日本語でわかる最新の海外医学論文|page:7

大腸がん術後の運動プログラム、初のガイドライン推奨に/ESMO

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)は、2026年1月27日付で、術後の局所進行大腸がん患者に対し、術後の「構造化された身体的運動プログラム」を臨床的介入として正式に推奨するガイドライン更新を発表した。従来から、がん患者の生存改善に運動が寄与するとの報告はあったものの、明確なエビデンスを基に治療ガイドラインにおける正式な推奨となったのは初めて。  今回のガイドライン更新の根拠となったのは、カナダの治験グループが実施したCHALLENGE試験。StageⅢおよび高リスクStageⅡ大腸がんに対する構造化された運動プログラムが無病生存期間(DFS)を有意に改善し、全生存期間(OS)の有意な延長をもたらすことを示した。この結果は2025年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2025)で発表されると同時にNEJM誌に掲載され1)、話題を集めた。

男性の性機能障害、3つのリスク因子とは/順大

 不妊治療開始前の新婚または結婚予定男性の約5人に1人が性機能障害を有することが、日本の単施設研究で明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院の谷口 歩氏らによる研究成果は、Reproductive Medicine and Biology誌2026年1月号に掲載された。  本研究は、新婚男性または結婚予定男性の性機能の現状を把握することを目的とした横断研究であり、2014年10月~2018年6月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックで各種不妊検査を受けた男性719例を対象とした。患者を直接面接し、性機能を評価した。

変形性関節症患者のQOLに重要なのは握力よりも日常生活動作

 握力は従来、筋力の指標とされているが、変形性関節症(OA)患者においては、握力よりも、椅子から立ち上がれるかなどの日常生活動作の方が生活の質(QOL)に大きく影響することが示された。シャルジャ大学(アラブ首長国連邦)のAsima Karim氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Applied Physiology」に12月6日掲載された。Karim氏は、「この結果は非常に印象的だった。OA患者は握力が弱く、QOLも全体的に低いが、QOL低下の実態を示していたのは、握力ではなく日常生活動作だったのだ」と述べている。

腎機能はアルツハイマー病血液バイオマーカーに影響するが認知症リスクとは関連しない

 アルツハイマー病(AD)関連の血液バイオマーカー(BBM)は脳病理を反映するだけでなく、腎機能低下によって変動することが知られている。ただし、その変動がクリアランスの低下によるものなのか、脳病理の変化を意味するものなのかは明らかにされていない。また、認知症リスクと腎機能との関連については矛盾するエビデンスが存在する。これらを背景に、カロリンスカ研究所(スウェーデン)およびストックホルム大学(同)のFrancesca Gasparini氏らは、同国で進行中の60歳以上の一般住民を対象とする加齢と介護に関する縦断研究(SNAC-K)のデータを用いた検討を実施。結果の詳細が「Neurology」に12月3日掲載された。

持効性注射剤ART、HIV患者の服薬アドヒアランス向上に寄与/NEJM

 服薬アドヒアランスに課題のあるHIV感染者において、持効性注射剤カボテグラビル・リルピビリンの月1回投与は、標準的な経口抗レトロウイルス療法(ART)よりもレジメン失敗リスクの低減に関して優れることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のAadia I. Rana氏らACTG A5359 LATITUDE Trial Teamによる非盲検無作為化試験の結果で示された。経口薬の服薬アドヒアランスに課題のあるHIV感染者における、持効性注射剤ARTの無作為化試験は不足していた。NEJM誌2026年2月26日号掲載の報告。

高リスク上咽頭がん、camrelizumabの上乗せ・維持療法が有効/BMJ

 導入化学療法後の高リスク上咽頭がん(NPC)患者において、同時化学放射線療法へのPD-1(プログラム細胞死1)阻害薬camrelizumabの上乗せおよび維持療法としてのcamrelizumab投与により、無増悪生存期間(PFS)の延長が認められたことが、中国・中山大学がんセンターのRui You氏らが同国で行った第III相の多施設共同非盲検無作為化試験の結果で示された。これまでの2つの第III相試験では、局所進行NPCへの、PD-1阻害薬と導入化学療法+同時化学放射線療法の組み合わせ治療について評価が行われ、1つの試験ではPD-1阻害薬が全過程を通して使用され、もう1つの試験ではPD-1阻害薬は維持療法として用いられていた。BMJ誌2026年2月10日号掲載の報告。

「肥満症のただしいミカタ川柳」入選作発表/リリー・田辺

 日本イーライリリーと田辺ファーマは、「肥満と肥満症の見方を変え、味方になろう!」を合言葉にマイナビとのコラボレーションで2025年に募集を開始した「肥満症のただしいミカタ川柳」について、3月4日の「世界肥満デー」を前に入選した8作品を発表した。  わが国の肥満人口は2,800万人と推定されている。その中でも「肥満症」は、肥満(BMI25以上)があり、かつ肥満に起因ないし関連する健康障害(合併症)を1つ以上有するか、あるいは内臓脂肪蓄積がある場合など関連健康障害の合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態と定義されている。治療では、食事療法、運動療法、薬物療法が行われている。その目的は、減量そのものではなく、減量により肥満に関連する健康障害を改善することにあり、合併症の予防や改善を目的としている。

神経血管老化の予防戦略、農業や園芸が有効な可能性は

 農業または園芸活動は、健康維持や生活習慣病の予防に効果的である可能性のあるシンプルな戦略である。しかし、脳卒中や認知症などの神経血管老化に関連する疾患の発症に対する予防効果は、依然としてよくわかっていなかった。久留米大学の菊池 清志氏らは、定期的な農業または園芸における身体活動(AGPA)の神経血管老化に対する予防効果とその根底にあるメカニズムについて、2つのアプローチを用いて包括的に調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2025年12月2日号の報告。

複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。

市中肺炎への抗菌薬、72時間以内の経口剤への切り替えは安全?

 市中肺炎の入院治療において、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への早期切り替えは、入院期間や抗菌薬投与日数の短縮につながることが報告されている。そのため、本邦の『成人肺炎診療ガイドライン2024』でも「市中肺炎治療において、症状・検査所見の改善に伴い、注射用抗菌薬から経口抗菌薬への変更(スイッチ療法)を行うことは推奨されるか」というクリニカルクエスチョンが設定され、推奨は「症状・検査所見の改善が得られればスイッチ療法を行うことを強く推奨する(エビデンスの確実性:B)」となっている1)。

心不全患者に季節性血圧変動はどう影響するか

 心不全の患者には予後の改善のためにも血圧を低く保つことが求められる。では、季節により血圧が変動する場合、どのように心不全に影響を与えるのだろうか。この課題に対して、スペインのサン・セシリオ大学病院循環器部門のJesus Gabriel Sanchez-Ramos氏らの研究グループは、スペイン南部で心不全患者の夏季と冬季の血圧値を比較し、これらの変動の臨床的影響を評価した。その結果、心不全患者では夏季に血圧が著しく低下することが判明した。この結果はこの結果はJournal of Hypertension誌2026年4月1日号に掲載された。  夏季は在宅自己血圧測定値が低下する傾向 研究グループは、心不全患者に異なる測定法を用いて夏季と冬季の血圧値を検査・比較し、これらの変動の臨床的影響を評価することを目的に、スペイン南部の施設で検査を実施した。

「ピンクノイズ」は睡眠の質を下げる?

 睡眠を促す音として「ピンクノイズ」を聴くことが流行しているが、実はピンクノイズは睡眠中の脳の活動を妨げる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ピンクノイズは広い周波数帯域を含む「ザー」という連続音で、強めの雨音や波の音に似ており、リラックス効果があるとされている。本研究では、ピンクノイズを聴いていた人では夢を見る睡眠段階であるレム睡眠の時間が短くなっていたことが示されたという。米ペンシルベニア大学精神医学睡眠・時間生物学分野のMathias Basner氏らによるこの研究の詳細は、「Sleep」に2月2日掲載された。  Basner氏はニュースリリースの中で、「レム睡眠は記憶の定着や感情の調整、脳の発達において重要である。したがって、この結果は、睡眠中にピンクノイズなどの広帯域ノイズを流すことは有害であり、特にレム睡眠の時間が大人よりもはるかに長く、脳がまだ発達段階にある子どもは、その影響を強く受けやすい可能性を示している」と述べている。

BMJ誌が「事前登録なし」を理由に却下した臨床試験のその後/BMJ

 臨床試験の事前登録は、研究の透明性を高め、出版バイアスや選択的な結果報告を防止するために不可欠な手続きとされる。医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、2005年7月、ICMJE加盟誌への論文の掲載資格を得るには、最初の参加者の登録時またはそれ以前に、承認された登録機関(WHO国際臨床試験登録プラットフォームの18の主要登録機関、ClinicalTrials.gov、UMIN臨床試験登録システムなど)に試験を登録することを義務付けているが、実際には順守が不十分な試験が散見されるという。スペイン・カタルーニャ国際大学のDavid Blanco氏らは、ICMJE承認の登録機関への「事前登録なし」を理由に、BMJ誌が却下した試験の多くが後に、高インパクトのジャーナルに「ICMJE勧告への準拠」を主張して(多くの場合、登録不備の開示なしに)掲載されている実態を明らかにした。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。

急性単純性虫垂炎、手術か抗菌薬か?APPAC 10年追跡(解説:寺田教彦氏)

虫垂切除術は、100年以上にわたり虫垂炎における唯一の治療法とされ、現在も虫垂炎の主要な治療法である。一方で、CTで合併症を伴わない急性単純性虫垂炎に限れば、抗菌薬による保存的治療が一定の成績を示す研究が蓄積し、近年のガイドラインでも「特定集団では選択肢になりうる」と整理されるようになった。2026年1月にJAMA誌に掲載された本論文で扱われているAPPAC試験は、フィンランドの6施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験で、2009年11月から2012年6月に、18歳から60歳までの、CTで合併症がない急性単純性虫垂炎と診断された患者を虫垂切除群と抗菌薬治療群に無作為に割り付けた試験であり、今回は10年追跡解析を報告している。

うつ病予防に有効な魚の摂取量は?

 韓国・慶熙大学のEunje Kim氏らは、魚類摂取とうつ病および妊娠関連うつ病のリスクとの関連性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年12月18日号の報告。  2023年11月まで公表された論文をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。抽出された5,074件の論文のうち、35件の観察研究をメタ解析に含めた。ランダム効果モデルを用いて、効果推定値を相対リスク(RR)と対応する95%信頼区間(CI)として統合した。さらに、用量反応解析および層別サブグループ解析を行った。

アルツハイマー病「p-tau217血液検査」が高精度に病理検出、日本人で確認

アルツハイマー病(AD)の確定診断には、これまで高額なPET検査や身体的負担の大きい脳脊髄液検査が必要であり、より簡便な血液バイオマーカーの活用が期待されている。新潟大学の春日 健作氏らの研究グループは、日本人を対象とした多施設共同研究「J-ADNI」の臨床検体の解析により、血漿中のリン酸化タウ217(p-tau217)が、アミロイド病理の検出および将来のAD発症予測において、きわめて高い精度を持つことを明らかにした。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年2月6日号に掲載。

お酢の摂取が多いと肥満予防につながる可能性/藤田医科大

 「酢」の摂取は一般的に健康に良いとされているが、摂取の効果について年齢や性別などでタンパク質やビタミンとどのように関連するのだろうか。このテーマについて、藤田医科大学医学部臨床栄養学の和田 理紗子氏らの研究グループは、酢酸摂取量と年齢・性別との関連を検証した。その結果、酢酸摂取量が多い人は炭水化物と飽和脂肪酸の摂取量が少ない傾向だったことが示唆された。この研究結果はNutrients誌2026年1月19日号に掲載された。

カテーテル関連感染予防に最も効果的な消毒薬の製剤と濃度~大規模メタ解析

 血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒で使用するグルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードにおけるカテーテル関連感染発生率が最も低い製剤や濃度を調べるため、フランス・Centre Hospitalier Universitaire de PoitiersのBertrand Drugeon氏らが過去最大規模の系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、イソプロパノールベースの高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)でカテーテル関連感染発生率が最も低いことがわかった。JAMA Network Open誌2026年2月12日号に掲載。  研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、CINAHLを2025年1月7日まで検索し、試験登録データベースおよび関連研究、ガイドラインの参考文献リストをレビューした。対象は、血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒としてグルコン酸クロルヘキシジンまたはポビドンヨードを用いた方法を比較した無作為化比較試験(RCT)で、1つ以上のカテーテル関連感染アウトカム(カテーテル関連血流感染、カテーテル先端コロニー形成、局所感染)を報告した研究とし、査読者2人が独立して、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出した。

脳卒中後のリハビリ、対側より同側の腕の訓練が有用?

 脳卒中後のリハビリテーション(以下、リハビリ)は、障害が大きい側の腕や脚の筋力や動作の回復に焦点を当てて行われるのが通常である。しかし、新たな研究で、比較的障害が少ない側の腕に焦点を当ててリハビリを行う方が、動作能力を大きく改善することが示された。米ペンシルベニア州立大学医学部神経リハビリ研究室のCandice Maenza氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月2日掲載された。Maenza氏は、「障害が少ない側の腕を訓練することで、患者の機能はより改善した。これは、生活の質(QOL)の向上や、介護者の負担軽減につながる可能性がある。片側の腕に重度の麻痺がある人は、食事や着替えなど、日常生活の多くを『良い方の腕』に頼っているためだ」と述べている。