日本語でわかる最新の海外医学論文|page:5

統合失調症における中枢コリン作動系の変化

 統合失調症では、コリン作動系のさまざまな変化がみられることが報告されているが、これらのエビデンスのシステマティックレビューおよびサマライズは行われていなかった。カナダ・オタワ大学のZacharie Saint-Georges氏らは、統合失調症およびまたは統合失調感情障害における中枢コリン作動系に関するイメージング研究および剖検研究についてのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌2025年7月号の報告。

スタチンは敗血症の治療にも効果あり?

 スタチン系薬剤(以下、スタチン)は、高LDLコレステロール(LDL-C)血症の治療における第一選択薬であるが、この安価な薬剤は、別の病態において救命手段となる可能性があるようだ。新たな研究で、敗血症患者の治療において、抗菌薬、点滴、昇圧薬による通常の治療にスタチンを加えることで死亡リスクが低下する可能性のあることが明らかになった。天津医科大学総合病院(中国)のCaifeng Li氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Immunology」に6月6日掲載された。  敗血症は、感染症に対する過剰な免疫反応によって全身に炎症が広がり、複数の重要な臓器に機能不全が生じる病態である。研究グループによると、米国では毎年約75万人が敗血症で入院し、そのうち約27%が死亡している。敗血症患者の約15%には、血圧が危険なレベルまで低下する敗血症性ショックが生じる。敗血症性ショックの死亡リスクは30〜40%に上ると報告されている。

乾癬性関節炎では関節リウマチよりも診断が遅れる

 乾癬性関節炎(PsA)患者は関節リウマチ(RA)患者と比較して診断が遅れるという研究結果が、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月29日掲載された。  英バース大学のRachel A. Charlton氏らは、PsA患者とRA患者の診断に至るまでの期間を比較した。解析対象となったのは、PsA患者2,120人と、年齢と性別でマッチさせたRA患者2,120人であった。  解析の結果、症状が発現してから専門医に紹介されるまでの期間は、PsA患者の方がRA患者よりも長かった。PsA患者の方が、かかりつけ医を受診してから診断を受けるまでの期間が長く(平均112日対89日、ハザード比〔HR〕0.87)、二次医療機関に紹介された後の診断の遅れも認められた(HR 0.86)。多発性関節炎を有する患者において、ベースライン時における疾患修飾性抗リウマチ薬の処方率は、PsA患者の方がRA患者よりも低かった(それぞれ54.0%、69.0%)。28関節を対象とする疾患活動性スコアは、ベースライン時ではRA患者の方が高かったが、3カ月後にはPsA患者の平均スコアの方が高くなった。

SGLT2阻害薬で糖尿病患者の転倒リスク上昇

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)が、2型糖尿病患者の転倒リスクを高めることを示唆するデータが報告された。筑波大学システム情報系の鈴木康裕氏らが行った研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に3月17日掲載された。  転倒やそれに伴う骨折や傷害は、生活の質(QOL)低下や種々の健康リスクおよび死亡リスクの増大につながる。糖尿病患者は一般的に転倒リスクが高く、その理由として従来、神経障害や網膜症といった合併症の影響とともに、血糖降下薬使用による低血糖の影響が指摘されていた。さらに比較的近年になり、血糖降下以外の多面的作用が注目され多用されるようになった、SGLT2-iやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関しては、体重減少とともに筋肉量を減少させることがあり、その作用を介して転倒リスクを高める可能性も考えられる。ただし、実際にそのようなリスクが生じているか否かはこれまで検証されていなかった。

心エコーの自動解析AIシステム「PanEcho」、精度は?/JAMA

 米国・テキサス大学オースティン校のGregory Holste氏らは、経胸壁心エコー(TTE)において39項目(診断分類タスク18項目、パラメーター推定タスク21項目)を自動解析する人工知能(AI)システム「PanEcho」を開発し、内部および外部検証の結果、地理的および時間的な違いにかかわらず高い精度が得られることを報告した。心エコー検査は心血管診療の基盤であるが、一連の動画の専門家による読影と手作業によるレポート作成に依存している。著者は、「マルチタスクディープラーニングを用いて心エコー読影を自動化したAIシステム(PanEcho)は、心エコー検査室における補助的な読影ツールとして、あるいはポイントオブケアにおけるAI対応スクリーニングツールとして活用できる可能性があり、各臨床ワークフローにおける前向き評価が望まれる」と述べている。JAMA誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

1日1回の経口orforglipron、早期2型DMのHbA1c改善/NEJM

 早期の2型糖尿病成人患者において、GLP-1受容体作動薬orforglipronの1日1回40週間経口投与はプラセボと比較して、HbA1c値を有意に低下させた。米国・Velocity Clinical Research Center at Medical City DallasのJulio Rosenstock氏らACHIEVE-1 Trial Investigatorsが、中国、インド、日本、メキシコおよび米国で実施した第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ACHIEVE-1試験」の結果を報告した。orforglipronは、2型糖尿病および体重管理を適応症として臨床開発中の、経口投与可能な低分子非ペプチドGLP-1受容体作動薬であり、有効性と安全性に関する追加データが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2025年6月21日号掲載の報告。

賃金・物価上昇、診療報酬改定が直撃!診療所の経営は?/医師1,000人アンケート

 2024年の診療報酬改定は、診療報酬本体は+0.88%、薬価・材料価格引き下げは-1.00%で、全体ではマイナス改定となった。「医療従事者の賃上げ」「医療DX等による質の高い医療の実現」「医療・介護・障害福祉サービスの連携強化」という3つの目標が掲げられ、関連する項目が加算・減算された。診療報酬改定のほか、ここ数年の急激な物価上昇や人件費高騰もクリニックの経営に影響を与えていることが予想される。ケアネットでは「自身でクリニックを経営し、開業後3年以上が経過している医師」(40代以上)を対象に、直近の経営状況についてWebアンケートで聞いた。

双極性うつ病に対する抗うつ薬使用と躁転リスク

 双極性うつ病治療における抗うつ薬の使用は、気分極性の転換を引き起こす可能性が懸念され、依然として議論の的となっている。中国・首都医科大学のLei Feng氏らは、双極性うつ病患者に対する抗うつ薬使用と軽躁/躁転リスクとの関連を検証するため、リアルワールドにおける多国籍観察研究を実施した。Health Data Science誌2025年6月3日号の報告。  2013年1月〜2017年12月の4つの電子医療記録データベース(IQVIA Disease Analyzer Germany、IQVIA Disease Analyzer France、IQVIA US Hospital Charge Data Master、北京安定医院)と1つの行政請求データベース(IQVIA US Open Claims)より得られた双極性うつ病患者の治療パターンに関するデータを収集し、分析した。抗うつ薬を投与された患者(AD群)と投与されなかった患者(非AD群)における双極性うつ病の初回診断日から730日後の軽躁/躁転リスクの発生率を比較し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

オピオイド使用がん患者へのナルデメジン、便秘予防にも有用~日本のRCTで評価/JCO

 オピオイドは、がん患者の疼痛管理に重要な役割を果たしているが、オピオイド誘発性便秘症を引き起こすことが多い。オピオイド誘発性便秘症に対し、ナルデメジンが有効であることが示されているが、オピオイド誘発性便秘症の予防方法は確立されていない。そこで、濵野 淳氏(筑波大学医学医療系 緩和医療学・総合診療医学 講師)らの研究グループは、ナルデメジンのオピオイド誘発性便秘症の予防効果を検討した。その結果、ナルデメジンはオピオイド誘発性便秘症に対する予防効果を示し、QOLの向上や悪心・嘔吐の予防効果もみられた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌2024年12月号に掲載された。

内側側頭葉切除術は薬剤抵抗性てんかんの発作を高率に抑制する

 内側側頭葉(MTL)病変は薬剤抵抗性てんかんの主な原因の一つであり、MTL切除が転帰を改善し得る。しかし実臨床では、外科治療が提案されないまま複数の抗てんかん薬(AED)により長年治療されている患者が少なくなく、より強固なエビデンスの提示が求められている。これを背景に、アル=アズハル大学(エジプト)のSameh M. Salama氏らは、前向きコホート研究によりMTL切除術の有用性を検討。「Cureus」に3月6日論文が掲載された。  この研究は、2022~2024年に薬剤抵抗性側頭葉てんかんのため同大学病院に入院した3~50歳の患者20人を対象に行われた。薬剤抵抗性は2剤以上のAEDで発作をコントロールできない、または副作用のためAEDを使用できないことで定義した。MTL以外に病変を有する患者は除外された。術前の所見に合わせて患者ごとに、選択的扁桃体海馬切除を行うか否かなどが決定された。

先行的腎移植にベネフィットはあるのか

 将来、腎移植が必要になる可能性がある人は、どの時点で移植を受けるべきなのだろうか。その答えの手がかりとなり得る研究結果が発表された。この研究では、腎機能がある程度保たれている段階で腎移植(先行的腎移植)を受けても、透析が必要となるほど悪化してから移植を受けた場合と比べて死亡リスクに有意な差は認められないことが示された。米イェール大学医学部生体腎臓ドナープログラムの医療ディレクターを務めるAbhishek Kumar氏らによるこの研究結果は、「Transplantation Proceedings」5月号に掲載された。

乳児期の犬への曝露は幼少期のアトピーリスクを低下させる?

 犬を飼っている家庭の乳児は、幼少期にアトピー性皮膚炎(AD)を発症するリスクが、犬を飼っていない家庭の児よりも低い傾向があるようだ。新たな研究で、乳児期に犬に曝露することで、ADの発症に関与する遺伝子の影響が軽減される可能性が示された。英エディンバラ大学皮膚科教授のSara Brown氏らによるこの研究結果は、「Allergy」に6月4日掲載された。  Brown氏は、「遺伝子の組み合わせが小児のAD発症リスクに影響を与えることは分かっていたし、過去の研究でも、犬を飼うことがAD発症の予防に有効な可能性が示されている。しかし、分子レベルでその仕組みを示したのはこの研究が初めてだ」と述べている。

インスリン未治療の2型糖尿病、efsitora vs.グラルギン/NEJM

 インスリン治療歴のない2型糖尿病成人患者において、insulin efsitora alfa(efsitora)週1回固定用量投与はインスリン グラルギン(グラルギン)1日1回投与と比較し、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の改善に関して非劣性であることが示された。米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らQWINT-1 trial investigatorsが、米国、アルゼンチン、メキシコの71施設で実施した52週間の第III相無作為化非盲検treat-to-target試験「QWINT-1試験」の結果を報告した。これまでのtreat-to-target試験では、基礎インスリンの用量調整は少なくとも週1回、空腹時血糖値に基づいて行われてきたが、efsitoraは週1回投与の基礎インスリンであり、インスリン治療歴のない2型糖尿病成人患者において有用である可能性があった。NEJM誌オンライン版2025年6月22日号掲載の報告。

バレット食道の経過観察、カプセルスポンジ検査が有用/Lancet

 英国・ケンブリッジ大学のW Keith Tan氏らDELTA consortiumは、食道全体から細胞を採取するデバイス(カプセルスポンジ)とバイオマーカーを組み合わせて、患者を3つのリスク群に層別化する検査法を開発し、英国の13施設にて2つの多施設前向きプラグマティック実装試験の一部として評価した結果、このリスク分類に基づく低リスクのバレット食道患者の経過観察では、内視鏡検査の代わりにカプセルスポンジを使用可能であることを明らかにした。内視鏡検査による経過観察はバレット食道の臨床標準であるが、その有効性は一貫していなかった。Lancet誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

2型糖尿病合併慢性腎臓病におけるフィネレノン+エンパグリフロジン併用療法:アルブミン尿の著明な改善―CONFIDENCE研究は腎アウトカムの予測にも“CONFIDENT”といえるか?(解説:栗山哲氏)

CONFIDENCE研究では、2型糖尿病(T2DM)に合併する慢性腎臓病(CKD)の初期治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)であるフィネレノンと、SGLT2阻害薬(SGLT2i)であるエンパグリフロジンの併用療法が、それぞれの単独療法と比較して尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を有意に低下させることが示された。これまで、フィネレノンとSGLT2iの併用療法をT2DMに伴うCKDの初期段階で評価したエビデンスは限られており、この点において本研究は新規性を有する。

両側乳がん、ホルモン受容体の有無でDFSに差~多施設後ろ向き研究

 両側乳がんはきわめて少なく、臨床的特徴に関するデータは限られている。今回、トルコ・Dr. Abdurrahman Yurtaslan Ankara Oncology Training and Research HospitalのBerkan Karabuga氏らが、両側乳がんを同時性(SBBC)と異時性(MBBC)に分けて臨床病理学的特徴や生存アウトカムを検討したところ、無病生存期間(DFS)は2群間で有意差はなかったが、5年全生存(OS)率はMBBC群のほうが有意に高かった。また、両側乳がん全体として、ホルモン受容体(HR)陰性がDFS短縮の独立したリスク因子として特定された。Medicina誌2025年6月号に掲載。

僧帽弁逆流症、MTEER後の予後予測にNT-proBNPが有用

 一次性(器質性)僧帽弁逆流症(Primary Mitral Regurgitation:PMR)に対する経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClipによるMTEER)を受ける患者のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を用いた予後予測の真価は不明である。今回、PRIME‐MR Investigatorsのドイツ・ケルン大学のPhilipp von Stein氏らは、MTEERを受けたPMR患者のNT-proBNPが、3年以内の死亡または心不全入院と独立して関連していたことを明らかにした。European Journal of Heart Failure誌オンライン版2025年6月18日号掲載の報告。

がん診療に明日から役立つtips満載、第15回亀田総合病院腫瘍内科セミナー【ご案内】

 2025年7月20日(日)に、第15回亀田総合病院腫瘍内科セミナーが御茶ノ水での現地開催とWeb上のLIVE配信のハイブリッド形式で開催される。白井 敬祐氏(ダートマス大学腫瘍内科)、中村 能章氏(Department of Oncology, University of Oxford)、佐田 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科感染制御学)を講師として迎え、がん診療における臨床推論、救急対応、感染症、コミュニケーション方法など幅広い領域を扱う。亀田総合病院腫瘍内科スタッフによる、ベッドサイドで役立つ「実臨床における思考過程」を解説する講座も用意されており、がん診療において明日から役立つtipsを学ぶことができる内容となっている。

日本人うつ病におけるブレクスピプラゾールの費用対効果

 うつ病患者の約半数は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)で十分な治療反応が得られていない。このような患者では、ブレクスピプラゾール補助療法が治療候補となりうる。大塚製薬のYilong Zhang氏らは、日本におけるSSRI/SNRI治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法の費用対効果を検証した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年5月27日号の報告。  日本の公的医療保険制度の観点から、SSRI/SNRI治療抵抗性うつ病患者を対象に、SSRI/SNRIの補助療法としてブレクスピプラゾールまたはプラセボを併用した際の費用対効果を分析した。追加の解析では、ブレクスピプラゾール投与開始時期を、8週目(早期追加)および14週目(後期追加)に追加した場合の比較も行った。ブレクスピプラゾールの臨床試験に参加した患者コホートより、合計67週間にわたりフォローアップ調査を行った。

腰痛リスクが低下する1日の歩行時間は?

 ウォーキングと慢性腰痛リスクとの関連性を調査した前向きコホート研究の結果、慢性腰痛の予防においては歩行時間のほうが歩行強度よりも重要な要素である可能性が示された。1日の歩行時間が長いほど慢性腰痛のリスクが低く、1日の歩行時間が101分超の参加者は78分未満の参加者と比較して慢性腰痛リスクが23%低かったことを、ノルウェー科学技術大学のRayane Haddadj氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年6月13日号掲載の報告。  定期的な身体活動は慢性腰痛を軽減する可能性が示唆されているが、ウォーキングと慢性腰痛リスクとの関連性は明らかではない。そこで研究グループは、ノルウェーの人口ベースのHUNT4研究(2017~19年)の参加者1万1,194人を対象に、加速度計を用いて計測した1日の歩行時間と歩行強度(MET)が、その後の慢性腰痛の発症リスクと関連するかどうかを調べた。追跡期間は約4.2年で、慢性腰痛は過去12ヵ月間に3ヵ月以上継続した腰痛と定義した。