全国の薬学生が「20年後の医療」を議論

提供元:ケアネット

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公開日:2016/04/04

 

 昨年厚生労働省より発表された20年後を見据えた保健医療政策ビジョン「保健医療2035」。この提言を受けて、一般社団法人日本薬学生連盟(会長:慶應義塾大学薬学部4年 飯塚 千亜希氏)は3月20日にパネルディスカッション「薬学2035」を同団体の年会(会場:星薬科大学)にて開催した。

 保健医療2035策定懇談会メンバーである厚生労働省 大臣官房総務課企画官の岡本 利久氏をはじめ、星薬科大学 実務教育研究部門講師の鳥越 一宏氏、国際薬学生連盟 アジア太平洋支部長のJanet Mirzaei氏(オーストラリア)および6年制課程と4年制課程の薬学生代表らがパネリストとして登壇し、全国から160人の薬学生が参加した。

 ディスカッションに先立ち、岡本氏より「保健医療2035」策定の経緯や基本理念が概説された。とくに薬学と関連する点として、本提言発表後に厚生労働省より示された「患者のための薬局のビジョン」における「健康サポート機能」、「かかりつけ機能」、「高度薬学管理機能」などの役割や、本提言記載の「レギュラトリーサイエンスイニシアチブ」を挙げ、医薬品開発の国際規制の調和を推進することで、良い薬を必要な人がより早く利用できるように薬学部出身者が貢献していくことに期待を寄せた。

 これに対し、Mirzaei氏は、高齢社会においては、多職種連携がカギであり、学生のうちから積極的に協働すべきであると述べた。また、オーストラリアでは、地域の健康促進において薬剤師が活躍していることに触れ、「予防医療や疾病スクリーニングの分野に薬剤師をもっと活用していくことで、低コストで健康を確保できる。同提言の内容を実行していくための具体的な計画が、政府や職能団体により作成される必要がある」と訴えた。

 登壇者らの意見を受けて、参加した薬学生らは、20年後に向けた抱負を語った。慶應義塾大学4年の秤谷 隼世氏は、「地域で面白い活動をしている人や他分野の人を巻き込んで、薬学研究者として慢性疾患の改善、健康長寿社会の実現に向けて取り組みたい」と述べ、東京薬科大学3年の北澤 裕矢氏は、「薬局が地域における健康相談のファーストアクセスポイントとして機能することで、薬剤師は住民が病気になる前から関わることができる。生活習慣の改善や受診勧奨など、同提言で重要視されている予防の分野でもっと役に立ち、地域全体を良くしていくためにモデルとなるような薬局をつくっていきたい」と語った。

 最後に、星薬科大学 学長の田中 隆治氏は、「世界に先駆けて高齢社会に推移している日本において、安全かつ安心、納得していただける医療を提供するためのこれからの薬局や薬剤師の在り方を考えていってほしい。また、レギュラトリーサイエンスの国際協調は難しい課題ではあるが、若い世代がブレークスルーしていき、日本や世界の人々のために活躍する人材へとなっていっていただきたい」と学生らを激励した。

(ケアネット 後町 陽子)

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