日本語でわかる最新の海外医学論文|page:4

冠微小循環障害と予後―CFR・IMRによる評価の妥当性を巡って(解説:野間重孝氏)

本論文は、虚血性心疾患が疑われ侵襲的冠動脈造影を受けた患者を対象に、冠微小循環障害(coronary microvascular dysfunction:CMD)の有病率と予後的意義を検討した韓国7施設による前向き多施設コホート研究である。著者らは、冠動脈造影に加えて冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)、冠血流予備能(coronary flow reserve:CFR)、微小循環抵抗指数(index of microcirculatory resistance:IMR)を系統的に評価し、CFR<2.0かつIMR≧25をCMDと定義した。その結果、CMDは非閉塞性冠動脈疾患のみならず、閉塞性心外膜冠動脈疾患を有する患者にも認められ、さらに全死因死亡、心筋梗塞、臨床的再血行再建術、または心不全入院から成る主要複合エンドポイントの増加と関連したと報告している。

アルツハイマー病に対するアーモンド効果、その結果は?

 アーモンドは、脳の強壮や記憶力向上において、ペルシャ医学でたびたび推奨されている。また、いくつかのエビデンスにおいても、アーモンドの記憶力への効果が裏付けられている。イラン・Iran University of Medical SciencesのMohsen Mohajeri氏らは、アルツハイマー病患者におけるアーモンドの記憶力および認知機能への影響を評価するため、ランダム化比較試験を実施した。Avicenna Journal of Phytomedicine誌2026年3・4月号の報告。  本ランダム化比較試験では、軽〜中等度の認知機能障害を有するアルツハイマー病患者60例を対象に、アーモンド摂取群(1日10gの粉末スイートアーモンドと小さじ1杯の粉末ロックキャンディを既存の処方薬に加えて摂取)または対照群(既存の処方薬を継続)にランダムに割り付け、3ヵ月間フォローアップを行った。

遺伝性血管性浮腫の疾患認知はまだ不十分/CSLベーリング

 CSLベーリングは、5月16日の「HAE Day」によせて都内でメディアセミナーを開催した。  HAEは、生まれつき血液中にあるタンパク質C1インヒビター(C1-INH)の不足・機能低下が原因で浮腫を生じる疾患。指定難病に認定され、皮膚や腹部(腸)など、全身に浮腫が生じ、とくに咽喉で腫れると呼吸困難に陥り、命に関わるケースもある。わが国には、診断・治療中の患者は430人前後であり、未診療の患者も相当数がいると推定されている。また、海外のデータでは、人口50,000人に1人の割合で患者がいるとされる。なお、同社ではHAEの急性発作の発症抑制薬として、ヒト抗活性化第XII因子モノクローナル抗体製剤ガラダシマブ(商品名:アナエブリ)を発売している。

スタチンと乳がん生存率の関連、サブタイプ別に検討

 スタチンは乳がん患者の生存率向上と関連することが報告されているが、サブタイプ別の関連についてのデータはない。今回、フィンランド・Tampere University HospitalのSanteri Palmi氏らが、早期乳がん患者における診断前後のスタチン投与とサブタイプ別の生存率との関連を後ろ向きコホート研究で検討した。その結果、診断前のスタチン投与は生存率に影響を与えなかったものの、診断後のスタチン投与はホルモン受容体陽性(HR+)乳がんにおいて、乳がん死亡および全死亡のリスクを低下させることが示唆された。JAMA Network Open誌2026年6月1日号に掲載。

DOACに併用するNSAIDs、出血リスクが低いのは?

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に関連する消化管出血について、関節リウマチや変形性関節症などでは、COX-2選択的NSAIDsを用いたほうがリスクが低いと報告されている。しかし、直接経口抗凝固薬(DOAC)による治療を受けている非弁膜症性心房細動(NVAF)など、出血リスクが高い集団におけるCOX-2選択的NSAIDsの有益性は明らかになっていない。そこで、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のFabian Maximilian Meinert氏らの研究グループは、NVAF患者におけるDOACとNSAIDsの併用について、NSAIDsをCOX-2選択性で分類し、出血リスクを比較した。

スーパーシューズはパフォーマンス向上と傷害リスクに関連

 米国のランニング界で「スーパーシューズ」の普及が進み、ランナーの走りにさらなる反発力をもたらし、レースやイベントでのタイム短縮に貢献している。しかし、この先進的なフットウェア技術(advanced footwear technology;AFT)には負の側面もあるようだ。新たな研究で、一般に「スーパーシューズ」と呼ばれているAFTシューズは、骨ストレス障害に関連する微妙なランニング動作の変化を引き起こすことが明らかになった。米マス・ジェネラル・ブリガムのランニング医学部門ディレクターを務めるAdam Tenforde氏らによるこの研究は、「PM&R」に4月23日掲載された。

抗菌薬使用とセリアック病発症に因果関係は認められず

 抗菌薬の使用はセリアック病(CD)の発症と関連付けられてきたが、新たな研究で、この因果関係を支持するエビデンスは認められないことが示された。CD患者では、CDではないきょうだいや一般集団と比較して抗菌薬使用のオッズが高かったものの、腸粘膜が正常な人では、そのオッズはさらに高かったという。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のMaria Ulnes氏らによるこの研究は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月27日掲載された。  Ulnes氏は、「CDと抗菌薬使用との間に因果関係は認められなかった。抗菌薬の適正使用が重要であることに変わりはないが、CD発症を恐れて抗菌薬の使用を避ける理由はない」と述べている。

抗凝固療法適応の心房細動患者、左心耳閉鎖術の非劣性を確認/NEJM

 抗凝固療法適応の心房細動患者において、Watchman Flx(米国・Boston Scientific製)デバイスを用いた左心耳閉鎖術は非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)療法と比較し、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合エンドポイントに関して非劣性、かつ3年時の手技に関連しない出血に関して優越性が示された。米国・Cedars-Sinai Smidt Heart InstituteのShephal K. Doshi氏らCHAMPION-AF Investigatorsが、16ヵ国の141施設で実施中の無作為化試験「CHAMPION-AF試験」の、3年追跡解析結果を報告した。心房細動患者では、脳卒中予防のための経口抗凝固療法は出血リスクによって制限される。

ivonescimab、進行扁平上皮NSCLCの1次治療でOSも延長(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長したことが、中国・上  海海交通大学のShun Lu氏らが同国の50施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の事前規定の中間解析の結果で示された。HARMONi-6試験に関してはこれまでに、ivonescimab+化学療法がチスレリズマブ+化学療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されていた(ジャーナル四天王「進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet」https://www.carenet.com/news/journal/carenet/61763)。Lancet誌オンライン版2026年5月31日号掲載の報告。

ジギタリス配糖体の再評価――復権ではなく再配置として読む(解説:野間重孝氏)

私が循環器内科医として臨床の現場に入ったのは1980年(昭和55年)である。当時、心不全治療においてまず教えられたのは、利尿薬の使い方とジギタリスの使い方であった。病棟では、浮腫や肺うっ血に対して利尿薬をどう調節するか、また心不全例あるいは心房細動合併例に対してジギタリスをどのように用いるかが、循環器診療の基本手技の1つとして扱われていた。しかし、当時は現在のように、大規模ランダム化比較試験によって薬剤の有効性を検証し、その結果に基づいてガイドライン上の位置付けを定めるという考え方は、まだ一般的ではなかった。利尿薬もジギタリスも、経験的に症状を改善する薬として使用されていたのである。

ER+/HER2-進行乳がんの1次治療、giredestrant+パルボシクリブvs.レトロゾール+パルボシクリブ(persevERA BC)/ASCO2026

 エストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)の局所進行または転移乳がん患者に対する1次治療において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)giredestrantとパルボシクリブの併用療法は、レトロゾールとパルボシクリブの併用療法と比較して、治験責任医師評価による無増悪生存期間(INV-PFS)について数値上の改善を示したものの、統計学的に有意な差は示さなかった。英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏が、第III相persevERA BC試験の主要解析結果を、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)で報告した。

高リスク多発性骨髄腫、MRD陰性維持期間とPFSの関連

 多発性骨髄腫において微小残存病変(MRD)陰性は生存率の向上と関連しているが、高リスク多発性骨髄腫におけるMRD陰性の予後的価値については明らかになっていない。今回、中国・The First Affiliated Hospital of Sun Yat-sen UniversityのHuan Liu氏らは移植適応の初発多発性骨髄腫を対象にした単施設の後ろ向き研究を実施し、個別治療の指針となる最短のMRD陰性維持期間を検討した。その結果、MRD陰性を2年維持した高リスク患者は標準リスク患者と同様の無増悪生存期間(PFS)を示し、さらに4年の維持によりPFSが改善されることが示唆された。Cancers(Basel)誌2026年5月12日号に掲載。

大腸がん、ctDNAによる術後化学療法と投与期間の選択(CIRCULATE・GALAXY後方解析)/ASCO2026

 StageII/III大腸がんにおける術後補助化学療法は複数のレジメンがあり、最適な投与期間も明らかになっていない。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)では、術後のctDNAを予後マーカーとして、術後補助療法のベネフィットを受ける患者層の特定や最適な投与期間を検討した2つの試験結果が発表された。

精神症状の有無でアルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの効果に違いはあるか?

 アルツハイマー病患者は、アジテーションと精神病症状を併発することが少なくない。米国・Banner Alzheimer's InstituteのPierre N. Tariot氏らは、精神病症状を併発するアルツハイマー病患者と併発しない患者におけるアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を明らかにするため、長期試験の事後解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年4月21日号の報告。  アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する患者を対象に、ブレクスピプラゾールとプラセボを比較した2つの第III相試験(欧州、ロシア、米国で実施された12週間ランダム化二重盲検プラセボ対照固定用量試験)のデータを統合した。

中高年の前兆を伴う片頭痛、脳梗塞リスクの上昇と関連

 前兆を伴う片頭痛を有する中高年では、片頭痛のない中高年と比べて虚血性脳卒中(脳梗塞)リスクが高い可能性があるとする研究結果が報告された。前兆を伴う片頭痛を有する人では、片頭痛のない人に比べて脳梗塞リスクが73%高かった一方、前兆を伴わない片頭痛を有する人では有意なリスク上昇は認められなかったという。米バーモント大学神経学分野のAdam Sprouse-Blum氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に5月20日掲載された。  研究グループによれば、片頭痛の前兆とは、片頭痛発作に先立って現れる視覚的または感覚的な異常を指す。

食事支援で心不全患者のQOL改善の可能性

 心不全のために入院治療を受けた患者に対して、退院後に心臓に良い食品を提供することで、患者の生活の質(QOL)改善につながる可能性が示された。米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センターのAmbarish Pandey氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Cardiology」に4月8日掲載された。  心不全入院後の病状管理の難しさは、退院の瞬間に始まる。退院後にはしばしば、多くの薬を正しく服用することが困難であったり、栄養価の高い食料品の入手に支障を来したりといった問題に直面する。これらの課題のうち後者に対しては、食事や食材を薬のように“処方”することが解決策になる可能性が浮かび上がった。

PD-L1陽性胃がん、周術期serplulimab療法でEFS改善(ASTRUM-006)/Lancet

 切除可能なPD-L1陽性胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおいて、術前S-1+オキサリプラチン(SOX)+術前・術後serplulimabは、術前・術後SOX単独と比較して無イベント生存期間(EFS)を改善し、安全性プロファイルは良好であることが示された。中国・北京大学がん病院・研究所のLin Shen氏らASTRUM-006 Study Groupが無作為化二重盲検多施設共同の第III相試験「ASTRUM-006試験」の結果を報告した。先行研究で周術期免疫化学療法は、胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおいてさまざまなアウトカムを示している。

降圧薬の有害事象による中止、薬剤クラスで差/JAMA

 降圧薬に関する短期の二重盲検無作為化試験における有害事象や治療中止の発現は、薬剤クラスやレジメンによってばらつきがあり、一部の併用療法では単剤療法と比べて忍容性が優れることが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のNelson Wang氏らによるネットワークメタ解析の結果で示された。レジメンの中には、プラセボよりも有害事象による治療中止率が低く、症状の改善が示されたものもあった。得られた知見について著者は、「試験レベルに基づく結果であり、またネットワークメタ解析の前提条件に依存しているため、すべての患者に適用されるものではない」と述べている。JAMA誌オンライン版2026年5月28日号掲載の報告。

脳梗塞治療と心筋梗塞治療の類似性と相違(解説:後藤信哉氏)

今の若い世代の循環器内科医にとって、心筋梗塞に対する再灌流療法は冠動脈インターベンションであろう。1986年から循環器内科医をしている筆者は、心筋梗塞治療に血栓溶解療法が主流になりそうな時代があったことを知っている。血栓溶解療法には内因系のプラスミノーゲンをプラスミンに転換することにより、線溶効果を狙う。ヒトの身体はバランスが取れているので、線溶を亢進させれば、体内の血栓性も亢進する。血栓溶解療法には血小板、凝固系を阻害する抗血栓療法の併用が必須である。われわれは1980~90年代に多数の抗凝固薬、抗血小板薬の併用を試してきた。

肥満や食嗜好に関係する社会的要因は何か/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第69回年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。  今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。