日本語でわかる最新の海外医学論文|page:3

子どもの溺水による心停止、人工呼吸の有無で生存・神経予後に差――全国データ解析

 プール監視や学校現場などで遭遇しうる子どもの溺水では、その場での初期対応が転帰を左右するとされている。今回、日本の全国データを用いた研究で、小児の溺水による心停止において、人工呼吸を伴う心肺蘇生(CPR)は胸骨圧迫のみのCPRと比べて、生存および神経予後の点で良好である可能性が示された。研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏らによるもので、詳細は3月10日付の「Resuscitation」に掲載された。  溺水は世界的に不慮の事故死の主要な原因の一つであり、日本でも小児の事故死の上位を占める。溺水による心停止では、体に酸素が行き渡らなくなるため、人工呼吸を含むCPRが重要と考えられてきた。

乾癬は皮膚だけの病気ではない? 重症度と心血管リスクが関連

 乾癬は皮膚に症状が現れる慢性炎症性疾患だが、近年では全身性炎症を背景に心血管疾患リスクの上昇との関連も指摘されている。今回、日本人乾癬患者を対象に、心血管リスク評価に用いられる久山町スコアで解析した結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示された。研究は、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の小林愛里氏、照井仁氏(現:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによるもので、詳細は「Immunological Medicine」に3月17日付で掲載された。

卵巣機能抑制、閉経前早期乳がんの再発と生存に及ぼす影響は?/Lancet

 閉経前のエストロゲン受容体(ER)陽性早期乳がんの治療において、卵巣機能抑制(OFS)は、化学療法やタモキシフェンが投与された場合でも、15年再発リスクおよび死亡リスクを有意に低下させることが明らかとなった。英国・Bradford Royal InfirmaryのMuneera B. Masood氏らEarly Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)が、無作為化比較試験に参加した個々の患者データを用いたメタ解析の結果を報告した。閉経前のER陽性早期乳がん女性において、卵巣摘出または薬剤によるOFSの追加的な保護効果は、化学療法後の閉経状態やタモキシフェンの使用状況によって異なる可能性があった。Lancet誌2026年5月2日号掲載の報告。

中硬膜動脈塞栓術(EMMA)併用で慢性硬膜下血腫の再発が減少/JAMA

 慢性硬膜下血腫の外科的ドレナージ後における液体塞栓物質(Onyx-18)を用いた中硬膜動脈塞栓術(EMMA)は、外科的ドレナージのみと比較して、90日後のCTに基づく片側慢性硬膜下血腫の症候性再発を有意に減少させた。カナダ・University of ManitobaのJai Jai Shiva Shankar氏らEMMA-Can investigatorsが、同国の3次医療センター9施設で実施した無作為化非盲検エンドポイント盲検臨床試験「EMMA-Can試験」の結果を報告した。慢性硬膜下血腫は、外科的ドレナージ後に再発することが多いが、EMMAの併用が再発リスクに及ぼす影響は依然として不明であった。結果を踏まえて著者は、「機能回復、生活の質および医療資源利用における影響を明らかにするため、大規模な試験と長期的な追跡調査が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年4月30日号掲載の報告。

マバカムテンは青年期の閉塞性肥大型心筋症にも有効である(解説:原田和昌氏)

成人では閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対して心筋の収縮力を抑制する薬が承認されたが、小児の薬はなかった。わが国のガイドラインでは、HOCMの左室流出路閉塞軽減のためマバカムテンがClass 1で推奨されている。米国・フィラデルフィア小児病院のRossano氏らは、第III相二重盲検無作為化比較試験であるSCOUT-HCM試験にて、青年期(12歳以上18歳未満)のHOCM患者において、マバカムテンがプラセボと比較して、28週間にわたり左室流出路閉塞を有意に改善することを報告した。

パーキンソン病患者は腎機能低下リスクが約1.9倍/慶應義塾大

 わが国の全国規模の医療保険請求データと健康診断データを用いた疫学コホート研究の結果、パーキンソン病はその後の腎機能低下リスク上昇と関連していることが、慶應義塾大学の満野 竜ノ介氏らによって示された。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年4月15日号掲載の報告。  近年、慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)などの腎機能低下がパーキンソン病の発症リスク上昇と独立して関連していることが示されているが、パーキンソン病発症後の腎転帰については十分に検討されていない。そこで研究グループは、大規模集団ベースコホートを用いて、パーキンソン病患者とパーキンソン病のない成人の間で腎機能低下のリスクを比較した。

PTSDと片頭痛との関連性は?

 片頭痛は、QOL低下および精神疾患の併発リスクの増加と関連している。そして近年のエビデンスでは、片頭痛と心的外傷後ストレス障害(PTSD)との関連についての関心が高まっている。ドイツ・Carl von Ossietzky Universitat OldenburgのLucie Nitsche氏らは、PTSDと片頭痛との関連性の程度を評価するため、関連する研究から得られた有病率および発生率データを統合し、システマティックレビューを実施した。Headache誌2026年4月号の報告。  MEDLINE(PubMed経由)、EMBASE(Elsevier経由)、PsycInfo(EBSCOhost経由)において、2024年11月22日までに報告された研究を包括的に検索した。

ネランドミラスト、日本人IPF/PPFでもFVC低下を抑制/日本呼吸器学会

 厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は2026年4月27日に、ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド)について、特発性肺線維症(IPF)および進行性肺線維症(PPF)を効能・効果として承認することを了承した。これは、主に国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)および「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果に基づくものである。第66回日本呼吸器学会学術講演会では、両試験の日本人集団の結果が報告された。西岡 安彦氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野)が両試験の日本人集団を対象とした併合解析結果を報告し、近藤 康博氏(愛知医科大学 呼吸器・アレルギー内科)がFIBRONEER-ILD試験の日本人PPF患者サブグループ解析結果を報告した。

全死因死亡と関連した昼寝パターンは?

 ウェアラブルデバイスを用いて客観的に測定した昼寝パターンと全死因死亡との関連を調査した前向きコホート研究により、長時間の昼寝、頻回の昼寝、そして午前中に昼寝をする傾向がある高齢者では全死因死亡リスクが高いことが、米国・Harvard Medical SchoolのChenlu Gao氏らによって示された。JAMA Network Open誌2026年4月20日号掲載の報告。  高齢者における過度な昼寝は、心血管疾患や神経変性疾患などとの関連が報告されている。しかし、これまでの研究の多くは自己申告による昼寝評価に基づいており、昼寝のタイミングや日ごとの変動性など、詳細な昼寝の特徴については十分に検討されていなかった。

高齢者の心不全リスク、無症状の心房細動で約3倍に上昇の可能性

 高頻度に見られるタイプの不整脈である心房細動(AF)がある人では、たとえ無症状であっても心不全(HF)リスクが有意に上昇することが、新たな研究で示された。スクリーニングで無症候性AFが検出された患者では、AFがない人と比べてHFの発症リスクが約3倍高かったという。この研究結果は、欧州不整脈学会年次集会(EHRA 2026、4月12~14日、フランス・パリ)で発表された。  この新たな知見は、AF患者におけるHFの早期発見と治療に役立つ可能性がある。本研究を主導したダンデリード病院(スウェーデン)の循環器専門医であるGina Sado氏は、「HFとAFは双方向の関係にあり、互いに進行を加速させる。

RAS変異陽性既治療膵管腺がん、daraxonrasibが有効か/NEJM

 RAS遺伝子変異を有する既治療膵管腺がん(PDAC)患者において、daraxonrasib(RMC-6236、GTP結合型変異および野生型RASを標的とする経口のRAS(ON)マルチ選択的阻害薬)は、300mg用量の投与により抗腫瘍活性が示され、Grade3以上の治療関連有害事象は約3割で認められた。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のBrian M. Wolpin氏らRMC-6236-001 Investigatorsが、同国の16施設で実施した第I/II相試験「RMC-6236-001試験」の結果を報告した。PDACに対する現行治療法は有効性が限定的である。PDACの90%以上で活性化RAS遺伝子変異が認められることから、これを治療標的とした新たな治療法が期待されていた。NEJM誌2026年5月7日号掲載の報告。

肥満のアルコール使用障害、セマグルチドvs.プラセボ/Lancet

 肥満を有する中等度~重度のアルコール使用障害(AUD)患者において、セマグルチド週1回投与により、プラセボと比較してAUDに対する有意な治療効果が認められた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Bispebjerg and FrederiksbergのMette Kruse Klausen氏らが、コペンハーゲンの単施設で実施した26週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。AUDは、世界の年間死亡者の5%を占めており、新たな治療法の開発が急務となっている。GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドは前臨床試験および初期の臨床試験において、飲酒量を減少させる可能性が示唆されていた。

Ca拮抗薬、ARBで降圧不十分な場合には低用量のサイアザイド系利尿薬がきわめて有効であるが、合剤は高齢者では慎重に(解説:桑島巖氏)

TRIDENT研究は、脳出血発症後、収縮期血圧が130~160mmHgに安定した状態の1,670例(平均年齢58歳)を、テルミサルタン20mg、アムロジピン2.5mg、インダパミド1.25mgの1つの合剤治療(ピル)群とプラセボ群に1:1にランダム化して追跡した国際試験である。結果としては、2.5年間の追跡期間中に、主要エンドポイントである脳卒中の再発は合剤(ピル)群は38例(4.6%)であり、プラセボ群の62例(7.4%)に比して有意に少なかったというものである。追跡中の血圧値はピル群127mmHg、プラセボ群138mmHgであった。重大な有害事象には両群で差がなかったが、試験の中止の理由は合剤群で血清クレアチニンレベルが有意に上昇したためであると報じている。

TN乳がん1次治療のDato-DXd、QOL悪化までの期間を延長(TROPION-Breast02)/ESMO BREAST 2026

 免疫チェックポイント阻害薬の適応とならない局所進行切除不能または転移を有する未治療のトリプルネガティブ乳がんを対象とした第III相TROPION-Breast02試験において、抗TROP2抗体薬物複合体であるダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)は、化学療法と比較してQOL悪化までの期間を延長したことを、英国・Barts Cancer InstituteのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で報告した。 これまでの解析では、Dato-DXdが治験責任医師選択化学療法(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチン)と比較して、主要評価項目である全生存期間および無増悪生存期間において統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが報告されている。

「MASLD診療ガイドライン」改訂、脂肪肝を全身疾患として再定義/日本消化器病学会

 2026年4月、「MASLD診療ガイドライン」が改訂された。2020年に発刊した前版の「NAFLD/NASH診療ガイドライン」から6年ぶりの改訂で、第3版となる。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、改訂ポイントを解説するパネルディスカッションが開催された。  今改訂の最大のトピックスは、疾患名の変更とその定義だ。従来、脂肪性肝疾患に用いられてきた「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」の疾患名は国際的コンセンサスに基づき、2023年に「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」に変更された。

治療抵抗性統合失調症患者の脳構造はどうなっているのか

 治療抵抗性統合失調症(TRS)は、精神科医療において大きな課題となっており、患者の約10~60%が抗精神病薬に治療反応を示さない。TRSに対する早期治療は、臨床アウトカムの改善につながる可能性があるものの、客観的なバイオマーカーが欠如しているためタイムリーな介入の妨げとなっている。一般的な脳の構造変化がTRSと関連していることが示唆されているものの、大規模なTRS症例データを得ることが困難なため、明確かつ確固たる結論はいまだ得られていない。米国・Johns Hopkins University School of MedicineのSemra Etyemez氏らは、このギャップを埋めるため、ENIGMA(Enhancing Neuro Imaging Genetics through Meta-Analysis)コンソーシアムと共同で、TRSに関連する脳の構造変化を調査した。

ある種の抗うつ薬がLong-COVIDの疲労改善に有効か

 抗うつ薬の一種が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に持続する疲労の改善に有効な可能性が報告された。マクマスター大学(カナダ)のEdward Mills氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に3月31日掲載された。同時に評価された血糖降下薬のメトホルミンに関しては、有効性が示されなかったという。  COVID-19の急性期以降にさまざまな症状が遷延化する、いわゆる「Long COVID」は、いまだ世界中の多くの人の生活の質(QOL)を低下させている。特に疲労は、最も一般的で生活機能に大きな影響を及ぼす症状とされる。Long COVIDの治療手段としてこれまでに、抗うつ薬のフルボキサミンと血糖降下薬のメトホルミンが有効な可能性が、観察研究などで示唆されている。

歯の減少や噛み合わせの低下は体重増加につながる?

 歯を失うと体重が増える可能性がある――そんな研究結果が報告された。歯の本数が少ないこと、噛み合わせ(咬合機能)や歯周の状態が悪いことは体重増加と有意に関連していることが示されたという。研究グループは、歯の喪失が咀嚼能力に影響し、それが健康的な食事の選択を制限する可能性があると指摘している。ペロタス連邦大学(ブラジル)のNatalia Pola氏らによるこの研究結果は、「Journal of Periodontology」に3月6日掲載された。  この研究では、ペンシルベニア州ピッツバーグとテネシー州メンフィスを拠点とする長期健康調査プロジェクト(Health ABC)の参加者903人を追跡して、口腔状態と体重の変化との関連が検討された。

睡眠時無呼吸症候群、日ごとの重症度変動も心血管リスクに影響

 睡眠時無呼吸症候群(OSA)は心疾患、高血圧、脳卒中のリスクを高めることが知られているが、その重症度が日ごとに大きく異なることも、リスクに影響する可能性がある。新たな研究で、OSAの重症度の日ごとの変動が大きい人では、小さい人に比べて、非致死的な主要心血管・脳血管イベント(MACCE)のオッズが34%高いことが示された。フリンダース大学(オーストラリア)のBastien Lechat氏らによるこの研究の詳細は、「Sleep」に3月26日掲載された。  OSAでは、睡眠中の呼吸停止とそれに伴う覚醒が一晩中繰り返され、睡眠の質に悪影響を及ぼすことが知られている。Lechat氏は、「多くの人は、OSAの症状は一定していると考えがちであるが、実際は、ある夜は他の夜よりも著しく悪化するなど日ごとに大きく異なる。

持続性心房細動の1次治療、PFAが抗不整脈薬を上回る/NEJM

 持続性心房細動の初期治療として、非熱性アブレーション技術を用いたパルスフィールドアブレーション(PFA)を受けた患者は、抗不整脈薬療法を受けた患者と比較して、心房性不整脈の再発リスクが有意に低く、重篤な有害事象のリスクは同程度であることが示された。米国・クリーブランドクリニックのOussama M. Wazni氏らAVANT GUARD Study Investigatorsが「AVANT GUARD試験」の結果を報告した。持続性心房細動患者では、著しい電気的、構造的なリモデリングが高頻度に発生するため、発作性心房細動患者に比べて従来の熱性アブレーションの治療成績が劣る傾向にあった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年4月25日号に掲載された。