日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

TP53共変異を伴うEGFR陽性進行肺がんに対するオシメルチニブ+化学療法(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療は、FLAURA2試験の結果を受け、オシメルチニブ+プラチナ併用化学療法が臨床の現場で幅広く選択されている。しかし、併用療法は骨髄抑制や消化器毒性を伴い、頻回の点滴通院が必要となる。故に、本当に併用療法が必要な集団はどのような症例か、といった議論は今も絶えない。その選別の一助となりうるのが、EGFR陽性例の約50%に認められる「TP53共変異」である。TP53変異はゲノム不安定性やアポトーシス回避を惹起し、EGFR-TKI単剤に対する初期耐性をもたらす強力な予後不良因子として知られる。

静岡がんセンター、世界の専門家を招く「Oncology Seminar」をスタート

 静岡県立静岡がんセンターは2026年8月、国内外のがん診療の専門家を招く「Shizuoka Cancer Center Oncology Seminar」をスタートした。英語で講演とディスカッションを行う30分間のウェビナーで、以後月1回開催が予定されている。国内と海外の演者が交互に登壇し、最新のがん診療について学ぶとともに、若手医師が英語で議論する機会をつくることも狙いだ。  セミナー企画の中心となったのは、同センター消化器内科(胆膵)医長の大場 彬博氏。企画の出発点には、従来の院内勉強会をもっと魅力あるものにしたいという思いがあった。

小児の毎日続く頭痛、専門医受診遅延が治療結果に及ぼす影響が明らかに

 小児の毎日続く頭痛(連日性頭痛)は、難治性であり、日常生活に支障を来す疾患である。しかし、連日性頭痛の発症から専門医への初回受診までの期間が臨床アウトカムに及ぼす影響については、これまで明らかになっていなかった。兵庫医科大学の徳永 沙知氏らは、連日性頭痛を呈した小児および青年を対象に初回受診までの期間と症状改善までの期間との関係を明らかにするため、レトロスペクティブ観察研究を実施した。Medical Sciences誌2026年7月27日号の報告。  対象は、連日性頭痛を呈した小児および青年51例。受診までの期間は、頭痛が連日性となった日から初回受診日までの期間と定義した。

EGFR変異陽性NSCLCに対するオシメルチニブ術後補助療法、8年OS率7割超(ADAURA)/WCLC2026

 完全切除後のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブ術後補助療法の8年解析追跡結果が発表され、同レジメンの8年全生存(OS)率は、全体集団(StageIB~IIIA)においても、主要評価集団(StageII~IIIA)においても7割を超えたことが明らかとなった。  この結果は、世界肺がん学会(WCLC2026)において、米国・Dartmouth Cancer CenterのRoy S. Herbst氏が国際共同第III相ADAURA試験の探索的8年OSランドマーク解析の結果を報告したもの。  EGFR変異陽性NSCLCに対するEGFR-TKI術後補助療法は無病生存期間(DFS)改善効果を示したものの、OSの改善効果については複数の臨床試験で認められていなかった。そのような中、ADAURA試験ではDFSとともに、OSについても2023年の米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)で有意な延長が報告されている(5年OS率:88%vs.78%、ハザード比[HR]:0.49、95.03%信頼区間[CI]:0.34~0.70、p<0.0001)。

単純性膀胱炎へのセフェム、第3世代vs.第1/2世代~日本の4万例を解析

セフェム系薬は単純性膀胱炎に対して用いられるが、第3世代は第1/2世代と比べて経口バイオアベイラビリティが低く、臨床効果に差が生じる可能性がある。そこで、谷口 順平氏(東京大学)らは、日本のレセプトデータベースを用いて、女性の急性単純性膀胱炎に対する経口の第3世代セフェム系薬と第1/2世代セフェム系薬(セファレキシンまたはセファクロル)の有効性を比較した。その結果、経口の第3世代セフェム系薬は、セファレキシンやセファクロルと比較して、腎盂腎炎診断または抗菌薬の追加使用の複合アウトカムが多かった。ただし、この差は主に抗菌薬の追加使用によるもので、腎盂腎炎診断には差がなかった。本研究結果は、European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases誌オンライン版2026年8月7日号に掲載された。

脳卒中後のリハビリ、AHA/ASAが新ガイドラインを公表

 サンフランシスコでメイクアップアーティストとして働いていたSara Kutzleさんは、39歳のときに脳卒中を発症し、1週間にわたって集中治療を受け、1カ月間入院した。退院後のKutzleさんは、何カ月もかけて、歩くことや文字を書くこと、右利きのアーティストとして再び仕事をすることなど、日常生活や仕事に必要な能力を一から身に付け直す必要があった。彼女はニュースリリースの中で、「当初は体の回復に集中していたが、すぐに、回復にはそれ以上のことが関わっていると気付いた。自信、メンタルヘルス、人間関係、自立しているという感覚の全てが影響を受けた」と振り返っている。

クリーニング店の近くに住む人はパーキンソン病リスクが高い?

 クリーニング店の近くに住んでいる人では、パーキンソン病リスクが上昇する可能性があるようだ。8月5日付で「npj Parkinson’s Disease」に早期公開された研究で、ドライクリーニングを扱うクリーニング店(以下、クリーニング店)から約500フィート(約152 m)以内に住んでいる人では、4~5マイル(約6.4~8 km)離れた場所に住んでいる人と比べて、パーキンソン病である可能性が高いことが示された。また、自宅がクリーニング店から離れているほど、パーキンソン病リスクは低かったという。

CRTの左室リード、最遅延部位への標的留置は予後を改善せず/Lancet

 心臓再同期療法(CRT)の両室ペーシングでは、電気的興奮が最も遅い部位(最遅延部位)への左室リードの留置が、左室収縮機能の大幅な改善と生存率の向上をもたらすことが、観察研究によって報告されている。デンマーク・オーフス大学病院のJens Cosedis Nielsen氏らDANISH-CRT Trial Investigatorsは「DANISH-CRT試験」において、QRS時間の延長を伴う心不全患者に対するCRTの左室リードの位置について、最遅延部位への標的留置は従来の冠静脈洞分枝の後壁・側壁の非心尖部への留置と比較して、死亡または心不全による予定外の入院の複合評価項目を改善せず、左室リード関連の合併症が数値上は増加することを示した。Lancet誌2026年9月26日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

原因不明の失神、14日間携帯型ECGモニタリングで再発率は改善するか/NEJM

 欧米では、失神を主訴に救急診療科を受診した患者の約50%が原因不明で、1ヵ月以内に約7%が臨床的に重篤な病態を呈するため、血管迷走神経性および起立性低血圧などによる良性の失神と、不整脈などによる心原性失神の鑑別が課題である。また、失神患者の約50%が1年以内に再発するが、不整脈が特定されて治療を受けると再発率は約10%に低下することが知られ、早期診断が重要である。英国・エジンバラ大学のMatthew J. Reed氏らASPIRED Investigatorsは「ASPIRED試験」で、救急外来受診時に原因が特定されなかった失神患者において、携帯型心電図(ECG)による14日間のモニタリングを実施しても、標準治療と比較して1年後の患者報告による失神発作回数が低減しなかったことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2026年8月31日号に掲載された。

今さらシャム試験が必要か?(解説:高月誠司氏)

本研究は、カテーテルアブレーションによるQOL改善効果をプラセボ効果から分離するという点で、シャム対照試験の科学的意義を有している。しかし、すでに一定の有効性が確立された侵襲的治療に対し、患者に直接的な治療利益をもたらさない鎮静や静脈穿刺を実施し、アブレーションを延期することの倫理的妥当性には慎重な検討が必要である。実際にシャム群でも血管合併症や脳卒中が発生している。また、シャム群においてもAFEQTおよびNT-proBNPの改善を認めたが、これには薬物治療の調整、レートコントロール、電気的除細動などの治療効果が寄与した可能性がある。したがって、これらの改善をプラセボ効果と単純に解釈することはできない。

第2世代抗精神病薬に関連する低ナトリウム血症リスクの比較

 低ナトリウム血症は、抗精神病薬の使用に伴う有害事象である。しかし、第2世代抗精神病薬間でのリスクを比較したエビデンスは、これまで限られていた。藤田医科大学の波多野 正和氏らは、個々の第2世代抗精神病薬に伴う低ナトリウム血症のリスクを比較するため、本研究を実施した。JAMA Network Open誌2026年8月13日号の報告。  本研究は、レトロスペクティブコホート研究および不均衡性分析として実施した。データは、FDAの有害事象報告システム(FAERS:1997年第4四半期~2023年第3四半期)のデータを基に日本医薬情報センター(JAPIC)が整備したデータセット、メディカル・データ・ビジョンのレセプトデータベース(2008年4月~2024年4月)から取得した。

PD-L1陽性NSCLC1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブの成績(EVOKE-03/KEYNOTE D46)/WCLC2026

 PD-L1 TPS高発現(50%以上)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、サシツズマブ ゴビテカン(SG)とペムブロリズマブの併用療法は、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の主要評価項目を達成しなかった。世界肺がん学会(WCLC2026)において、ギリシャ・Henry Dunant Hospital CenterのGiannis Mountzios氏が報告した国際共同第III相EVOKE-03/KEYNOTE D46試験の初回解析の結果。

HR+/HER2-転移乳がんへのアベマシクリブ後の治療の検討~日本のリアルワールドデータ

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)で転移のある乳がんの1次治療においてアベマシクリブが広く用いられているが、中止後の治療選択や治療継続期間に関するリアルワールドデータは限られる。今回、国立がん研究センター東病院の内藤 陽一氏らが、日本の医療レセプトデータベースを用い、1次治療でアベマシクリブを投与された患者の治療パターンを検討した結果、アベマシクリブ+非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)後の2次治療でCDK4/6阻害薬を継続した患者では、ほかの2次治療レジメンより全体の治療中止までの期間(TTD)が数値的に長いことが示された。とくに2次治療でアベマシクリブ+フルベストラントを投与された患者では、2次治療のTTDが長い傾向であったという。Future Oncology誌オンライン版2026年9月11日号に掲載。

牛乳・チーズ・ヨーグルト、膝OAを予防できる?~日本の大規模コホート

 変形性膝関節症(膝OA)は中高年期における膝の痛み、機能制限などの主な原因となっている。一方、乳製品は筋骨格系の健康に有用とされるが、膝OAの予防に関するエビデンスは限られている。今回、新潟大学のIrina Bulycheva氏らが日本人における乳製品全体および種類別乳製品の摂取量と膝OA発症リスクとの関連を検討した結果、チーズやヨーグルトの摂取量が多いほど、症候性かつX線学的な膝OAの発症リスクが低いことが示された。Clinical Nutrition誌2026年10月号に掲載。

日本の慢性膵炎患者は5年で3割増、約半数は糖尿病を合併

慢性膵炎の臨床疫学的特徴を明らかにするため、本邦では1994年以来、4~5年ごとに全国疫学調査が実施されてきた。慢性膵炎患者数は、1994年(3万2,000例)から2011年(6万7,000例)にかけて一貫して増加傾向にあったが、2016年の調査で初めて減少していた(5万6,520例)。東北大学の正宗 淳氏らは、2021年に参加病院で診療された慢性膵炎患者を対象とした全国規模の疫学調査を実施。その結果、2021年の慢性膵炎患者数は7万3,590例と推計され、2016年と比較して30%増加していることが明らかになった。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年9月11日号に掲載された。

短期的な禁煙で24時間血圧を改善できるか~メタ解析

 喫煙と診察室外血圧の関連についての研究は限られている。また、研究の多くは喫煙者と非喫煙者を比較しており残存交絡を完全に排除できない可能性がある。今回、大阪大学の赤木 優也氏らは、日本高血圧学会の「血圧朝活(早朝高血圧徹底制圧プロジェクト)アクションプラン」の一環として、喫煙者において喫煙期間と禁煙期間で診察室外血圧に差があるかどうかを評価するため、24時間自由行動下血圧(ABP)および心拍数の違いを系統的レビューとメタ解析により検討した。その結果、喫煙期間では禁煙期間に比べて、24時間・日中の拡張期血圧が高く、また心拍数は24時間・日中・夜間とも有意に高かった。Hypertension Research誌オンライン版2026年9月8日号に掲載。

約230万例のコホート研究が特定した不適切処方カスケードのパターン/BMJ

 カナダ・Sinai Health SystemのPaula A. Rochon氏らは、同国オンタリオ州に在住の66歳以上の高齢者を対象とした後ろ向きコホート研究により、潜在的に不適切な処方カスケード(potentially inappropriate prescribing cascade:PIPC)65種類のうち、24種類がとくに介入優先度が高いPIPCとして特定されたことを報告した。高齢者においてPIPCは頻繁にみられるものの、その多くは見過ごされており、患者や医療システムに多大な負担を強いる不適切な多剤併用の一因と指摘されている。今回示された24種類のリストは、個々の高齢患者および高齢者集団レベルにおける、薬剤安全性を向上させる処方および脱処方(deprescribing)の取り組みや政策策定に役立つ可能性があるという。BMJ誌2026年9月10日号掲載の報告。

高感度心筋トロポニン測定、0/1時間アルゴリズムは安全かつ有効か?/Lancet

 心筋梗塞が疑われる患者において、高感度心筋トロポニン(hs-cTn)測定の0/1時間アルゴリズムは0/3時間アルゴリズムと比較し、安全性の主要複合評価項目である30日以内の全死因死亡または新規1型心筋梗塞に関して事前に設定された非劣性基準を満たしたことが示された。有効性の主要評価項目である救急外来滞在時間は短縮しなかった。スイス・バーゼル大学のJasper Boeddinghaus氏らPRESC1SE-MI investigatorsが、10ヵ国(オーストラリア、オーストリア、フィンランド、イタリア、ルーマニア、韓国、スペイン、スイス、英国、米国)の19の病院で実施した無作為化比較試験「PRESC1SE-MI試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「0/1時間アルゴリズムの導入のみでは、救急外来の処理能力(スループット)向上は期待できないと考えられる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。

TAVI後の抗血栓療法は抗凝固薬がよい?それとも抗血小板薬?(解説:後藤信哉氏)

社会の高齢化と共に大動脈狭窄症は増加し、TAVIを受ける患者数も増えている。TAVIの弁置換後の抗血栓療法のベストは確立されていない。本研究では、参加症例数は360例と多くはなく、primary efficacy endpointも臨床症状を惹起しないsubclinical leaflet thrombosisと間接的ではあるが、抗凝固薬にて抗血小板薬より血栓が少ないことを示した。重篤な出血イベントは両者で差はなかった。人工弁における血栓弁の予防には、ワルファリンが標準治療であった。TAVIでは生体弁を利用するため、機械弁より血栓リスクは少ないとされた。

高齢者に対するSSRI継続使用、認知症リスクを上昇させるか?低下させるか?

 うつ病は、認知症のリスク因子である。しかし、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と認知症リスクとの関連を検討した研究において、うつ病を交絡因子として調整した研究は少なく、神経病理学的アウトカムを検討した研究はほとんど存在しない。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のJacob S. Shaw氏らは、うつ病の既往歴を有する高齢者におけるSSRIの継続使用と認知機能障害および機能障害の進行、抑うつ症状、認知症に関連する神経病理学的所見との関連を検討した。The American Journal of Geriatric Psychiatry誌2026年1月号の報告。