日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

神経血管老化の予防戦略、農業や園芸が有効な可能性は

 農業または園芸活動は、健康維持や生活習慣病の予防に効果的である可能性のあるシンプルな戦略である。しかし、脳卒中や認知症などの神経血管老化に関連する疾患の発症に対する予防効果は、依然としてよくわかっていなかった。久留米大学の菊池 清志氏らは、定期的な農業または園芸における身体活動(AGPA)の神経血管老化に対する予防効果とその根底にあるメカニズムについて、2つのアプローチを用いて包括的に調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2025年12月2日号の報告。

複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。

市中肺炎への抗菌薬、72時間以内の経口剤への切り替えは安全?

 市中肺炎の入院治療において、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えは、入院期間や抗菌薬投与日数の短縮につながることが報告されている。そのため、本邦の『成人肺炎診療ガイドライン2024』でも「市中肺炎治療において、症状・検査所見の改善に伴い、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への変更(スイッチ療法)を行うことは推奨されるか」というクリニカルクエスチョンが設定され、推奨は「症状・検査所見の改善が得られればスイッチ療法を行うことを強く推奨する(エビデンスの確実性:B)」となっている1)。

心不全患者に季節性血圧変動はどう影響するか

 心不全の患者には予後の改善のためにも血圧を低く保つことが求められる。では、季節により血圧が変動する場合、どのように心不全に影響を与えるのだろうか。この課題に対して、スペインのサン・セシリオ大学病院循環器部門のJesus Gabriel Sanchez-Ramos氏らの研究グループは、スペイン南部で心不全患者の夏季と冬季の血圧値を比較し、これらの変動の臨床的影響を評価した。その結果、心不全患者では夏季に血圧が著しく低下することが判明した。この結果はこの結果はJournal of Hypertension誌2026年4月1日号に掲載された。  夏季は在宅自己血圧測定値が低下する傾向 研究グループは、心不全患者に異なる測定法を用いて夏季と冬季の血圧値を検査・比較し、これらの変動の臨床的影響を評価することを目的に、スペイン南部の施設で検査を実施した。

「ピンクノイズ」は睡眠の質を下げる?

 睡眠を促す音として「ピンクノイズ」を聴くことが流行しているが、実はピンクノイズは睡眠中の脳の活動を妨げる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ピンクノイズは広い周波数帯域を含む「ザー」という連続音で、強めの雨音や波の音に似ており、リラックス効果があるとされている。本研究では、ピンクノイズを聴いていた人では夢を見る睡眠段階であるレム睡眠の時間が短くなっていたことが示されたという。米ペンシルベニア大学精神医学睡眠・時間生物学分野のMathias Basner氏らによるこの研究の詳細は、「Sleep」に2月2日掲載された。  Basner氏はニュースリリースの中で、「レム睡眠は記憶の定着や感情の調整、脳の発達において重要である。したがって、この結果は、睡眠中にピンクノイズなどの広帯域ノイズを流すことは有害であり、特にレム睡眠の時間が大人よりもはるかに長く、脳がまだ発達段階にある子どもは、その影響を強く受けやすい可能性を示している」と述べている。

BMJ誌が「事前登録なし」を理由に却下した臨床試験のその後/BMJ

 臨床試験の事前登録は、研究の透明性を高め、出版バイアスや選択的な結果報告を防止するために不可欠な手続きとされる。医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、2005年7月、ICMJE加盟誌への論文の掲載資格を得るには、最初の参加者の登録時またはそれ以前に、承認された登録機関(WHO国際臨床試験登録プラットフォームの18の主要登録機関、ClinicalTrials.gov、UMIN臨床試験登録システムなど)に試験を登録することを義務付けているが、実際には順守が不十分な試験が散見されるという。スペイン・カタルーニャ国際大学のDavid Blanco氏らは、ICMJE承認の登録機関への「事前登録なし」を理由に、BMJ誌が却下した試験の多くが後に、高インパクトのジャーナルに「ICMJE勧告への準拠」を主張して(多くの場合、登録不備の開示なしに)掲載されている実態を明らかにした。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。

急性単純性虫垂炎、手術か抗菌薬か?APPAC 10年追跡(解説:寺田教彦氏)

虫垂切除術は、100年以上にわたり虫垂炎における唯一の治療法とされ、現在も虫垂炎の主要な治療法である。一方で、CTで合併症を伴わない急性単純性虫垂炎に限れば、抗菌薬による保存的治療が一定の成績を示す研究が蓄積し、近年のガイドラインでも「特定集団では選択肢になりうる」と整理されるようになった。2026年1月にJAMA誌に掲載された本論文で扱われているAPPAC試験は、フィンランドの6施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験で、2009年11月から2012年6月に、18歳から60歳までの、CTで合併症がない急性単純性虫垂炎と診断された患者を虫垂切除群と抗菌薬治療群に無作為に割り付けた試験であり、今回は10年追跡解析を報告している。

うつ病予防に有効な魚の摂取量は?

 韓国・慶熙大学のEunje Kim氏らは、魚類摂取とうつ病および妊娠関連うつ病のリスクとの関連性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年12月18日号の報告。  2023年11月まで公表された論文をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。抽出された5,074件の論文のうち、35件の観察研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いて、効果推定値を相対リスク(RR)と対応する95%信頼区間(CI)として統合した。さらに、用量反応解析および層別サブグループ解析を行った。

アルツハイマー病「p-tau217血液検査」が高精度に病理検出、日本人で確認

アルツハイマー病(AD)の確定診断には、これまで高額なPET検査や身体的負担の大きい脳脊髄液検査が必要であり、より簡便な血液バイオマーカーの活用が期待されている。新潟大学の春日 健作氏らの研究グループは、日本人を対象とした多施設共同研究「J-ADNI」の臨床検体の解析により、血漿中のリン酸化タウ217(p-tau217)が、アミロイド病理の検出および将来のAD発症予測において、きわめて高い精度を持つことを明らかにした。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年2月6日号に掲載。

お酢の摂取が多いと肥満予防につながる可能性/藤田医科大

 「酢」の摂取は一般的に健康に良いとされているが、摂取の効果について年齢や性別などでタンパク質やビタミンとどのように関連するのだろうか。このテーマについて、藤田医科大学医学部臨床栄養学の和田 理紗子氏らの研究グループは、酢酸摂取量と年齢・性別との関連を検証した。その結果、酢酸摂取量が多い人は炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向だったことが示唆された。この研究結果はNutrients誌2026年1月19日号に掲載された。

カテーテル関連感染予防に最も効果的な消毒薬の製剤と濃度~大規模メタ解析

 血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒で使用するグルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードにおけるカテーテル関連感染発生率が最も低い製剤や濃度を調べるため、フランス・Centre Hospitalier Universitaire de PoitiersのBertrand Drugeon氏らが過去最大規模の系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、イソプロパノールベースの高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)でカテーテル関連感染発生率が最も低いことがわかった。JAMA Network Open誌2026年2月12日号に掲載。  研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、CINAHLを2025年1月7日まで検索し、試験登録データベースおよび関連研究、ガイドラインの参考文献リストをレビューした。対象は、血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒としてグルコン酸クロルヘキシジンまたはポビドンヨードを用いた方法を比較した無作為化比較試験(RCT)で、1つ以上のカテーテル関連感染アウトカム(カテーテル関連血流感染、カテーテル先端コロニー形成、局所感染)を報告した研究とし、査読者2人が独立して、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出した。

脳卒中後のリハビリ、対側より同側の腕の訓練が有用?

 脳卒中後のリハビリテーション(以下、リハビリ)は、障害が大きい側の腕や脚の筋力や動作の回復に焦点を当てて行われるのが通常である。しかし、新たな研究で、比較的障害が少ない側の腕に焦点を当ててリハビリを行う方が、動作能力を大きく改善することが示された。米ペンシルベニア州立大学医学部神経リハビリ研究室のCandice Maenza氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月2日掲載された。Maenza氏は、「障害が少ない側の腕を訓練することで、患者の機能はより改善した。これは、生活の質(QOL)の向上や、介護者の負担軽減につながる可能性がある。片側の腕に重度の麻痺がある人は、食事や着替えなど、日常生活の多くを『良い方の腕』に頼っているためだ」と述べている。

減塩食品の普及が国民の心臓や脳を守る

 加工食品として流通しているパンやピザなどの塩分が減ったとしても、それに気づく人はいないかもしれない。しかし、人々の体は間違いなくその変化に反応するようだ。減塩食品の普及によって、国民の心臓病や脳卒中のリスクが低下した可能性を示唆する欧州発の2件の論文が、「Hypertension」に1月26日掲載された。  一つ目の論文はフランス国立公衆衛生局のClemence Grave氏らによるもので、パンに含まれる食塩を減らすことで、毎年約1,200人のフランス人の命が救われただろうと推測している。同国では2022年に、政府とパン製造業界との間で食塩含有量を減らすための自主的な協定が結ばれており、今回の研究ではその潜在的な影響が調査された。なお、パンは意外なほど食塩含有量が多く、特にバゲット(最も一般的なフランスパン)には、1日当たり推奨摂取量の約25%の食塩が含まれているという。

筋強直性ジストロフィー1型、del-desiranが有望/NEJM

 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、常染色体優性遺伝性の進行性神経筋疾患であり、DMPK遺伝子の3'-非翻訳領域におけるCTGリピートの伸長によって発症する。本症は、身体機能障害を引き起こし、余命を短縮させるが、承認された治療法はない。米国・Virginia Commonwealth UniversityのNicholas E. Johnson氏らは「MARINA試験」において、本症の治療薬として開発中の抗体-オリゴヌクレオチド複合体delpacibart etedesiran(del-desiran[AOC 1001])の筋組織への送達が一部の患者で確認され、異常な選択的スプライシング(ミススプライシング)の改善を示唆するデータを得たことを報告した。del-desiranは、抗体部分がトランスフェリン受容体1を、オリゴヌクレオチド部分がDMPK遺伝子mRNAを標的とする。研究の成果は、NEJM誌2026年2月19日号で発表された。

AI搭載聴診器による心不全、心房細動、弁膜症の診断を検討したプラグマティック・クラスターランダム化比較試験―AI搭載聴診器を実装しても使用されなければ効果はない(解説:名郷直樹氏)

英国のプライマリ・ケア医を対象に、AI搭載聴診器(Eko DUO, Eko Health Inc, Emeryville, CA, USA)を支給し、トレーニングし、実際の臨床で使用するグループと従来の診療を行うグループを比較し、心不全の診断と診療のセッティングによる心不全診断の違いを1次アウトカムとしたプラグマティック・クラスターランダム化比較試験である。AI搭載聴診器はBluetoothでスマートフォンに接続され、AIによる分析がなされ、心疾患の診断がフィードバックされるようになっている。結果は1次アウトカムである心不全診断の罹患率比は0.94(95%信頼区間[CI]:0.87~1.00)、2次アウトカムの心房細動、弁膜症でもそれぞれの相対危険は1.01(95%CI:0.94~1.10)、1.00(0.91~1.10)と診断の増加を認めていない。

治療抵抗性高血圧症の新たな治療法「腎デナベーション」、適正使用指針も公表

治療抵抗性高血圧症の新たな治療法として、2025年9月1日に製造販売承認を取得していた日本メドトロニックの「Symplicity Spyral腎デナベーションシステム」*1ならびに2025年8月25日に製造販売承認を取得していた大塚メディカルデバイスの「ParadiseTM 超音波式腎デナベーションシステム」が、2026年3月1日に保険適用を取得し、順次発売された。

濾胞性リンパ腫、R-CHOP療法の15年PFS(SWOG S0016)/JAMA Oncol

 濾胞性リンパ腫(FL)に対する、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン/ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン/プレドニゾロン)ベースの化学免疫療法後の長期寛解および治癒の可能性を評価したSWOG S0016試験の15年間の追跡データを、米国・Fred Hutch Cancer CenterのMazyar Shadman氏らが報告した。この2次解析の結果、進行期FL患者の一部がリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)により治癒を達成可能であり、再発率が時間経過とともに低下することが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年2月26日号に掲載。

アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性~臨床試験結果の統合解析

 米国・ネバダ大学のJeffrey L. Cummings氏らは、ブレクスピプラゾール2mg/日または3mg/日のアルツハイマー病に伴うアジテーションの治療における有効性を評価するため、統合臨床試験データに基づく解析を実施した。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2026年1月27日号の報告。  介護施設または地域社会に居住するアルツハイマー病に伴うアジテーションを有する患者を対象に、ブレクスピプラゾール固定用量を投与した2つの12週間多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験のデータを統合した。有効性評価項目には、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコア(29種のアジテーション症状の頻度を測定)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア、CMAI因子スコア(攻撃的行動、身体的非攻撃的行動、言語的興奮行動)、治療反応率を含めた。

脳卒中管理で非専門医が押さえておきたい重要ポイントは?「脳卒中治療ガイドライン」改訂

一次・二次予防でさまざまな診療科との連携が必要になる脳卒中。2025年8月には『脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]』が発刊され、本書より「改訂のポイント」が各章の冒頭に新設、前版からの改訂点やその経緯が把握しやすい仕様に変更された。近年の知見もタイムリーに反映し、140項目中52項目のエビデンスレベルが見直されている。そこで今回、非専門医が本書を手に取る際に理解しておきたい改訂点や取りこぼしてはいけない点を中心に、ガイドライン作成委員長の黒田 敏氏(富山大学脳神経外科 教授)に話を聞いた。