2014年以降、米国では薬物中毒と自殺による死亡率の上昇に伴い、平均寿命が低下した。米国・ハーバード大学のYuji Mizushima氏らは、米国における近年の大幅な最低賃金の引き上げが、これらの結果に影響を及ぼしたかどうかを評価した。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2026年5月4日号の報告。
2010〜19年のNational Vital Statistics System(NVSS)の死亡データを用いて、25歳以上を対象に、州ごとの最低賃金引き上げの導入状況と教育水準(大学卒以上とそれ以外)による影響の違いを考慮した3重差分分析を行った。最低賃金引き上げの導入状況のばらつきと介入の異質性に対処するため、2段階補完推定法を用いた。中毒、薬物過剰摂取、オピオイド関連過剰摂取、自殺による人口当たりの死亡率を分析した。
主な内容は以下のとおり。
・最低賃金引き上げを行った州は26州(ワシントンD.C.を含む)、25州は行っていなかった。
・治療前のプラセボ効果推定値からは、結果を混乱させるようなシステマティックな既存傾向を示すエビデンスは、ほとんど認められなかった。
・最低賃金引き上げによる治療後の平均死亡率への影響はおおむね小さかった。中毒死は-0.9%(95%信頼区間[CI]:-6.8〜5.0)、自殺は-1.0%(95%CI:-7.5〜5.5)、薬物過剰摂取は+0.5%(95%CI:-5.2〜6.2)、オピオイド関連過剰摂取は-2.8%(95%CI:-10.2〜4.6)であった。
・最低賃金引き上げ率が50%以上であった州に限定した場合でも、結論は同様であった。
著者らは「2010〜19年にかけて行われた最低賃金の引き上げは、絶望死に対してわずかな影響しか与えておらず、中期的に薬物過剰摂取や自殺による死亡率を大幅に減少させる可能性は低いと考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)