日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

COPD・心血管疾患併存患者、β遮断薬で全死亡リスクは低下するか

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と心血管疾患の併存患者において、β遮断薬で全死亡リスクは低下するものの、心不全または虚血性心疾患患者に限られ、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の併用によってその効果が減弱する可能性があることが示された。カナダ・McGill UniversityのSamy Suissa氏らが、英国のプライマリケアのデータベースを用いて実施した標的試験エミュレーション(target trial emulation)研究の結果をChest誌オンライン版2026年8月11日号に報告した。

メタボ解消、正常BMIまでの減量は必要ない?

 メタボリックシンドローム(MetS)の解消に向けた減量は、体重、BMI、腹囲など何がよく、どの程度必要だろうか。このテーマに関し、中国の湖北省疾病予防管理センター慢性・非感染性疾患予防管理研究所のJunfeng Qi氏らの研究グループは、約7,000例を対象にデータを解析。その結果、MetSの解消にBMIを完全に正常化させる必要はないことが示唆された。この結果は、Obesity誌2026年7月31日オンライン版に公開された。

多内分泌代謝性卵巣症候群は心筋梗塞や脳卒中のリスクと関連

 若年女性に見られる卵巣関連の内分泌・代謝疾患である多内分泌代謝性卵巣症候群(polyendocrine metabolic ovarian syndrome;PMOS)は、心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇と関連している可能性がある。新たな大規模研究で、PMOSの女性では、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの発生リスクが、PMOSではない女性と比べて4倍以上高いことが明らかになった。米ペンシルベニア大学病院産婦人科のAnuja Dokras氏らによるこの研究結果は、7月20日付で「The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health」に掲載された。

ADHD治療薬、種類により体重への影響は異なる

 注意欠如・多動症(ADHD)の治療で広く用いられる2種類の中枢神経刺激薬、dexamphetamine(デキサアンフェタミン、デキストロアンフェタミン)とメチルフェニデートは、いずれも同程度に症状を改善するものの、体重に与える影響には違いが見られ、dexamphetamine群ではより体重が減少する傾向が認められたことが、臨床試験で示された。シドニー大学(オーストラリア)小児科・小児保健学分野のAlison Poulton氏らによるこの試験の詳細は、7月7日付で「Journal of Paediatrics and Child Health」に掲載された。

GLP-1受容体作動薬、自己免疫疾患患者の死亡・血栓リスク低下と関連

 肥満を伴う関節リウマチ、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の患者の中で、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が処方されている人は、死亡リスクや血栓症のリスクが低いという研究結果が報告された。米フロリダ大学のAmy Sheer氏らが、フロリダ州などの3州にある14の医療機関の電子カルテ情報を用いて検討したもので、詳細は6月6日付で「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。  GLP-1RAは、2型糖尿病の血糖管理のほかに減量目的でも用いられている。肥満では、全身性の慢性炎症や血管内皮機能の低下により血栓が形成されやすいことが知られていて、また自己免疫疾患も炎症反応を強めるために、肥満を伴う自己免疫疾患患者では、心血管イベントや血栓イベントのリスクが高いと考えられている。

1日1回経口投与のzenagamtide、2型糖尿病の血糖改善効果は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、1日1回経口投与のzenagamtide(6、25、50mgの3用量ともに)はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。

院外心停止後の低体温療法、冷却延長は神経学的予後を改善せず/JAMA

 33℃での低体温療法を受ける院外心停止後に昏睡状態にある生存者において、冷却時間の延長は神経学的アウトカムを改善させなかったことが、米国・ミシガン大学のWilliam J. Meurer氏らSIREN Investigatorsが同国71病院で実施した、多施設共同無作為化アダプティブ割り付け臨床試験の結果で示された。心停止後の神経保護を目的とした低体温療法は広く行われているが、臨床試験において一貫した神経学的アウトカムの改善は示されておらず、最適な冷却時間は依然として不明のままであった。JAMA誌オンライン版2026年8月5日号掲載の報告。

日本における若年性アルツハイマー病の診断遅延の現状

 若年性アルツハイマー病の診断には、高齢発症アルツハイマー病と比較し、特有の課題がある。しかし、日本における診断に至るまでの経過については、これまで明らかになっていなかった。新潟大学の春日 健作氏らは、日本において若年性アルツハイマー病と高齢発症アルツハイマー病の症状から診断までの期間を比較して、診断までの期間に影響を及ぼす要因を調査した。BMC Neurology誌オンライン版2026年7月9日号の報告。

ロボット支援手術導入初期の執刀機会、女性外科医で伸び悩み/日本消化器外科学会

 ロボット支援手術の普及が進む中、新規術式導入期における執刀機会に男女差が存在する可能性が明らかになった。日本消化器外科学会はNational Clinical Database(NCD)のデータを用いた全国規模解析を実施、大阪医科薬科大学の河野 恵美子氏、東京大学の野村 幸世氏らの研究グループは、男性外科医では経験年数に応じてロボット支援手術の執刀数が増加する一方、女性外科医では同様の増加傾向が認められなかったことを報告した。研究成果はSurgery誌オンライン版2026年8月4日号に掲載された。

インフルエンザワクチンの有効性、前シーズンの感染・接種歴で変動―17シーズン解析

 前シーズンのインフルエンザ感染歴は今シーズンのワクチン有効性(VE)を高め、前シーズンの接種歴はVEを減弱させることが、日本臨床内科医会 インフルエンザ研究班の河合 直樹氏らによる日本での17シーズンにわたる前向きコミュニティベースコホート研究の解析で示された。今シーズン未接種者における罹患率(AR)は、前シーズン接種歴のある小児で14.0%、接種歴のない小児で8.6%と有意差が認められた(p<0.001)。研究成果はThe Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2026年7月11日付で発表された。 本研究は、日本で2002~03年シーズンから2018~19年シーズンにかけて実施された17シーズンにわたる前向きコミュニティベースコホート研究のデータを用いた解析である。

熱波で精神疾患による入院が増える可能性

 熱波の発生が精神疾患による入院の増加に関連していることを示すデータが報告された。熱波発生から8日間で入院患者が5.6%増えるという。モナシュ大学(オーストラリア)のYuming Guo氏らの研究によるもので、詳細は7月10日付で「Nature Health」に掲載された。最も顕著な入院の増加は、不安症患者やパーソナリティー障害のある人で認められるという。  この研究では、2000~2019年にかけて、カナダ、ブラジル、チリ、ニュージーランドという4カ国、852カ所で、温暖な季節における261万8,307件の精神・行動障害による入院記録を用いて、熱波との関連を解析した。熱波は、各地点の日平均気温の97.5パーセンタイルを上回る気温が連続4日間記録された場合と定義した。

亡くなった大切な人のデジタルゴーストは悲しみを和らげる?

 AIが故人を再現する時代は、すでに現実になっている。HereAfter AI、Project December、Seance AIなどのサービスでは、故人の写真やテキストメッセージなどのデータをもとに、遺族や親しい人が故人と対話できる「デジタルゴースト(AIゴースト)」を作り出している。こうした技術は、遺族の悲しみを和らげるのに役立つのだろうか。それとも、テレビドラマ『ブラック・ミラー』に描かれるようなディストピア的な世界を思わせる、人々に害をもたらす技術なのだろうか。  この疑問を明らかにしようと、米コロラド大学ボルダー校の研究グループが実施した調査の結果が、国際会議「Designing Interactive Systems 2026」(DIS '26、6月13~17日、シンガポール)で発表され、その論文は同会議の論文集に6月12日付で掲載された。

スタチン使用に伴う重篤な筋障害はまれ

 スタチンによる重篤な筋障害への懸念は過大視されている可能性があるようだ。英オックスフォード大学の研究グループが開発した新たなリスク予測モデルでスタチン治療の適応となる成人の重篤な筋障害リスクを推定したところ、98%超が低リスクであることが示された。この研究結果は、「The Lancet Digital Health」に6月25日掲載された。筆頭著者である同大学のTing Cai氏はニュースリリースで、「重篤な筋障害は、スタチンに関して最も広く懸念されている副作用の一つである。しかし今回の結果から、スタチン治療の効果を期待できる大多数の人では、そのリスクは極めて低いことが示唆された」と述べている。

HIVの1次治療、ドラビリン含有レジメンの有効性と体重への影響/JAMA

 主にアフリカ系黒人成人に対する初回抗レトロウイルス療法(ART)として、ドラビリン(DOR)/ラミブジン(3TC)/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)は、ドルテグラビル(DTG)/エムトリシタビン(FTC)/テノホビル アラフェナミド(TAF)と比較し、48週時点のウイルス抑制効果に関して非劣性を示し、かつ体重増加がより少ないことが認められた。南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のJoana Woods氏らが、研究者主導の無作為化非盲検非劣性試験「Opti-DOR試験」の結果を報告した。ARTの開始後、とくにTAF/DTGまたはビクテグラビルを含むレジメンにおいて著しい体重増加を伴うことがあり、HIV感染者の心代謝リスクを増大させる可能性がある。JAMA誌オンライン版2026年7月31日号掲載の報告。

多枝冠動脈バイパス術後の身体的回復、小開胸vs.胸骨正中切開/Lancet

 多枝冠動脈疾患を有する適格患者において、経験豊富なチームが施行した低侵襲冠動脈バイパス術(MICS CABG)は胸骨正中切開によるCABGと比較し、術後1ヵ月時点の患者報告による身体的回復を改善し、かつ術後12ヵ月までの安全性に明らかな不利益は認められなかった。カナダ・オタワ大学のMarc Ruel氏らが、研究者主導の国際共同無作為化非盲検比較試験「Multivessel coronary artery bypass grafting via small thoracotomy versus sternotomy:MIST」の結果を報告した。CABGは一般的であるが侵襲性が高い手術で、従来は胸骨正中切開によって行われてきた。

超高齢の乳がん患者における術後の局所再発率と生存率

 超高齢乳がん患者に対する外科的治療の有効性とアウトカムを検討するために、米国・スタンフォード大学のDavid Foulad氏らが、新規発症の原発乳がんまたは温存乳房内再発(IBTR)で手術を受けた85歳以上の患者のデータを解析したところ、手術が満足のいく局所制御をもたらすことが示唆された。Breast Cancer Research and Treatment誌2026年8月6日号に掲載。

精神科における多剤併用療法、それぞれの職種でどう考えているのか?

 多剤併用療法は、複雑かつ治療抵抗性の精神疾患をマネジメントするうえで、重要な治療選択肢の1つである。一方、有害な薬物相互作用、服薬アドヒアランスの低下、健康アウトカムの悪化といったリスクも伴う。多剤併用療法に対する専門職間の見解は、臨床的な意思決定や処方行動に大きな影響を及ぼす。サウジアラビア・King Abdullah International Medical Research CenterのAmal I. Khalil氏らは、精神科医療における多剤併用療法に関する医療従事者の知識と態度を評価し、精神科看護師、精神科医、薬剤師の見解を比較するため、本研究を実施した。また、これらの要因が処方行動や専門職間の連携にどのような影響を与えるかについても検討した。PLOS One誌2026年7月14日号の報告。

健康的な脳の老化にはDHAが重要~EPAとの比較

 高齢者では脳萎縮が認知機能低下に先行することが多いため、脳構造の評価は神経保護の中間バイオマーカーとなる。近年、n-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)の血中濃度は、脳の構造的完全性との関連が示唆されている。しかし、魚の摂取量が多く、n-3系PUFA濃度がかなり高い日本人のデータは少なく、また、脳構造との関連でDHAとエイコサペンタエン酸(EPA)を比較した研究はほとんどない。今回、滋賀医科大学NCD疫学研究センターの近藤 慶子氏らが、高齢日本人女性においてEPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と脳容積の関連を検討したところ、DHAはEPAよりも灰白質容積との関連が強く、EPAとの関連は限定的なことがわかった。Journal of Nutrition誌オンライン版2026年7月25日号に掲載。

マダニによる肉アレルギー関連抗体保有者は想定以上か

 マダニに咬まれることで発症する肉アレルギーとして知られるα-Gal(アルファガル)症候群に関連する抗体を持つ米国人は、これまで考えられていたよりもはるかに多い可能性が、新たな研究で示された。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校感染症分野のEleanor Saunders氏らが7月2日付で「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に報告した研究によると、α-gal IgE抗体陽性率が高い5州では、成人の約4人に1人がこの抗体を保有していることが判明したという。研究グループは、「これらの結果は、α-galに対する抗体を保有していても、必ずしもα-Gal症候群を発症するわけではないことを示している」との見解を示している。

妊娠期の暑さへの曝露が子どもの脳の発達に影響か

 気候変動が子どもの脳発達に影響を及ぼす可能性があるようだ。妊娠期および乳児期に高温環境にさらされることが、その後の視床の成長速度の低下と関連することが、新たな研究で示された。視床は、嗅覚を除く全ての感覚情報を大脳皮質へ送る中継点の役割を果たすほか、運動調節や意識、記憶、情動のコントロールにも関与している重要な脳領域である。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のEsmée Essers氏らによるこの研究成果は、「Environment International」8月号に掲載された。Essers氏は、「今後の研究では、人生早期の暑さへの曝露が神経発達障害の発症に関与するかどうか、また視床の発達の変化が両者の関連を説明する手がかりとなるかどうかを検討する必要がある」と述べている。