日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

日本人統合失調症患者における抗精神病薬の治療パターンと機能アウトカムとの関係

 抗精神病薬の多剤併用や長時間作用型注射剤(LAI)の使用などの治療パターンは、統合失調症患者の機能アウトカムに影響を及ぼすのか。実臨床において、この課題に対する検討は、いまだ十分になされていない。福島県立医科大学の森 湧平氏らは、抗精神病薬の治療パターンと機能アウトカムとの縦断的な関係を明らかにするため、慢性期統合失調症患者を対象に10年間のレトロスペクティブ研究を実施した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2025年11月22日号の報告。対象は、日本人慢性期統合失調症患者114例。1ヵ月当たりの全般的機能評価(GAF)スコア(122ヵ月以上)と抗精神病薬の治療パターン(多剤併用、LAI使用、クロルプロマジン[CP]換算量)との関係を評価した。

ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、OS中間解析時点の最新データ(EMBER-3)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の進行乳がんを対象とした経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)imlunestrantの第III相EMBER-3試験において、事前に規定された全生存期間(OS)中間解析時点(追跡期間中央値:28.5ヵ月)での各評価項目の最新データを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  本試験の1次解析(追跡期間中央値:15.7ヵ月)では、ESR1変異を有する患者においてimlunestrant群が標準内分泌療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に改善し、またESR1変異の有無にかかわらず全患者において、imlunestrant+アベマシクリブ群がimlunestrant群に比べPFSを有意に改善したことが報告されている。

IgA腎症は0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿でも腎予後不良~メタ解析/慈恵医大

 IgA腎症における蛋白尿の臨床的意義を検討した系統的レビューおよびメタ解析の結果、0.5~1.0g/日の低レベル蛋白尿であっても腎予後不良と関連していたことを、東京慈恵会医科大学の山口 裕也氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年12月12日号掲載の報告。  IgA腎症では、1.0g/日を超える顕性蛋白尿が腎予後不良と関連することが広く知られている。しかし近年のエビデンスでは、0.5~1.0g/日の低レベルの蛋白尿でも腎予後不良と関連することが示唆されている。そこで研究グループは、IgA腎症における低レベル蛋白尿と腎予後不良との関連を評価することを目的として、系統的レビューおよびメタ解析を実施した。

「まずは金属除去」ではない? 金属アレルギー診療と管理の手引きを公開/日本アレルギー学会

 本邦では初となる金属アレルギーに特化した手引き『金属アレルギー診療と管理の手引き 2025』1)が、2025年9月26日に公開された。そこで、手引きの検討委員会の代表を務める矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が、第74回日本アレルギー学会学術大会(10月24~26日)において、手引きの作成の背景と概要を紹介した。なお、手引きはアレルギーポータルの医療従事者向けページで公開されている。  本邦では「アレルギー疾患対策基本法」が定められており、喘息やアトピー性皮膚炎などの6疾患が重点的な対象疾患となっている。しかし、現状では金属アレルギーは対象疾患に含まれていない。この理由について、矢上氏は「若年で発症し、後年に金属製材料を使用するときに苦慮する方がいる」「患者は複数の診療科を受診するが連携した診療体制が不十分」「患者数が未知」といった背景があったと述べる。そこで「厚生労働科学研究事業で、それらを補う情報をまとめたほうが良いのではないかということで研究が始まり、疫学調査結果や検査法などをまとめて、手引きを作成する方向となった」とのことだ。これらの研究成果を集約した『金属アレルギー診療と管理の手引き2025』には、診療の流れや検査・管理の要点、多診療科・多職種が連携した診療体制の構築の重要性などが記載されている。

猛暑は高齢糖尿病患者にとって致命的となり得る

 極端に暑い日は、心臓病や糖尿病を持つ高齢者の死亡リスクが高くなることを示唆するデータが報告された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイビッド・ゲフィン医学部のEvan Shannon氏らが、同州の退役軍人の医療記録などを解析した研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に11月25日掲載された。  この研究の結果、猛暑による死亡リスクへの影響は、居住環境により大きく異なることも明らかになった。例えば、低所得地域に暮らす高齢の退役軍人は、猛暑日に死亡するリスクが涼しい日に比べて44%高くなることが示された。一方、高所得地域に居住する退役軍人の場合、涼しい日との死亡リスクの差は12%の上昇にとどまっていた。論文の筆頭著者であるShannon氏は、「本研究では退役軍人のみのデータを解析に用いたが、得られた結果は退役軍人以外にも当てはまるのではないか」と話している。

米国でアルファガル症候群による初の死亡例を確認

 米国で、ダニが媒介するまれな肉アレルギーであるアルファガル(α-gal)症候群による死亡例が初めて確認されたことを、米バージニア大学医学部のアレルギー専門医であるThomas Platts-Mills氏らが報告した。この症例報告は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に11月12日掲載された。  Platts-Mills氏らによると、アルファガル症候群で死亡したのは、米ニュージャージー州在住の健康な47歳の男性である。この男性は、2024年夏、キャンプ先で夕飯に牛肉を食べた4時間後の深夜2時に、腹部に不快感を感じて目を覚ました。不快感はもがき苦しむほどの強さになり、下痢と嘔吐も生じたが、2時間後に容態は改善し、再び眠りについたという。翌朝、男性の体調は良く、5マイル(8km)歩いた後に朝食を食べた。夫婦でこの出来事について話し合い、医師に診てもらうことも考えたが、結局、受診しなかった。ただ、男性は息子の1人に「死ぬかと思った」と話したという。

シャーガス心筋症の心不全、サクビトリル・バルサルタンvs.エナラプリル/JAMA

 シャーガス心筋症により左室駆出率が低下した心不全(HF)患者において、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリル・バルサルタンは、エナラプリルとの比較において臨床的アウトカムに関する有意差は認められなかったが、サクビトリル・バルサルタン投与患者では、12週時点でNT-proBNPの顕著な低下が認められた。米国・Duke Clinical Research InstituteのRenato D. Lopes氏らPrevention and Reduction of Adverse Outcomes in Chagasic Heart Failure Trial Evaluation(PARACHUTE-HF)Investigatorsが非盲検多施設共同無作為化試験の結果を報告した。HFに対してガイドラインで推奨される治療の有効性と安全性は、シャーガス心筋症患者におけるHFについては明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年12月3日号掲載の報告。

Stage I~III膵管腺がんの術前療法、PAXG vs.mFOLFIRINOX(CASSANDRA)/Lancet

 切除可能または切除可能境界膵管腺がん(PDAC)において、PAXG療法(シスプラチン+nab-パクリタキセル+カペシタビン+ゲムシタビン)はmFOLFIRINOX療法(フルオロウラシル+ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチン)と比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善したことが、イタリア・IRCCS San Raffaele Scientific InstituteのMichele Reni氏らが行った第III相の無作為化非盲検2×2要因試験「PACT-21 CASSANDRA試験」の結果で示された。周術期化学療法は、切除可能または切除可能境界PDAC患者における標準治療の1つである。結果を踏まえて著者は、「PAXGは、術前療法の標準治療となりうることが示された。今後の試験では、術前PAXGを比較対照群として検討すべきであろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年11月20日号掲載の報告。

IgA腎症へのsibeprenlimabの治療は完全寛解が期待できるか?(解説:浦信行氏)

IgA腎症ではガラクトース欠損IgA1が産生され、これに対する自己抗体との複合体ができる。これが糸球体のメサンギウムに沈着し、炎症や補体の活性化、増殖反応の逸脱を引き起こし、腎障害を増悪させる。増殖誘導リガンド(a proliferation-inducing ligand:APRIL)はTNF-αのスーパーファミリーであり、これがIgA産生を含むB細胞由来の免疫反応を引き起こす。sibeprenlimabはAPRILの中和抗体であり、その活性を抑制する。sibeprenlimabを使用したIgA腎症の治療効果はすでに第II相のENVISION試験として報告されており、sibeprenlimab 8mg/kg 4週ごと静脈内投与12ヵ月で24時間尿蛋白/クレアチニン比は有効率62%と、プラセボ群の20%に比して有意に減少した。また、尿蛋白の臨床的寛解である300mg未満の割合も26.3%と良好な結果であった。しかし、ベースラインから12ヵ月後のeGFRの変化は良好な結果であったが、プラセボ群との有意差はなかった。

認知症リスク低下と関連しているワクチン接種は?

 高齢者で多くみられる認知症は、公衆衛生上の優先事項である。しかし、認知症に対するワクチン接種の有用性については、十分に解明されていない。イタリア・National Research CouncilのStefania Maggi氏らは、一般的な成人向けのワクチン接種が認知症リスク低減と関連しているかを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。2025年1月1日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。対象研究は、50歳以上の成人において、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の間で認知症および軽度認知障害(MCI)の発症率を比較した観察研究とした。4人の独立したレビュアーがデータを抽出し、ニューカッスル・オタワ尺度を用いて研究の質を評価した。

全身型重症筋無力症と多発根神経炎患者の自己注射が容易に/アルジェニクス

 アルジェニクスジャパンは、2025年12月15日、全身型重症筋無力症(gMG)と慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)を疾患適応とする抗FcRn抗体フラグメント・ヒアルロン酸分解酵素配合製剤「ヒフデュラ配合皮下注シリンジ」を発売した。本製剤は、エフガルチギモド アルファ[遺伝子組換え]・ボルヒアルロニダーゼ アルファ[遺伝子組換え](商品名:ヒフデュラ)を含有したプレフィルドシリンジ製剤。  gMGは、IgG自己抗体が神経と筋肉の間の伝達を妨害することで、消耗性で生命を脅かす可能性のある筋力低下を引き起こすまれな慢性自己免疫疾患。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、とくに眼瞼下垂、複視などの眼の症状を起こしやすい。重症化すると呼吸筋の麻痺を来し、呼吸困難になることもある。

乳房温存術時1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性乳がん、SNLB単独はcALNDに非劣性示せず(INSEMA)/SABCS2025

 乳房温存術時に1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性の浸潤性乳がん患者において、センチネルリンパ節生検(SNLB)のみの施行は、完全腋窩リンパ節郭清(cALND)の施行と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)に関して非劣性を示さなかった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏が、ドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」における、2次無作為化後の副次評価項目の解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  本研究では、18歳以上で乳房温存術と術後放射線治療を受ける予定の浸潤性乳がん患者(腫瘍サイズ≦5cmのcT1またはcT2、かつcN0)を対象として、SNLB省略群とSNLB単独群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、SNLB単独群で1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、SNLB単独群とcALND群に1対1の割合で無作為に割り付けた(2次無作為化)。

看護師増員や臨床ケア環境の改善が医師のバーンアウトを減らす

 米国とヨーロッパの病院を対象にした研究で、看護師を数人増やすだけで、医療スタッフの燃え尽き症候群(バーンアウト)を大幅に減らし、士気を高められる可能性のあることが明らかにされた。米ペンシルベニア大学看護学部健康成果・政策研究センターのLinda Aiken氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月17日掲載された。  Aiken氏は、「医師のバーンアウトは世界的な危機だが、実行可能な解決策はほとんど見つかっていない。われわれの研究は、看護師への投資が『一石二鳥』の解決策、つまり看護師と医師双方のウェルビーイングの改善と患者ケアの強化につながることのエビデンスとなるものだ」と述べている。

Long COVIDの経過は8つのタイプに分かれる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDは、一般に、新型コロナウイルスへの感染後に、疲労感やブレインフォグ、めまい、動悸などのさまざまな症状が3カ月以上持続する慢性疾患とされている。このほど新たな研究で、long COVIDの経過は、症状の重症度、持続期間、経過(改善傾向か悪化傾向か)により8つのタイプに分類されることが示唆された。米ハーバード大学医学大学院のTanayott Thaweethai氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月17日掲載された。  Thaweethai氏らはこの研究で、RECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)イニシアチブへの参加成人3,659人(女性69%、99.6%は2021年12月以降のオミクロン株流行期に感染)を対象に、感染の3〜15カ月後に評価したlong COVIDの症状スコアに基づき、患者の縦断的経過パターンを解析した。対象者のうち、3,280人は最初の新型コロナウイルス感染から30日以内に試験に登録した急性期患者、残る379人は登録時には未感染であったがその後に感染したクロスオーバー群であった。

妊娠前/妊娠初期のGLP-1作動薬中止、妊娠転帰と体重変化は?/JAMA

 主に肥満の女性で構成されたコホートにおいて、GLP-1受容体作動薬の妊娠前または妊娠初期の使用とその後の中止は、妊娠中の体重増加の増大、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク上昇と関連していた。米国・マサチューセッツ総合病院のJacqueline Maya氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬は、妊娠中に禁忌であり、妊娠初期に投与を中止すると妊娠中の体重増加や妊娠転帰に影響を及ぼす可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年11月24日号掲載の報告。  妊娠前3年間・妊娠後90日間、GLP-1受容体作動薬の処方妊婦vs.非処方妊婦を比較 研究グループは2016年6月1日~2025年3月31日に、マサチューセッツ州ボストン地域をカバーする15施設からなる学術医療研究機関Mass General Brighamにおいて、分娩に至った単胎妊娠14万9,790例を対象に後ろ向きコホート研究を行った。

血友病Bに対する遺伝子治療、第III相試験の最終解析/NEJM

 高活性の第IX因子Padua変異体を導入したアデノ随伴ウイルス血清型5(AAV5)ベクターを用いた遺伝子治療薬etranacogene dezaparvovecは、血友病B成人患者において、5年間にわたり持続的な第IX因子の発現と年間出血率の低下をもたらすことが確認された。米国・ミシガン大学のSteven W. Pipe氏らHOPE-B Study Group Investigatorsが、第III相の非盲検試験「HOPE-B試験」の最終解析結果を報告した。血友病Bの治療では、出血予防のため生涯にわたる定期的な第IX因子の補充が必要となる。遺伝子治療は、単回投与で持続的な第IX因子の発現と疾患コントロールが得られる可能性があり開発が期待されている。NEJM誌オンライン版2025年12月7日号掲載の報告。

メチシリン感性黄色ブドウ球菌菌血症に対するクロキサシリンとセファゾリンの比較(CloCeBa試験)(解説:寺田教彦氏)

メチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症は、感染性心内膜炎などの多彩な合併症を伴うことがあり、死亡率も高い重篤な疾患である。日本では、中枢神経系合併症を除けば、MSSA菌血症の治療にはセファゾリンが第1選択薬として推奨されている。一方、欧米では長年の臨床経験を背景に、nafcillin、oxacillin、クロキサシリンなどの抗ブドウ球菌ペニシリン(antistaphylococcal penicillins:ASPs)が標準治療薬とされてきた。本邦でASPsが普及しなかった背景には、静注製剤が承認されていないこと、代替として安全性の高いセファゾリンが広く使用されてきたことなどがある。

『肝細胞癌診療ガイドライン』改訂――エビデンス重視の作成方針、コーヒー・飲酒やMASLD予防のスタチン投与に関する推奨も

 2025年10月、『肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版』(日本肝臓学会編、金原出版)が刊行された。2005年の初版以降、ほぼ4年ごとに改訂され、今回で第6版となる。肝内胆管がんに独自ガイドラインが発刊されたことを受け、『肝癌診療ガイドライン』から名称が変更された。改訂委員会委員長を務めた東京大学の長谷川 潔氏に改訂のポイントを聞いた。  今版の構成上の変更点としては、「診療上の重要度の高い医療行為について、新たにシステマティックレビューを行わなくとも、明確な理論的根拠や大きな正味の益があると診療ガイドライン作成グループが判断した医療行為を提示するもの」については、Good Practice Statement(GPS)として扱うことにした。これにより既存のCQ(Clinical Question)の一部をGPSに移行した。

ER+低リスクDCIS、手術せず内分泌療法単独での有用性を検証(LORETTA)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性(ER+)の低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対して、手術せず内分泌療法のみ実施する治療が選択肢となる可能性がLORETTA試験(JCOG1505)で示唆された。本試験の主要評価項目である5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合は事前に設定した閾値を達成しなかったものの、9.8%と低く、また乳がんによる死亡はなかったことを、名古屋市立大学の岩田 広治氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  LORETTA試験(JCOG1505)は、JCOG乳がんグループによるER+の低リスクDCISに対して、手術と放射線照射なしで内分泌療法のみを実施する低侵襲治療の有効性と安全性の検証を目的とした単群検証的試験である。

肺がん治療における経済的視点/治療医に求められる役割

 がん治療の経済的毒性が注目される中、日本肺癌学会が開催する肺がん医療向上委員会において、近畿大学の高濱 隆幸氏が講演した。高濱氏は肺がん診療の現場において、治療医が患者とのShared Decision Making(SDM)に、経済的視点を組み込む重要性を訴えた。  分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新薬の登場により、肺がん患者の生存期間中央値は2年を超え、予後は著しく改善している。これらの新薬は高額であり、生存期間の長期化の見返りとして治療費や通院費などの副次的費用が増加する。また、離職による収入減で経済的負担を長期にわたって強いられる患者もいる。日本肺がん患者連絡会の調査では、肺がん患者の88%が高額療養費制度を利用しているにもかかわらず、63%が何らかの経済的負担を感じているという。