医療一般

犬を飼うことで認知症予防は可能か?〜日本人対象研究

 国立環境研究所の谷口 優氏らは、犬の飼育者の身体的、社会的、心理的特性に基づいた傾向スコア重み付け法を用い、犬の飼育と要介護認知症の発症および死亡との関連を調査した。さらに、操作変数モデルを用いて、この関係における因果関係の可能性を検討した。加えて、費用対効果分析を用いて、犬の飼育に伴う費用と効果についても検討を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2026年7月22日号の報告。  犬の飼育状況は、「現在飼育中」、「過去に飼育経験あり」、「飼育経験なし」の3つに分類した。要介護認知症は、日本の介護保険制度における医師の判定に基づき定義し、死亡については約7.5年間のフォローアップ期間中に日本の人口動態統計を用いて確認した。

T-DXd関連ILD、日本人の胃がん・乳がん患者で死亡例に多い所見は?

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)に関連する間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は、治療継続や生命予後に関わる重要な有害事象である。そこで、愛知県がんセンター呼吸器内科の藤原 豊氏らは、日本人の乳がんおよび胃がん患者を対象とした市販後全例調査のデータを用いて、独立したILD判定委員会により判定されたT-DXd関連ILDの臨床的・画像的特徴を検討した。その結果、多くは軽度~中等度で副腎皮質ステロイドに反応した一方、びまん性肺胞傷害(DAD)パターンは死亡例に多くみられた。本研究結果は、The Oncologist誌オンライン版2026年9月7日号に掲載された。

卵巣がん患者の17.1%が診断後3年で心血管イベントを発症/Gynecol Oncol

 卵巣がん患者は、非がん患者と比較して心血管イベントリスクが増加していることが明らかになった。また、その傾向は若年患者(55歳未満)においてより顕著であった。  婦人科がん患者の間では心血管疾患(CVD)の負担が大きいとされる。治療の進歩により生存率が向上するにつれ、CVDの脅威は増大している。  卵巣がんとCVDの関係は十分に解明されていないものの、卵巣がんの両側卵巣摘出術(外科的閉経)は、エストロゲンの心臓保護効果の喪失を介してCVDリスクの上昇に関与しているとされる。

極端な暑さは数十種類の健康問題と関連

 極端な暑さによる健康への影響は、単なる脱水や熱中症にとどまらないようだ。米ノースウェスタン大学地球・環境・惑星科学准教授のDaniel Horton氏らによる研究で、極端な暑さへの曝露と関連する診断カテゴリーは、急性腎不全、多発性硬化症、カンナビノイド関連の精神・行動障害、昆虫による咬傷・刺傷、交通事故、銃器による外傷など33に上ることが示された。この研究の詳細は、8月26日付で「Science Advances」に掲載された。Horton氏は、「これまでの研究から、人は極端な暑さにさらされると攻撃的に振る舞いがちになることが示されている。今回の結果にも、そのことが関係している可能性がある。暑いと心身の双方にストレスがかかり、注意力が散漫になったりいら立ちが強まったりして、事故が増える可能性がある」とニュースリリースで述べている。

指先に貼るパッチがパーキンソン病患者の汗からレボドパ濃度を測定

 パーキンソン病患者に投与する薬剤の適切な量を見極めるのは容易ではない。パーキンソン病の標準治療薬であるレボドパは、用量が少な過ぎると患者が動けなくなる一方、多過ぎると重度の制御不能な不随意運動を引き起こす。こうした中、患者の汗を利用してレボドパ濃度を測定できる指先に貼るパッチが、この問題の解決に役立つ可能性があることを示した研究成果が報告された。このパッチは、電池なしで汗中のレボドパ濃度を測定できる。初期段階の試験では、同パッチで測定した汗中のレボドパ濃度は、標準的な血液検査で測定した血中レボドパ濃度と強く相関することが示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のTamoghna Saha氏らによるこの研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に7月27日掲載された。

喫煙者の多くはタバコが心臓や脳に及ぼすリスクを認識していない

 タバコのリスクに関する過去数十年にわたる啓発活動にもかかわらず、多くの喫煙者が喫煙や受動喫煙が心臓発作や脳卒中を引き起こすという事実をまだ十分認識していないことが、46カ国で行われた調査から明らかになった。ウォータールー大学(カナダ)と米疾病対策センター(CDC)タバコ規制プログラムの研究者による研究の結果であり、同大学のJanet Chung-Hall氏らによる論文が、「BMJ Open」に8月4日付で掲載された。  この研究では、2002~2022年の国際タバコ規制プロジェクト(ITC)と、2008~2020年の世界成人タバコ調査(GATS)のデータを用い、46カ国の18歳以上の喫煙者において、喫煙と受動喫煙が肺がんや心血管疾患(CVD)の原因になるという認識が、過去約20年間でどのように変化してきたかが解析された。

電子シーシャ、ニコチンの有無で人体への影響に違いは?

 フレーバー付きリキッドを加熱・エアロゾル化して吸引する電子シーシャは、近年若年層を中心に普及が進んでいる。ニコチンを含有しない製品も販売されているが、心血管系を含め人体への影響については未解明の点が多い。  米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMary Rezk-Hanna氏らの研究グループは、健康な若い習慣的シーシャ(水タバコ)喫煙者を対象に、ニコチン含有/非含有の電子シーシャの吸引前後での心血管疾患関連マーカーの変化を比較した。その結果、ニコチンの有無にかかわらず、電子シーシャ吸引後に炎症および凝固系マーカーである血漿フィブリノゲンレベルが有意に上昇したことが確認された。本研究結果は、Journal of the American Heart Association誌2026年8月4日号に掲載された。

双極症患者の自殺、年齢により手段が異なることが判明

 双極症における年齢層別の自殺手段については、これまで十分に検討されていなかった。台湾・台北市立聯合医院のMeng-Chiao Chou氏らは、双極症患者の自殺者と一般集団の自殺者を対象に、自殺手段の選択について比較を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2026年8月5日号の報告。  台湾の全国規模の医療データベースを用い、2003~23年に双極症と診断された4万7,488例を特定し、死亡記録と照合して自殺による死亡を確認した。自殺者のみを対象とするデザインを用い、双極症患者の自殺者と一般集団の自殺者との間で、自殺手段の分布を比較した。性別、死亡時年齢、都市化の程度、就業状況を調整変数として、年齢層別(30歳未満、30~49歳、50~64歳、65歳以上)の多変量ロジスティック回帰分析を実施した。

高リスクASCVDのLDL-C低下、インクリシランvs.ベムペド酸/ESC2026

最大耐用量のスタチン治療を受けてもLDL-C目標値に到達しない高リスクのアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者を対象に、ドイツ・Deutsches Herzzentrum der ChariteのIngo Hilgendorf氏らは、インクリシランとベムペド酸を直接比較する第IV相無作為化比較試験「VICTORION-Challenge試験」を実施した。その結果、インクリシランはベムペド酸よりLDL-C低下率および目標値達成率が有意に高かった。本結果は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表され、European heart journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。

MASHへのセマグルチド、日本人でも有効性示す/ESSENCE試験サブグループ解析

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)では、肝線維化の進展抑制や脂肪肝炎の改善を目指した薬物治療の確立が課題となっている。そこで、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏らは、第III相ESSENCE試験のサブグループ解析として、MASHを有する日本人参加者におけるセマグルチドの有効性と安全性を検討した。その結果、日本人集団において、セマグルチドは肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失などの達成割合をプラセボより高め、全体集団と方向性が一致した有効性と安全性を示した。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年8月28日号に掲載された。

11月まで要警戒!「蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針」改訂

人類の多くが不快に感じる蚊。刺されれば、かゆみや腫れに悩まされる身近な存在である。一方で、蚊はデング熱やチクングニア熱などの感染症を媒介することがあり、ときに人の健康を脅かす「危険な存在」でもある。蚊は15~20℃で活動を始め、25~30℃で最も活発に行動するといわれている。近年は、気候変動などに伴う地球温暖化や残暑の長期化の影響を受け、国内におけるヒトスジシマカなどの生息域や活動期間も拡大しつつある。さらに、訪日外国人の増加などを背景に、海外から持ち込まれた蚊媒介感染症が国内で広がるリスクにも注意が必要である。

日常診療での肥満判定、「BMI」より「腹囲」?

 体重の増加が健康に与える影響が心配な人は、ベルトの穴の位置を確認してみるとよいかもしれない。腹囲は、肥満に伴う健康リスクを把握するための極めて簡便で有用な指標の1つである可能性が、新たな研究で示された。米Rutgers-RWJBarnabas Center for Climate, Health, and HealthcareのAayush Visaria氏らによるこの研究の詳細は、8月7日付で「JAMA Network Open」に掲載された。  Visaria氏は、「ベルトを緩めたりズボンのサイズを大きくしたりする必要がないか、注意してほしい。

ひとり飯はうつ病のリスク因子か?

 世界的な高齢化の進行や子供の独立後に親のみが残る世帯(エンプティ・ネスト)の増加に伴い、高齢者が1人で食事をすること(孤食)が急増している。こうした食事様式の変化は、高齢者の健康管理において重要な課題となっている。中国・蘇州大学のYingying Zhang氏らは、地域在住高齢者を対象に、誰かと一緒に食事をすること(共食)と孤食における栄養摂取量およびうつ病リスクの違いを定量的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Nutrition誌2026年7月13日号の報告。

ピロリ菌感染、胆道がんや膵がんリスクとの関連は/愛知県がんセンターほか

胃がんの確立したリスク因子であるHelicobacter pylori(H. pylori)感染は、胆道がん(BTC)や膵がん(PC)にも関与する可能性が指摘されているが、これまでのエビデンスは一貫していない。また、生殖細胞系列病的バリアントがH. pylori感染と胃がんリスクとの関連を修飾する可能性がある一方、BTCやPCでの役割は明らかではない。そこで、愛知県がんセンター研究所の山本 清花氏らは、日本人集団を対象に、遺伝的感受性や生活習慣因子を考慮してH. pylori感染とBTCおよびPCリスクとの関連を検討した。その結果、BTCリスクとの有意な関連は認められなかったが、PCではH. pylori感染指標とリスクの関連が、発生部位によって異なる可能性が示された。本研究結果は、International Journal of Cancer誌オンライン版2026年7月14日号に掲載された。

腹部肥満とビタミンD欠乏の併存で中年期以降の死亡リスクが2倍以上に

 腹部脂肪が多くてビタミンDレベルが低い中高年者は、死亡リスクが最大で2倍以上高いことを示すデータが報告された。サンカルロス連邦大学(ブラジル)のTiago da Silva Alexandre氏らの研究の結果であり、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に5月6日付で論文が掲載され、7月29日に同国のサンパウロ州研究財団からリリースが発行された。  論文の上席著者であるAlexandre氏は、「腹部肥満はよく知られた健康上のリスク因子だ。またビタミンDはさまざまな臓器にホルモンとして作用しており、その欠乏により多くの身体機能が損なわれる。これら2つが併存すると互いに悪影響を増幅させ、死亡リスクをいっそう高める」と説明している。

専門家ワーキンググループが電子タバコを禁煙支援選択肢として推奨

 国際的な非営利団体であるニコチン・タバコ研究学会(SRNT)の専門家ワーキンググループ「Harm Reduction Workgroup」が、成人の禁煙支援に電子タバコを用いることに関する臨床上の推奨事項を発表した。電子タバコを米食品医薬品局(FDA)承認のニコチン代替療法やバレニクリン、ブプロピオンなどの薬物療法とともに、選択肢として提示すべきだとしている。米カンザス大学人口健康学分野のEleanor Leavens氏らがまとめたこの推奨事項は、7月30日付で「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に掲載された。

タダラフィル使用で緑内障リスク上昇の可能性

 勃起不全(ED)や下部尿路症状の治療に使われるタダラフィルが、緑内障リスクの上昇と関連する可能性を示した研究結果が報告された。下部尿路症状の治療にタダラフィルを使用している男性では、使用していない男性に比べて緑内障や高眼圧症を発症するリスクが高かったという。台湾大学病院のChien-Chih Chou氏らによるこの研究は、8月4日付で「British Journal of Ophthalmology」に掲載された。  タダラフィルは、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬に分類される薬剤で、肺動脈性肺高血圧症、ED、下部尿路症状の治療に用いられている。

地域活動への参加、オーラルフレイルリスク低下と関連――3万人超の縦断研究

 日本の地域在住高齢者約3万人を3年間追跡した研究で、地域活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連することが示された。さらに、その関連は社会経済的地位(SES)が低い高齢者でより強く認められ、社会参加がオーラルフレイルの健康格差の縮小と関連する可能性が示唆された。研究は、北海道大学大学院保健科学研究院地域看護学/公衆衛生看護学教室の富岡那奈子研究員、田高悦子教授らによるもので、詳細は7月24日付の「PLOS One」に掲載された。

胃がん前がん病変、サブタイプ別の進行率~メタ解析

胃の腸上皮化生(IM)および異形成は胃がんの前がん病変とされるが、サブタイプ別の有病率や胃がんへの進行リスクについては十分に整理されていない。そこで、米国・Weill Cornell Medical College of Cornell UniversityのYende Grell氏らは、IMおよび異形成のサブタイプ別の有病率や胃がんへの進行リスクを、世界的なデータを用いてシステマティックレビューおよびメタ解析で検討した。その結果、不完全型IMおよび高異型度異形成(HGD)では、対応するほかのサブタイプと比べて胃がんへの進行率が高かった。本研究結果は、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2026年9月1日号に掲載された。

骨盤リンパ節郭清のAI支援、医師の認識能を向上/国立がん研究センター、Jmees

 骨盤リンパ節郭清においてAIによる支援は外科医の重要な解剖学的構造の認識を向上させることがわかった。  骨盤リンパ節郭清は、大腸がんや子宮頸がん、前立腺がん、膀胱がんなどの手術において、がんのリンパ節転移の確認とともに、転移のあるリンパ節を切除し再発を防ぐ重要な手術手技である。しかし、骨盤内には血管、神経、尿管などの重要な臓器および組織が存在しており、これらを損傷すると重大な合併症につながる可能性がある。そのため、手術には高度な解剖学的知識と技術が求められる。