日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

物質使用障害(SUD)のリスク低減にGLP-1受容体作動薬は有効か(解説:小川大輔氏)

物質使用障害(SUD:Substance Use Disorder)は、特定の物質の使用を制御できなくなり、健康上の問題や社会生活への支障があっても使用を続けてしまう慢性・再発性の疾患である。アルコール(お酒)やタバコ(ニコチン)のほか、処方薬(睡眠導入剤、鎮痛剤など)、覚醒剤、大麻、コカイン、オピオイドなど、脳に作用するさまざまな物質によって引き起こされる。今回、GLP-1受容体作動薬と米国退役軍人の糖尿病患者におけるSUDリスクの関係を調査した研究結果が発表された1)。電子カルテのデータを用いて、各種SUDの新規発症と、既存SUD患者の臨床アウトカム(救急外来、入院、死亡、過量摂取、自殺念慮・試み)を調査したところ、GLP-1受容体作動薬の使用は新規および既存のSUDのリスク低減に関連している可能性が報告された。

EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがアジア人でもOS良好(MARIPOSA)/日本臨床腫瘍学会

EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善することが示されている1)。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、本試験のアジア人集団におけるOSなどのアップデート解析結果が、林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、アジア人集団においてもオシメルチニブ単剤と比較してOSが良好であることが示された。なお本演題は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2025)のアンコール演題であったが、日本人集団のpost-hoc解析結果が追加された。

HR+HER2-転移・再発乳がんへのSG、日本人での有効性と安全性(ASCENT-J02)/日本臨床腫瘍学会

 日本人の既治療HR+HER2-転移・再発乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の有効性・安全性を評価した非盲検第I/II相ブリッジング試験(ASCENT-J02試験)の結果、国際第III相TROPiCS-02試験における結果と同程度の効果が認められ、安全性についても既知の安全性プロファイルと同様であったことが報告された。国立国際医療センターの下村 昭彦氏が、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で同試験の第II相HR+HER2-転移・再発乳がんコホートの結果を発表した。

虚血の急性期治療が瘢痕関連VTアブレーション成績に及ぼす影響~TITAN-VT/日本循環器学会

虚血性心筋症(ICM)に伴う瘢痕組織関連心室頻拍(VT)に対するカテーテルアブレーションは、急性心筋梗塞(AMI)発症から5時間以内の早期再灌流により良好な結果をもたらすことが、「TITAN-VT研究」より示唆された。西村 卓郎氏(東京科学大学 循環器内科)が3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて報告した。  AMIに対する早期再灌流は、梗塞サイズを縮小し、左室機能の保存や生存率の向上に寄与するため、最新の『急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)』ではST上昇型心筋梗塞(STEMI)の発症から90分以内に搬送し、primary PCIを実施することが推奨されている1)。

リチウムが高齢の軽度認知障害患者の言語記憶低下を抑制か

 気分障害の治療に用いられるリチウムは、抑うつや不安などに有効であるだけでなく、脳にも利点をもたらすようだ。予備的な臨床試験で、低用量のリチウムの錠剤が、軽度認知障害(MCI)がある高齢者の言語記憶能力の低下を遅らせる可能性が示された。米ピッツバーグ大学精神医学分野のAriel Gildengers氏らが実施したこの試験の詳細は、「JAMA Neurology」に3月2日掲載された。Gildengers氏らは、「今回の臨床試験の結果は決定的なものではないが、より大規模な追加試験を実施する必要性を示すには十分な有望な兆候が得られた」と説明している。

うつ病患者の死亡リスク低下に有効な食事パターンは?

 食事は、うつ病の発症に重要な役割を果たしている。しかし、食習慣がうつ病患者の死亡率に及ぼす影響は、これまで明らかになっていなかった。中国・中南大学のHonghui Yao氏らは、成人うつ病患者における6つの食習慣とすべての原因による死亡率および死因別死亡率との関連性を調査した。European Journal of Nutrition誌2026年2月12日号の報告。  対象は、英国バイオバンクの参加者のうち、うつ病と診断され、診断後24時間食習慣評価を1回以上受けた5,368例(2006~10年に登録)。食事データは、ベースライン時および4回のオンラインフォローアップ調査を通じて収集した。

変わるドライアイ治療:“自覚症状”に着目した新しい治療選択肢の登場/千寿

 2026年3月、千寿製薬は世界初のTRPV1拮抗作用を持つドライアイ治療薬、モツギバトレプ(商品名:アバレプト懸濁性点眼液0.3%)に関するプレスセミナーを開催した。セミナーではモツギバトレプの開発経緯の紹介の後、堀 裕一氏(東邦大学医療センター大森病院 眼科 教授)が「ドライアイの新たな側面を捉える」というテーマで講演をした。  日本国内のドライアイ患者は2,200万人を超えるとされており、現代のライフスタイルや高齢化によって患者数は増加傾向にある。ドライアイは涙液層の安定性の低下と瞬目時の摩擦亢進が相互に悪循環を形成することで炎症が起こり、眼表面障害と眼の乾きや不快感などの症状を引き起こす。これらの症状は患者さんのQOL低下につながることが示唆されており、実際に患者さんの治療に対するニーズは自覚症状に対する早期の改善効果である。

急性期脳梗塞、AI活用臨床意思決定支援で新規血管イベント減少/BMJ

 急性期虚血性脳卒中患者において、脳卒中臨床意思決定支援システム(CDSS)の使用により、通常ケアと比較し3ヵ月後の新規血管イベントの発生が有意に減少したことが示され、脳卒中CDSSによる介入は脳卒中ケアの質の向上と長期的な血管イベントの減少に有効であることが、中国・首都医科大学のXinmiao Zhang氏らが実施した「GOLDEN BRIDGE II試験」で示された。人工知能(AI)を用いた脳卒中CDSSは、脳卒中のアウトカムと医療サービスを改善するための革新的で有望なアプローチであるが、脳卒中医療におけるAIの応用は無作為化比較試験による厳密な評価を受けておらず、脳血管疾患の治療におけるCDSSの使用は現状では限定的であった。BMJ誌2026年3月21日号掲載の報告。

無症候性の重症大動脈弁狭窄症、早期手術vs.保存的治療の10年転帰/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、早期手術は保存的治療と比較して、10年時点の手術死亡または心血管死の複合エンドポイントの発生リスクが有意に低いことが、韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らによる多施設共同無作為化非盲検試験「RECOVERY試験」の最終解析の結果で示された。本試験では、最後の患者登録から4年後までの追跡調査における解析で、同複合エンドポイントの発生は保存的治療より早期手術で有意に低いことが示されていたが、長期アウトカムの有益性は依然として不明であった。NEJM誌2026年3月26日号掲載の報告。

新生児のフェニルケトン尿症に対応する治療薬発売/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)顆粒分包を2026年3月18日に発売した。  PKUは、まれに起こる先天性代謝異常疾患であり、フェニルアラニン(Phe)と呼ばれる必須アミノ酸を分解できないことが特徴で、神経学的症状やその他の症状を引き起こす。未治療や管理が不十分な状態が続き、Pheが体内に有害なレベルまで蓄積した結果、長年にわたり知的障害、痙攣発作、発達遅延、認知能力低下、行動および感情の問題など、重度かつ不可逆的な障害が生じる。現在、新生児ではスクリーニングで診断が行われており、世界中で約5万8,000人の患者が推定されている。

進行乳がん1次治療中にESR1変異出現でcamizestrantに切り替え、SERENA-6試験の日本人解析/日本臨床腫瘍学会

 SERENA-6試験は、ER+/HER2-の進行乳がんに対して1次治療のアロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法中、病勢進行する前にctDNA検査でESR1変異が検出された患者において、CDK4/6阻害薬を継続しAIを経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)camizestrantに切り替えることの有用性を検討した国際共同第III相二重盲検試験である。すでに中間解析(データカットオフ:2024年11月28日)で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善(ハザード比[HR]:0.44、p<0.0001)が報告されている。今回、日本人集団の結果(データカットオフ:2025年6月30日)について、名古屋市立大学の岩田 広治氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。

膵がん1次治療、NALIRIFOX療法の日本人における一貫性を確認/日本臨床腫瘍学会

 遠隔転移を有する未治療の膵管腺がん患者に対し、NALIRIFOX療法は、標準治療のゲムシタビン+nab-パクリタキセル(Gem+nab-PTX)療法と比較し、全生存期間(OS)を有意に延長することが国際共同第III相試験であるNAPOLI-3試験において示された。  NAPOLI-3試験では日本人データが得られていないため、国内適応に向けたブリッジング試験(S095013-169試験)が行われた。すでに昨年有効性に関する報告がされたが、今回、全生存期間(OS)を含む最終解析結果が報告され、いずれも日本人患者におけるNALIRIFOX療法の有効性と安全性がNAPOLI-3試験の結果と一貫していることが示された。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国立がん研究センター東病院の佐々木 満仁氏が発表した。

日本人の全般性不安症患者が抱える満たされないニーズ判明

 ヴィアトリス製薬の野本 佳介氏らは、臨床試験に参加した日本人の全般性不安症(GAD)患者を対象に、本研究を実施した。疾患認識レベル、過去の医療を求める行動および診断歴、症状と日常生活への影響、診断および臨床評価に対する認識、そして試験参加後の変化を調査した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年2月24日号の報告。  本研究は、ウェブベースの質問票を用いた量的(記述的)研究として、2025年4月23日〜5月25日に実施した。対象患者は、DSM-5に基づきGADと診断され、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬ベンラファキシンのB2411367臨床試験に登録歴のある患者。症状と疾患負担に関する患者の直接的な経験は、自由記述式回答によって収集した。

抗コリン薬の使用は心血管イベントリスクの上昇と関連

 抗コリン薬と呼ばれる一般的な薬剤の使用が、心不全などの重篤な心血管疾患のリスク上昇と関連する可能性が新たな研究で示された。抗コリン薬を最も多く使用していた人では、非使用者と比べて心血管イベントリスクが71%高かったという。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のHong Xu氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に2月28日掲載された。ただし、本研究は観察研究であり、抗コリン薬が心疾患を直接引き起こすことを証明したものではない。  抗コリン薬は、神経伝達物質のアセチルコリンの働きを抑える薬剤で、睡眠補助薬や抗ヒスタミン薬、尿失禁治療薬、一部の抗うつ薬などさまざまな処方薬や市販薬に含まれている。

中等度CKDの腎機能追跡、クレアチニン・シスタチンC併用eGFRが良好/BMJ

 血清クレアチニンとシスタチンCの両方のバイオマーカーを用いた糸球体濾過量(GFR)の推算式は、それぞれの単一バイオマーカーに基づく推算式より、実測GFRの変化との一致率が高いことが、英国・バーミンガム大学のKatie Scandrett氏らによる前向きコホート研究の結果で明らかになった。慢性腎臓病(CKD)のモニタリングはGFRを用いて行われているが、実測GFRはあまり使用されていない。一方、血清クレアチニン値に基づく推算糸球体濾過量(eGFR)が一般的に使用されているが、不正確な場合があるという課題があった。BMJ誌2026年3月19日号掲載の報告。

弁疾患と冠動脈疾患の併存、FFRに基づくCABGでアウトカム改善/Lancet

 待機的弁手術が予定されている冠動脈疾患を有する患者において、血管造影によるFFR(冠血流予備量比)に基づく冠動脈バイパス術(CABG)は、冠動脈造影による解剖学的指針に基づくCABGと比較し、周術期複合アウトカムの発生を低下させたことが示された。中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のYunpeng Zhu氏らが、中国の3次医療施設12施設で実施した研究者主導の無作為化三重盲検試験「FAVOR IV-QVAS試験」の結果を報告した。冠動脈疾患を併発している弁手術予定患者に対し、現行ガイドラインでは、冠動脈造影で評価された狭窄の重症度に基づき、解剖学的指針に基づくCABGを行うことが推奨されているが、FFRに基づく戦略がこの患者集団において臨床アウトカムを改善しうるかどうかは検討されていなかった。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。

高血圧診断後の生活習慣改善は心血管リスク低下と関連するか

 高血圧患者約2.6万例を対象とした大規模前向きコホート研究において、生活習慣と心血管疾患および2型糖尿病リスクの関連を検討した結果、健康的な生活習慣の実践は降圧薬使用とは独立してこれらのリスク低下と関連しており、高血圧診断後であっても生活習慣の改善度が高いほどベネフィットが大きいことが、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのZixin Qiu氏らによって示された。JAMA Network Open誌2026年3月2日号掲載の報告。  一般集団では、健康的な生活習慣の順守により心血管疾患の予防が可能であることが示唆されている。

EGFR変異NSCLC、オシメルチニブ+化学療法の日本人解析結果(FLAURA2)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して、日本人集団においても無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が良好であった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」の日本人集団の結果を柳谷 典子氏(がん研究会有明病院)が報告した。日本人集団のOSの解析結果は、2025年11月に開催された第66回日本肺癌学会学術集会でも報告されていたが、今回はさらに詳細な結果が報告された。

T-DXdが胃がん2次治療に、胃癌学会がガイドライン速報発表

第一三共は2026年3月23日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)の添付文書改訂が行われ、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんの2次治療として使用が可能となったことを発表した。今回の改訂は、2025年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたDESTINY-Gastric04試験の結果に基づくもの。HER2陽性胃がん/胃食道胃接合部腺がんに対し、T-DXdはそれまでの標準2次治療であるラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX)療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長することが示された。

働く世代の肥満・肥満症への正しい理解を促す取り組み始動/日本糖尿病協会

 3月4日の「世界肥満デー」に日本糖尿病協会(JADEC)は、都内で「肥満アドボカシー活動」のスタートに関して記者発表会を開催した。このセミナーは、糖尿病発症の重要なリスク因子である肥満を「ダイアベティス(糖尿病)の前段階」と位置付け、厚生労働省などと連携し、就労世代を対象とした全国的な「肥満アドボカシー活動」の開始を表明したもの。同協会では、今回の活動によりダイアベティス予防を社会に広げ、予防の入口から環境を変える取り組みに踏み出す。