日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

日帰り経カテーテル大動脈弁置換術の安全性は?

 心臓弁置換術を受ける一部の患者は日帰り手術できる可能性のあることが、新たな研究で示された。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の実施日に退院した患者と、健康状態の懸念から入院継続となった「同日退院の適格者」との間で、予後に差は認められなかったという。英ジェームズ・クック大学病院の循環器専門医であるKrishnarpan Chatterjee氏らによるこの研究は、欧州心臓病学会(ESC)の部会の一つであるEuropean Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions(EAPCI)が主催する「EAPCI Summit 2026」(2月19〜20日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。

生涯学習は認知症リスクの低下と関連

 米国の実業家であるヘンリー・フォード(Henry Ford)氏はかつて、「20歳であろうと80歳であろうと、学ぶことをやめた人は老いている。学び続ける人はいつまでも若い」と述べているが、この言葉には確かな根拠があるようだ。生涯にわたり学習を続ける人は、アルツハイマー病(AD)のリスクが低く、脳の老化も緩やかになることが、新たな研究で明らかにされた。米ラッシュ大学医療センター精神科・行動科学分野のAndrea Zammit氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に2月11日掲載された。

自宅リハビリの実施状況、4人に3人が不十分

 多くの人が、自宅で行うように指示された理学療法の「宿題」の一部、あるいは全てを実施しておらず、その結果、回復の遅延や停滞が生じている可能性のあることが、新たな調査で明らかになった。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターが行った調査によると、4人に3人(76%)の患者が、自宅で取り組むように言われたリハビリテーション(以下、リハビリ)を、指示通りに実施していないことが判明したという。

脳インプラントがパーキンソン病の歩行をリアルタイムで把握

 新たな脳インプラントにより、キッチンまで歩く、公園を散歩するなど、日常生活の中で何らかの動作をしているパーキンソン病患者から歩行に関連する脳信号をリアルタイムで記録し、その場で歩行中か否かを判定できることを示した研究結果が報告された。この完全埋め込み型のインプラントを使用することで、医師はパーキンソン病患者の運動機能をより効果的に改善できる可能性がある。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のDoris Wang氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に2月13日掲載された。

小児のドラベ症候群、zorevunersenが有望/NEJM

 ドラベ(Dravet)症候群は、主にSCN1A遺伝子のハプロ不全によって引き起こされる重篤な発育性てんかん性脳症であり、てんかんを有する一般集団と比較して、てんかんによる予期せぬ突然死および認知機能障害のリスクが高いとされる。米国・Northwestern University Feinberg School of MedicineのLinda Laux氏らは、2つの臨床試験(MONARCH試験およびADMIRAL試験)と、その延長試験(SWALLOWTAIL試験およびLONGWING試験)において、zorevunersenの投与により、痙攣発作の頻度が大幅に低下し、有害事象の多くは軽度または中等度であったことを示した。

日本の実臨床における片頭痛予防薬CGRP関連抗体の治療継続率は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体は、片頭痛治療に有効な注射剤である。名古屋大学の種井 隆文氏らは、日本の実臨床におけるCGRP関連抗体治療の継続率、再開率、中止率を評価するため本研究を実施した。Neurology International誌2025年12月24日号の報告。  対象は、CGRP関連抗体治療を開始後3ヵ月以上のフォローアップ調査を受けた未治療の片頭痛患者。CGRP関連抗体治療の継続、中止、再開の決定は、患者の自由意思に基づいて行われた。

うつ病診療ガイドラインの効果的な使い方

 日本うつ病学会は、2025年12月25日に『うつ病診療ガイドライン2025』を公開した。そこで、本ガイドラインの改訂のポイントについて、作成ワーキンググループの代表・責任者を務める加藤 正樹氏(関西医科大学医学部精神神経科学講座)、統括を務める渡邊 衡一郎氏(杏林大学医学部精神神経科学教室)、馬場 元氏(順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院メンタルクリニック)の3名に話を聞いた。「改訂の背景と概要、重症度別の治療」について取り上げた前編に続き、後編では「治療過程のフェーズ別の治療、サブタイプ・ライフステージ別の治療」について、紹介する。

老いに対する不安が老化を加速させる可能性も

 「心配ばかりしているとしわが増える」と言われるが、その影響は、しわの増加だけにはとどまらないかもしれない。新たな研究で、年を取ることに対して不安を抱いている女性は老化が早く、老化への恐れが細胞レベルでの老化を加速させていることが示唆された。米ニューヨーク大学(NYU)グローバル公衆衛生学大学院のMariana Rodrigues氏らによるこの研究は、「Psychoneuroendocrinology」2月号に掲載された。Rodrigues氏らは、「老いへの恐れは、その人の実年齢の積み重ねよりも速いスピードで身体の老化を招くことが分かった」と結論付けている。

がん患者の心血管疾患リスクに糖尿病が影響か

 がん治療の進歩により、生存期間が延びる患者が増える一方で、治療後に心血管疾患(CVD)を発症するリスクが新たな課題として注目されている。しかし、どのような患者がCVDを発症しやすいのかは、十分に明らかになっていない。今回、大阪府の大規模がん登録データを用いた解析で、がんの初回診断時に糖尿病を併存する患者では、CVDの新規発症および全死亡リスクが有意に高いことが示された。研究は、大阪国際がんセンターがん対策センターの桒原佳宏氏、宮代勲氏らによるもので、詳細は1月22日付で「PLOS One」に掲載された。

毎日のアスピリン服用で妊娠高血圧腎症の発症リスクが低下

 妊娠中の危険な高血圧症の発症率を、ある簡単な対応を取ることで減らせる可能性があるようだ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのElaine Duryea氏らの研究で、初回妊婦健診時に全ての妊婦にアスピリンを処方することが、重症所見を伴う妊娠高血圧腎症(以下、重症妊娠高血圧腎症)のリスク低下と関連することが明らかになった。この研究は、母体胎児医学会議(SMFM 2026、2月8〜13日、米ラスベガス)で発表された。Duryea氏は、「高リスク妊婦に対して直接アスピリンを提供する手法は、重症妊娠高血圧腎症の発症を遅らせ、場合によっては発症を完全に防ぐこともできるようだ」と述べている。

地方在住のがん患者は手術のために都市部へ行くべきか

 地方のがん患者は、主要な医療機関で治療を受けるために長距離移動することが多いが、そうした長旅は、必ずしも必要ではないかもしれない。肺がんまたは大腸がん患者を対象にした新たな研究で、地元の病院で治療を受けた場合と都市部の医療機関へ移動して治療を受けた場合で、死亡率や手術の転帰に大きな差は認められなかったことが明らかになった。米ルイビル大学外科学分野のMichael Egger氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に2月11日掲載された。

急性期統合失調症、24種の抗精神病薬をネットワークメタ解析/Lancet

 急性期統合失調症の薬物療法では、抗精神病薬の有効性には各薬剤間で臨床的に意義のある小~中の違いが存在し、忍容性はドパミンパーシャルアゴニストが全般的に良好で、新たな薬剤クラスのムスカリン受容体作動薬xanomeline-trospium(ドパミン受容体を主な標的としない初めての抗精神病薬)はドパミン拮抗薬にみられる有害作用を伴わないものの、コリン作動性および抗コリン作動性の有害事象を引き起こすことが、ドイツ・ミュンヘン工科大学のJohannes Schneider-Thoma氏らの調査で示された。研究の成果はLancet誌2026年2月28日号に掲載された。

1型糖尿病とCKD併存、フィネレノンがUACRを改善/NEJM

 1型糖尿病患者における慢性腎臓病(CKD)の治療では、30年以上前の研究に基づき、生活習慣、血糖値、血圧の最適化に重点が置かれ、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬が推奨されてきたが、これらの介入はCKDの進行を抑制する効果はあるものの、完全に阻止することはできないとされる。オーストラリア・University of New South WalesのHiddo J.L. Heerspink氏らは「FINE-ONE試験」において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンはプラセボと比較して、有効性と安全性の代替指標としての尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下させ、高カリウム血症が多くみられるものの重篤な有害事象の頻度に大きな差はないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年3月5日号で報告された。

心臓画像診断の放射線量比較が示したもの(解説:野間重孝氏)

心臓画像診断に伴う放射線被曝は臨床上しばしば議論される問題であるが、その実態を世界規模で比較した研究は多くない。JAMA誌オンライン版2026年2月25日号に掲載された本研究は、101ヵ国742施設における約2万例の検査を対象として、SPECT、PET、冠動脈CT angiography(CCTA)、冠動脈石灰化スコア(CACS)などの心臓画像検査に伴う患者被曝量を比較した国際調査である。著者らは検査法間および地域間の放射線量の差を示し、とくにCCTAで地域差が顕著であることを報告している。これらの結果から、放射線量低減のための教育や撮影プロトコルの標準化の重要性が強調されている。

アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの最適な投与量は

 アジテーションは、アルツハイマー病による認知症患者にとって最も苦痛な神経精神症状の1つであり、患者のQOLに重大な影響を及ぼし、介護者の負担を増大させる。ドーパミン受容体パーシャルアゴニストであるブレクスピプラゾールは、アジテーションのマネジメントに有望な薬剤である。パキスタン・King Edward Medical UniversityのHammad Javaid氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションのマネジメントに対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neurological Sciences誌2026年1月29日号の報告。

高リスクくすぶり型多発性骨髄腫への治療がもたらすベネフィット/J&J

 抗CD38抗体ダラツムマブ(商品名:ダラキューロ)において、2025年11月に高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)における進行遅延の適応が追加され、多発性骨髄腫の診断指標であるCRAB症状(高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変)が確認される前に治療を開始することが可能となった。これを受け、2026年2月25日に開催されたJohnson & Johnson(ヤンセンファーマ)の記者説明会において、福岡大学の高松 泰氏がSMMの治療開始基準とその課題を、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏がSMM治療の意義とAQUILA試験の結果を解説した。

うつ病診療ガイドライン、ゼロベースの改訂でどう変わったか

 日本うつ病学会は、2025年12月25日に『うつ病診療ガイドライン2025』を公開した。今回の改訂は、既存のガイドラインへの加筆修正ではなく、ゼロベースからの再構築となっている。そこで、本ガイドラインの改訂のポイントについて、作成ワーキンググループの代表・責任者を務める加藤 正樹氏(関西医科大学医学部精神神経科学講座)、統括を務める渡邊 衡一郎氏(杏林大学医学部精神神経科学教室)、馬場 元氏(順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院メンタルクリニック)の3人に話を聞いた。改訂のポイントについて「改訂の背景と概要、重症度別の治療」と「治療過程のフェーズ別の治療、サブタイプ・ライフステージ別の治療」に分け、前編と後編の2回にわたって紹介する。

日本人の腸内細菌叢、世界と異なる特徴は?

 ヒトの腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、宿主の免疫や代謝、健康状態と密接に関わっている。東京大学の西嶋 傑氏らの研究グループは、日本人5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、世界37ヵ国と比較した。その結果、日本人の腸内細菌叢にはビフィズス菌が豊富であり、9割が海藻の分解酵素を持つという独自の特徴や、腸内細菌叢の構成には特定の薬剤が大きく影響することなどが判明した。Proceedings of the Japan Academy, Series B誌2026年2月号に掲載。

約5人に1人が耳鳴りが原因で労働時間を減らしている

 耳鳴りは、簡単にやり過ごせるもののように思われがちだ。しかし、最新の研究によると、耳鳴りは人のキャリアに大きな影響を及ぼす可能性があるようだ。約5人に1人の成人が、耳鳴りが原因で労働時間を減らしたり、仕事を辞めたことがあると回答したことが明らかになった。英アングリア・ラスキン大学のEldre Beukes氏らによるこの研究結果は、「Brain Sciences」に1月29日掲載された。Beukes氏は、「一部の人にとって、耳鳴りは単なる持続的な音以上のものだ。安定した雇用や職場でのウェルビーイングの妨げとなり、難聴や不安、睡眠トラブルを引き起こすことも珍しくない」と述べている。

子どもの食物アレルギー、原因は遺伝だけではない

 子どもが食物アレルギーを発症するかどうかを決める要因は、遺伝子だけではないようだ。新たな研究で、抗菌薬の使用や他の免疫疾患の存在、アレルゲンとなる食品の導入が遅れることも、子どもの食物アレルギーの発症に関与している可能性のあることが示された。マクマスター大学(カナダ)のDerek Chu氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Pediatrics」に2月9日掲載された。Chu氏は、「われわれの研究結果は、食物アレルギーの傾向を遺伝だけで完全に説明することはできず、遺伝子、皮膚の健康、マイクロバイオーム、環境要因が重なり合って食物アレルギーの発症に関与していることを示している」とニュースリリースで述べている。