抗精神病薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、それぞれ心室性不整脈または突然死のリスク増加と関連しているといわれている。両薬剤の併用は、リスクをさらに高める可能性があるものの、その臨床的エビデンスは限られている。国立台湾大学のHsiu-Ting Chien氏らは、抗精神病薬とSSRIが併用されている患者における心室性不整脈または突然死のリスクを評価するため、本研究を実施した。JAMA Network Open誌2026年4月1日号の報告。
本研究では、逐次ターゲット試験エミュレーション法を用いて、米国(2010~23年)および台湾(2010~21年)の医療保険データベースの保険請求データを分析した。過去1年間にSSRIを使用しておらず抗精神病薬治療を開始した成人を対象に、抗精神病薬投与開始後1~52週目のSSRI開始の有無を毎週評価した。その評価に基づき、SSRI投与開始群または非開始群に分類した。新規で抗精神病薬治療を開始した患者におけるSSRI投与開始後1年間の心室性不整脈または突然死のリスクを評価するため、52週にわたる試験をエミュレーションした。逆確率重み付けと時間変動共変量の調整を用いたプロトコール順守解析法を適用した。主要アウトカムは、心室性不整脈または突然死の発生とした。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は、ロバスト分散推定量を用いた加重プールロジスティック回帰モデルを用いて推定した。
主な結果は以下のとおり。
・米国コホートでは30万7,818例(被験者数:437万289例、平均年齢:46.6±18.8歳、女性:276万4,180例[61.2%])、台湾コホートでは19万1,080例(被験者数:215万639例、平均年齢:51.0±18.3歳、女性:118万4,464例[55.1%])が適格基準を満たした。
・調整済みコホートにおいて、SSRI投与を開始した患者は、米国では5万2,825例(17.2%)と台湾では2万5,203例(14.7%)であった。
・抗精神病薬とSSRIの併用と抗精神病薬単独投与を比較した場合の調整HRは、米国では1.51(95%CI:1.04~2.19)、台湾では3.32(95%CI:2.26~4.88)であった。
・高リスクなSSRIであるシタロプラムとエスシタロプラムの調整HRは、それぞれ2.20(95%CI:1.39~3.46)と2.84(95%CI:1.75~4.62)であった。
・感度分析では、主要結果のロバスト性が支持された。陽性対照および陰性対照分析では、残存交絡が限定的であることが示唆された。
著者らは「米国と台湾で抗精神病薬投与を開始した成人を対象としたこのコホート研究では、抗精神病薬使用者におけるSSRI投与開始は、心室性不整脈または突然死のリスク増加と関連していた。これらの事象はまれではあるものの、その重篤性を考慮すると、両薬剤の併用療法は慎重に検討する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)