第一三共は2026年3月23日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)の添付文書改訂が行われ、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんの2次治療として使用が可能となったことを発表した。今回の改訂は、2025年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたDESTINY-Gastric04試験の結果に基づくもの。HER2陽性胃がん/胃食道胃接合部腺がんに対し、T-DXdはそれまでの標準2次治療であるラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX)療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長することが示された。これまでHER2陽性胃がんに対するT-DXdは3次治療以降で承認されていたが、より早期での使用が可能となる。
これを受け、日本胃癌学会のガイドライン委員会は3月24日付で速報を出した。
――以下の観点から、トラスツズマブ併用1次化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌/胃食道接合部癌における二次治療として、T-DXd療法を推奨する。
1)日本人を含むDESTINY-Gastric04試験において、RAM+PTX療法と比較してT-DXd療法が有意に長いOSおよびPFSが示されたこと。
2)DESTINY-Gastric04試験だけでなく、すでに国内ではT-DXd療法の使用経験が多く、安全性が確認されていること。――
同時に、胃がんに特徴的な「HER2陰性化」に言及し、再生検や再評価に関連する注意点を挙げている。
――・HER2陽性胃癌では抗HER2療法後にHER2発現が低下し、陽性から陰性へ転じること(HER2陰性化)が報告されており、HER2療法後の陽性率は概ね約3割から7割程度とされている。二次治療前にHER2 statusを確認しない場合には、HER2陰性化した症例における抗HER2療法による治療効果の減弱が危惧されるため、可能であれば一次治療の増悪時点で腫瘍検体を採取し、HER2を再評価したうえで治療選択を行うことが望ましい。
・再生検でHER2陰性または判定不能となった集団における二次治療としてのT-DXdの有効性は確立していないため、投与は慎重に考慮すべきである。
・ただし、原発巣がない場合には再検は侵襲を伴い、原発巣があっても検査に要する時間や病理体制の制約により治療導入が遅れる場合があるため、採取の難易度、病勢の切迫度、一次治療前のHER2所見等を総合して、再生検実施の適否を個別に判断することが求められる。
・再生検が困難な症例では、一次治療前のHER2所見、患者背景と病勢、三次治療でのT-DXd使用の可能性、ならびに間質性肺炎等のT-DXdの毒性リスクを踏まえ、T-DXd投与の適応を総合的に検討する。
・また、HER2は腫瘍内で発現のばらつき(腫瘍内不均一性)があり、採取部位や採取量によってHER2判定結果が異なる可能性がある。DG-04バイオマーカー解析における中央判定と施設判定の乖離、ならびに中央判定でHER2陰性となる症例が一定数認められた点は、こうした生物学的要因に加えて、検査手技や判定者の違いが判定結果に影響することも示唆しており、二次治療においてT-DXdの適応の決定に際して、再生検の位置づけや検査・判定の標準化は今後の重要な検討課題である。――
(ケアネット 杉崎 真名)