日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

ESC心不全GL改訂、HFmrEF廃止・「急性心不全」は「非代償性心不全」へ/ESC2026

 欧州心臓病学会(ESC)による新たな心不全診療ガイドライン「2026 ESC Guidelines for the management of heart failure」がEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号でオンライン公開され1)、8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において改訂の要点が解説された2)。今回の改訂では、疾患の予防と早期治療の徹底、左室駆出率(LVEF)に基づく分類の簡素化、「急性心不全」から「非代償性心不全」へ名称変更、新たな治療分類(FMT・AMT・GDIT)の導入など、時代に即した大幅な再定義が行われている。

亜鉛欠乏はCKM症候群の進行リスクを高めるか

心血管・腎・代謝(CKM)症候群は、代謝異常、慢性腎臓病(CKD)、心血管疾患が連続的に進展する疾患概念として注目されている。微量元素の1つである亜鉛が欠乏することで心血管・腎アウトカムの悪化をもたらすことが報告されているものの、CKM症候群の進行との関連は十分に明らかでない。今回、台湾・Chi Mei HospitalのKuan-Chieh Tu氏らは、CKMステージ1または2の成人において、亜鉛欠乏はCKMステージ3~4への進行リスク上昇と有意に関連していたことを明らかにした。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2026年7月23日号に掲載された。

医師の患者を安心させようとする言葉が裏目に出ることも

 患者を安心させようと気遣う医師の対応が、かえって逆効果になることがあるようだ。医師から症状は「normal」、つまりよく見られる症状と言われると、患者は「治療を受ける必要はない」と受け取り、治療を受けようとする意欲が低下する可能性が、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)ラディ経営大学院マーケティング分野教授のOn Amir氏らによるこの研究は、8月10日付で「Nature Human Behaviour」に掲載された。論文の上席著者であるAmir氏は、「医師は通常、患者の不安を和らげようとする善意からこのような対応を取る。だが、なぜかそれが裏目に出てしまうのだ」と述べている。

セマグルチド使用後に食欲が戻ったと感じても摂取量は抑制される

 肥満症に対してGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)であるセマグルチドによる治療を開始後、しばらくすると食欲が元に戻ったように感じることがあるが、少なくとも60週間は、実際の摂取エネルギー量が有意に少ない状態が維持されることが分かった。米ペンシルベニア大学のJena Tronieri氏らが行ったプラセボ対照二重盲検比較試験(RCT)の結果であり、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」8月号に掲載された。  セマグルチドによる食欲抑制、摂取エネルギー量低下、体重減少効果は、主として介入期間が20週間ほどの研究で示されてきており、より長期間介入した場合のそれらの変化については不明点が残されている。

アトピー性皮膚炎に、Tregを調節する新規IL-2受容体作動薬が有望/Lancet

 中等度~重度のアトピー性皮膚炎患者において、rezpegaldesleukinはプラセボと比較して、重症度評価指標のEczema Area and Severity Index(EASI)スコアの変化率を含む複数の臨床評価項目を有意に改善し、良好な有害事象プロファイルをもたらすことが示された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らREZOLVE-AD Study Investigatorsが「REZOLVE-AD試験」の結果を報告した。rezpegaldesleukinは、制御性T細胞(Treg)を選択的に増殖させ、その機能を強化するインターロイキン-2(IL-2)受容体作動薬であり、アトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患や炎症性疾患に新たな治療アプローチを提供すると考えられている。研究の成果は、Lancet誌2026年8月29日号で報告された。

急性期脳梗塞、血栓回収術後の頭位挙上は有効か/BMJ

 血栓回収術で再灌流に成功した急性期虚血性脳卒中患者において、頭位挙上は頭位を水平位置に保つ場合と比較して、機能的アウトカムを改善せず、全死因死亡率にも差は示されなかった。中国・西南医科大学のZhengzhou Yuan氏らが「HeadSOAR試験」の結果で報告した。血栓回収術後の最適な頭位は不明とされ、血行動態の安定と脳浮腫の予防のどちらを優先すべきかについては相反するエビデンスが存在するという。研究の成果は、BMJ誌2026年8月20日号に掲載された。

PREVENT時代にCACスコアは何を加えるのか―予測能と臨床的有用性を巡って(解説:野間重孝氏)

2026年ACC/AHA/Multisociety脂質異常症ガイドラインでは、動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)の1次予防における10年リスク評価に、Predicting Risk of Cardiovascular Disease EVENTS(PREVENT)によるASCVD予測式が採用され、境界域リスク(3%以上5%未満)または中間リスク(5%以上10%未満)でスタチン開始の判断が定まらない場合には、冠動脈石灰化(coronary artery calcium:CAC)スコアを考慮することが推奨された1)。

心筋梗塞の定義、3分類へ刷新/ESC2026

心筋梗塞の診断は、高感度心筋トロポニン検査や冠動脈・心臓イメージングの普及により精緻化してきた一方、従来のタイプ分類は日常診療で一貫して適用しにくい場面があった。そこで今回、英国のNicholas L. Mills氏を筆頭とするESC/ACC/AHA/WHF合同タスクフォースは、心筋梗塞のユニバーサル定義第5版(The Fifth Universal Definition of Myocardial Infarction:UDMI)を策定し、心筋梗塞を病態生理と臨床状況に基づき3分類へ再編、急性・慢性心筋障害との区別や診断基準などを更新した。本声明は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)での発表とともにEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号にも掲載された。

アルツハイマー病に伴うアジテーション、抗うつ薬併用有無でブレクスピプラゾールの有効性に違いはあるか

 抗うつ薬使用の有無により、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性に違いはあるのかを明らかにするため、米国・Connecticut Clinical ResearchのC. Brendan Montano氏らは、ブレクスピプラゾールの2つの第III相臨床試験のデータを統合し、事後解析を実施した。The American Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2026年6月30日号の報告。  ブレクスピプラゾールに関する2つの第III相試験(12週間、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照)のデータを統合した。事後解析として、抗うつ薬使用の有無により患者を層別化した。有効性はCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、安全性は治療中に発現した有害事象(TEAE)を用いて評価した。

卵巣明細胞がん治療薬リソバリシブ使用時の高血糖に関する注意喚起/日本糖尿病学会

 卵巣明細胞がんの新たな治療薬としてPI3Kα阻害薬リソバリシブ(商品名:ハイツエキシン)が発売された。リソバリシブはその薬剤特性から高い有効性とともに、高血糖リスクが懸念される。日本糖尿病学会は、同薬の高血糖などで紹介を受ける糖尿病医への情報共有を目的に「PI3Kα阻害剤リソバリシブメシル酸塩水和物使用時の高血糖発現についての注意喚起」を発出した。  卵巣明細胞がんではPIK3CA遺伝子変異が高頻度に認められ、PIK3CAがコードするPI3Kαは有望な治療標的である。

高リスク閉塞性睡眠時無呼吸、スマートウォッチが高精度に検出

 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は心血管疾患や神経認知機能障害などの長期的影響と関連する一方、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査へのアクセスや費用の問題から診断・治療がなされないことが少なくない。今回、米国・スタンフォード大学のArash Alavi氏らは、一般消費者向けスマートウォッチであるSamsung Galaxy Watchによる中等症~重症OSAおよび高リスクOSAの検出性能を前向きに検討した。その結果、Galaxy Watchは中等症~重症OSAを高い精度で検出し、PSG由来の低酸素負荷(HB)で定義した高リスクOSAの識別でも良好な性能を示した。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2026年8月27日号に掲載。

がん既往CKM症候群でもフィネレノンの効果は一貫(FINE-HEART)/Eur Heart J

心血管・腎・代謝(CKM)症候群では、共通のリスク因子や病態機序を背景にがんを併存する患者が少なくない。しかし、がん既往を有するCKM症候群患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンの有効性・安全性が同様に得られるかは明らかではない。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMihaly Ruppert氏らは、FINE-HEART統合解析を用いて、がん既往の有無別の臨床像、転帰、フィネレノンの治療反応を検討した。その結果、がん既往は全死亡および全入院リスクの上昇と関連したが、フィネレノンの治療効果はがん既往の有無にかかわらず一貫していた。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月18日号に掲載された。

ビーガン食、わずか1カ月で「細胞の老化」に変化

 たとえ短期間でもビーガン食に切り替えることで、炎症が軽減し、細胞レベルで老化が遅くなる可能性が、新たな研究で示された。わずか1カ月間だけビーガン食を取り入れた人では、肉類を多く含む食事を取った人と比べて、炎症の軽減や生物学的老化の減速に関連するDNAメチル化に変化が認められたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部神経科学分野のJerome Mertens氏らによるこの研究結果は、8月3日付で「MedComm」に掲載された。

PREVENT-ASCVD式に石灰化スコア追加、予測能への影響/JAMA

 45~79歳の米国成人において、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスク推定式であるPredicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)-ASCVDに、冠動脈石灰化(CAC)スコアを追加しても、すべてのリスク群全体でモデルの識別能および再分類能の改善はわずかであり、一部の群では変化がみられなかった。米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のXiaoning Huang氏らが、同国6施設で実施された縦断的コホート研究「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis:MESA試験」の解析結果を報告した。

ブンディブギョ型エボラ出血熱に承認済みワクチンは有効か?/Lancet

 米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMegan Halbrook氏らは、ブンディブギョ型エボラウイルス(BDBV)によるエボラウイルス病の過去最大の流行(2026 outbreak)が続いているコンゴ(旧ザイール)における縦断的コホート研究の結果、エボラウイルス(EBOV)によるエボラウイルス病に対して承認されている組み換え水疱性口内炎ウイルス-ザイールエボラウイルス糖タンパク質(rVSVΔG-ZEBOV-GP)ワクチンは、BDBVに対して交差反応性抗体反応を示したことを報告した。ただし、地域によってその反応性は異なっていた。BDBVによるエボラウイルス病に対して承認されたワクチンは存在しない。これまでに、rVSVΔG-ZEBOV-GPワクチン接種後にBDBVに対する交差反応性抗体反応が生じることはヒトにおいて示されているが、BDBV流行中に同ワクチン接種を受けた集団における反応の持続性や経時的な動態は不明であった。著者らは、「血清反応性に地域による違いがみられたことから、関連する疫学的および免疫学的要因についてさらなる研究が必要である。今回の知見は、現在のBDBV流行地の居住集団における、承認済みエボラウイルス病ワクチン接種後のBDBV血清反応性を明らかにした初めてのデータであり、本流行中にrVSVΔG-ZEBOV-GPワクチンの厳密な臨床評価を行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年8月25日号掲載の報告。

高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。

キシリトールが心血管イベント増加と関連/ESC2026

 人工甘味料のキシリトールは食品や口腔ケア製品などに広く使用されているが、一般集団における長期的な心血管安全性に関するエビデンスは限定的である。今回、カナダ・マギル大学のThomas M. Zheng氏らの研究グループが、北米と欧州の2つの大規模前向き観察コホートのデータを用いて解析した。その結果、血中キシリトール濃度が高い一般集団において、主要心血管イベント(MACE)リスクが有意に上昇することが示された。本研究結果は、ドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において8月29日に発表された。

急性期統合失調症に対する8つの抗精神病薬とKarXTとの比較~ネットワークメタ解析

 米国FDAは、xanomelineとtrospiumを配合したKarXTを統合失調症の新たな治療薬として2024年に承認した。KarXTは、成人統合失調症患者を対象とした3つのランダム化比較試験(RCT)において、プラセボに対する優越性が報告されている。しかし、従来の抗精神病薬との比較は明らかになっていない。英国・LumanityのConor Hickey氏らは、急性期統合失調症の治療に対する8つの第2世代抗精神病薬とKarXTの相対的な有効性、安全性、忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Journal of Comparative Effectiveness Research誌2026年8月号の報告。

若年婦人科がん40年にわたる死亡率・罹患率の変化(NORDCANレジストリ)

 北欧諸国における若年(0~49歳)の婦人科がん患者を対象とした国際コホート研究の結果、子宮体がん、卵巣がん、子宮頸がんそれぞれ独自の動向が示された。  本研究は、スウェーデン・カロリンスカ研究所のCharlotta Riese氏ら(PredictAYAコンソーシアム)によるものであり、Gynecologic Oncology誌オンライン版2026年8月19日号で発表されている。  子宮体がん、卵巣がん、子宮頸がんは中高年女性に多くみられるが、若年女性においては特有の危険因子(肥満、経口避妊薬の使用、HPV感染など)や臨床的特徴を持つため経時変化が異なる可能性がある。しかし、若年層に焦点を当てた長期的な疫学動向は十分に解明されていなかった。

組織的なスポーツ活動で自閉症スペクトラム症の子どもの運動能力が向上

 自閉症スペクトラム症(ASD)の子どもは運動能力の課題を抱えていることが少なくないが、組織的なスポーツ、特に武道や水中トレーニングによって、運動能力が向上する可能性が報告された。米オールド・ドミニオン大学のSonia Khurana氏らが行ったシステマティックレビューの結果であり、詳細は「Developmental Medicine & Child Neurology」に7月22日付で掲載された。  ASDの診断基準に、運動能力に関する項目は含まれていない。しかし、最近報告されたメタ解析から、ASDの子どもの50~88%が、バランス感覚、手と目の協調性、微細運動の制御、手先の器用さなどに、何らかの困難を抱えていると推定されている。