日本語でわかる最新の海外医学論文|page:11

患者ナビゲーション導入でリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率がアップ

 患者に対する個別サポートが、大腸がんリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率を高めるのに役立つことが新たな研究で示唆された。免疫学的便潜血検査(FIT検査)によるスクリーニングで大腸がんリスクが判明した後に大腸内視鏡検査を受けた人の割合は、患者ナビゲーターが割り当てられた人の方が、単に検査結果を知らされただけの人よりも高かったという。米アリゾナ大学がんセンター人口科学副所長のGloria Coronado氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。  患者ナビゲーションとは、米国の複雑な医療制度の中で患者が円滑かつ適切に医療を受けられるように支援する制度のことであり、その役割を担う人は患者ナビゲーターと呼ばれる。米疾病対策センター(CDC)による地域予防サービスガイド(Guide to Community Preventive Services)では、患者ナビゲーションの導入が推奨されている。しかし、患者ナビゲーションが、大腸がんリスクを有する人における大腸内視鏡検査の受診率向上に寄与しているのかどうかは不明である。

スマートウォッチが運動療法を後押しして糖尿病コントロールを改善

 糖尿病患者にとってスマートウォッチが、運動療法のための力強いサポートツールとなり得ることを示すデータが報告された。英ランカスター大学のCeu Mateus氏らが、診断から間もない2型糖尿病患者を対象に行ったランダム化比較試験の結果であり、詳細は「BMJ Open」に3月26日掲載された。  この研究により、スマートウォッチを介して運動を奨励したり、患者が実際に行った運動についてフィードバックしたりすることで、運動療法を開始・継続しやすくなることが明らかになった。さらに、血糖値や血圧の管理も良好になる可能性が示唆された。Mateus氏は、「糖尿病の治療にとって重要な非薬物療法を継続できていない2型糖尿病患者が少なくないが、われわれの研究結果はスマートウォッチを用いることで、そのような臨床課題を改善できる可能性を示している」と述べている。

早期肺がん患者の術後の内臓脂肪量は手術方法に影響される

 肺がん患者では、呼吸機能の低下だけでなく、体重、筋肉量、内臓脂肪量など、いわゆる体組成の減少により予後が悪化することが複数の研究で報告されている。この度、肺がん患者に対する肺葉切除術よりも切除範囲がより小さい区域切除術後で、体組成の一つである内臓脂肪が良好に維持されるという研究結果が報告された。神奈川県立がんセンター呼吸器外科の伊坂哲哉氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に3月4日掲載された。  近年行われた2cm以下の末梢型早期肺がんに対する区域切除術と肺葉切除術を比較した大規模な臨床試験JCOG0802/ WJOG4607Lでは、区域切除術が肺葉切除術よりも全生存率(OS)を改善した。この試験では、肺がより温存された区域切除群において肺葉切除群よりも、肺がん以外の病気による死亡が少ない結果であったが、その機序については未だ解明されていない。肺がん患者の良好な予後のためには、内臓脂肪を含む体組成を維持することが重要と考えられるが、肺葉切除と区域切除後の体組成変化の違いについても未だ明らかになっていない。このような背景から、伊坂氏らは肺がん患者における肺葉切除と区域切除後の内臓脂肪の変化量を比較し、予後との関連を明らかにするために、単施設の後ろ向き研究を実施した。

新型コロナ後遺症としての勃起不全が調査で明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者では、回復後も長期にわたりその後遺症に悩まされるケースがある。その後遺症の中には男性における勃起不全(ED)も含まれるが、後遺症としてのEDの有病率とそれに関連する根本的要因が示唆されたという。横浜市立大学附属病院感染制御部の加藤英明氏らが行った研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月21日掲載された。  COVID-19感染後のEDは、急性期における炎症性サイトカインや低酸素症による血管内皮障害が原因で進行する。また、身体的・精神的なストレスもEDに影響する。ワクチン接種や早期治療は、この感染症の後遺症の発症率を低下させる可能性はあるが、EDの発症を防ぐための予防策については不明である。加藤氏らは、COVID-19感染後のEDの有病率とその根本的な要因を明らかにするために感染患者を対象とした症例対照研究を実施した。

術後二次治癒創の治癒期間、局所陰圧閉鎖療法vs.通常治療/Lancet

 糖尿病などの合併症があり、下肢の術後二次治癒創(SWHSI)を有する患者において、局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)が標準的な被覆材(ドレッシング)と比較して創傷治癒までの期間を短縮するという明らかなエビデンスは確認されなかった。英国・ヨーク大学のCatherine Arundel氏らが、国民保健サービス(NHS)の29施設で実施したプラグマティックな無作為化非盲検並行群間比較試験「SWHSI-2試験」の結果を報告した。SWHSIは治療管理およびコスト面で大きな課題を抱えており、有効性の比較を基にしたエビデンスがないにもかかわらず、治療法としてNPWTが用いられることが増えている。著者は、「本研究の結果は、SWHSIの治癒促進のためにNPWTを使用することを支持しないものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年4月15日号掲載の報告。

撤回論文がメタ解析やガイドラインに及ぼす影響/BMJ

 撤回された臨床試験論文は、エビデンスの統合、臨床診療ガイドライン、エビデンスに基づく臨床診療を含むエビデンスエコシステムに大きな影響を与えることを、中国・Second Military Medical UniversityのChang Xu氏らが、前方引用検索に基づく後ろ向きコホート研究「VITALITY Study I」の結果で示した。エビデンスに基づく医療において、信頼できる意思決定は、信頼できるエビデンスエコシステムの確立に依存し、エビデンスの生成と統合はこのようなエコシステムの確立に重要な要素である。過去10年間で問題のある研究や撤回された研究の数が増加しており、科学研究のデータや結論の信頼性に対し深刻な懸念が高まっている。著者は、「エビデンスを生成、統合および利用する者はこの問題に注意する必要があり、このような潜在的な汚染(contamination)を容易に特定し是正できる実現可能なアプローチが必要である」とまとめている。BMJ誌2025年4月23日号掲載報告。

アトピー性皮膚炎へのレブリキズマブ、5月1日から在宅自己注射が可能に/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎治療薬の抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース皮下注250mgオートインジェクター/同シリンジ)について、厚生労働省の告示を受け、2025年5月1日より在宅自己注射の対象薬剤となったことを発表した。  レブリキズマブは2024年5月に発売され、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に使用される皮下投与製剤。これまで、初回以降2週間隔(4週以降は患者の状態に応じて4週間隔も可能)で通院のうえ院内での皮下投与が必要であった。在宅自己注射の対象薬剤となったことに伴い、医師が妥当と判断した患者については、十分な説明およびトレーニングを受けたうえで在宅での自己注射が可能となる。

エサキセレノンは、高齢のコントロール不良高血圧患者にも有効(EXCITE-HTサブ解析)/日本循環器学会

 高血圧治療において、高齢者は食塩感受性の高さや低レニン活性などの特性から、一般的な降圧薬では血圧コントロールが難しいケースもある。『高血圧治療ガイドライン2019』では、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬が第一選択薬として推奨されているが、個々の患者に適した薬剤選択が重要である。このような背景のもと、自治医科大学の苅尾 七臣氏らの研究グループは、ARBまたはCa拮抗薬を投与されているコントロール不良の本態性高血圧患者を対象に、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のエサキセレノンと、サイアザイド系利尿薬であるトリクロルメチアジドとの降圧効果および安全性を比較する「EXCITE-HT試験」を実施した。

統合失調症患者の高プロラクチン血症改善にメトホルミンが有効〜メタ解析

 抗精神病薬治療は、高プロラクチン血症リスクと関連しており、月経障害、性機能障害、骨密度低下などにつながる可能性がある。ほぼすべての抗精神病薬は、プロラクチン値の上昇リスクを有しており、統合失調症患者の最大70%に影響を及ぼすと考えられる。台湾・台北医学大学のKah Kheng Goh氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者の高プロラクチン血症の軽減に対するメトホルミン治療の潜在的な役割を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2025年3月24日号の報告。

NSAIDsの長期使用で認知症リスク12%低下

 新たな研究によると、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用は認知症リスクを12%低下させる関連性が認められたが、短期および中期使用では保護効果は認められなかったという。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのIlse Vom Hofe氏らによる本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年3月4日号に掲載された。  研究者は、前向きの地域ベース研究であるロッテルダム研究から、ベースライン時に認知症のない1万1,745例を分析対象とした。NSAIDs使用データは薬局調剤記録から抽出され、参加者は非使用、短期使用(1ヵ月未満)、中期使用(1~24ヵ月)、長期使用(24ヵ月超)の4グループに分類され、定期的に認知症のスクリーニングを受けた。年齢、性別、生活習慣要因、合併症、併用薬などを調整因子として解析した。

黄斑部の厚さが術後せん妄リスクの評価に有効か

 「目は心の窓」と言われるが、目は術後せん妄リスクのある高齢患者を見つけるのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。網膜の中心部にある黄斑部が厚い高齢者は、術後せん妄の発症リスクが約60%高いことが示されたという。同済大学(中国)医学部教授のYuan Shen氏らによるこの研究の詳細は、「General Psychiatry」に4月1日掲載された。Shen氏は、「本研究結果は、黄斑部の厚みを非侵襲的なマーカーとして、麻酔および手術後にせん妄を発症しやすい高齢者を特定できる可能性があることを示唆している」と話している。

アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か

 インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。

帯状疱疹生ワクチン、認知症を予防か/JAMA

 米国・スタンフォード大学のMichael Pomirchy氏らは、オーストラリアにおける準実験的研究の結果、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種が認知症のリスクを低下させる可能性があることを示した。オーストラリアでは、全国的なワクチン接種プログラムにおいて2016年11月1日から70~79歳を対象に弱毒HZ生ワクチンの無料接種を開始。同時点で1936年11月2日以降に生まれた人(2016年11月1日時点で80歳未満)が対象で、それ以前に生まれた人(80歳になっていた人)は対象外であったことから、著者らは、年齢がわずかに異なるだけで健康状態や行動は類似していると想定される集団を比較する準実験的研究の利点を活用し、HZワクチン接種の適格基準日である1936年11月2日の前後に生まれた人について解析した。結果を踏まえて著者は、「先行研究であるウェールズでの知見を裏付ける結果であり、認知症に対するHZワクチン接種の潜在的利益には因果関係がある可能性が高いエビデンスを提供するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年4月23日号掲載の報告。

不眠症を伴ううつ病に対する抗うつ薬+睡眠薬併用療法の有効性と安全性〜メタ解析

 抗うつ薬と睡眠薬の併用は、不眠症を伴ううつ病に対し、有望な治療候補である。杏林大学の丸木 拓氏らは、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2025年3月20日号の報告。  対象は、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価した二重盲検ランダム化比較試験。2024年6月までに公表された研究を、PubMed、CENTRAL、Embaseより検索した。睡眠薬クラス(ベンゾジアゼピン、Z薬、メラトニン受容体作動薬)別に抗うつ薬単独療法と比較するため、メタ解析を実施した。

ハプロHSCTのGVHD予防、間葉系幹細胞の逐次注入の有用性/JCO

 半合致(ハプロ)造血幹細胞移植(HSCT)後3ヵ月の臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)逐次注入による移植片対宿主病(GVHD)予防効果および安全性を、中国・Xinqiao Hospital of Army Medical UniversityのHan Yao氏らが非盲検多施設無作為化比較試験で検討した。その結果、慢性GVHDと急性GVHDの発症率と重症度のどちらも有意に減少し、3年無GVHD・無再発生存率(GRFS)が改善することが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。

国内DOAC研究が色濃く反映!肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症ガイドライン改訂/日本循環器学会

 『2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症ガイドライン』が3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会の会期中に発刊され、本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において田村 雄一氏(国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授/国際医療福祉大学三田病院 肺高血圧症センター)が改訂点を解説した。本稿では肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症の項について触れる。  静脈血栓塞栓症(VTE)と肺高血圧症(PH)の治療には、直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用や急性期から慢性期疾患へ移行していくことに留意しながら患者評価を行う点が共通している。そのため、今回よりVTEの慢性期疾患への移行についての注意喚起のために、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」「肺高血圧症治療ガイドライン」「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3つが統合された。

人工甘味料スクラロースの摂取は空腹感を高める

 スプレンダのようなカロリーなしの人工甘味料の使用により食事のカロリーが増えることはないが、体重増加につながる可能性はあるようだ。新たな研究で、砂糖の代替品は食欲と空腹感を刺激し、食べ過ぎにつながる可能性のあることが明らかになった。米南カリフォルニア大学(USC)糖尿病・肥満研究センター所長のKathleen Page氏らによるこの研究結果は、「Nature Metabolism」に3月26日掲載された。  Page氏は、「スプレンダの主成分であるスクラロースは、摂取してもその甘さから予想されるカロリーを伴わないため脳を混乱させるようだ。体が、摂取した甘さに見合うカロリーを期待しているのにそれを得られない場合、時間の経過とともに、脳がそれらの物質を求める仕組みに変化が生じる可能性がある」とUSCのニュースリリースの中で述べている。

教育レベルの高い人は脳卒中後に認知機能が急激に低下する?

 英語には、「The higher you fly, the harder you fall(高く飛べば飛ぶほど、落下も激しくなる)」という諺があるが、脳卒中後の後遺症についてもこれが当てはまる可能性があるようだ。大学以上の教育を受けた人は高校卒業(以下、高卒)未満の人に比べて、脳卒中後に実行機能の急激な低下に直面する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。実行機能とは、目標を設定し、その達成に向けて計画を練り、問題に柔軟に対応しながら遂行する能力のことだ。米ミシガン大学医学部神経学教授のMellanie Springer氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に3月26日掲載された。

自宅でできる嗅覚テストが認知機能低下の検出に有効か

 認知症やアルツハイマー病の初期症状の有無を、自宅で実施可能な嗅覚テストにより判定できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。認知症やアルツハイマー病の前兆である軽度認知障害(MCI)を発症した高齢者は、認知機能が正常な人に比べてこの嗅覚テストのスコアが低いことが示されたという。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の神経科医であるMark Albers氏らによる研究で、詳細は「Scientific Reports」に3月24日掲載された。  Albers氏は、「われわれの目標は、自宅で実施できる費用対効果の高い非侵襲的な検査を開発して検証し、アルツハイマー病の研究と治療を前進させる基盤を築くことだった」とMGHのニュースリリースで述べた。同氏は、「認知障害の早期発見は、アルツハイマー病のリスクを有する人を特定し、記憶障害の症状が始まる何年も前に介入するのに役立つ可能性がある」と付け加えている。

ICU患者への生命維持装置の使用と転帰、2014~23年の動向/JAMA

 2014~23年の10年間に、米国の集中治療室(ICU)入室患者では院内死亡率とICU在室期間が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期に増加したが、その後はパンデミック前の水準に戻り、パンデミック前と比較して機械換気を受けるICU患者が減少したものの、昇圧薬の投与を要する患者は3倍に増加したことが、米国・ペンシルベニア大学のEmily E. Moin氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年4月14日号で報告された。  研究グループは、COVID-19のパンデミック前・中・後における米国の救命救急診療の疫学的状況を描出する目的で後ろ向きコホート研究を行った(筆頭著者[Moin氏]は米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。