英語学習は○○が9割!【医療者のための英語学習法】

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公開日:2021/08/11

仕事で使う英語は日常会話よりも簡単!

英語学習でよくある勘違いの1つに「ビジネス英語は日常会話よりも難しい」という考え方があります。実際、日常会話を勉強して、その後で仕事で使う英語を学ぼうと考える方が多いですが、この考え方はむしろ“逆”です。仕事で使う英語のほうが日常会話よりも英語学習の入り口としては適しているケースが多く、これは医療者の方にも当てはまります。現在仕事で英語の必要性がある方は、これを「チャンス」と捉え、ぜひ主体的に学習を始めてください。

実は攻略しやすい医療英語

「仕事の英語が日常会話より簡単」な理由は、医療者が必要とする英語は、ある程度範囲が決まっており、専門ごとに使う医療用語も限られるためです。英語を話す場面もある程度決まっていて、海外学会での発表や外国人の患者への診療などでしょう。診療で使う表現は何度も繰り返して使うため、定型(フレーズ)化しやすいといえます。そして繰り返すことによってそのやりとりが身に染み付いていくのです。

また、第二言語習得には「Narrow Reading」の効果が高いといわれています。Narrow Readingとは、テーマの範囲を絞ってリーディング学習を進めることで、同じトピックについてさまざまな文章や記事を読むことを指します。この学習方法は語彙的にも負担が少ないので、理解度向上に寄与するのです。

医療者の方も自身の専門分野の英語の論文を読むのであれば、一般的な英語のニュース記事を読むよりもラクに感じることでしょう。自分が関わる仕事の内容は十分な背景知識があるため、すべての単語の意味がわからなくても大体どういうことが書いてあるか予想がつくためです。一方で一般のニュース記事はトピックが広範囲にわたり、背景知識がないトピックは難易度が上がります。

つまり、仕事上で英語が必要な医療者の方は、英語学習を始めるよいきっかけと、実践するよい機会をすでに持っているわけです。

忙しさをチャンスに変える!

しかし、必要性があっても、忙しさを理由に英語学習に十分な時間を費やすことができていない方が多いのではないでしょうか。時間ができたらやろう、と思ったまますでに数年…、という話もよく聞きます。

英語学習には2つの選択肢があります。

  • 1.忙しいからやらない
  • 2.忙しいけどヤル

誤解を恐れずに極論すると上記2つに集約されます。

「時間ができたら学習する」という方は多いですが、「今後1年間は十分な時間を確保できます」という人はまずいません。また、今は時間がとれると思っていても、その後環境が変わって忙しくなることもあるでしょう。

私はビジネスパーソン向けの英会話スクールを19年にわたって運営していますが、感覚的には「英語学習の時間が十分とれる」と思える方は全体の10~30%程度です。さらに言うと、こうした「時間がとれる」という方がきっちり学習するわけでもなく、時間がとれる方は「いつでもできる」と先延ばしにしがちで、結局やらないケースも多いのです(夏休みの宿題を7月中に終えられる人は別でしょうが)。

ソニーの元副社長でウォークマンの開発者でもあった大曽根 幸三氏は、「急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め!」という名言を残しています。大曽根氏いわく「暇なやつに仕事を頼んでも後回しにして一向に仕事が終わらない」のだそうです。逆に忙しいビジネスパーソンはスピーディに終わらせる傾向がある、とのこと。

英語学習にも同じ傾向があって、忙しい人のほうが限られたスケジュールをやりくりして学習時間をねじ込んできます。「この時間を逃したら他に学習時間はまったくとれない」という危機感から確実に学習する人が多いのです。そもそも「暇だったので英語の勉強をして話せるようになりました~!」という話を、私自身聞いたことがありません。極端なケースを除けば、忙しさは英語学習ができない理由にはならないでしょう。

私はこれまでに延べ1,000名以上のさまざまな立場にあるビジネスパーソンの英語学習を指導してきましたが、どう考えても時間のある新卒一年目の方が「忙しくて時間がとれない」と言う一方で、家事と2人の子育てをしながら大学の准教授としてフルタイムで働く女性が1日3時間の英語学習を何ヵ月もこなし続けるのを見て、時間のあるなしは言い訳にならない、と改めて思いました。

英語学習はスケジューリングが9割

とはいえ、医療者は自分でのスケジューリングに限界があることも多いでしょう。忙しさを前提とした英語学習はどうすればよいのでしょうか?

私の考えでは英語学習は「スケジューリングが9割」です。いかに実践可能で現実的な英語学習を計画できるかがポイントです。故に「1日1時間の学習をする」という程度の甘い計画ではダメです。英語学習にはトリガー(きっかけ)が必要なのです。トリガーとは、たとえば下記のようなものです。

  • ○時になったら学習をする
  • 通勤電車に乗ったら必ず学習をする
  • ランチ休憩中に○○分学習をする

このように具体的な時間や条件をきっかけに英語学習を開始するようにすると実現性が高くなります。そして、とにかく学習時間を自分のスケジュールに確実に組み込みさえすれば、後はそのスケジュールをこなすだけです。時間の経過とともに英語力は着実に上がり、1、2年もすれば相当レベルが上がっているはずです。実現可能な学習スケジュールを立てることさえできれば9割は成功したようなものなのです。

計画を立てる際はリアルなスケジュールを基に作成してください。希望的感覚に基づいたスケジューリングはすぐに瓦解します。自分の過去の学習経験から「どれくらい集中力が続くのか?」「自宅のリビングで家族がいる中で本当に学習できるのか?」「学習中にSNSは本当に見ないのか?」なども加味して、リアルに実践できる計画を立てましょう。

とくに医療者の皆さんは当直や夜勤、急患や急変などの対応もありますので、そういったイレギュラーなスケジュールも想定しておきましょう。また、自分や家族が体調を崩す可能性を考慮したり、医療の勉強時間を確保したりすることも必要でしょう。

イレギュラーな事態は、英語学習ができなかったときに非常に役に立つ言い訳になってしまいます。他人からも「それじゃ仕方ないね」と言ってもらえるかもしれません。しかし、それでは誰も幸せになりません。だからイレギュラーなハプニングが起こったときにどうするかの「プランB」までを計画に組み込む必要があります。医療者は一般の方よりも不規則なライフスタイルの方が多く、この問題を解決できずに、英語学習を頓挫した経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

「隙間時間」と「ながら学習」を多用する!

まとまった時間がとりにくい、あるいはスケジュールが変動しやすい医療者の場合、「隙間時間」と「ながら学習」をすることで学習時間を補うようにしましょう。隙間時間の学習は意外と効率がよいのです。たとえば単語を暗記する場合、1時間集中してやるよりも、15分ずつ4回に分けて覚えたほうが定着率はよくなります。一説には、「単語は最低12回出合わないと覚えない」といわれていますので、単語を覚えるためには何度も覚えて忘れて、また出合って覚えて…、ということを繰り返します。だから隙間時間で単語と出合う数を増やすことが効果的なのです。これは一度にたくさん学ぶよりも、時間をかけて何度かに分けて学んだほうが、学習効率は上がることを提唱した「エビングハウスの忘却曲線」理論とも適合します。

また、英語のリスニング学習は「ながら学習」に向いています。移動時間などを利用してリスニングをし、かつシャドウイングまですればスピーキング力の向上にも直結します。

こういった学習計画・スケジュールをこなせたら1年後には飛躍的に英語力が向上します。そのための周到な学習計画をつくることで、英語学習成功の確率は一気に上がります。英語はしっかり取り組めば、日本にいながらでも働きながらでも必ず身に付きますので、ぜひ頑張ってください!

※筆者がディレクターを務める、医療従事者向け英語学習プログラム「Medical English Hub(めどはぶ)」では現在2021年9月から始まる1期生を募集しています(8月末締め切り予定)。

https://www.oneup.jp/medhub/learning-program/

<執筆者>

海渡 寛記 ( かいと ひろき ) 氏ワンナップ英会話代表取締役

[略歴]

医療英語学習プログラム「Medical English Hub(めどはぶ)」ディレクター、ラジオパーソナリティ(レインボータウンFM「Go around the world!」)。
海外留学・駐在経験なしで仕事をしながらTOEIC985点を取得。著書に、『場面別・職種別 ビジネス英語フレーズ3200』『新社会人の英語』(ともにクロスメディア・ランゲージ)がある。