敗血症診療規則の導入で死亡低減/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/29

 

 米国ニューヨーク州の病院は、プロトコール化された敗血症診療(Rory's Regulations)の実施が義務付けられている。米国・ピッツバーグ大学のJeremy M. Kahn氏らは、この診療規則の有効性に関する調査を行い、導入以降ニューヨーク州は、非導入の他州に比べ敗血症による死亡が減少していることを示した。研究の詳細は、JAMA誌2019年7月16日号に掲載された。2013年以降、ニューヨーク州の病院は、敗血症管理においてエビデンスに基づくプロトコールの実施とともに、プロトコール順守や臨床アウトカムに関する情報の州政府への報告が義務付けられている。

敗血症診療規則導入前後で敗血症入院例のアウトカムを比較
 研究グループは、ニューヨーク州の敗血症診療規則と、敗血症による入院患者のアウトカムの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成による)。

 解析には2011年1月1日~2015年9月30日の、ニューヨーク州と規則非導入の対照4州(フロリダ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州)の成人敗血症入院患者の退院時のデータを用いた。規則導入前後で複数回測定された時系列データを比較解析した。

 2013年のニューヨーク州の敗血症診療規則の導入前(2011年1月1日~2013年3月31日)と導入後(2013年4月1日~2015年9月30日)の敗血症による入院について評価を行った。

 主要評価項目は、30日院内死亡率とした。副次評価項目は、集中治療室入室率、中心静脈カテーテル使用率、Clostridium difficile感染率、入院期間であった。

敗血症診療規則の導入で入院期間が有意に短縮
 最終解析には509施設に入院した敗血症患者101万2,410例が含まれた。平均年齢は69.5(SD 16.4)歳、女性が47.9%であった。敗血症診療規則導入前の入院患者数は、ニューヨーク州が13万9,019例、対照4州は28万9,225例であり、導入後はそれぞれ18万6,767例および39万7,399例であった。

 補正前30日院内死亡率は、敗血症診療規則導入前がニューヨーク州26.3%、対照4州22.0%で、導入後はそれぞれ22.0%および19.1%であった。患者および病院の背景因子と、導入前の一時的な傾向や季節性で補正すると、導入後の30日院内死亡率はニューヨーク州が対照4州に比べ有意に低下した(導入前後で複数回測定された時系列データの比較値の同時検定のp=0.02)。

 たとえば、敗血症診療規則導入後の第10(最終)四半期(2015年7月~9月)の補正後絶対死亡率は、対照4州と比較したニューヨーク州の予測値よりも3.2%(95%信頼区間[CI]:1.0~5.4)有意に低かった(p=0.004)。

 敗血症診療規則導入により、両群間で集中治療室入室率の有意な差は認めなかったが(同時検定のp=0.09)(第10四半期の補正後の両群差:2.8%、95%CI:-1.7~7.2、p=0.22)、ニューヨーク州は対照4州に比べ、入院期間が有意に短縮し(p=0.04)(0.50日、-0.47~1.47、p=0.31)、Clostridium difficile感染率(p<0.001)(-1.8%、-2.6~-1.0%、p<0.001)、中心静脈カテーテル使用率(p=0.02)(4.8%、2.3~7.4、p<0.001)は有意に増加した。

 著者は、「ベースラインの死亡率がニューヨーク州と対照4州で異なるため、これらの知見が、この研究には含まれない他州に一般化可能かどうかは不明である」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 吉田 敦( よしだ あつし ) 氏

東京女子医科大学 感染症科

J-CLEAR推薦コメンテーター