日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

高リスクASCVDのLDL-C低下、インクリシランvs.ベムペド酸/ESC2026

最大耐用量のスタチン治療を受けてもLDL-C目標値に到達しない高リスクのアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者を対象に、ドイツ・Deutsches Herzzentrum der ChariteのIngo Hilgendorf氏らは、インクリシランとベムペド酸を直接比較する第IV相無作為化比較試験「VICTORION-Challenge試験」を実施した。その結果、インクリシランはベムペド酸よりLDL-C低下率および目標値達成率が有意に高かった。本結果は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表され、European heart journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。

MASHへのセマグルチド、日本人でも有効性示す/ESSENCE試験サブグループ解析

代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)では、肝線維化の進展抑制や脂肪肝炎の改善を目指した薬物治療の確立が課題となっている。そこで、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏らは、第III相ESSENCE試験のサブグループ解析として、MASHを有する日本人参加者におけるセマグルチドの有効性と安全性を検討した。その結果、日本人集団において、セマグルチドは肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失などの達成割合をプラセボより高め、全体集団と方向性が一致した有効性と安全性を示した。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年8月28日号に掲載された。

11月まで要警戒!「蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針」改訂

人類の多くが不快に感じる蚊。刺されれば、かゆみや腫れに悩まされる身近な存在である。一方で、蚊はデング熱やチクングニア熱などの感染症を媒介することがあり、ときに人の健康を脅かす「危険な存在」でもある。蚊は15~20℃で活動を始め、25~30℃で最も活発に行動するといわれている。近年は、気候変動などに伴う地球温暖化や残暑の長期化の影響を受け、国内におけるヒトスジシマカなどの生息域や活動期間も拡大しつつある。さらに、訪日外国人の増加などを背景に、海外から持ち込まれた蚊媒介感染症が国内で広がるリスクにも注意が必要である。

日常診療での肥満判定、「BMI」より「腹囲」?

 体重の増加が健康に与える影響が心配な人は、ベルトの穴の位置を確認してみるとよいかもしれない。腹囲は、肥満に伴う健康リスクを把握するための極めて簡便で有用な指標の1つである可能性が、新たな研究で示された。米Rutgers-RWJBarnabas Center for Climate, Health, and HealthcareのAayush Visaria氏らによるこの研究の詳細は、8月7日付で「JAMA Network Open」に掲載された。  Visaria氏は、「ベルトを緩めたりズボンのサイズを大きくしたりする必要がないか、注意してほしい。

TAVI後のNOAC単剤はアスピリンを上回るか?/JAMA

 重症大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)後の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法は、アスピリン(ASA)単剤療法と比較し、低吸収性弁尖肥厚(HALT)の存在で定義した弁尖血栓症の発生率を有意に低下させるとともに、出血、血栓塞栓性イベントまたは死亡のリスクに関して非劣性であった。ノルウェー・オスロ大学のChristopher S. Dodgson氏らが、同国内でTAVIの大部分を担う3施設(3次病院2施設、地域病院1施設)において実施された無作為化非盲検評価者盲検試験「Anticoagulation vs Acetylsalicylic Acid After Transcatheter Aortic Valve Implantation:ACASA-TAVI試験」の結果を報告した。

症候性心房細動、カテーテルアブレーションはQOLを改善するか?/Lancet

 症候性心房細動患者に対するカテーテルアブレーションはシャム(偽手技)との比較において、心房細動関連QOLの改善に関して優越性は認められなかった。ドイツ・ライプチヒ大学病院のRolf Wachter氏らが、同国およびポーランドの9施設で実施した無作為化二重盲検シャム対照試験「PVI-SHAM-AF試験」の結果を報告した。ガイドラインでは、心房細動患者の症状緩和を目的としてカテーテルアブレーションが推奨されているが、これまで患者報告アウトカムを評価した先行研究は非盲検試験であり、カテーテルアブレーションに関する無作為化シャム対照試験はわずか2件にとどまっていた。Lancet誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

(シタグリプチンと比べて)チルゼパチドでMACEリスク32%低減(解説:小川大輔氏)

GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬には、主要心血管イベント(MACE:心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)のリスクを抑制する効果が認められている。ただ、実際にどの程度抑制する効果が認められるかは明らかではない。最近、GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドの実臨床における心血管イベント抑制効果を検討した研究結果が報告された1)。この研究は米国の保険請求データベースを用いて、心筋梗塞や脳卒中などアテローム動脈硬化性心血管疾患の既往のある2型糖尿病のデータを解析したコホート研究である。標準治療にチルゼパチドの投与を開始した群と、その対照としてDPP-4阻害薬のシタグリプチンの投与を開始した群の合計5万2,971例の解析が行われ、チルゼパチド投与群はシタグリプチン投与群と比較してMACEの発生を32%抑制したという結果であった。

ひとり飯はうつ病のリスク因子か?

 世界的な高齢化の進行や子供の独立後に親のみが残る世帯(エンプティ・ネスト)の増加に伴い、高齢者が1人で食事をすること(孤食)が急増している。こうした食事様式の変化は、高齢者の健康管理において重要な課題となっている。中国・蘇州大学のYingying Zhang氏らは、地域在住高齢者を対象に、誰かと一緒に食事をすること(共食)と孤食における栄養摂取量およびうつ病リスクの違いを定量的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Nutrition誌2026年7月13日号の報告。

ピロリ菌感染、胆道がんや膵がんリスクとの関連は/愛知県がんセンターほか

胃がんの確立したリスク因子であるHelicobacter pylori(H. pylori)感染は、胆道がん(BTC)や膵がん(PC)にも関与する可能性が指摘されているが、これまでのエビデンスは一貫していない。また、生殖細胞系列病的バリアントがH. pylori感染と胃がんリスクとの関連を修飾する可能性がある一方、BTCやPCでの役割は明らかではない。そこで、愛知県がんセンター研究所の山本 清花氏らは、日本人集団を対象に、遺伝的感受性や生活習慣因子を考慮してH. pylori感染とBTCおよびPCリスクとの関連を検討した。その結果、BTCリスクとの有意な関連は認められなかったが、PCではH. pylori感染指標とリスクの関連が、発生部位によって異なる可能性が示された。本研究結果は、International Journal of Cancer誌オンライン版2026年7月14日号に掲載された。

腹部肥満とビタミンD欠乏の併存で中年期以降の死亡リスクが2倍以上に

 腹部脂肪が多くてビタミンDレベルが低い中高年者は、死亡リスクが最大で2倍以上高いことを示すデータが報告された。サンカルロス連邦大学(ブラジル)のTiago da Silva Alexandre氏らの研究の結果であり、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に5月6日付で論文が掲載され、7月29日に同国のサンパウロ州研究財団からリリースが発行された。  論文の上席著者であるAlexandre氏は、「腹部肥満はよく知られた健康上のリスク因子だ。またビタミンDはさまざまな臓器にホルモンとして作用しており、その欠乏により多くの身体機能が損なわれる。これら2つが併存すると互いに悪影響を増幅させ、死亡リスクをいっそう高める」と説明している。

専門家ワーキンググループが電子タバコを禁煙支援選択肢として推奨

 国際的な非営利団体であるニコチン・タバコ研究学会(SRNT)の専門家ワーキンググループ「Harm Reduction Workgroup」が、成人の禁煙支援に電子タバコを用いることに関する臨床上の推奨事項を発表した。電子タバコを米食品医薬品局(FDA)承認のニコチン代替療法やバレニクリン、ブプロピオンなどの薬物療法とともに、選択肢として提示すべきだとしている。米カンザス大学人口健康学分野のEleanor Leavens氏らがまとめたこの推奨事項は、7月30日付で「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に掲載された。

タダラフィル使用で緑内障リスク上昇の可能性

 勃起不全(ED)や下部尿路症状の治療に使われるタダラフィルが、緑内障リスクの上昇と関連する可能性を示した研究結果が報告された。下部尿路症状の治療にタダラフィルを使用している男性では、使用していない男性に比べて緑内障や高眼圧症を発症するリスクが高かったという。台湾大学病院のChien-Chih Chou氏らによるこの研究は、8月4日付で「British Journal of Ophthalmology」に掲載された。  タダラフィルは、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬に分類される薬剤で、肺動脈性肺高血圧症、ED、下部尿路症状の治療に用いられている。

地域活動への参加、オーラルフレイルリスク低下と関連――3万人超の縦断研究

 日本の地域在住高齢者約3万人を3年間追跡した研究で、地域活動への参加がオーラルフレイルリスクの低下と関連することが示された。さらに、その関連は社会経済的地位(SES)が低い高齢者でより強く認められ、社会参加がオーラルフレイルの健康格差の縮小と関連する可能性が示唆された。研究は、北海道大学大学院保健科学研究院地域看護学/公衆衛生看護学教室の富岡那奈子研究員、田高悦子教授らによるもので、詳細は7月24日付の「PLOS One」に掲載された。

70歳以上の1次予防、スタチンは有益か?/NEJM

 地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象としたプラセボ対照無作為化試験で、アトルバスタチンは主要心血管イベントリスクを抑制したが(追跡期間中央値5.9年時点)、障害のない生存期間の延長には寄与しなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のSophia Zoungas氏らSTAREE Investigatorsが、同国の一般診療所(general medical practice)で行った「STAREE試験」の結果を報告した。高リスク成人において、スタチンが心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低減させることは十分に確立されているが、臨床ガイドラインにおいて、70歳以上の高齢者へのスタチン処方を強く推奨する記述はなく、とくに75歳以上の高齢者への処方を推奨するエビデンスは乏しい。

心不全への経カテーテル三尖弁修復術は有用か/NEJM

 重症三尖弁閉鎖不全症の患者に対する経カテーテル三尖弁修復術+薬物療法は薬物療法単独よりも、1年時点の全死因死亡、心不全入院、QOLの階層的複合評価項目に関して優れることが示され、また、3年時点の全死因死亡または心不全入院の複合リスクも低下させたことが示された。ドイツ・Ludwig-Maximilians-Universitat MunchenのJorg Hausleiter氏らTRIC-I-HF-DZHK24 Investigatorsが、同国29施設で行った非盲検無作為化試験の結果を報告した。重症三尖弁閉鎖不全症患者に対する経カテーテル三尖弁修復術の、臨床アウトカム(死亡および心不全入院など)への影響は依然として明らかになっていない。

GLP-1RA使用は脱毛を起こす可能性があるが、非瘢痕性で可逆的であるため、丁寧な説明をすることで患者さんの不安解消への配慮を忘れないでほしい(解説:島田俊夫氏)

GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、2型糖尿病治療において体重減少・心血管保護効果を含む多面的な利点を有し、近年その使用が急速に拡大している。一方で、これら薬剤の導入後に脱毛を訴える症例が散見され、FDAも2023年以降、安全性シグナルとして評価を開始している。本稿では、BMJ誌2026年7月22日号に報告された大規模ターゲットトライアル・エミュレーション研究の結果を踏まえ、一般内科医が臨床で留意すべきポイントを整理する。Penn Medicineの電子カルテデータ(2019~24年)を用いた本研究では、GLP-1RA新規使用者1万2,004例を対象に、SGLT2阻害薬1万5,221例およびDPP-4阻害薬1万1,233例との比較が行われた。

胃がん前がん病変、サブタイプ別の進行率~メタ解析

胃の腸上皮化生(IM)および異形成は胃がんの前がん病変とされるが、サブタイプ別の有病率や胃がんへの進行リスクについては十分に整理されていない。そこで、米国・Weill Cornell Medical College of Cornell UniversityのYende Grell氏らは、IMおよび異形成のサブタイプ別の有病率や胃がんへの進行リスクを、世界的なデータを用いてシステマティックレビューおよびメタ解析で検討した。その結果、不完全型IMおよび高異型度異形成(HGD)では、対応するほかのサブタイプと比べて胃がんへの進行率が高かった。本研究結果は、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2026年9月1日号に掲載された。

骨盤リンパ節郭清のAI支援、医師の認識能を向上/国立がん研究センター、Jmees

 骨盤リンパ節郭清においてAIによる支援は外科医の重要な解剖学的構造の認識を向上させることがわかった。  骨盤リンパ節郭清は、大腸がんや子宮頸がん、前立腺がん、膀胱がんなどの手術において、がんのリンパ節転移の確認とともに、転移のあるリンパ節を切除し再発を防ぐ重要な手術手技である。しかし、骨盤内には血管、神経、尿管などの重要な臓器および組織が存在しており、これらを損傷すると重大な合併症につながる可能性がある。そのため、手術には高度な解剖学的知識と技術が求められる。

認知症高齢者、診断の何年前から自動車事故リスクが高い?

 アルツハイマー病およびアルツハイマー関連認知症(ADRD)の患者は、認知機能の低下により自動車事故のリスクが高まる。この認知機能低下は、診断の数年前から始まっていることも少なくない。自動車事故は、ADRDに関連する認知機能障害の指標となり、早期診断を促進する可能性がある。米国・ブラウン大学のNina R. Joyce氏らは、ADRD患者の自動車事故発生について、診断前までさかのぼり、調査を行った。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2026年8月6日号の報告。

AF治療中に脳梗塞を招く潜在的要因とは

心房細動(AF)患者における経口抗凝固薬(OAC)投与は、脳梗塞予防の中心であるが、適切に治療されていても脳梗塞を発症する事例が存在する。こうしたブレークスルー脳梗塞(breakthrough ischemic stroke)の潜在的原因や、その後の予後への影響は十分に明らかになっていない。そこで、イタリア・University of L'AquilaのFederico De Santis氏らは、AFに対するOAC継続中に発症した脳梗塞患者を対象に、潜在的な原因と90日転帰との関連を検討した。その結果、潜在的な原因は約半数で認められ、90日以内の脳梗塞再発リスク上昇と関連していた。本研究結果は、Journal of Neurology誌オンライン版2026年8月17日号に掲載された。