解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは

提供元:ケアネット

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公開日:2025/12/01

 

 日本のテレビコマーシャルでお馴染みの解熱鎮痛薬「イブ」に含有されている成分が、韓国では2025年4月に違法薬物に指定されて持ち込み禁止となった。その成分は、日本人医師や薬剤師にはさほど認知度が高くないものの、近年の頭痛外来患者の増加の原因の1つになっている可能性があるという。今回、頭痛専門外来患者の市販薬(OTC医薬品)の服用状況などを研究する佐野 博美氏(京都大学大学院医学研究科 社会医学系専攻健康情報学)と共同研究者の平 憲二氏(プラメドプラス)が、日本社会薬学会第43年会にて「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH、薬物乱用頭痛)」に関する報告をしたことから、解熱鎮痛薬に含まれる依存性成分や頭痛患者が増える実態について話を聞いた。

解熱鎮痛薬に配合されている依存性成分の正体

 海外での規制に至った原因成分とは、鎮静催眠成分のアリルイソプロピルアセチル尿素(ア尿素)である。OTC解熱鎮痛薬は、解熱鎮痛成分(アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)、制酸成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムなど)、生薬成分、無水カフェイン、その他成分、そして鎮静催眠成分(ア尿素、ブロモバレリル尿素[ブ尿素])などで構成される。今回問題とされたア尿素に焦点を当てた場合、イブシリーズでは5製品中4製品に配合されている。もちろんOTC 解熱鎮痛薬の成分として厚生労働省から認可を受けており、その前提で使用されているので国内の規制上は問題ない。

 一方で、『頭痛の診療ガイドライン2021』のCQI-13(OTC医薬品による頭痛治療をどのように指導するか)では、OTC医薬品の不適切使用によるMOHを問題視しているものの、その具体的な要因は明らかにされていない1)

患者支持ダントツ、依存性成分が満足度の底上げか

 そこで佐野氏らは、「頭痛専門外来患者における市販薬の鎮痛薬服用状況:問診票を用いた記述疫学研究」において、片頭痛や緊張型頭痛のような一次性頭痛患者のOTC医薬品の利用率増加と医療機関受診率低下の原因を“OTC医薬品に含まれる依存性成分”と仮定し、3つの依存性成分(カフェイン、ア尿素、ブ尿素)が含まれている解熱鎮痛薬の使用状況を頭痛専門外来2施設で調査、初診患者の市販薬服用状況を明らかにした。

 解析対象者は、普段使用している頭痛治療薬の種類を問診票に記載し、適格基準を満たした15歳以上の6,756例で、そのうち市販薬のみを服用し、商品名を明記していた1,128例をサブ解析した。その結果、約6割強がイブシリーズ(イブA錠EX、イブクイック頭痛薬DX、イブA錠、イブクイック頭痛薬、どのシリーズかは不明)を使用していたことが示された。なお、イブシリーズの場合、依存性成分を含まない『イブ』は2023年に販売中止されているため、「イブを使用=依存性成分を摂取」と判断された。使用されていたOTC医薬品の依存性成分の内訳については、カフェイン&ア尿素が最も多く(8割弱)、続いてカフェイン&ブ尿素、依存性3成分なし、カフェインのみ、依存性3成分すべてであった。

医療にアクセスするも適正薬剤届かず

 本集団の特徴として、佐野氏は「病院にアクセスしづらい働き世代で、とくに40代以上の女性が多かった。驚いたことに、対象者は重症度が高い患者であるにもかかわらず、その約2割が市販薬のみでコントロールしていた。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体製剤などの新薬にたどりつくべき患者がたどり着けずに市販薬を手にしている可能性がある」と片頭痛治療の実際に危機感を抱いた。これについて平氏は、「依存性成分が処方箋医薬品とは異なる配合(比率)で含まれるOTC医薬品に“効果がある”と考えている患者は一定数存在する。患者自身がいろいろ試した結果、効果を実感してOTC医薬品に依存していくのではないか」と指摘し「通院しているが、“治療は市販薬”という患者も少なくない」と現状を説明した。

 本調査の限界として、「ロキソニンやバファリンは処方薬との区別ができなかったため、集計結果の信頼性が低い」と説明し、「依存性成分は処方箋医薬品にも含まれているため、実際には本研究結果より多くの患者が依存性成分を摂取している可能性がある。さらに、鎮静作用のある成分とカフェインを同時摂取することは薬理作用が強化され、依存リスクが高まる可能性があるにもかかわらず、本対象者の使用薬剤の約9割にはそれらが一緒に含有されていた」と述べた。「今後は処方箋医薬品も含めた解析を実施していきたい」としながら、「医師・薬剤師をはじめ、医療者にはこのような実態を理解したうえで、患者に接してほしい」ともコメントした。

(ケアネット 土井 舞子)

参考文献・参考サイトはこちら

1)日本神経学会編. 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院;2021.