日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

日本における統合失調症治療、最新の推奨事項〜エキスパートコンセンサス

 従来の統合失調症薬物治療ガイドラインは、日常診療における臨床的に重要な問題すべてに対して十分に対応できていなかった。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、現在の臨床状況を反映させるため、日本臨床精神神経薬理学会(JSCNP)の2021年専門家コンセンサスを改訂することを目的とし、本研究を実施した。Schizophrenia誌オンライン版2026年6月2日号の報告。  JSCNPおよび日本神経精神薬理学会(JSNP)に所属する精神科専門医154人が、臨床的に関連性の高い21の状況における治療選択肢を9段階リッカート尺度(1=「強く反対」、9=「強く賛成」)を用いて評価した。

転移・再発乳がんへのパルボシクリブ、1次治療vs.2次治療~日本人大規模RWデータで検証

 HR+/HER2-転移・再発乳がん患者において、1次治療として内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が推奨されている。一方で、1次治療の期間は長期にわたるため、CDK4/6阻害薬特有の有害事象や経済毒性は無視できない課題となっている。CDK4/6阻害薬の1次治療使用群と2次治療使用群を比較した第III相無作為化比較試験(SONIA試験)では、2次治療での使用の妥当性が示された。東京医科大学の石川 孝氏らは、パルボシクリブ治療に関する日本における大規模多施設共同前向き観察研究を実施。その結果、SONIA試験の知見をリアルワールドデータで支持する結果が得られ、パルボシクリブを2次治療で導入する治療戦略の妥当性が示された。Breast Cancer Research誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。

“患者・市民の医療情報アクセス向上”のためのコンソーシアム発足

 患者・市民が治療選択や医療用医薬品の適正使用に必要な情報へ適切にアクセスできる環境整備を目指すため、「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」(代表世話人:奥瀬 正紀氏、垣添 忠生氏、片木 美穂氏、武川 篤之氏)が2026年7月1日に正式に発足した。  本コンソーシアムは、患者・市民が必要な医療情報へ適切にアクセスできる社会の実現を目的として設立されたマルチステークホルダーによる連携組織として、がんに限らずさまざまな疾患にわたって、患者団体を中心に、医療関係者、有識者、関係団体などが連携し、疾患啓発、治療選択、適正使用などに関する情報提供の在り方について議論・提言を行っていく。

急性感染症患者の鉄欠乏性貧血、鉄剤は投与する?/Blood

 鉄欠乏性貧血に対する静注鉄は速やかな鉄補充が期待できるが、急性感染症患者の場合は、病原体への鉄供給により感染を悪化させる可能性が懸念されている。そこで、米国・Charleston Area Medical CenterのHaris Sohail氏らは、鉄欠乏性貧血を有する急性感染症患者を対象に、静注鉄投与と生存、ヘモグロビン(Hb)値の回復などとの関連を検討した。その結果、静注鉄投与は検討したすべての感染症で14日および90日生存率の上昇と、Hb値の良好な回復に関連していた。本研究結果は、Blood誌2026年5月21日号に掲載された。

最も老化しにくい睡眠時間は?

 睡眠時間が短いことだけでなく、長すぎることも、多くの臓器の生物学的老化の加速指標と関連していることが報告された。生物学的老化の進行が最も緩やかな傾向は、1日の睡眠時間が6.4~7.8時間の人に見られるという。米コロンビア大学ヴァジェロス医学校のJunhao Wen氏らの研究によるもので、詳細は「Nature」に5月13日掲載された。 この研究では、英国で約50万人の一般住民を対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて、睡眠時間とさまざまな臓器の老化との関連性が検討された。睡眠時間は自己申告により評価された。一方、臓器の老化については、画像検査データ(in vivo imaging:生体内イメージング)、および、血漿中のタンパク質や代謝産物の網羅的なデータを機械学習により解析して、脳や心臓、肺、肝臓などの17の臓器・システムを含む23種類の「生物学的老化時計」を作成して評価した。

筆記動作が認知機能低下の手がかりに?

 筆記動作が、脳の老化の進行を示す手がかりになるかもしれない。新たな研究で、筆記に要する時間やストローク数などの時間的・運動学的特徴が、特に認知負荷の高い書き取り課題において、認知機能の程度と関連することが示された。研究グループは、筆跡解析が高齢者の認知機能低下を早期発見するための低コストの検査になり得るとの見方を示している。エヴォラ大学(ポルトガル)スポーツ健康学部のAna Rita Matias氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Human Neuroscience」に5月20日掲載された。

中等度~重度肥満者、週1回GLP-1/グルカゴン二重作動薬mazdutideの減量効果/JAMA

 中等度~重度の肥満を有する中国人成人において、GLP-1/グルカゴン受容体二重作動薬mazdutideの9mg週1回60週間皮下投与により、プラセボと比較して消化器系の有害事象が多かったものの、臨床的に意義のある体重減少が認められたことを、中国・Peking University People’s HospitalのLeili Gao氏らが、同国の27施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GLORY-2試験」の結果で報告した。肥満は世界的な問題であり、中国においても公衆衛生上の大きな課題となっていた。JAMA誌オンライン版2026年6月7日号掲載の報告。

実測GFRおよび推定GFRと、死亡・腎不全との関連/JAMA

 スウェーデンの成人において、実測糸球体濾過量(mGFR)が60mL/分/1.73m2の場合、90mL/分/1.73m2と比較して全死因死亡率および腎不全の発生率が高く、慢性腎臓病(CKD)の定義に用いられる現在の推定GFR(eGFR)の閾値60mL/分/1.73m2が支持されることが示された。また、mGFRと死亡との関連は、血清クレアチニン(cr)値と血清シスタチンC(cys)値に基づき算出したeGFR(すなわちeGFRcr-cys)で最もよく反映されていたが、cr値に基づくeGFRcrは死亡リスクを過小評価し、cys値に基づくeGFRcysは過大評価となることが示された。

便潜血単独法に対してピロリ菌便中抗原の同時併用検査の有用性は(解説:上村直実氏)

がんの中でも早期発見により死亡率が著明に減少するだけでなく、がんの予防にも連なる有用性が明らかになっている大腸がんと胃がん検診(スクリーニング)が世界中で注目されている。わが国の大腸がん検診は便潜血免疫検査(FIT)、胃がんに対してはバリウム検査と内視鏡検査を用いる従来の検診法が踏襲されている。最近、人間ドックや企業検診でピロリ菌感染の検査や血中ペプシノゲン検査による胃がんリスク検診も導入されつつあるが、検診の精度や費用対効果に関して従来法と比較した研究報告は見当たらない。

日本におけるがん薬剤費は10年で3倍に、総医療費最大は肺がん

 日本の全国レセプトデータベース(NDB)を用いて、2011~22年にがん診療を受けた約2,320万人を対象とした大規模解析が実施された。その結果、がん診療に伴う医療費は日本の経済成長率を大きく上回るペースで増加しており、とくに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とする新規抗がん薬が医療費増加の主要因であることが明らかになった。京都大学の福山 啓太氏らによる研究はScientific Reports誌オンライン版2026年6月15日号に掲載された。

日本における小児ADHDに対する薬物療法の現状、最も好まれる薬剤は?

 小児の注意欠如多動症(ADHD)は、日本において増加傾向にある神経発達障害である。ADHDの治療において、薬物療法は重要な治療法の1つであるにもかかわらず、ADHD治療薬の処方実態はこれまで十分に解明されていなかった。北里大学の鈴木 龍太郎氏らは、日本の17歳以下の小児および青年におけるADHD治療薬の処方パターンを調査し、性別、年齢、診療科といった患者背景に基づいて薬剤選択の傾向を分析した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年5月14日号の報告。

精神疾患が障害による健康損失の最大の原因に

 2023年時点で精神疾患を抱えていた人は世界で約12億人に上り、1990年と比べてほぼ2倍に増加したことが、新たな大規模研究で明らかになった。また、精神疾患は現在、世界の障害による健康損失(障害生存年数〔YLD〕)の最大の原因となっていることも示された。Queensland Centre for Mental Health Research(オーストラリア)のDamian Santomauro氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet」5月23日号に掲載された。Santomauro氏は、「こうした増加傾向は、パンデミックに関連したストレスの長期的な影響に加え、貧困、不安定な生活環境、虐待、暴力、社会的つながりの希薄化といった、より長期的な構造的要因を反映している可能性がある」と述べている。

加工食品の保存料は心疾患リスクを高める?

 出来合いの食品や冷凍食品は購入後も比較的長く保存できるという利便性がある一方、心血管疾患リスクを高める可能性もあることが示された。ソルボンヌ・パリ・ノール大学(フランス)およびパリ・シテ大学(フランス)のAnais Hasenbohler氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal」に5月20日掲載された。  工場で製造される加工食品には、さまざまな保存料が添加されている。Hasenbohler氏は、「実験的な研究では、一部の保存料が心血管の健康に有害な影響を与える可能性が示唆されている。しかし、こうした成分が人間に与える影響について、これまで十分なエビデンスはなかった。われわれの知る限りでは、これほど幅広い種類の保存料と心血管の健康との関連について調べた研究は、今回が初めてだ」と述べている。

国産手術ロボットhinotoriによる大腸がん手術、94例の初期成績を報告

 ロボット支援手術の普及が進む中、日本初の国産手術支援ロボット「hinotori」の大腸外科領域における臨床データが報告された。今回、京都大学医学部附属病院でhinotoriによるロボット支援大腸手術を受けた大腸がん患者94例を解析した結果、開腹移行例やClavien-Dindo分類Grade III以上の重篤な術後合併症は認められなかった。著者らは、hinotoriを用いた大腸がん手術は安全かつ実施可能であることが示されたとしている。報告は京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏、板谷喜朗氏らによるもので、4月25日付の「Journal of the Anus, Rectum and Colon」に掲載された。

糸球体疾患によるCKD、フィネレノンが有用/JAMA

 糸球体疾患を有する非糖尿病性慢性腎臓病(CKD)患者において、フィネレノンにより腎機能低下の抑制、アルブミン尿の減少、および腎不全または著しい腎機能低下リスクの減少が認められた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らFIND-CKD Investigatorsが、24の国・地域で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「FIND-CKD試験」の、事前に規定された探索的解析結果を報告した。糸球体疾患は、CKDおよび腎不全の主たる原因である。非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンは、CKDにおける腎機能低下のリスクを低減するが、糸球体疾患に起因するCKD患者における有効性は不明であった。

コントロール不良の2型糖尿病、週1回皮下投与のretatrutideが有効/Lancet

 食事療法および運動療法のみではコントロール不十分な2型糖尿病成人患者において、retatrutide単独療法はプラセボと比較し、血糖コントロールおよび体重減少に関して有意な改善を示し、有害事象のプロファイルは既知のGLP-1受容体作動薬と一致していた。カナダ・LMC Diabetes and EndocrinologyのHarpreet S. Bajaj氏らが、米国、メキシコおよびインドの48施設で実施した40週間の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TRANSCEND-T2D-1試験」の結果を報告した。retatrutideは、GIP、GLP-1およびグルカゴンの3つのホルモンの受容体作動薬で、2型糖尿病、肥満、および関連する合併症を対象に臨床開発が進められている。Lancet誌2026年6月13日号掲載の報告。

HER2陽性胃がんに対する二重特異性抗体薬zanidatamabの有用性―トラスツズマブとの比較試験(解説:上村直実氏)

最近、分子標的薬を含む生物学的製剤の開発が進み、がん診療において効率の良い治療レジメンを選択するためにバイオマーカー検査が必須となっているが、胃がん治療でも「HER2」「PD-L1」「MSI」「Claudin18.2」の4つのバイオマーカー検査の確立に伴って切除不能胃がんに対する薬物療法が急激な変化を遂げている。HER2陽性胃がんに対する標準治療は、従来の化学療法に抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブを追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されているが、今回、日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験の結果、2つの抗原を同時に標的とする二重HER2標的抗体薬であるzanidatamab+抗PD-1抗体チスレリズマブと化学療法の併用もしくはzanidatamab+化学療法の併用治療が、従来の標準治療であるトラスツズマブ+化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが2026年5月のNEJM誌に報告された。

転移TN乳がん1次治療におけるDato-DXd、TROPION-Breast02の日本人サブ解析/日本乳癌学会

 免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)の1次治療としての有効性と安全性を治験責任医師選択の化学療法(ICC)と比較した国際第III相TROPION-Breast02試験における日本で登録された38例での解析結果を、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が第34回日本乳癌学会学術総会で報告した。  本試験では、ITT集団において全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)が、Dato-DXd群で有意な改善が認められたことがESMO2025で報告されている。

ピボキシル基を有する小児用抗菌薬、低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖を「重要な基本的注意」に追記/厚労省

 2026年6月30日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、ピボキシル基を有する小児用抗菌薬4成分に対し、「重要な基本的注意」の項に低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖に関する注意事項が追記された。対象となる一般名および主な販売名は以下のとおり。 <対象医薬品> ・セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(商品名:フロモックス小児用細粒100mgほか) ・セフジトレン ピボキシル(商品名:メイアクトMS小児用細粒10%ほか) ・セフテラム ピボキシル(商品名:トミロン細粒小児用20%) ・テビペネム ピボキシル(商品名:オラペネム小児用細粒10%)

帯状疱疹、感染部位も認知症リスクに影響する可能性/日本皮膚科学会

 近年、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の罹患が認知症の発症リスクを上昇させる可能性や、帯状疱疹ワクチンの接種がそのリスクを低減させる可能性を示す研究が相次いで報告されている。下畑 享良氏(岐阜大学)らは、「VZVの罹患は認知症の危険因子か?」という臨床疑問を検討することを目的に、21論文を対象としてスコーピングレビューを実施。このレビューからみえてきたVZV罹患と認知症発症の関連や、ワクチンが及ぼす影響などについて、最新の研究結果も踏まえて下畑氏が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。