日本では「食育基本法」の目標の1つとして「ゆっくり食べてよく噛む人の割合を増やす」ことが掲げられている。日本で行われたウェブ調査で、「ゆっくり食べ、よく噛む」食習慣は「味わいながら食べる」ことや「口いっぱいに食べない」ことと強く関連していることが明らかになった。国立保健医療科学院の石川 みどり氏らによるこの研究結果は、Scientific Reports誌2025年11月19日号に掲載された。
研究チームは、オンライン調査会社の全国モニターから40~70代の男女を対象に、性別・年齢層別に調査票を配布し、食生活・健康行動(12項目)、歯科口腔状態(14項目)、社会経済的要因(6項目)の質問への回答を自己評価形式で収集した。最終的に成人1,644例(男女各822例)が解析対象となった。
主な結果は以下のとおり。
・男女ともにほぼすべての年齢層において、「ゆっくり食べ、よく噛む」行動と最も強く関連していたのは「味わいながら食べる」という主観的な食体験であり、オッズ比は男性11.20、女性11.48と高値を示した。また、「口いっぱいに食べない」行動も有意に関連しており、食べる姿勢や注意の向け方が咀嚼行動に関与することが示唆された。
・口腔状態との関連では、男性では歯槽骨の吸収がみられないこと、女性では歯痛がないことが「ゆっくり食べ、よく噛む」習慣と有意に関連していた。
・一方、家族構成や学歴などの社会経済因子は一部の層で関連を示したものの、明確な一貫性はみられなかった。「ゆっくり食べ、よく噛む」行動は、所得や教育よりも日常の食体験の質と口腔状態に強く依存する可能性が示唆された。
研究者らは、「これらの結果から、『ゆっくり食べ、よく噛む』習慣は、食事を味わいながら食べることによって促進される可能性があることが示唆された。また、口腔の健康状態を維持することも、とくに男性では歯周病予防、女性では歯痛予防が、良好な食習慣の維持に寄与する可能性がある。『ゆっくり食べ、よく噛む』習慣は肥満や過体重の予防に役立つ可能性がある。患者指導や保健事業において『噛む回数』を数える指導は継続が難しいことが多いが、『食べものを意識して味わう』という指示は心理的負担が小さく実践しやすい。今後は、これらの知見を活かした食育プログラムの開発や、長期的な介入研究による因果関係の検証が期待される」としている。
(ケアネット 杉崎 真名)