日本語でわかる最新の海外医学論文|page:38

BRAF V600E変異mCRC、1次治療のエンコラフェニブ+セツキシマブが有用(BREAKWATER)

 前治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移大腸がん(mCRC)に対して、BRAF阻害薬・エンコラフェニブと抗EGFRモノクローナル抗体・セツキシマブの併用療法(EC療法)はBEACON試験の結果に基づき有用性が確認され、本邦でも承認されている。一方、BRAF V600E変異mCRCに対する1次化学療法の有効性は限定的であることが示されており、1次治療としてのEC療法の有用性を検証する、第III相BREAKWATER試験が計画・実施された。

日本における遺伝子パネル検査、悪性黒色腫の治療到達割合は6%

 悪性黒色腫(メラノーマ)は、アジア諸国では欧米に比べてまれな疾患であり、前向き臨床試験による検証が難しい状況がある。日本において、包括的がんゲノムプロファイリング検査(CGP)を使用して悪性黒色腫患者の遺伝子変異と転帰を解明することを目的とした後ろ向き研究が行われた。北海道大学の野口 卓郎氏らによる本研究の結果は、JCO Precision Oncology誌2025年1月9日号に掲載された。  研究者らは、標準治療が終了(完了見込みも含む)し、保険適用となるCGPを受けた悪性黒色腫患者のデータをがんゲノム情報管理センター(C-CAT)から得て、結果を分析した。

成人ADHDに対するさまざまな治療の有用性比較〜ネットワークメタ解析

 成人の注意欠如多動症(ADHD)に対する利用可能な介入のベネフィットとリスクの比較は、これまで十分に行われていなかった。英国・オックスフォード大学のEdoardo G. Ostinelli氏らは、これらの重要なギャップを解消し、将来のガイドライン作成に役立つ入手可能なエビデンスを包括的に統合するため、システマティックレビューおよびコンポーネントネットワークメタ解析(NMA)を実施した。The Lancet Psychiatry誌2025年1月号の報告。  2023年9月6日までに公表された、成人ADHDに対する薬理学的および非薬理学的介入を調査した発表済みおよび未発表のランダム化比較試験(RCT)を複数のデータベースより検索した。ADHDと診断された18歳以上の成人に対する症状改善を目的とした治療介入群と対照群またはその他の適格な積極的介入群を比較したRCTの集計データを含めた。薬理学的介入は、国際ガイドラインに従い最大計画投与量が適格であると判断された研究のみを対象とした。薬理学的介入は1週間以上、心理学的介入は4セッション以上、神経刺激的介入は適切とみなされる任意の期間であったRCTを分析に含めた。薬物療法、認知機能トレーニング、神経刺激単独療法のRCTについては、二重盲検RCTのみを対象に含めた。2人以上の研究者により、特定された研究を独立してスクリーニングし、適格なRCTよりデータを抽出した。主要アウトカムは、有効性(12週間に最も近い評価時点における自己評価および臨床医評価尺度によるADHDの中核症状の重症度変化)および受容性(すべての原因による治療中止)とした。介入を特定の治療要素に分解し、ペアワイズランダム効果およびコンポーネントNMAを使用して、標準化平均差(SMD)およびオッズ比(OR)を推定しました。研究および執筆には、成人ADHDの実体験を有する人が関与した。

血液検査でワクチン効果の持続期間が予測できる?

 幼少期に受けた予防接種が、麻疹(はしか)や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)から、われわれの身を守り続けている一方、インフルエンザワクチンは、毎年接種する必要がある。このように、あるワクチンが数十年にわたり抗体を産生するように免疫機能を誘導する一方で、他のワクチンは数カ月しか効果が持続しない理由については、免疫学の大きな謎とされてきた。米スタンフォード大学医学部の微生物学・免疫学教授で主任研究員のBali Pulendran氏らの最新の研究により、その理由の一端が解明され、ワクチン効果の持続期間を予測できる血液検査の可能性が示唆された。

骨髄線維症、移植後30日目の変異消失が予後に関連/NEJM

 骨髄線維症患者において、移植後30日目におけるドライバー遺伝子変異の消失は、その種類に関係なく再発および生存に良好な影響を及ぼすことを、ドイツ・ハンブルグ・ エッペンドルフ大学医療センターのNico Gagelmann氏らが明らかにした。同種造血幹細胞移植は骨髄線維症に対する唯一の治癒的治療法である。この疾患の病態生理学的特徴はドライバー遺伝子変異であるが、移植後の変異の消失の影響は不明であった。NEJM誌2025年1月9日号掲載の報告。  研究グループは、2000~23年にハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターにて初回移植を受けた原発性骨髄線維症または二次性骨髄線維症(真性多血症または本態性血小板血症に続発)の患者324例を対象に、移植前および移植後30日目、100日目、180日目にドライバー遺伝子変異をモニタリングし、変異の消失と再発および生存に及ぼす影響を検討した。

小児の急性単純性虫垂炎、抗菌薬は切除に非劣性示せず/Lancet

 小児の急性単純性虫垂炎に対する治療について、抗菌薬投与の虫垂切除術に対する非劣性は示されなかった。米国・Children's MercyのShawn D. St. Peter氏らが、カナダ、米国、フィンランド、スウェーデンおよびシンガポールの小児病院11施設で実施した無作為化非盲検並行群間比較試験の結果を報告した。合併症のない虫垂炎に対して、手術治療よりも非手術的治療を支持する文献が増加していることから、研究グループは抗菌薬投与の虫垂切除術に対する非劣性を検討する試験を行った。Lancet誌2025年1月18日号掲載の報告。

日本人の認知症予防に有効な緑茶やコーヒーの摂取量は

 緑茶やコーヒーには認知機能低下の予防効果があることが報告されているが、認知機能に対する長期的な影響は、よくわかっていない。慶應義塾大学の是木 明宏氏らは、中年期における緑茶やコーヒーの摂取が認知症予防に及ぼす影響を調査した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年1月8日号の報告。  JPHC佐久メンタルヘルスコホートには、1,155人(1995年時点の年齢:44〜66歳)の参加者が含まれた。参加者の緑茶およびコーヒーの摂取量は、1995年と2000年のアンケートにより評価した。認知機能レベルは、2014〜15年に神経心理学的評価を行った。有意な認知機能低下(マルチドメイン認知機能低下およびより重篤な状態と定義)を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。性別および年齢による層別化解析も行った。

65歳以上の全女性に骨粗鬆症スクリーニングを推奨――USPSTF

 米国予防医学専門委員会(USPSTF)は1月14日、65歳以上の全ての女性に対して、骨折予防のための骨粗鬆症スクリーニングを推奨するという内容のステートメントを発表した。また65歳未満であってもリスク因子のある女性は、やはりスクリーニングの対象とすべきとしている。一方、男性に対するスクリーニングに関しては、まだ十分なエビデンスがないとした。これらの推奨の詳細は、USPSTFのサイトに同日掲載された。  USPSTFのEsa Davis氏は、「骨粗鬆症患者に現れる最初の症状が骨折であることが非常に多い。このことが、その後の深刻な健康障害を引き起こしている」と、未診断の骨粗鬆症患者が少なくないという問題を指摘し、スクリーニング対象基準を明確にすることの意義を強調。また、「この基準の明確化によって、65歳以上の女性だけでなく、リスクが高い場合は65歳未満の女性も、骨折を来す前にスクリーニングを受けることで骨粗鬆症を早期に発見でき、女性の健康、自立、生活の質の維持につなげられる」と話している。

見直されるガバペンチンの転倒リスク、安全性に新知見

 ガバペンチンは、オピオイド系鎮痛薬の代替薬として慢性疼痛や神経痛の緩和に広く用いられているが、高齢者に投与した場合、転倒リスクを高めるという報告もある。このような背景から高齢者へのガバペンチンの処方には慎重になるべき、という意見もある。しかし、米ミシガン大学医学部内科のAlexander Chaitoff氏らの最新の研究で、この鎮痛薬が当初考えられていたよりも高齢者にとって安全である可能性が示唆された。  研究を主導したChaitoff氏は、「ガバペンチンは、軽度の転倒による医療機関への受診回数を減少させる傾向を示したが、重症度のより高い転倒関連事象(股関節骨折や入院など)リスクとの関連は確認されなかった」と述べている。同氏らの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に1月7日掲載された。

肥満症治療薬、減量効果が特に高いのはどれ?

 GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬などの肥満症治療薬のうち、肥満や過体重の人の減量に最も効果的なのはどれなのだろうか? マギル大学(カナダ)医学部教授のMark Eisenberg氏らにより「Annals of Internal Medicine」に1月7日掲載された新たな研究によると、その答えは、デュアルG(GIP〔グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド〕/GLP-1)受容体作動薬のチルゼパチド(商品名ゼップバウンド)、GLP-1受容体作動薬のセマグルチド(商品名ウゴービ)、および開発中のトリプルG(GLP1/GIP/グルカゴン)受容体作動薬のretatrutide(レタトルチド)であるようだ。これに対し、GLP-1受容体作動薬のリラグルチド(商品名サクセンダ)の減量効果は、これら3種類ほど高くないことも示された。

鳥インフルエンザによる死亡例、米国で初めて確認

 2024年12月、鳥インフルエンザにより入院していた米ルイジアナ州の住民が死亡した。米国初の鳥インフルエンザによる死亡例である。死亡した患者について同州の保健当局は、「65歳以上で基礎疾患があったと報告されている」と発表した。患者は、A型鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)に感染した野鳥や個人の庭で飼育されていた家禽との接触により感染したという。なお、同州で他にヒトへの感染例は確認されていない。  米疾病対策センター(CDC)は1月6日付の声明で、「ルイジアナ州での死亡者について入手可能な情報を慎重に精査したが、一般市民に対するリスクは依然として低いとの評価に変わりはない。最も重要なのは、ヒトからヒトへの感染は確認されていないということだ」と強調している。

高齢者救急、緩和ケア開始は入院率を改善するか/JAMA

 生命を脅かす重篤な疾患を呈し救急診療部(ED)を受診した高齢患者に対する、複数要素介入を取り入れた緩和ケア(Primary Palliative Care for Emergency Medicine:PRIM-ER)の開始は、入院率を改善せず、介入後の医療活用状況や短期死亡率にも影響を及ぼさないことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCorita R. Grudzen氏らが実施した「PRIM-ER試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年1月15日号に掲載された。

活動性クローン病に対する抗サイトカイン抗体ミリキズマブの有効性と安全性(解説:上村直実氏)

中等症~重症の活動期クローン病(CD)の寛解導入療法および寛解維持療法における抗IL-23p19抗体ミリキズマブ(商品名:オンボー)の有用性と安全性を、プラセボと実薬対照である抗IL-12/IL-23p40抗体ウステキヌマブ(同:ステラーラ)と同時に比較検討した結果、ミリキズマブが寛解導入および維持療法においてプラセボと比べて有意な優越性を示し、さらに、ウステキヌマブと同等の有用性を示したことが2024年11月のLancet誌に掲載された。わが国におけるクローン病に対する治療は、経腸栄養療法、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤、ステロイド、アザチオプリンなど従来の薬物療法が行われてきたが、難治例に対してインフリキシマブやアダリムマブなどTNFα阻害薬が使用されるケースが増えている。しかし、以上のような治療を適切に行っても、寛解導入できない症例や寛解を維持できなくて再燃する症例がいまだ多くみられるのが現状であるため、さらに新たな薬剤が次々と開発されている。

T-DXd、米国で化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)が、米国食品医薬品局(FDA)より、1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)またはHER2超低発現(膜染色を認めるIHC 0)の転移/再発乳がんに承認されたことを、2025年1月28日、第一三共が発表した。  本適応は2024年10月にFDAより承認申請が受理され、画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定および優先審査のもとで承認された。この承認は、2024年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移/再発乳がん患者を対象とした国際第III相試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもの。

抗インフル薬、非重症者で症状改善が早いのは?~メタ解析

 重症ではないインフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の効果を調査した結果、バロキサビルは高リスク患者の入院リスクを低減し、症状改善までの時間を短縮する可能性があったものの、その他の抗ウイルス薬は患者のアウトカムにほとんどまたはまったく影響を与えないか不確実な影響であったことを、中国・山東大学のYa Gao氏らが明らかにした。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年1月13日号掲載の報告。  インフルエンザは重大な転機に至ることがあり、高リスク者ではとくに抗ウイルス薬が処方されることが多い。しかし、重症でないインフルエンザの治療に最適な抗ウイルス薬は依然として不明である。そこで研究グループは、重症ではないインフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の有用性を評価するため、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った。

最初の3歩のビデオ撮影で働き盛りの転倒リスクを機械学習で推定/京都医療センターほか

 70歳までの就業が企業の努力義務となり、生涯現役時代が到来した。その一方で、職場での転倒による労働災害は最も多い労働災害であり、厚生労働省は2015年から「STOP!転倒災害プロジェクト」を展開している。しかし、休業4日以上の死傷者数は、令和3(2021)年度で転倒が最も多く(3.4万人)、平成29(2017)年度と比べ18.9%も増加している(労働者死傷病報告)。保健・医療・福祉分野においてさまざまな転倒リスクアセスメントトツール(AIを含めた)が開発されているが、元となるデータは診療録や看護記録であるため精度に限界があることが指摘されていた。

ブレクスピプラゾールは統合失調症患者の精神症状だけでなくQOLも改善

 統合失調症治療では、感情的、身体的、社会的、認知機能的な領域にわたる健康的な生活への関与と関連する因子の向上が重要である。カナダ・カルガリー大学のZahinoor Ismail氏らは、統合失調症患者の健康的な生活への関与に対するブレクスピプラゾールの短期的および長期的な影響を評価するため、臨床試験データの事後分析を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2025年1月3日号の報告。  成人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価した臨床試験のデータを分析した。臨床試験には、6週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験3件(1,385例)、52週間の非盲検延長試験2件(408例)を含めた。患者の生活への関与は、妥当性が証明されている陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の14のサブセットを用いて測定した(スコア範囲:最高14〜最低98)。平均スコアの変化および治療反応率(臨床的に重要な最小差異推定値5ポイント以上および10ポイント以上)を算出した。

加齢黄斑変性は関節リウマチの発症リスクを高める

 加齢黄斑変性(AMD)患者は関節リウマチ(RA)の発症リスクが高いとする、成均館大学校(韓国)のJe Moon Yoon氏らの研究結果が「Scientific Reports」に9月9日掲載された。  AMDは、加齢、遺伝、喫煙、食生活などのほかに、慢性炎症がリスク因子の一つと考えられている。また近年の研究では、AMDとパーキンソン病やアルツハイマー病リスクとの間に関連があり、慢性炎症や酸化ストレスがその関連の潜在的なメカニズムと想定されている。一方、RAは滑膜の炎症を特徴とする全身性疾患であることから、RAもAMDのリスクと関連している可能性がある。以上を背景としてYoon氏らは、韓国の国民健康保険データを用いて、AMDとRAリスクとの関連を検討した。

肝硬変と肝性脳症の併発患者で亜鉛低値見られる

 肝硬変と肝性脳症(HE)を併発している患者の多くにおいて、血清中の亜鉛が欠乏しているという研究結果が、「Journal of Family Medicine and Primary Care(JFMPC)」9月号に掲載された。  Rajendra Institute of Medical Sciences Ranchi(インド)のDivakar Kumar氏らは、HEを伴う肝硬変患者150人の血清亜鉛値を測定した。  その結果、HEを伴う肝硬変患者の過半数に亜鉛欠乏症が認められた。血清亜鉛低値とWest Haven CriteriaによるHEのグレードとの間に、統計学的に有意な関連が認められた。肝硬変の各クラス間で、血清亜鉛値にきわめて有意な差が見られた。死亡した患者では、平均血清亜鉛値が有意に低かった(35.56対48.36)。血清亜鉛値と血清アルブミン値との間に、強い正の相関が認められた(r=0.88)。

敗血症、thymosinα1は死亡率を改善するか/BMJ

 敗血症の成人患者の治療において、プラセボと比較して免疫調整薬thymosinα1は、28日以内の全死因死亡率を低下させず、90日全死因死亡率や集中治療室(ICU)内死亡率も改善しないが、60歳以上や糖尿病を有する患者では有益な効果をもたらす可能性があり、重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めないことが、中国・中山大学のJianfeng Wu氏らTESTS study collaborator groupが実施した「TESTS試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2025年1月15日号で報告された。  TESTS試験は、thymosinα1は敗血症患者の死亡率を低減するかの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2016年9月~2020年12月に中国の22施設で患者を登録した(Sun Yat-Sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成を受けた)。