するための合言葉』および『MCI/認知症当事者等への意識調査』に関するメディア発表会」が開催された。

医療費適正効果額は1千億円以上、あらためて確認したいバイオシミラーの有効性・安全性

 日本国内で承認されているバイオシミラーは19成分となり、医療費適正化の観点から活用が期待されるが、患者調査における認知度は依然として低く、医療者においても品質に対する理解が十分に定着していない。2025年8月29日、日本バイオシミラー協議会主催のメディアセミナーが開催され、原 文堅氏(愛知県がんセンター乳腺科部)、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト)が、専門医・患者それぞれの立場からみたバイオシミラーの役割について講演した。  化学合成医薬品の後発品であるジェネリック医薬品で有効成分の「同一性」の証明が求められるのに対し、分子構造が複雑なバイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーでは同一性を示すことが困難なために、「同等性/同質性」を示すことが求められる。

インフルワクチンの効果、若年には有意だが80歳以上で認められず/日本臨床内科医会

 日本臨床内科医会が毎年実施しているインフルエンザに関する前向き多施設コホート研究の統合解析が行われ、インフルエンザワクチンは40歳未満の若年層や基礎疾患のない人々において中等度の有効性を示す一方で、高齢者や基礎疾患を持つ人々では有効性が低下することが明らかになった。日本臨床内科医会 インフルエンザ研究班の河合 直樹氏らによる本研究はJournal of Infection and Public Health誌2025年11月号に掲載された。

抗不安薬の有効性と受容性の比較〜ネットワークメタ解析

 抗不安薬の副作用と依存リスクを考えると、治療方針の決定においては、その有効性と受容性を詳細に検討する必要がある。スイス・ベルン大学のThomas J. Muller氏らは、不安症治療における抗不安薬の有効性と受容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析(NMA)を実施した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2025年8月11日号の報告。  3つのデータベースを用いて抽出した1980〜2020年の研究を対象に、システマティックレビューおよびNMAを実施した。対象患者は、全般性不安症(GAD)または関連する不安症と診断された成人、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)データが利用可能な成人とし、比較対照群(プラセボ/実薬群)も含めた。主要アウトカムは、有効性(HAM-A合計スコアのベースラインからの変化量の平均差)と受容性(すべての原因による研究中止)とした。

GLP-1受容体作動薬は気候変動対策にも有益

 肥満症治療薬として使用されているオゼンピックやゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬は、単に体重を減らすだけでなく、地球環境の保護にも役立っている可能性のあることが、新たな研究で示された。これらの薬が心不全患者の減量目的で使用されると、温室効果ガス排出量の削減につながるという。米Lahey病院・医療センターのSarju Ganatra氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。  Ganatra氏らは、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者(GLP-1受容体作動薬を投与された患者1,914人、プラセボを投与された患者1,829人)を対象とした4件の臨床試験のデータを統合して解析した。HFpEFとは、心臓の収縮機能は保たれているものの、心筋が硬いために十分に拡張できず、血液を十分に取り込めない状態を指す。米国心臓病学会(ACC)によれば、心不全患者のほぼ半数がこのタイプに分類される。

小型NSCLC、STAS陽性は術式にかかわらず予後不良(JCOG0802/WJOG4607L)/WCLC2025

 臨床病期IA期で最大腫瘍径2cm以下の肺野末梢小型非小細胞肺がん(NSCLC)において、Spread Through Air Spaces(STAS)陽性は予後不良因子であることが示された。肺野末梢小型NSCLC患者を対象に、区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性検証試験「JCOG0802/WJOG4607L試験」の付随研究の結果を、谷田部 恭氏(国立がん研究センター中央病院 病理診断科 科長)が世界肺がん学会(WCLC2025)で報告した。  JCOG0802/WJOG4607L試験は、臨床病期IA期の肺野末梢小型NSCLC患者(最大腫瘍径2cm以下かつC/T比0.5未満)を対象に、区域切除の肺葉切除に対する全生存期間(OS)の非劣性を検証することを目的として実施された試験である。本試験において、区域切除の肺葉切除に対するOSの非劣性が検証されただけでなく、区域切除の優越性も示されたことが報告されている。

中等症以上の潰瘍性大腸炎へ新たな経口治療薬が登場/ファイザー

 ファイザーは、2025年9月12日に中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対するスフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬エトラシモド(商品名:ベルスピティ)を発売した。  潰瘍性大腸炎は、大腸におけるびまん性および連続性の粘膜炎症性病変を特徴とし、寛解と再燃を繰り返す慢性炎症性腸疾患で、主な症状として粘血便、下痢、腹部不快感、腹痛などがあり、倦怠感や貧血なども現れる。

食事の頻度とうつ病との関係

 これまでの研究において、1日の食事回数および夜間の絶食期間がうつ病と関連していることが示唆されているが、一定の限界や矛盾も示されていた。中国・ハルビン医科大学のYan Chen氏らは、1日の食事回数や夜間の絶食期間とうつ病との関連を検証するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2025年12月15日号の報告。  対象は、2005〜18年の米国国民健康栄養調査(NHANES)より抽出した2万9,035人。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)総スコア10以上とした。1日の食事回数で定量化し、夜間の絶食期間は1日の最後の食事と最初の食事を調査することで評価した。重み付けロジスティック回帰モデル、制限付き3次スプライン(RCS)、媒介分析を実施した。

慢性流涎治療にA型ボツリヌス毒素が登場/帝人ファーマ

 パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの日常症状として「流涎(よだれ)」が患者のQOLを低下させるために問題となっている。これまで、この流涎に効果的な治療法が少なかったが、2025年6月、帝人ファーマは、インコボツリヌストキシンA(商品名:ゼオマイン筋注用)について、慢性流涎の効能または効果の追加承認を取得した。そこで、同社はインコボツリヌストキシンAの追加承認について、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、パーキンソン病などの疾患と流涎の関係や治療薬の効果、投与での注意点などが解説された。

20歳以降の体重10kg増加が脂肪肝リスクを2倍に/京都医療センター

 20歳以降に体重が10kg以上増えた人は、ベースライン時のBMIにかかわらず5年以内に脂肪肝を発症するリスクが約2倍に上昇し、体重変動を問う質問票は脂肪肝のリスクが高い人を即時に特定するための実用的かつ効果的なスクリーニング方法となり得る可能性があることを、京都医療センターの岩佐 真代氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年8月6日号掲載の報告。  脂肪性肝疾患は、心血管疾患や代謝性疾患、慢性腎臓病のリスク増大と関連しており、予防と管理のための効果的な戦略の開発が求められている。脂肪肝に関連する質問票項目を特定することで、脂肪性肝疾患の高リスク者の早期発見につながる可能性があることから、研究グループは一般集団の健康診断データベースから収集した生活習慣情報を縦断的に分析し、脂肪肝リスクの高い個人を特定する質問票の有用性を検討した。

再発・難治性多発性骨髄腫への新たな二重特異性抗体トアルクエタマブのベネフィット、隔週投与も可能/J&J

 再発・難治性の多発性骨髄腫に対する新たな治療薬として二重特異性抗体トアルクエタマブ(遺伝子組換え)(商品名:タービー皮下注)が8月14日に発売されたことを受け、9月5日にJohnson & Johnson(日本における医療用医薬品事業の法人名:ヤンセンファーマ)による記者説明会が開催され、岩手医科大学の伊藤 薫樹氏が本剤の効果や有害事象の特徴、ベネフィットを紹介した。

小細胞肺がん1次治療の維持療法、タルラタマブ上乗せで1年OS率82%(DeLLphi-303)/WCLC2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬であり、維持療法ではPD-L1阻害薬単剤の投与を継続する。PD-L1阻害薬+lurbinectedinによる維持療法の有用性を検討した「IMforte試験」では、維持療法開始時からの全生存期間(OS)中央値が併用群13.2ヵ月、PD-L1阻害薬単剤群10.6ヵ月と報告されており、アンメットニーズが存在する。そこで、PD-L1阻害薬単剤による維持療法にタルラタマブを上乗せする治療法が検討されている。世界肺がん学会(WCLC2025)において、ED-SCLCの1次治療の維持療法における、PD-L1阻害薬+タルラタマブの安全性・有効性を検討する国際共同第Ib試験「DeLLphi-303試験」の結果を米国・Providence Swedish Cancer InstituteのKelly G. Paulson氏が報告した。本試験において、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は報告されず、維持療法開始後のOS中央値25.3ヵ月、1年OS率82%と良好な治療成績が示された。本結果はLancet Oncology誌オンライン版2025年9月8日号に同時掲載された。

抗アレルギー点鼻薬がコロナ感染リスクを低減

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の曝露前予防には、ワクチン接種以外の医薬品の選択肢は限られている。今回、抗アレルギー薬であるヒスタミン受容体拮抗薬アゼラスチンの点鼻スプレーは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の発生率の有意な減少と関連し、SARS-CoV-2以外の呼吸器病原体の総感染リスク低減とも関連していたことを、ドイツ・ザールランド大学のThorsten Lehr氏らが明らかにした。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年9月2日号掲載の報告。

先進医療技術の普及により1型糖尿病患者の血糖管理が大きく改善

 先進的テクノロジーを用いた医療機器の普及によって、1型糖尿病患者の血糖管理状態が顕著に改善しているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に8月11日掲載された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、血糖コントロールが良好(HbA1c7%未満)の18歳未満の患者の割合は、2009年は7%であったものが2023年には19%となり、成人患者では同期間に21%から28%に増加したという。  研究者らによると、これらの改善は、持続血糖モニターやインスリンポンプの技術革新によるところが大きいという。Fang氏は、「かつて、1型糖尿病患者の血糖コントロールは困難なことが多かった。こうした顕著な改善は喜ばしい変化だ」と述べている。ただし一方で、1型糖尿病患者の多くが、いまだに十分な血糖コントロールができていないことを、研究者らは指摘している。

日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-I、症状はどの程度改善するか

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症状だけでなく抑うつ症状の改善にも大きな可能性を秘めている。しかし、その効果により健康者と同等レベルまで症状が改善するかは不明である。東京家政大学の岡島 義氏らは、日本人の不眠症患者に対するデジタルCBT-Iにより、不眠症状および抑うつ症状が健康者レベルまで改善するかを検証するため、本研究を実施した。BioPsychoSocial Medicine誌2025年7月21日号の報告。  対象は、日本人労働者752例。不眠症およびうつ病尺度のカットオフスコアを用いて、不眠症群、うつ病群、不眠症/うつ病併存群、健康群の4群に分類した。すべての群に対してデジタルCBT-Iを2週間実施し、治療後、1ヵ月後、3ヵ月後の追跡調査でスコア変化を比較した。

EGFR陽性NSCLCへの術前オシメルチニブ、ctDNAによるMRD解析(NeoADAURA)/WCLC2025

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)における治療選択肢として術前補助療法があるが、EGFR遺伝子変異陽性例では病理学的奏効(MPR)がみられる割合が低い。そこで、術前補助療法としてのオシメルチニブ±化学療法の有用性を検討する国際共同第III相試験「NeoADAURA試験」が実施されており、オシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤は化学療法と比べてMPRを改善したことが、すでに報告されている1)。新たに、事前に規定された探索的解析として循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた分子的残存病変(Molecular Residual Disease:MRD)の解析が実施され、世界肺がん学会(WCLC2025)において、米国・カリフォルニア大学のCollin M. Blakely氏が解析結果を報告した。

慢性疼痛への医療用大麻、患者の期待に応えられていない?

 慢性的な筋肉痛や関節痛に対して医療用大麻を処方された人の多くが1年以内にその使用をやめていたことが、新たな小規模研究で明らかにされた。米ペンシルベニア州で医療用大麻の使用が認められた患者78人のうち約58%が1年以内に治療を中止していたことが示されたという。米トーマス・ジェファーソン大学のAsif Ilyas氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に8月7日掲載された。  このような高い離脱率は、「医療用大麻が、関心を集めて広く採用されているにもかかわらず、多くの慢性疼痛患者の期待に応えられていないことを示している」とIlyas氏は述べている。

成人の心血管疾患患者は一般的な感染症のワクチンを接種すべき/ACC

 米国心臓病学会(ACC)が、心血管疾患の成人患者における予防接種に関する専門家のコンセンサス声明である「2025 Concise Clinical Guidance: An ACC Expert Consensus Statement on Adult Immunizations as Part of Cardiovascular Care(2025年簡潔版臨床ガイダンス:心血管ケアの一環としての成人予防接種に関するACC専門家コンセンサス声明)」を作成し、「Journal of the American College of Cardiology」に8月26日公表した。声明では、心血管疾患患者が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、インフルエンザ、RSウイルス感染症などの一般的な感染症を予防するワクチンを接種することの重要性が強調されている。