双極性障害とうつ病患者における不安症の有病率とその関連因子

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/01

 

 気分障害の患者では、不安症が併発すると、うつ症状の持続、QOL低下、自殺リスク上昇、抗うつ薬治療による気分の不安定化などの悪影響が認められる。しかし多くの場合、このことは臨床診断で認識されていない。東京医科大学の井上 猛氏らは、以前報告したJET-LMBP研究のデータを用いて、日本人気分障害患者における不安症の有病率とその関連因子を調査し、不安症の併発を確認するのに役立つ方法を検討した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年7月12日号の報告。

 双極性障害患者114例、うつ病患者334例を分析した。不安症の併発は、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いて確認した。人口統計学的および臨床的特徴は、日本語版自己記入式簡易抑うつ尺度日本語版(QIDS-SR-J)、SF-36、Child Abuse and Trauma Scale(CATS)を用いて評価した。不安症の併発に関連する因子は、年齢、性別、抑うつ症状の重症度で調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いて特定した(事後分析)。

 主な結果は以下のとおり。

・不安症の有病率は、うつ病患者(37.2%)よりも双極性障害患者(53.2%)のほうが有意に高かった。
・双極性障害患者の不安症併発に関連する因子は、以下のとおりであった。
 ●配偶者の不在
 ●対人関係の拒絶感受性
 ●CATSの性的虐待スコアの高さ
 ●SF-36の精神的サマリースコアの低さ
・うつ病患者の不安症併発に関連する因子は、以下のとおりであった。
 ●過眠症
 ●病的な罪悪感
 ●CATSのネグレクトスコアの高さ
 ●SF-36の身体的サマリースコアの低さ

 著者らは「日本人の気分障害患者では、不安症の併発頻度が高かった。双極性障害患者やうつ病患者の不安症の併発は、小児期の虐待、非定型うつ病の症状、QOLの低下などと関連しており、これらの因子は、不安症の併発を確認するうえで役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)