日本語でわかる最新の海外医学論文|page:3

PPI長期使用、即時中止vs.漸減中止

 長期投与中のプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、症状改善後も漫然と継続されることが少なくない。一方、中止後の症状再燃への懸念から、減量しながら中止すべきか、あるいは即時中止でも問題ないかについては十分なエビデンスがなかった。今回、多施設ランダム化比較試験により、臨床的に安定した胃食道逆流症(GERD)患者において、PPI(P-CABを含む)の即時中止と漸減中止の有効性を比較した結果、両群の中止成功率に有意差は認められなかった。順天堂大学消化器内科の北條 麻理子氏らによる本研究はJournal of Gastroenterology誌2026年8月号に掲載された。

AIを用いたMRI解析で従来検出困難だった多発性硬化症の皮質病変を検出

 多発性硬化症(MS)では脳の皮質に生じる病変(皮質病変)が身体機能障害や認知機能低下と深く関連しているが、従来のMRI検査では皮質病変の可視化に限界があった。しかし、新しく開発されたAI(人工知能)を活用したMRI画像解析手法により複数のMRI画像の情報を組み合わせて解析することで、従来のMRI検査では見えなかった病変を検出できる可能性が示された。  論文の筆頭著者である米バッファロー大学神経学および生物医学情報学分野のMichael Dwyer氏は、「従来のMRI画像を見ても、通常は皮質病変を確認することはできない。しかし、AIは画像間のごくわずかな違いを検出できるため、非常に強力なツールとなる。

男性は女性より進行がんで診断されやすい

 がんによる死亡率は女性よりも男性の方が高いが、その理由の一端を説明し得る新たな研究結果が報告された。同研究によると、男性は女性と比べてがんが最初に発生した部位(原発巣)から近傍のリンパ節や他臓器へ広がった段階でがんと診断される可能性が高いことが明らかになったという。この研究は、米国立がん研究所(NCI)のBeth Maclin氏らによるもので、詳細は「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」7月号に掲載された。  この結果は、男性ではがんの発見が遅れ、治療がより困難で死亡につながりやすい段階で診断されることを意味していると研究グループは指摘している。

LDL-C上昇の成人が世界で46億人に増加、高齢化で疾病負担増/JAMA

 心血管疾患は、早期死亡の主要な原因であり、LDL-C値の上昇は介入可能なリスク因子とされる。LDL-Cに関連する疾病負担を評価することは、心血管疾患の予防および治療戦略を策定するうえできわめて重要と考えられる。米国・ワシントン大学のChristian Razo氏らGBD 2023 LDL Cholesterol Collaboratorsは、世界疾病負担(GBD)研究の一環として、1990~2023年におけるLDL-C値上昇(35~54mg/dLとの比較)に起因する虚血性心疾患および虚血性脳卒中の疾病負担を、世界、地域、国ごとに推定し、人口増加、高齢化、曝露量の変化などが疾病負担の傾向に及ぼす影響を定量化した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年7月29日号で報告された。

うつ症状の変化の評価、PHQ-9の閾値「6点」は妥当か/BMJ

 患者健康質問票(Patient Health Questionnaire:PHQ)-9は、臨床現場で広く使用されている精神保健アウトカムの指標であり、PHQ-8およびPHQ-2はその短縮版である。英国国民保健サービス(NHS)のTalking Therapiesプログラムでは、治療中の患者における病態の変化の評価にPHQ-9の信頼性変動指数(reliable change index:RCI)の閾値6点(測定誤差を超える変化が起きたことを95%の信頼性で示す最小可検変化量[minimal detectable change:MDC][MDC95]に相当)を使用しているが、その確実性を裏付ける分析結果は報告されていないという。カナダ・マギル大学のYutong Wang氏らDEPRESsion Screening Data(DEPRESSD)PHQ Collaborationは、PHQ-9、PHQ-8、PHQ-2のMDCの評価を行い、年齢、性別、参加者の医療環境、大うつ病の有無によってMDCが異なるかを検証した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月23日号に掲載された。

日本人の乳がん検診の障壁は「痛み・恐怖・予約」~Xの投稿を解析

 乳がん検診の受診率が米国(70%超)と比較して日本(50%未満)で停滞している現状を背景に、SNS投稿の言葉から異文化間における検診の障壁を比較評価したインフォデミオロジー(情報疫学)研究のデータを、名古屋市立大学の寺田 満雄氏らが報告した。解析の結果、英語圏では主に制度的・経済的負担を反映している一方、日本では「痛み」「恐怖」「予約」が密接に関連する心理的・身体的障壁が支配的であることが示唆された。Journal of Medical Internet Research誌2026年7月31日号に掲載。

認知症リスク低下と関連する野菜の種類は?

 野菜や果物の総摂取量および摂取する野菜や果物の種類と認知症との関連を示すエビデンスは、依然として限られている。中国・浙江大学のLiyan Huang氏らは、3つのプロスペクティブコホート研究およびメタ解析を用い、野菜や果物の総摂取量およびサブグループ別の摂取量と認知症リスクとの関連を検討した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2026年6月27日号の報告。  本研究は、Health and Retirement Study (HRS)、Framingham Heart Study Offspring Cohort (FOS)、Whitehall II Study (WHII)のデータを用いて実施した。

心・脳血管疾患の既往やNSAIDs使用はパーキンソン病リスクを高めるか?

 心・脳血管疾患の既往はパーキンソン病(PD)のリスク増加と関連することが示されているが、逆の因果関係による可能性が疑われていた。一方、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はPDリスクを低減させると考えられてきたが、過去のエビデンスは一貫しておらず、背景にある血管疾患による交絡の可能性も懸念されていた。英国・University of OxfordのClare Wotton氏らは、女性約82万例を対象とした大規模前向きコホート研究「Million Women Study」のデータを用いて解析を行った。その結果、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往はPD発症リスクの有意な上昇と関連しており、逆の因果関係だけでは説明できないことが示された。

尿検査により前立腺がんの監視療法を正確にモニタリング

 低悪性度前立腺がんの非侵襲的モニタリングに尿中バイオマーカー検査を用いることで、生検および画像検査の必要性を減らせる可能性があるという研究結果が、「The Journal of Urology」に5月20日掲載された。  米ヴァンダービルト大学医療センターのJeffrey J. Tosoian氏らは、監視療法(AS)中の患者における生検の必要性を判定するため、直腸指診を行わない尿検査を開発し、検証した。ASの一環として生検が予定されているグレードグループ(GG)1の前立腺がん患者330人を対象に、生検の必要性を判定する尿検査の診断性能および臨床的影響を、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)と比較した。

膵臓がんワクチン、高リスク者の9割で免疫応答

 膵臓がんは、特に発症リスクを大幅に高める遺伝子変異を受け継いだ人では、「サイレントキラー」となり得る。しかし、こうした高リスク者における膵管腺がん(PDAC)の予防に新たな希望が見えてきた。米ジョンズ・ホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンターのElizabeth Jaffee氏らは、PDACやその前がん病変で高頻度に認められるKRAS変異を持つ細胞を免疫系が認識して排除するよう誘導するワクチンを開発し、その小規模試験の結果を、「Cancer Discovery」に7月16日付で報告した。試験では、PDACの遺伝的リスクが高い20人のうち18人でワクチンによる免疫応答が確認され、その免疫応答が長期間持続することも示されたという。

緑内障手術後、約3人に1人で眼瞼下垂――濾過手術でリスク高く

 緑内障手術後には眼瞼下垂(まぶたが下がる症状)が生じることがあるが、その経過は十分に分かっていなかった。今回、患者を1年間追跡した研究で、約3人に1人に眼瞼下垂がみられ、特に濾過手術では術後1年まで進行する可能性が示された。研究は、神戸大学医学部眼科学教室の奥住奈南美氏、盛崇太朗氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology」に掲載された。

抗凝固療法が必要な症例に、PCIを行った後の至適な抗血栓療法とは(解説:山地杏平氏)

抗凝固療法が必要な症例に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した際の抗血栓療法では、虚血イベントを抑制しながら、いかに出血リスクを低減するかが重要な課題となっています。これまでWOEST、PIONEER AF-PCI、RE-DUAL PCI、AUGUSTUS、ENTRUST-AF PCIなどの試験により、経口抗凝固薬にP2Y12阻害薬を加えた2剤併用療法は、3剤併用療法と比較して出血リスクを低減できることが示され、その安全性が確立されてきました。一方で、この2剤併用療法をどの程度の期間継続すべきかについては、依然として明確なエビデンスが不足していました。

ベンゾジアゼピンの投与量と死亡リスクとの関連

 フィンランド・トゥルク大学のHanna Sarkila氏らは、フィンランド人の集団において、ベンゾジアゼピン系薬剤およびZ-drug(以下、BZD)の使用を新たに開始した患者を対象に、5年間のフォローアップ期間中における用量依存的なBZD使用とすべての原因による死亡および原因別死亡リスクとの関連を調査した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2026年6月21日号の報告。  対象は、2004~05年にBZDの使用歴がなく、2006年にBZDの使用を開始した患者。薬剤調剤に関する情報はPRE2DUP法を用いてモデル化し、調剤のたびに更新される時間依存性変数として扱った。

超多剤併用高齢患者の処方を減量・中止させるには

 高齢になると多数の併存疾患が存在し、このため処方される薬剤も多く、いかに減量・中止するか、いわゆる「ポリファーマシー」が課題となっている。ポリファーマシーを成功させるには何が必要であろう。このテーマについて、オランダ・SIR薬局業務・政策研究所のGert Baas氏らの研究グループは、高齢患者の処方薬の減量・中止について、臨床的服薬レビュー(CMR)が薬剤数に影響を及ぼすかどうかを調査した。その結果、研修を受けた薬剤師によるCMRは薬剤数に影響を及ぼすことがわかった。この内容はAge and Ageing誌2026年7月2日号に掲載された。

苛立った患者への対応で救急医が疲弊

 救急外来といえば、人気ドラマ『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室(原題:The Pitt)』が思い出されるが、現実の米国の救急外来では、日々のさまざまな出来事によって医師が疲弊し、その結果、医療の質の低下につながる可能性が、新たな研究で示唆された。医師のストレスの大きな要因の一つが、苛立った患者への対応であることが示されたという。米マサチューセッツ大学アマースト校社会心理学教授のLinda Isbell氏らによるこの研究の詳細は、7月12日付で「BMJ Quality & Safety」に掲載された。

マイクロプラスチックは心筋梗塞と関連?

 心筋梗塞を起こした人では、血液中からマイクロプラスチックおよびナノプラスチック(MNP)が高い割合で検出され、その濃度も高いことを示すデータが報告された。サピエンツァ大学サンタンドレア病院(イタリア)のPasquale Paolisso氏らの研究によるもので、詳細は7月14日付で「European Heart Journal」に掲載された。喫煙や大気汚染も、MNPの検出と関連があるという。  この論文では、「先行研究により、ヒトの臓器や組織にMNPが存在していることが既に示されている」と、研究背景が記されている。しかし、筆頭著者であるPaolisso氏によると、冠動脈(心臓の筋肉に血液を供給する動脈)の血液中にもMNPが存在するのか、また、喫煙や大気汚染などの環境要因がその存在に影響を与えるのかどうかという点については、「ほとんど知られていなかった」という。

元プロサッカー選手、中年期から脳萎縮の可能性

 サッカーW杯の熱狂が米国を席巻する中、サッカーのもう一つの側面、すなわちサッカーが脳に及ぼす影響に光を当てた研究が報告された。中年期の元プロサッカー選手では、コンタクトスポーツの経験がない人と比べて、脳の重要な領域の萎縮がより顕著であることが明らかになった。また、元選手では、うつ症状や不安症状が多く見られ、計画や問題解決の困難を訴える傾向も認められたという。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のCaleigh Grace Lynch氏らによるこの研究結果は、アルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2026、7月12~15日、英ロンドン)で発表された。

コーヒー摂取量が多いほど肝硬変・肝細胞がんリスク低下

 朝のコーヒーの魅力は、カフェインによる目覚め効果だけではないかもしれない。新たな研究で、コーヒーの摂取量が多いほど、肝硬変、肝細胞がん、および肝疾患による死亡リスクが低いことが明らかになった。米シーダーズ・サイナイ医療センター肝がんプログラムのメディカルディレクターを務めるJu Dong Yang氏らによるこの研究結果は、7月1日付で「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に掲載された。Yang氏は、「今回の結果は、もともとコーヒーを好み、問題なく飲める人に対して、適度なコーヒー摂取を支持するものだ」と述べている。

「右利き」か「左利き」かは何によって決まる?

 字を書く、ボールを投げる、道具を使うといった日常的な動作をするとき、右利きの人は右手、左利きの人は左手の方がはるかに上手に動かせるのはなぜだろうか。新たな研究で、利き手の優れた運動能力は練習の積み重ねによって形成されるものであり、人の利き手を決定付けるような生まれつき固定された大脳半球の優位性は存在しないことが示された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医学部神経内科のAhmet Arac氏らによるこの研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に6月30日掲載された。

低ナトリウム血症、腎機能が高くても低くてもリスク上昇

 低ナトリウム血症は日常診療でよく遭遇する電解質異常だが、腎機能との関連は十分に明らかになっていなかった。今回、日本の外来患者13万人超を対象とした解析で、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められ、腎機能が高い場合と低い場合の双方でリスクが上昇することが報告された。研究は聖路加国際病院腎臓内科の長浜正彦氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載された。  低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が低下した状態で、体内の水分バランスを調節する仕組みの異常などによって生じる。