日本語でわかる最新の海外医学論文|page:8

多くの患者はPHQの質問内容を正しく解釈できていない

 診察前に渡される質問票に記入しているとき、意味がよく分からず目がうつろになった経験はないだろうか。それは、あなただけではないようだ。症状に関する質問票に患者が混乱することは珍しくなく、それが身体的疾患や精神疾患の診断や治療の妨げになっている可能性のあることが、新たな研究で示された。米アリゾナ大学ツーソン校心理学分野のZachary Cohen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に12月17日掲載された。  この研究は、うつ病の重症度評価ツールとして広く用いられているPatient Health Questionnaire(PHQ)に焦点を当てたもの。PHQには、PHQ-2、PHQ-8、PHQ-9など質問項目の数に応じて複数のバージョンがある。しかし、最もよく用いられているPHQ-9でも、質問内容が患者にとって分かりにくい場合があると研究グループは指摘している。この研究では、PHQの質問が症状にどの程度、悩まされたかを尋ねる一方で、回答選択肢は症状の発生頻度に焦点を当てている点に着目し、参加者がこれらの質問と選択肢をどのように理解して反応したかが検討された。

宅配食で血糖コントロールが改善する

 糖尿病の管理に適した宅配食が、血糖コントロールの改善につながることを示した研究結果が報告された。米アーカンソー大学のEliza Short氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」12月号に掲載された。  この研究では、宅配食を12週間利用した糖尿病患者は、HbA1cが有意に低下した。一方で、食事の質が健康的か否かを表す指標(Healthy Eating Index-2015〔HEI-2015〕)には有意な変化が見られなかった。このことから研究者らは、糖尿病患者が普段、非健康的な食品を選択して食べているとは言えず、むしろ、食品を宅配することによって、健康的な食品を手軽に入手できるようになることが、血糖コントロール状態の違いを生んだのではないかと考えている。

パートナーとの親密な関係性は心疾患患者の回復を促す

 心臓は、特にバレンタインデーの時期になると「愛」と結び付けて語られることが多いが、実際、両者の関連は思っている以上に深いかもしれない。新たな研究で、愛するパートナーの支えは、心筋梗塞や心不全などの心疾患による緊急事態を経験した人の回復を大きく改善する可能性のあることが示された。オタワ心臓研究所(カナダ)のHeather Tulloch氏らによるこの研究結果は、「Canadian Journal of Cardiology」に12月15日掲載された。  この結果を踏まえ、研究グループは、心臓リハビリテーションプログラムには、患者の心臓の健康を支える役割を果たしてくれる親密なパートナーを含めるべきだと提言している。Tulloch氏は、「患者の健康行動やメンタルヘルス、さらに心血管アウトカムの改善を促すには、心臓の治療に加え、関係性を育むことが重要だ。それにより、回復中の患者の情緒的・社会的適応が強化され、最終的にはより良い健康行動につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。

親のうつ病の特定の症状は子どもの報酬処理に影響か

 親にうつ病があると、その子どももうつ病を発症しやすいことが知られているが、こうしたリスクは、うつ病のある特定の症状に関連している可能性のあることが、新たな研究で示唆された。物事を楽しめない、あるいは物事に興味を持てないといったタイプの親の症状は、周囲で起きていることに対する子どもの反応の仕方に影響を与え得ることが示されたという。米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(SUNY-BU)気分障害研究所のBrandon Gibb氏とElana Israel氏によるこの研究の詳細は、「Journal of Experimental Child Psychology」2026年2月号に掲載された。

HPVワクチンは1回接種で十分な有効性がある可能性(解説:前田裕斗氏)

本研究はコスタリカで12〜16歳の女子2万330人を対象とし、2価および9価HPVワクチンの1回接種が2回接種に対して非劣性かを検証した二重盲検RCTである。5年間の追跡の結果、2価・9価ワクチンいずれにおいても1回接種は2回接種に対して非劣性であり、HPV16/18型に対するワクチン有効率は全群で97%以上であった。この結果は試験開始後0、6ヵ月目の検査両方でHPV陰性であった人のみを新規感染の評価対象とした場合である。試験に組み入れられた女子のうち約13.2%が登録時点ですでに性的活動を開始していたと報告されており、これらの女子を含めた解析でもすべての群で92%以上の有効性を示していた。日本において本研究結果を適用するためには、当然まず日本人における短期間の有効性について検討が必要である。一方で日本は勧奨接種が中止されていた時期があったこともあり接種率が依然低いことから、1回接種により免疫が十分つく可能性が示唆されたのは大変心強い結果といえるだろう。

肥満症の治療にアミリン受容体作動薬は登場するか?(解説:小川大輔氏)

肥満症の治療において最も基本となるものが食事療法と運動療法であるが、これらに取り組んでも効果が不十分な場合は薬物療法が検討される。GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として開発されたが、体重減少効果もあるため近年は肥満症治療薬としても承認されている。GIPやGLP-1以外にも肥満症の新しい治療標的が探索されているが、その1つがアミリン(amylin、別名:IAPP)と呼ばれるホルモンである。アミリンは、インスリンと共に膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、胃の動きを遅らせて糖の吸収を穏やかにする、あるいはグルカゴン分泌を抑制するなど、血糖値の調節に関わることが知られている。また脳に作用して満腹感を高める作用もあり、食欲抑制に重要な役割を果たしていると考えられている。アミリンの働きを模倣するアミリンアナログが糖尿病や肥満症の治療薬として開発され、米国ではすでにpramlintideが糖尿病の治療薬として承認されているが、作用時間が短く1日3回の注射製剤のため使用は限定的である。

抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化には反対/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、1月7日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏の年頭あいさつのほか、抗インフルエンザ薬のスイッチOTC化に関するパブリックコメントへの意見、赤ひげ大賞の受賞者発表などが行われた。  松本氏は年頭のあいさつとして干支の「午」に触れ、自身が年男であることから「地域医療を守るという強い決意のもと、情熱的でかつエネルギッシュな1年としたい」と語った。また、箱根駅伝の青山学院大学の連覇を例に「選手への指導体制や人材育成、サポートなどが連覇に大切であり、これは医療にもつながる」と述べた。

抗コリン薬負荷と認知症リスクの評価に有用な予測ツールを検証

 抗コリン薬の使用は、認知機能低下などの副作用と関連している。英国・リバプール大学のInnocent Gerald Asiimwe氏らは、ベースライン時の抗コリン薬の投与量と認知症リスクとの関連性を調査し、抗コリン薬投与指数(ACMI)の外部検証を行った。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。 2つの大規模前向きコホートであるUKバイオバンク(UKB、研究期間:2000〜15年、参加者:12万5,260例)および米国All of Us(AoU、研究期間:2000〜22年、参加者:9万2,047例)のデータを分析した。臨床的および遺伝的共変量を調整し、死亡を競合リスクとしてCox比例ハザードモデルを用いて、ACMIで算出されたベースライン時の年間抗コリン薬投与量と認知症リスクとの関連性を評価した。

歯のエナメル質を修復・再生するバイオジェルを開発

 歯科治療は近い将来、より楽で痛みの少ないものになるかもしれない。歯を守る硬い表層であるエナメル質を修復・再生できる革新的なジェルの開発に関する研究結果が報告された。エナメル質は、いったん失われると自然には再生しないため、この新素材は、歯の長期的な保護や損傷時の修復方法を大きく変える可能性を秘めている。米国では、歯のエナメル質を強化するミネラルであるフッ化物(フッ素)の経口摂取が議論を呼んでいることから、この研究成果は注目を集めている。英ノッティンガム大学のAbshar Hasan氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月4日掲載された。

HPVワクチン、導入からの17年間で集団レベルでの高い有効性と集団免疫を確認

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが初めて導入された2006年から17年が経過した2023年までの調査を解析した結果、性交渉の経験がある若年女性においても、1回でも接種していれば、集団レベルでの高い有効性と明確な集団免疫が認められることが、「JAMA Pediatrics」に9月29日掲載された研究で明らかにされた。  米シンシナティ小児病院医療センターのAislinn DeSieghardt氏らは、2006年から2023年までに実施された6回の横断的な調査のデータを用いて、性交渉経験のある13〜26歳の若年女性2,335人(平均年齢18.9歳)を対象に、ワクチンの有効性および集団免疫について評価した。これら6回の調査は、2006〜2007年、2009〜2010年、2013〜2014年、2016〜2017年、2018〜2021年、および2021〜2023年に実施された。16および/または18型の感染を2価ワクチンのタイプの感染、6・11・16・18型のうち1種類以上の感染を4価ワクチンのタイプの感染、6・11・16・18・31・33・45・52・58型の1種類以上の感染を9価ワクチンのタイプの感染とそれぞれ見なし、接種者(1回以上接種)を未接種者と比較することでワクチンの有効性と集団免疫を評価した。各調査回の参加者の背景の違いは、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いて調整した。

インターネットは高齢介護者の孤独感の緩和に役立つ

 高齢者における孤独感の問題は、世界的な課題として浮上しつつある。特に、家族などの介護をしている人は、介護という責任重大な仕事の性質上、孤独感がいっそう強まりやすい傾向がある。こうした人の孤独感は、インターネットの使用により緩和され得ることが、新たな研究から明らかになった。インターネットを通じて他者や社会とのつながりを保つことは、高齢介護者の孤独感やそれが健康に及ぼす悪影響の軽減に役立つ可能性が示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)ローリー・マイヤーズ看護学部のXiang Qi氏らによるこの研究結果は、「JMIR Aging」に11月27日掲載された。 本研究の背景情報によると、高齢介護者の約15%が孤独を感じており、認知症患者の介護者は、他の介護者に比べて孤独感を経験する可能性が1.62倍高いという。

拡張型心筋症患者に対する早期心リハの有用性、傾向スコアマッチングを用いた全国規模解析

 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は、心臓の筋肉が弱まり、心臓が拡張して十分に血液を送り出せなくなる病気で、心不全の主要な原因の一つとされる。このDCM患者に対し、入院早期から心臓リハビリテーション(心リハ)を開始すると、90日死亡率が有意に低下することが、日本の全国入院データベースを用いた研究で明らかになった。解析では、早期に心リハを始めた患者群では早期から心リハを受けなかった群と比べて90日以内の死亡リスクが低く、退院時の日常生活動作(ADL)もやや高値であったという。研究は大阪大学/奈良県立医科大学の安福祐一氏らによるもので、詳細は10月24日付で「Scientific Reports」に掲載された。 DCMは、心筋の収縮低下と左室拡張を特徴とし、一部の患者は慢性心不全や急性増悪を繰り返す進行性心筋疾患である。

新しい糖尿病治療薬、高コストも合併症リスクは従来薬と変わらず

 2型糖尿病の治療では、血糖コントロールと合併症予防のために経口薬が用いられる。比較的新しく登場したSGLT2阻害薬は近年広く使われるようになったが、最新の日本の大規模データを用いた研究で、初期治療においてSGLT2阻害薬は従来のビグアナイド系薬剤(メトホルミン塩酸塩やブホルミン塩酸塩)と比べて、心血管イベントや糖尿病合併症の抑制効果に明確な差がないことが示された。一方で、薬剤費は約50%高く、臨床現場での薬剤選択や医療費の観点から重要な知見となる。研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は11月6日付で「PLOS One」に掲載された。

高リスク頭頸部がん、術後化学放射線療法へのニボルマブ追加でDFS改善/Lancet

 切除後の再発高リスク局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-SCCHN)に対し、術後シスプラチン+放射線療法にニボルマブを追加することにより、中等度の毒性が増加するものの無病生存期間(DFS)が有意に改善された。スイス・ローザンヌ大学のJean Bourhis氏らが、欧州6ヵ国82施設で実施された、フランスの頭頸部がん放射線治療グループ(GORTEC)主導の無作為化非盲検第III相試験「GORTEC 2018-01 NIVOPOST-OP試験」の結果を報告した。シスプラチン+放射線療法は、高リスクLA-SCCHNに対する術後補助療法の標準治療であるが、ニボルマブ追加の有効性と安全性は不明であった。著者は、「ニボルマブ+シスプラチン+放射線療法は、新たな標準治療として提案可能である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月22日号掲載報告。

ASCVD合併2型DMのCVアウトカム、チルゼパチドvs.デュラグルチド/NEJM

 2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者の治療において、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイントに関し、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が認められた。オーストラリア・Monash UniversityのStephen J. Nicholls氏らSURPASS-CVOT Investigatorsが、30ヵ国640施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照非劣性試験の結果を報告した。チルゼパチドはGLP-1受容体およびGIP受容体のデュアルアゴニストで、血糖コントロールと体重において好ましい効果をもたらすが、心血管アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌2025年12月18・25日号掲載の報告。

PCOS妊婦へのミオイノシトールの投与は妊娠合併症率を改善せず(解説:前田裕斗氏)

本研究は、オランダの13施設で464例の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)妊婦を対象とし、ミオイノシトールの妊娠糖尿病・早産・妊娠高血圧腎症の予防効果を確かめた二重盲検プラセボ対照RCTである。ミオイノシトールにはインスリン抵抗性改善を通した血管内皮機能不全や炎症の予防効果があることから、PCOS妊婦においてリスクが上昇する3つの妊娠合併症をアウトカムとしている。先行するRCTでは妊娠糖尿病の予防効果が示されていたが、サンプルサイズが200例程度と小さく、また妊娠糖尿病の有病率が約50%と高いこと、患者への薬の盲検化がされていなかったことなどを背景として、この試験が行われた。

再発・難治性多発性骨髄腫へのiberdomide+低用量シクロホスファミド+デキサメタゾンの第II相試験(ICON)/Lancet Haematol

 2~4ラインの治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫に対するiberdomide+低用量シクロホスファミド+デキサメタゾン(IberCd)の現在進行中の前向き単群第II相非盲検試験(ICON試験)において、追跡期間25.4ヵ月で無増悪生存期間(PFS)中央値が17.6ヵ月と良好であったことを、オランダ・アムステルダム自由大学のCharlotte L. B. M. Korst氏らが報告した。Lancet Haematology誌2026年1月号に掲載。  iberdomideは、経口セレブロンE3リガーゼモジュレーターであり、レナリドミドやポマリドミドとは薬理学的に異なりセレブロンとの親和性が高いため、直接的な抗腫瘍効果と免疫刺激効果をもたらすことが示されている。

日本人末期がん患者のせん妄、その発生率と薬理学的介入の現状

 末期がん患者では、疼痛やせん妄の発生が少なくない。しかし、疼痛管理のために投与されるオピオイドは、患者のせん妄を悪化させる可能性がある。名古屋市立大学病院の長谷川 貴昭氏らは、がん性疼痛とせん妄を有する末期がん患者において、実際の症状経過とオピオイドおよび抗精神病薬を含む薬理学的介入との関連を調査するため、多施設共同プロスペクティブ観察研究の2次解析を実施した。Palliative Medicine Reports誌2025年10月24日号の報告。 対象は、日本のホスピスまたは緩和ケア病棟に入院している成人患者のうち、Palliative Performance Scale(PPS)が20点以下に低下した時点(1日目、死亡直前)で、がん性疼痛(Integrated Palliative care Outcome Scale[IPOS]の疼痛スコア2以上)およびせん妄を有していた患者。薬理学的治療戦略、疼痛レベル(IPOSに基づく)、せん妄症状(Memorial Delirium Assessment Scale[MDAS]の9項目に基づく)を測定した。

呼吸器系ウイルス検査陽性の市中肺炎、抗菌薬投与は必要?

 米国胸部学会(ATS)が2025年に発表した最新の市中肺炎(CAP)ガイドラインでは、呼吸器系ウイルス検査陽性となった入院CAP患者全例に対して、抗菌薬を投与することを条件付きで推奨している。しかし米国感染症学会(IDSA)は非重症患者に対するこの推奨に同意せず、非重症患者では重複感染の可能性を検討するために多少の時間をかけることによるリスクはほとんどなく、抗菌薬を開始するかおよびいつ開始するかについては臨床医の裁量の余地があるとしている。米国・ペンシルベニア大学のBrett Biebelberg氏らはこれらの患者集団における抗菌薬投与の頻度・期間と転帰を評価する目的で、大規模な多施設共同の傾向スコア重み付け解析を実施。結果をClinical Infectious Diseases誌オンライン版2025年12月11日号で報告した。

腰痛時の日常動作、症状を悪化させるのか?

 腰痛患者を対象に、身体活動の短期的および長期的な影響を調査した結果、持ち上げる、曲げる、押す/引く、ねじる、しゃがむなどの一部の日常動作は短期的な腰痛増悪と関連していたものの、長期的な機能障害とは関連しなかったことを、米国・Veterans Affairs(VA) Puget Sound Health Care SystemのPradeep Suri氏らが明らかにした。  身体活動は、腰痛に対して有害な影響と有益な影響の両方を有すると考えられている。研究グループは、10種類の一般的な動作について、短期的(24時間以内)な腰痛増悪リスクと長期的(累積的)な機能障害との関連をそれぞれ評価するため、前向きコホート研究の中にケースクロスオーバー解析を組み込んだ研究を実施した。