骨粗鬆症は、社会的認知も上がり、高齢者の診療では考慮しなければならない疾患となった。日本骨粗鬆症学会と日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団の3団体は2025年8月に『骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2025年版』(編集:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会)を10年ぶりに刊行した。
今回の改訂では「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」の作成方法を採用して作成され、新たにClinical Question(CQ)を設定してシステマティックレビューを行い、エビデンスの評価・統合をして推奨文が作成された。治療薬では新しい治療薬が追加されたほか、「治療アルゴリズム(初期治療選択)」が盛り込まれた。
本稿では、本ガイドラインの作成委員である萩野 浩氏(独立行政法人 労働者健康安全機構 山陰労災病院 院長)に改訂のポイントや骨粗鬆症予防の意義、今後の展望について聞いた。
骨粗鬆症診療を充実させるリエゾンサービス
——今回のガイドライン改訂でとくに読んでもらいたい点について
大きく3点ある。
1つ目は、新たにゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブの治療薬が加わったことである。また、従来の薬剤の評価も新しくなったので、確認してもらいたい。
2つ目は、骨折のリスクについてである。骨折の既往やその既往の部位や回数、骨折からの期間でリスクが異なる。このリスクをどのように評価するかが加わり、骨折のリスクに応じて薬剤を選択することが示された。とくに「骨折リスクが高い患者には、骨形成促進薬を最初に投与する」という項目が新しく追加された。
3つ目は、「治療のゴールが設定された点」である。骨粗鬆症の治療において、薬物療法をどの程度まで継続するのか、治療薬を変更するのか、そして、休薬するのかが新たに記載された。
——骨粗鬆症の予防について
骨粗鬆症の最終像としては大腿骨骨折や椎体骨折が起こり、寝たきりとなり生命予後に影響するリスクとなる。そのために、予防としては骨粗鬆症そのものを予防するとともに、骨粗鬆症の患者に骨折が起こることを予防すること、起きてしまった骨折箇所などが再度骨折することを予防する3つの予防が必要となる。
骨粗鬆症は、自覚症状や病状が少ない「沈黙の疾患」と呼ばれていて、「骨粗鬆症の検診」をきちんと実施しようということがガイドラインに記載されている。検診については、「健康日本21」の中で骨粗鬆症の検診率を15%(現在5%前後)まで引き上げようと目標が掲げられている。今後、そのためにガイドやマニュアルを整備し、検診を充実させて、早期発見・早期治療介入をしようという動きがある。
もう1つ今回のガイドラインでは、主な診療科である整形外科医へのつなぎとして骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)も明記された。これは骨粗鬆症に起因する骨折の治療と予防を含めて、看護師や理学療法士が骨粗鬆症の患者と医師の仲立ちをして、骨密度の検査や薬物療法を医師に依頼するサービスであり、より多くの医療者の目で骨粗鬆症の患者の診療を充実させようという狙いがある。
1年に1回投与の新治療薬も登場
——追加された新しい治療薬について
今回の改訂では「ゾレドロン酸」「アバロパラチド」「ロモソズマブ」の3つの治療薬が追加された。
ゾレドロン酸は点滴製剤で、1年に1回投与の骨吸収を抑える骨吸収抑制薬であり、経口での服用に問題のある患者やアドヒアランスに問題がある患者などにメリットとなる。
また、今回のガイドラインでは、「骨折リスクが非常に高い患者には、まず治療薬として骨形成促進薬を処方する」ということが明記され、新しい治療薬のアバロパラチドとロモソズマブは、この骨形成促進薬となる。この使い分けについては、まだ明確なコンセンサスがないので、今後臨床研究を積み上げていくこととなる。
そのほか既存薬のテリパラチドも「骨折リスクが非常に高い患者に使用すること」が示されている。その理由の1つとして何も治療していない患者のほうが、骨形成促進薬の治療効果が非常に高いというエビデンスがあり、国内外の専門家のコンセンサスも得られている。
——次回のガイドラインへの課題や今後の展望について
今回のガイドライン改訂は2015年版のガイドラインから10年を要した。その理由としては、Minds診療ガイドラインに準拠した作成に変更したために、論文などの評価や解析に時間を要したからである。次回の改訂ではもう少し早くできるようにしたいが、新しい骨粗鬆症治療薬の発売などの予定がないので作成時期は今後検討されることになる。
また、今回のガイドラインは上梓してから、治療のゴール設定や治療薬の選択の目安などの記載が医師・医療者から評価された一方で、治療薬の選択が「推奨する」や「提案する」になり、少しわかりにくいという声もあった。
そのほか、米国骨代謝学会と米国骨粗鬆症財団が2024年に発表した「初期治療の治療アルゴリズム」が盛り込まれたが、「治療の目安ができた」という評価がある一方で、わが国の保険適用と異なる点もあるので、この点は気を付ける必要がある。
主な改訂点と目次
【今回の主な改訂点】
・新たにCQを設定、システマティックレビューを行い、エビデンスの評価・統合をして推奨文を作成
・新しい骨粗鬆症治療薬として、ゾレドロン酸、アバロパラチド、ロモソズマブを追加
・「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」「グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023」「癌治療関連骨減少症(CTIBL)診療マニュアル」を反映
【目次】
第1章 骨粗鬆症の定義・疫学および成因
第2章 骨粗鬆症の診断とリスク評価
第3章 骨粗鬆症の予防
第4章 骨粗鬆症の管理および治療の基本方針
第5章 骨粗鬆症の薬物治療
第6章 続発性骨粗鬆症
第7章 骨粗鬆症管理の向上に向けた取組みとリエゾンサービス
資料/付表/QOL評価質問表/索引
(ケアネット 稲川 進)