人工呼吸器を装着している集中治療室(ICU)入室患者では、5人中4人にせん妄が生じる。せん妄とは、治療による体への負担が原因で生じる異常な精神状態のことをいい、パニック、動揺、怒りなどの症状が現れる。新たな研究で、ICU入室患者に家族からの録音メッセージを聞かせることで、患者の意識を安定させ、せん妄を予防できる可能性のあることが明らかになった。米マイアミ大学看護健康学部のCindy Munro氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Critical Care」に11月1日掲載された。
この研究でMunro氏らは、2018年4月から2020年11月にかけて(ただし、新型コロナウイルス感染症パンデミック中の3カ月間は中断)、南フロリダの2カ所の大規模病院の9つのICUで、人工呼吸器を装着している178人の患者を対象に、せん妄予防のための非薬理学的介入の有効性を検討した。
対象者は、家族からの録音メッセージを聞く群(89人)と通常のケアを受ける群(89人)にランダムに割り付けられた。計10種類の録音メッセージはいずれも2分間の長さで、午前9時から午後4時までの時間帯に、1時間ごとに再生された。内容は、医療従事者と家族が定期的に患者の様子を見に来ていることを思い出させることを意図したもので、患者の名前を呼び、今いる場所を思い出させ、人工呼吸器を装着していることや、回復を助けるためにワイヤーやチューブ類が設置されている可能性があることが伝えられた。
Munro氏は、「家族の関与がせん妄の予防と介入において重要な要素であることは、以前よりエビデンスによって示されている。しかし、家族がケアに全面的に関わるには、しばしば困難を伴うのが現状だ。そこでわれわれは、家族がそばにいなくても患者が家族の声を聞けるようにし、家族の存在感を補うための介入を考案した」と話している。
介入の結果、録音メッセージを聞いた群では通常のケアを受けた群と比べて、せん妄のない日数が有意に多いことが明らかになった。また、患者がメッセージを聞く頻度が高ければ高いほど、せん妄のない日数が有意に増えた(P<0.001)。
こうした結果を受けて研究グループは、「台本を使って家族が録音した音声メッセージは、人工呼吸器を装着しているICU入室患者のせん妄予防に役立つ、潜在的に効果が高く低コストの非薬理学的介入であることが明らかになった」と結論付けている。
[2025年11月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら