日本語でわかる最新の海外医学論文|page:2

肥満患者への減量介入がQOLに及ぼす影響

 肥満患者への減量介入は健康関連QOL(HRQOL)にどのような影響を及ぼすであろうか。このテーマについて、米国・ペニントン・バイオメディカル研究センターのKara D. Denstel氏らの研究グループは、プライマリケアのクリニックの肥満患者803例を対象に減量介入を2年にわたり行った。その結果、減量はHRQOLの改善と関連していることがわかった。Obesity誌2026年5月号に掲載。  研究グループは、減量とHRQOLの変化との関連性と減量介入を受けた患者間における治療反応の違いを目的に、18のプライマリケアのクリニックで、24ヵ月間の集中的なライフスタイル介入群または通常ケア群に無作為に割り付け検討した。

市中肺炎への抗菌薬、3~4日vs.5日以上

 市中肺炎(CAP)に対する治療において、抗菌薬投与期間の短縮により有害事象や薬剤耐性リスクが抑制される可能性がある。一方、入院患者における3~4日間の短期治療を支持する実臨床データは限られている。そこで、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのGeorge Doumat氏らの研究グループは、CAPで入院し、抗菌薬投与3日目までに臨床的安定が得られた患者を対象として、3~4日間の抗菌薬治療と5日間以上の抗菌薬治療をtarget trial emulationの手法を用いて比較した。その結果、短期抗菌薬治療の適格基準を満たした患者は全体の10.1%にとどまっていた。

アルツハイマー病の脳変化に性差

 アルツハイマー病の進行に伴う脳の変化には性差があり、通常の診断で用いられている認知機能評価ツールでは、女性の変化が見逃される可能性があるようだ。健常者、軽度認知障害(MCI)患者、アルツハイマー病患者の脳MRI画像を用いた研究において、男性は健常からMCIにかけての初期段階から灰白質体積(GMV)が緩やかに減少し、その後も比較的緩やかに推移するのに対し、女性では初期段階ではGMVが保たれているものの、その後、アルツハイマー病発症までの段階で急激に減少する傾向が示された。米ジョージア州立大学物理学・天文学分野のMukesh Dhamala氏らによるこの研究の詳細は、「Brain Communications」に4月3日掲載された。

コントロール不良の高血圧、チームベースの介入は有効か

 チームによる集中的な治療によって、コントロール不良の高血圧患者の血圧が大幅に低下する可能性があることが、米テュレーン大学疫学教授のKatherine Mills氏らによる新たな臨床試験で示された。高血圧患者のうち、チームベースの多角的な治療を1年半にわたって受けた患者では、収縮期血圧が平均で約16mmHg低下したという。この臨床試験の結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月8日掲載された。  研究グループによると、米国では成人の半数以上が130/80mmHg超で定義される高血圧に該当する。

血友病AへのMim8予防投与が既存治療を上回る出血抑制/NEJM

 Mim8(denecimig)は、活性化第VIIIa因子の機能を模倣する二重特異性抗体で、第VIII因子インヒビターの有無にかかわらず、血友病A患者の出血を予防する目的で開発された。イタリア・ヒュマニタス大学のMaria Elisa Mancuso氏らは「FRONTIER2試験」において、Mim8の予防投与はオンデマンド治療や血液凝固因子濃縮製剤の予防投与と比較して、治療を必要とする出血イベントの年間発生率を有意に抑制し、血栓塞栓イベントや中和抗体の発現はみられないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年4月30日号で報告された。

シリアスゲームで診療ガイドライン順守率が改善/JAMA

 診療ガイドラインは医療の質向上に寄与するが、米国では順守率が依然として低く、時間的制約のある疾患の典型とされる外傷のトリアージ、とくに高齢者の治療では順守率が50%を下回るという。米国・ピッツバーグ大学のDeepika Mohan氏らは、医師の誤診の低減を目指して開発されたシリアスゲーム(serious game、娯楽以外の目的[知識習得、技術向上、行動変容など]を志向するビデオゲーム)が、救急医による高齢者の外傷トリアージのガイドライン順守状況を改善するかを無作為化試験で検討した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月20日号に掲載された。

高齢者の不眠症治療、非ベンゾジアゼピン系催眠薬vs.オレキシン受容体拮抗薬

 世界的な高齢化の加速に伴い、高齢者の不眠症は、公衆衛生上の大きな課題となっている。高齢者の不眠症では、認知行動療法が第1選択治療であるにもかかわらず、薬物療法も依然として広く用いられている。しかし、高齢者に対する従来の非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬(非BZRA)の使用には重大な安全性上の懸念が存在する。一方、新しい二重オレキシン受容体拮抗薬(DORA)の長期的な実臨床における安全性に関するエビデンスは依然として限られている。このエビデンスのギャップを埋めることは、高齢者における安全な薬剤使用を導くうえで、きわめて重要である。中国・Nanjing Youan HospitalのShuqing Gao氏らによる、Frontiers in Pharmacology誌2026年3月10日号の報告。

HER2+早期乳がん、特定の患者集団では術前化学療法を省略してもpCR率59.6%(PHERGain-2)/ESMO BREAST 2026

 化学療法を併用せずトラスツズマブ・ペルツズマブ(HP)による術前療法を受けたHER2陽性・腫瘍径5~30mmの未治療早期乳がん患者において、59.6%が病理学的完全奏効(pCR)を達成し、同レジメンを術後も継続した場合に健康関連QOL(HRQoL)が良好であることが示された。スペイン・Hospital Arnau de VilanovaのAntonio Llombart Cussac氏が、pCRに基づくde-escalation戦略を評価する目的で実施されたPHERGain-2試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で発表した。

フェニルケトン尿症の新治療薬セピアプテリンへの期待/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)の発売に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。わが国のPKUの発生頻度は約6万人の出生に1人の割合で、年間20人前後が診断され、累計で800人以上の患者が報告されている。PKUは未治療や管理が不十分な状態が続くと知的障害、痙攣発作、発達遅延など重度かつ不可逆的な障害が生じる。治療の基本は食事療法で、フェニルアラニン(Phe)が多く含まれる特定の食材(肉・魚・卵など)の摂取が厳しく制限される。

中性脂肪、がんリスクマーカーに?~日本の全身がん検査プログラム

 京都府立医科大学の手良向 聡氏らが行った後ろ向き観察研究から、ベースラインの血清トリグリセライド(TG)が、将来のがん発症リスクを予測する高感度なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。Health Science Reports誌2026年3月29日号掲載の報告。  日本において、メタボリックシンドローム(Mets)併存患者のがん死亡率は年々増加しており、これらの患者のがんの早期発見が喫緊の課題となっている。近年、Metsの構成要素が活性酸素種(ROS)の生成、ホルモン産生の変化などを通じて、がん発生を促進する可能性が指摘されている。

ストレス耐性を高めたければ、まずこの習慣を

 大半の人がパニックに陥るような状況でも冷静さを失わない人がいる。彼らはなぜ、プレッシャーがかかっても落ち着いていられるのだろうか?新たな研究によると、その鍵は「心理的柔軟性」の高さにあるようだ。  この研究は、米ビンガムトン大学のLina Begdache氏らによるもので、詳細は「Journal of American College Health」に12月30日に掲載され、3月17日に同大学からリリースが発行された。そのリリースの中で同氏は、「いつも落ち着いている人は、置かれた状況に対して考え方を適応させ、脳のリソースを使ってストレスに対処しているようだ」と説明している。

不妊治療、保険適用でアクセス改善も公平性に課題

 不妊治療の保険適用で受療機会は広がったのか。日本の大規模レセプトデータ解析によりアクセス改善が示された一方、男性の診断・治療は依然少なく、生殖医療の公平性に課題が残ることが明らかになった。研究は、産業医科大学医学部公衆衛生学教室の大河原眞氏らによるもので、詳細は3月6日付の「Reproductive Medicine and Biology」に掲載された。  日本では少子化と高齢化が進み、出生数や合計特殊出生率は過去最低水準にある。不妊治療は進歩し、体外受精などの生殖補助医療(ART)による出生も増加してきたが、従来は高額な費用が障壁となり、社会経済的背景によるアクセス格差が指摘されていた。

重症CKDでも降圧療法で心血管イベント抑制/Lancet

 英国・オックスフォード大学のGuyu Zeng氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)はメタ解析を実施し、心血管リスク低減の観点からは、慢性腎臓病(CKD)患者における降圧治療の相対的効果は、非CKD患者における効果と同等であり、CKDの病期、血圧閾値、蛋白尿の有無にかかわらず一貫した有効性が認められることを示した。ただし、糖尿病合併CKD患者ではこの相対的効果が弱まるため、これらの高リスクサブグループに適合する治療戦略が必要であるという。また、CKDにおける主要な降圧薬のクラス特異的な効果は、CKDの病期や蛋白尿の有無にかかわらず、一般集団で観察される効果と同様であることも示された。CKD患者、とくに進行期の患者について、心血管リスク管理に関するエビデンスは依然として不足していた。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。

女性の単純性尿路感染症、nitrofurantoinが有効/Lancet

 女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する治療は、nitrofurantoinが最も有効であり、次いでpivmecillinam、ホスホマイシン2回投与の順で、ホスホマイシン単回投与が最も有効性が低いことが、スペイン・Institute for Primary Health Care Research Jordi Gol i GurinaのCarl Llor氏らが同国のプライマリケア34施設で実施したプラグマティックな第IV相無作為化非盲検臨床試験「SCOUT試験」の結果で示された。ほとんどのガイドラインでは、単純性UTIに対しnitrofurantoin、ホスホマイシン、場合によってはpivmecillinamの投与が推奨されているが、これらの直接比較が求められていた。

ハイリスクPCIへの予防的Impella使用は推奨されない(CHIP-BCIS3試験から)(解説:加藤貴雄氏)

CHIP-BCIS3試験は、ハイリスクPCI(左室駆出率[LVEF]35%以下、またはLVEF 45%以下で重度僧帽弁逆流を伴う複雑冠動脈疾患に対するPCI)に対して、微小軸流ポンプ(Impella CP)を予防的に使用した左室の負荷除去が予後を改善するかを検証した無作為化割付試験である。主要評価項目は、最低12ヵ月の時点での、あらゆる原因による死亡、障害のある脳卒中、自然発症の心筋梗塞、心血管系の原因による入院、または手技周囲の心筋損傷を含む階層的複合エンドポイントであり、148例がImpella群に、152例が標準治療を受ける群に割り付けられた。

双極症I型に対する抗精神病薬治療成績、LAI vs. 経口薬

 イスラエル・テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズのSigal Kaplan氏らは、米国の双極症I型患者を対象に、長時間作用型注射剤(LAI)と経口抗精神病薬(OA)治療における再入院率と薬剤使用パターンを比較した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2026年3月2日号の報告。  Premier Hospital データベース(2020年10月~2023年9月)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、双極症I型で入院した18歳以上の成人患者。退院時に使用していた抗精神病薬(OA群、LAI群、第2世代LAI群)別にグループ分けを行った。LAI群および第2世代LAI群の患者を、OA群の患者と1:4で傾向スコアマッチングした。

新規診断の多発性骨髄腫患者と医師のコミュニケーションの実態~国内アンケート調査

 多発性骨髄腫の治療選択肢が拡大する中、協働意思決定(SDM)の重要性が増しており、医師と患者のコミュニケーションが重要となる。今回、近畿大学奈良病院の花本 均氏らが実臨床における医師と患者のコミュニケーションの実態についてアンケート調査した結果、治療開始時および病状安定時において、医師と患者の認識に顕著な乖離があることが示された。eJHaem誌2026年4月26日号に掲載。  本研究は、造血幹細胞移植を受けていない新規に診断された多発性骨髄腫患者220例と、多発性骨髄腫を診療する血液専門医120人を対象とした観察調査研究(2024年9〜11月実施)である。患者は自己記入式の34項目の調査票(オンラインまたは紙媒体)に回答し、血液専門医は、自己記入式の18項目の調査票にオンラインで回答した。治療開始時および病状安定時における、患者と医師間のコミュニケーションの状況、患者の治療に対する期待、価値観、感情、知識、治療に関する意思決定の希望に関する情報をまとめた。

薬剤耐性菌の防御システムを乗り越える「ファージ」の仕組みを解明/JIHS

 薬剤耐性菌は世界的に深刻な脅威となっている。対策の1つとして注目されているのが、細菌に感染して溶菌させるウイルス(バクテリオファージ、以下ファージ)だ。国立健康危機管理研究機構(JIHS)/国立感染症研究所の千原 康太郎氏、氣駕 恒太朗氏らは、ファージが細菌の防御システムを回避して原因菌を破壊する仕組みを明らかにした。その詳細をJIHS開催の記者ブリーフィングで紹介している。  薬剤耐性菌による感染症は全世界で急速に増加している。2025~50年における薬剤耐性菌を直接原因とする累積死者数は3,900万人以上、関連死者数は1億6,900万人以上に上ると推定される。

特定健診の「2cm2kg減」は適切? 3万人の代謝指標との関連を検討

 日本の特定健診・特定保健指導では、生活習慣改善の目安として「腹囲2cm・体重2kgの減少(2cm2kg)」が推奨されている。しかし、この目標達成が実際に代謝指標の改善と結びついているか検討した研究は乏しい。そこで、笠原 健矢氏(京都府立医科大学)らの研究グループは、健診コホートデータを用いて2cm2kg目標の妥当性を検討した。その結果、2cm2kg達成は、血糖、血圧、脂質、肝機能といった代謝指標の改善と有意に関連し、実務上の目安としておおむね妥当であることが示唆された。本研究結果は、Obesity誌オンライン版2026年4月4日に掲載された。

ストレスや悲しみはがんリスクと関連しない

 長年にわたり、強い心理的ストレスや悲しみ、あるいはネガティブな性格はがんを引き起こし得ることが、ウェルネス分野や医療現場で広く信じられてきた。しかし、大規模な国際研究により、個人の精神状態はがんの発症とほとんど関係がない可能性が示された。フローニンゲン大学医療センター(オランダ)のLonneke van Tuijl氏らによるこの研究は、「Cancer」に3月23日掲載された。  この研究では、複数コホートを統合した大規模データベースであるPsychosocial Factors and Cancer Incidence(PSY-CA)コンソーシアムを用いて、心理社会的要因とがん(乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、喫煙関連がん、アルコール関連がん)の発症との関連が検討された。