再発・難治性多発性骨髄腫に対するBCMAを標的としたCAR-T療法へのブリッジング療法として、二重特異性抗体であるトアルクエタマブの有用性を多施設後ろ向き解析で評価した結果、実行可能で安全かつ効果的であることが示唆された。米国・ウィスコンシン医科大学のBinod Dhakal氏らがBlood誌オンライン版2025年8月1日号で報告。
BCMAを標的としたシルタカブタゲン オートルユーセル(cilta-cel)とイデカブタゲン ビクルユーセル(ide-cel)は再発・難治性多発性骨髄腫に有効だが、製造に6~8週間かかることや、最大10%に病勢進行または死亡のリスクがあることから、効果的なブリッジング戦略が必要となる。その選択肢の1つであるトアルクエタマブについて評価するため、20施設(米国18施設、ドイツ2施設)において後ろ向き解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・トアルクエタマブを投与された134例中119例がCAR-T治療に進んだ(cilta-cel:98例、ide-cel:21例)。進まなかった理由は、病勢進行(7例)、製造失敗(6例)、患者の意思(2例)などであった。
・患者の年齢中央値は65歳、前治療歴は中央値で5ラインであった。高リスクの細胞遺伝学的所見は44%、髄外病変は41%に認められた。85%がCARTITUDE-1試験/KarMMa試験の適格基準を満たしていなかった。
・トアルクエタマブの投与日数中央値は23日間(82%が0.8mg/kg隔週投与)、奏効率は71%であった。毒性は管理可能であり、Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)はみられず、Grade3の免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が2%、Grade1~2のトアルクエタマブ特有の毒性(味覚70%、皮膚38%、爪17%、60%は消失)が認められた。
・CAR-T後の奏効率は88%(完全奏効54%)で、毒性はGrade3以上のCRSが2例、Grade3のICANSが1例、Grade3以上の感染症が5%に認められた。また、2例に顔面神経麻痺、1例に急性骨髄性白血病が発現した。
・トアルクエタマブは持続的な可溶性BCMA低下と14日目前後のCAR-T増殖のピークと関連した。
著者らは「トアルクエタマブによるブリッジングは安全であり、治療が困難な患者の大多数がBCMA標的CAR-T療法に進むことが可能」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)