トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、2020年9月にHER2陽性の切除不能進行・再発胃がん患者に対して承認された。日本のリアルワールド研究により、T-DXd治療効果を予測する複数の因子が明らかになった。名古屋大学の中西 香企氏らによる本研究成果は、ESMO Gastrointestinal Oncology誌2025年6月号に発表された。
EN-DEAVOR研究は、胃がん患者におけるT-DXdの有効性と安全性を評価する多施設共同後ろ向き観察研究として実施された。対象は20歳以上のHER2陽性(IHC3+またはFISH陽性)の胃・胃食道接合部腺がん患者307例で、2020年9月~2021年9月にT-DXdを3次治療以降に投与された。今回は実臨床無増悪生存期間(real-world PFS:rwPFS)と奏効率(ORR)の予測因子を解析した。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象となった307例のうち、75.6%が男性、69.1%が65歳以上であった。前治療でのトラスツズマブ投与期間の中央値は6.5ヵ月(範囲:0~81.5ヵ月)であった。
・多変量解析の結果、rwPFSの良好な予測因子として、以下が特定された。
●HER2 IHC3+(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86)
●腸型病変(HR:0.59、95%CI:0.43~0.79)
●改訂Glasgow予後スコア(mGPS:CRPとアルブミン値に基づく)0および1(HR:0.71、95%CI:0.53~0.95)
●前治療のトラスツズマブ投与期間延長(中央値以上)(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97)
・また、前治療でのトラスツズマブ投与期間延長は、ORRの良好な予測因子でもあった(オッズ比[OR]:2.02、95%CI:1.13~3.63)。
研究者らは、「トラスツズマブ治療から長期間の臨床的利益を得た患者は、T-DXdからも利益を得る可能性が高かった。同様にHER2 IHCスコア3+、腸型病変、良好なmGPSは、より長いrwPFSと関連していた。しかし、これらの因子を持たない、前治療でのトラスツズマブ投与期間が最短の群においても、rwPFS中央値3.4ヵ月の効果は認められており、T-DXd投与を控えるべきではないと考える。この結果は、HER2陽性胃がんにおけるT-DXdの治療選択において、効果予測因子を考慮した個別化医療の重要性を示唆している」とまとめている。
(ケアネット 杉崎 真名)