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症候性リウマチ性心疾患でジゴキシンの追加は心不全の新規発症・悪化を減らす(解説:原田和昌氏)

 リウマチ性心疾患(RHD)は中低所得国の若年層における罹患および死亡の重要な原因であり、世界で4,000万人以上が罹患し、年120万件の心不全と約32万人の死亡を引き起こす。中低所得国で左室駆出率(EF)が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連する。RHD患者の心不全は主に僧帽弁狭窄症であり、心拍数の増加や心房細動の発症にて左心房圧と肺静脈圧が上昇し症状が悪化する。有症状患者のすべてが手術や介入治療の対象とはならず多くは薬物療法を受けているが、RHDの心不全に対する薬物療法は評価されていない。インドのKarthikeyan氏らは国内12施設で行われた二重盲検RCTであるDig-RHD試験にて、若年の症候性RHD患者で経口ジゴキシンは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを軽減することを示した。 心エコーでRHDと確定され、ジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録し、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。主要複合アウトカムは全死因死亡または心不全の新規発症・悪化であった。平均年齢46歳、72%が女性、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類II~IV度、85%が中等度から重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均EFは58%、34%がジゴキシンの投与を受けており、約35%が経皮的僧帽弁形成術ないしは弁置換術を受けていた。 主要複合アウトカムはプラセボ群の35.5%に対し、ジゴキシン群は31.4%と有意に少なかった。心不全の新規発症・悪化はジゴキシン群で有意に低かった(HR:0.82)。中低所得国でみられるように、心不全の悪化のほとんどが入院を要せず、利尿薬の増量で治療された。全死因死亡に有意な差を認めなかった。心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(HR:0.82)。心不全関連死または心不全による入院の複合、心不全関連死、突然死に差はなかった。 β遮断薬、MRAを含む利尿薬、抗凝固薬などの治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシン追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムを低減した。これは心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた。すでにジゴキシンを服用していた患者や心房細動を有していた患者で、ジゴキシンの有益性が大きかった。ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現は少なかったが、患者が若く、併存疾患が少なく、腎機能が良好であったからかもしれない。中低所得国の若年層のRHDにおいて少量のジゴキシンは安価であることもあり、非常に有用かもしれない。 DIG試験でジゴキシンは心不全入院を減らす一方、全死亡を減らさなかった。これまでジゴキシンはカルシウム過負荷を来し、心拍数抑制はむしろ安静時に強いこともあり生命予後を改善しないと考えられてきた。しかし、最近JAMA誌に掲載された、「HFrEF/HFmrEF患者に関するジギタリス配糖体のメタ解析(DIG試験を含む)」では、標準的心不全治療を行ってもなお心不全悪化リスクが残る患者において、低用量のジギタリス配糖体が心不全悪化・入院を減らしたという。年齢、基礎疾患、EF、基礎治療薬も異なる群ではあるが、(安価な)ジゴキシンを心不全悪化イベントを減らす補助薬として見直すべき時なのかもしれない。

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関節リウマチでは効かなかったIL-17阻害薬がリウマチ性多発筋痛症で有効―REPLENISH試験(解説:金子 開知 氏)

 リウマチ性多発筋痛症は高齢者に多くみられ、肩や股関節周囲の強い疼痛と朝のこわばりを特徴とする。グルココルチコイドが著効する一方で再燃率が高く、長期グルココルチコイド投与による感染症、骨粗鬆症、糖尿病などの有害事象が大きな課題となっている。 REPLENISH試験では、再燃したリウマチ性多発筋痛症患者381例を対象にIL-17A阻害薬セクキヌマブの有効性および安全性を評価した。その結果、52週時の持続寛解率はセクキヌマブ群で約41%とプラセボ群(20%)の約2倍に達し、累積グルココルチコイド投与量も有意に減少した。感染症や過敏症反応はセクキヌマブ群でやや多く認められたものの、安全性プロファイルに大きな懸念は認められなかった。 リウマチ性多発筋痛症では近年、IL-6阻害薬が海外で有効性を示し、炎症性サイトカインを標的とした治療への期待が高まっている。一方、本試験でとくに注目されるのは、関節リウマチでは十分な効果を示せなかったセクキヌマブがリウマチ性多発筋痛症で有効性を示した点である。一般にリウマチ性多発筋痛症は高齢発症関節リウマチとの鑑別が問題となることも多いが、今回の結果はリウマチ性多発筋痛症と関節リウマチの免疫学的背景が異なることを示唆する。すなわち、関節リウマチでは主要な治療標的とならなかったIL-17/Th17経路がリウマチ性多発筋痛症の病態形成に重要な役割を果たしている可能性が示された。現在、日本ではリウマチ性多発筋痛症に対して承認された生物学的製剤はなく、本試験はグルココルチコイド依存からの脱却を目指す新たな治療戦略として注目される。

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リウマチ性多発筋痛症、セクキヌマブが有用/NEJM

 再発したリウマチ性多発筋痛症の患者において、完全ヒト型モノクローナル抗体のセクキヌマブと24週間のグルココルチコイド漸減療法の併用療法は、グルココルチコイド漸減療法単独と比較し、完全寛解を達成した患者の割合が高く、累積グルココルチコイド投与量も少ないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJohn H. Stone氏らREPLENISH Investigatorsが28ヵ国148施設で実施した第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「REPLENISH試験」の結果で示された。リウマチ性多発筋痛症は、肩や股関節の痛みとこわばりを特徴とする炎症性疾患で、グルココルチコイドが第1選択薬であるが、再発やグルココルチコイド関連の副作用がよくみられるため、有効な代替治療薬の必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2026年6月3日号掲載の報告。セクキヌマブ2用量とグルココルチコイド漸減の併用療法の有効性と安全性を評価 研究グループは、リウマチ性多発筋痛症と診断され、ベースライン前12週以内にグルココルチコイド漸減中でprednisoneまたはprednisone換算5mg/日以上を投与中に少なくとも1回再発した50歳以上の患者を、セクキヌマブ300mg群(SEC-300群)、セクキヌマブ150mg群(SEC-150群)、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け52週間投与した。全例に24週間のprednisone漸減療法を行った。 主要アウトカムは、52週時の持続的寛解を達成した患者の割合であった。持続的寛解は、12週目に寛解を達成し52週目まで寛解(リウマチ性多発筋痛症に起因するエスケープ治療またはレスキュー治療を必要とする徴候または症状の再発がなく、かつエスケープ治療またはレスキュー治療を必要とする巨細胞性動脈炎の新規診断がない)が持続した状態と定義した。副次アウトカムは年間累積グルココルチコイド投与量などで、安全性についても評価した。52週時の持続的寛解率、セクキヌマブ300mg群41.2%、150mg群40.6%、プラセボ群20.4% 2023年3月~2024年7月にスクリーニングを受けた474例中、381例が無作為化された(各群127例)。 52週時の持続的寛解率は、SEC-300群41.2%(95%信頼区間[CI]:32.8~49.7)、SEC-150群40.6%(95%CI:32.2~49.0)、プラセボ群20.4%(95%CI:13.6~27.2)であった(各セクキヌマブ群とプラセボ群との比較でp<0.001)。 52週時の補正後年間累積グルココルチコイド投与量の平均値は、プラセボ群2,093.0mgに対し、SEC-300群1,603.7mg(プラセボ群との平均差:-489.4mg、95%CI:-734.47~-244.25、p<0.001)、SEC-150群1,683.2mg(プラセボ群との平均差:-409.9mg、95%CI:-661.8~-157.9、p=0.002)であった。 有害事象の発現割合は、SEC-300群91.3%(115/126例)、SEC-150群88.1%(111/126例)、プラセボ群89.8%(114/127例)で、重篤な有害事象はそれぞれ13.5%、15.9%、14.2%に認められた。鼻咽頭炎、過敏症反応、尿路感染、真菌感染および背部痛は、プラセボ群よりセクキヌマブ群で発現割合が高かった。

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IPFへの吸入トレプロスチニル、TETON-1試験とTETON-2試験の統合解析結果/NEJM

 特発性肺線維症(IPF)患者において、52週間の吸入トレプロスチニル投与はプラセボと比較し、努力肺活量(FVC)の低下および臨床的悪化のイベント発現を抑制したことが示された。米国・Inova Fairfax HospitalのSteven D. Nathan氏らが、「TETON-1試験」の結果と、先に発表されていた「TETON-2試験」の結果(https://www.carenet.com/news/journal/carenet/62502)の統合解析結果を報告した。IPFは現在、3剤の治療薬が承認されているが、予後は依然として不良であり、さらなる効果的な治療法が必要とされていた。NEJM誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。吸入トレプロスチニルの有効性、52週時のFVCのベースラインからの変化量で評価 TETON-1試験は、米国およびカナダの94施設で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。試験デザインは、日本を含む16ヵ国107施設で実施された「TETON-2試験」と同様であった。 研究グループは、40歳以上のIPF患者を吸入トレプロスチニル群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、3吸入を1日4回で開始し、12吸入を1日4回に増量し、52週間投与した。 主要エンドポイントはFVCのベースラインから52週時までの変化量(絶対値)であった。重要な副次エンドポイント(多重性を制御するために事前に規定された順序で解析)は、IPFの臨床的悪化(全死因死亡、呼吸器系の原因による入院、FVCの予測値に対する割合[%FVC]の10%以上低下のいずれか初発)およびIPFの急性増悪までの期間であった(それぞれtime-to-event解析で評価)。また、52週時で評価した他の副次エンドポイントとして、全生存、%FVCの変化量、QOL、一酸化炭素肺拡散能の変化量などが含まれた。 主要エンドポイントおよび主な副次エンドポイントについては全体の第1種の過誤確率を0.05に制御するため、ゲートキーピング法にて検定を行うことが事前に規定された。TETON-2試験と同様、FVC変化量、臨床的悪化に関して有意差を認める TETON-1試験では、2021年6月1日~2025年1月30日に598例が無作為化され、試験薬を少なくとも1回投与された(トレプロスチニル群299例、プラセボ群299例)。このうち434例が52週時の評価を完了した(それぞれ218例、216例)。患者背景は平均年齢73.0歳、男性が77.3%、基礎治療として抗線維化療法(ニンテダニブまたはピルフェニドン)を受けていたのは77.6%、ベースラインの%FVC平均値は74.6%であった。 52週時のFVCの変化量中央値は、トレプロスチニル群-43.3mL(95%信頼区間[CI]:-92.1~-9.1)、プラセボ群-196.2mL(95%CI:-227.1~-155.6)であり、群間差は130.1mL(95%CI:82.2~178.1、p<0.001)であった。 臨床的悪化は、トレプロスチニル群で95例(31.8%)、プラセボ群で133例(44.5%)に認められた(ハザード比:0.67、95%CI:0.52~0.88、p=0.003)。IPFの初回急性増悪までの期間に有意差は認められず、その後の副次エンドポイントに関する検定は行われなかった。 主な有害事象は咳嗽で、トレプロスチニル群54.8%、プラセボ群33.1%で報告された。トレプロスチニルまたはプラセボの投与中止は、それぞれ40.5%および32.8%に発生し、主な理由は有害事象であった(それぞれ20.7%および14.7%)。 TETON-1試験およびTETON-2試験の統合解析においても、有効性および安全性に関する結果は同様であった。

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抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」【最新!DI情報】第64回

抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」今回は、経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4B阻害薬「ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド錠9mg/18mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)」を紹介します。本剤は抗線維化作用と免疫調整作用を有し、PDE4Bに対して高い選択性を持つ阻害薬であり、希少難病である特発性肺線維症および進行性肺線維症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>特発性肺線維症および進行性肺線維症の適応で、2026年5月18日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはネランドミラストとして1回18mgを1日2回経口投与します。なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg 1日2回に減量することができます。<安全性>重大な副作用として、重度の下痢(1.3%)があります。その他の副作用として、下痢(30.8%)、食欲減退、悪心、体重減少(いずれも1%以上10%未満)、心房細動、背部痛(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、抗線維化薬および免疫調整薬と呼ばれる薬です。ホスホジエステラーゼ(PDE)4Bという酵素を阻害することによって、特発性肺線維症および進行性肺線維症の病態形成や進行に関与する反応を抑えます。 2.この薬は光に不安定なため、服用する直前にシートから取り出してください。 3.妊娠する可能性がある女性は、この薬を使用している間および使用終了後4日間は適切に避妊してください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、医師または薬剤師に相談してください。 <ここがポイント!>特発性肺線維症(IPF)は、原因不明で肺が硬くなる特発性間質性肺炎の一種で、国の指定難病です。予後は不良で、未治療の場合の生存期間中央値は3~5年とされています。発症原因は完全には解明されていませんが、加齢、喫煙、生活環境、遺伝的素因などの関与が考えられています。一方、進行性肺線維症(PPF)は、IPF以外の間質性肺疾患のうち、IPFに類似した進行性の線維化を特徴とする疾患群の総称です。これらの肺線維化および炎症の病態形成には、肺に高発現するホスホジエステラーゼ(PDE)4Bが中心的な役割を担っていると考えられています。ネランドミラストは、PDE4Bに対して高い選択性を有する阻害薬です。本剤は、PDE4Bを阻害することで、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPの濃度を上昇させます。その結果、IPFおよびPPFで過剰に産生される線維化促進性の増殖因子や炎症性サイトカインの発現を抑制し、抗線維化作用および免疫調整作用を発揮すると考えられています。IPF患者を対象とした国際共同第III相試験(FIBRONEER-IPF試験[1305-0014試験])において、主要評価項目である52週時の努力性肺活量(FVC)のベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群-183.5mL(95%信頼区間[CI]:-210.9~-156.1)、本剤9mg群-138.6mL(95%CI:-165.6~-111.6)、本剤18mg群-114.7mL(95%CI:-141.8~-87.5)でした。プラセボ群との調整済み平均値の差は、本剤9mg群では44.9mL(95%CI:6.4~83.3、p=0.0222)、本剤18mg群では68.8mL(95%CI:30.3~107.4、p=0.0005)であり、いずれの用量においてもプラセボ群に対し統計学的に有意な差が認められました。

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医師のランチ事情、ベテランは「時短」、若手は「節約」を優先/医師1,000人アンケート

 日々の外来や手術、急患対応などに追われる医師の勤務環境において、「昼食(ランチ)」は貴重な休息とエネルギー補給の時間である。しかし、急な呼び出しや処置の延長など、業務の都合に左右されやすい。今回、CareNet.comでは「医師のランチ事情」と題したアンケートを実施し、勤務日の昼食時間や内容、仕事による中断の頻度、ランチ選びの優先事項などを聞いた。対象はケアネット会員医師1,012人で、20代以上の各年代層から回答を得た。上の世代ほど短時間ランチ、外科系はさらにタイト Q1では「勤務日の昼食休憩(純粋に食事に充てられる時間)」を聞いた。全体では「15分〜30分未満」が36%で最多、次いで「5分〜15分未満」が30%、「30分~1時間未満」が20%と続く。「5分未満」と回答した医師は6%を占めていた。全体の約3分の1の医師が15分以内で昼食を取っていることがわかった。 興味深いのは、年代が上がるにつれて昼食時間がさらに短縮化する傾向が見られる点だ。15分未満(「5分未満」と「5〜15分未満」の合計)で昼食を済ませる割合は、20代で27%にとどまるのに対し、30代では35%、40代では38%、50代では36%、70代以上では38%へと上昇する。20代の若手医師においては「15分〜30分未満」が49%と約半数を占めており、上の世代に比べれば、一定の食事時間を確保できている。 また、診療科系統別では、外科系医師において「5分〜15分未満」が33%、「5分未満」が8%となり、内科系(それぞれ29%、5%)を上回った。診療科の特性が、休憩時間の逼迫、あるいは「早食い」の習慣化につながっている可能性が推察される。過半数の医師が定期的にランチを「中断」、30代は7割 Q2では「昼食中、仕事(呼び出しや相談)で『中断』される頻度」を聞いた。全体では「ほとんどない」が41%である一方、「ほぼ毎日」が7%、「週に2~3回程度」が21%、「週に1回程度」が28%となり、全体の56%と過半数の医師がランチを定期的に中断されていることがわかった。 この中断頻度は、年代や病床数によって差が見られる。「ほぼ毎日」「週に2~3回程度」「週に1回程度」の合計で見ると、年代別では、20代・30代・40代では6割を超える。とくに30代では70%に達した。また、50代では「ほぼ毎日」中断される人が10%であった。病床数別で見ると、20~99床の病院では「ほぼ毎日」「週に2~3回程度」「週に1回程度」の合計が66%、200床以上の大規模病院では65%と高くなっている。定番は「お弁当」と「院内食堂」、過半数が予算500円未満 Q3で「最も頻度が高い昼食内容」を尋ねたところ、最も多かったのは「自作・家族作の弁当」で33%、次いで「院内食堂」が26%、「コンビニ・スーパー・売店で購入」が23%と続いた。年代別では、20代と50代でお弁当の持参率が高く(それぞれ43%、41%)、院内食堂の利用率が低めであった(それぞれ16%、18%)。 予算(Q5)に関しては、「500〜1,000円未満」が37%で最多、次いで「500円未満」が32%、「0円(弁当持参、病院支給・検食など)」が24%となり、1,000円未満で収めている医師が9割を超えた。過半数が昼食の予算を500円未満に抑えていた。若手は「コスト」、ベテラン層は「栄養バランス」を最優先 Q4で「昼食を選ぶ際、最も優先していること」を聞いた。全体では「栄養バランス」が34%で最多、次いで「スピード」が27%、「コスト」が21%となった。 これを年代別で比較すると、明確な意識のグラデーションが見られる。20代では「コスト」を最優先する割合が46%と半数近くに達しているのに対し、年齢が上がるにつれてその割合は低下する。20代の昼食代の予算は0円が32%に上るなど、若手層の強い節約志向がお弁当持参という行動に直結していることが読み取れる。 対照的に、同じくお弁当持参率の高い50代では、昼食代を0円に抑えている割合が29%を占めるものの、優先事項で「コスト」を挙げる人は17%にとどまる。40代以上のベテラン層では「栄養バランス」を重視する割合は上昇し、70代以上では43%と全世代で最も高くなる。ベテラン層におけるお弁当の持参や低予算は、節約志向というよりも、健康への配慮や、自由回答にもみられた「お弁当を作ってくれるパートナーへの感謝」といった要因が背景にあると考えられる。若手のコスト重視と、ベテラン層の健康志向へのシフトが対照的に表れる結果となった。ランチに関する医師たちの本音 Q6の自由回答では、限られた時間の中で食事をやりくりする医師たちの切実な日常やこだわりが語られた。以下に主なコメントを抜粋する。【時間や業務による制約】・食事中呼ばれたときに中断できるもの、後から食べられるものを選んで食べております(50代、呼吸器内科)・研修医時代、15分で食べろと言われて驚いた(50代、精神科)・30代前半はとくに忙しかったので、ポケットに入れておいたカロリーメイトでしたね(60代、耳鼻咽喉科)・たまにカップ麺に湯を注いだ後に呼ばれることがあり、これは本当につらい(40代、臨床研修医)・夕方時間外になってからの昼食も多く、生活リズムが安定しません(50代、整形外科)・患者に指導する資格はないような、ジャンクで偏った食事しか取っていません(60代、内科)・食べようとすると、インスタント・コンビニに限定されるので、食べていない(60代、小児科)【調達手段やコスト、工夫など】・今の病院に勤務するようになり、職員食堂の素晴らしさに感動しています。安くて美味しくて今のところまったく文句ありません(40代、麻酔科)・病院で出してくれて、以前の弁当を買っていた時より体調がいい(30代、精神科)・院内食堂の値段、メニューなどがどんどん改悪されている(60代、内科)・物価高で食費がかさむ(40代、膠原病・リウマチ科)・院内にコンビニが入っているのですが、昨今の昼食が高い。ワンコインでは済まない1,000円弱になってしまった。おにぎりが高い(50代、心療内科)・妻がお弁当を作ってくれるようになって、健康と感じることが多くなった。感謝です(30代、内科)・毎週末、冷凍弁当を作っています(30代、リハビリテーション科)・見栄えが気にならないスープジャーなので、冷ご飯でも残り物でもなんでも入れられます(40代、小児科)・コンビニやデリバリーで無駄なお金を払いたくないので、普段からオートミールなどを医局に置いて支出を減らしている(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師のランチ事情/医師1,000人アンケート

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症候性リウマチ性心疾患、ジゴキシン追加は有用か/JAMA

 リウマチ性心疾患(RHD)は、低・中所得国(LMIC)の若年層における罹患および死亡の重要な原因で、駆出率が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連するとされる。RHD患者の心不全症状は、主にさまざまな程度の僧帽弁狭窄によって発生し、とくに心房細動の発症に伴い悪化する。インド・All India Institute of Medical Sciences(AIIMS)のGanesan Karthikeyan氏らDig-RHD Investigatorsは「Dig-RHD試験」において、症候性RHD患者では経口ジゴキシンの連日投与により、全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクが軽減し、毒性の発現は少ないことを示した。ジゴキシンは、その陽性変力作用が逆流性病変や心室機能障害を有する患者にも有用である可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2026年5月10日号掲載の報告。インドの研究者主導型無作為化プラセボ対照比較試験 Dig-RHD試験は、インドの12施設で実施した研究者主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Indian Council of Medical Researchの助成を受けた)。2022年2月~2024年8月に、年齢18歳以上、心エコー図検査でRHDと確定され、すでにジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録した。 被験者を、通常治療に加え、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回、経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、36ヵ月以内または試験終了までに発生した全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合であった。全死因死亡には差がない 主解析には試験薬の投与を1回以上受けた1,759例(ジゴキシン群880例、プラセボ群879例)が含まれた。ベースラインの全体の平均年齢は46歳、72%が女性で、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類クラスII~IV、85%が中等度~重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均左室駆出率は58%で、34%がすでにジゴキシンの投与を受けていた。 主要複合アウトカムのイベントは、プラセボ群の312例(35.5%)で発生したのに対し、ジゴキシン群は276例(31.4%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.97、p=0.02)。 主要複合アウトカムの構成要素のうち、心不全の新規発症・悪化の発生率はジゴキシン群で有意に低かった(227例[25.8%]vs.257例[29.2%]、HR:0.82、95%CI:0.69~0.98、p=0.03)。心不全の悪化のほとんどは、入院を要することなく、利尿薬(経口または静脈内投与)の増量で治療された。 一方、全死因死亡の発生には両群間に有意な差を認めなかった(88例[10%]vs.91例[10.4%]、HR:0.94、95%CI:0.70~1.26、p=0.69)。死亡のほとんどが心不全によるものだった。安全で安価な治療法となる可能性 副次アウトカムのうち、心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(249例[28.3%]vs.284例[32.3%]、HR:0.82、95%CI:0.69~0.97、p=0.02)。 心不全関連死または心不全による入院の複合(ジゴキシン群80例[9.1%]vs.プラセボ群86例[9.8%]、p=0.49)、心不全関連死(41例[4.7%]vs.53例[6%]、p=0.16)、突然死(20例[2.3%]vs.16例[1.8%]、p=0.56)には両群間に差はなかった。 24例で、ジゴキシンが原因と疑われる毒性が発現した(ジゴキシン群17例、プラセボ群7例)。このうち11例(10例[1.1%]、1例)で、試験薬の投与が恒久的に中止された。 著者は、「通常治療として、β遮断薬とカルシウム拮抗薬を使用した基礎治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシンの追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを低減した。この良好な結果は、心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた」「ジゴキシンは、死亡リスクを増加させずに、心不全の悪化を軽減する安全で安価な方法と考えられる」としている。 また、「サブグループ解析では、ベースライン時にジゴキシンを服用していた患者(HR:0.61、95%CI:0.46~0.81)や心房細動を呈していた患者(HR:0.75、95%CI:0.62~0.90)で、ジゴキシンの有益性が大きかったが、この効果の差が生じた理由は不明である」「ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現が少なかったが、これは患者が比較的若く、併存疾患が少なく、腎機能も良好であったことで説明可能と考えられる」と指摘している。

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タブネオスの肝機能障害にブルーレター発出/厚労省

 2026年5月21日、厚生労働省は選択的C5a受容体拮抗薬アバコパン(商品名:タブネオスカプセル10mg)について、添付文書の「警告」を新設し、「重要な基本的注意」などを改訂するとともに、「安全性速報(ブルーレター)」により医療関係者などに対して速やかに注意喚起を行うようキッセイ薬品工業に対し指示した。 アバコパンは顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症に対する治療薬で、承認申請時に提出された臨床試験成績を踏まえ、2021年9月の承認当初から、添付文書において重大な副作用として肝機能障害に関する注意喚起がなされていた。2022年6月の発売開始以降、本剤を服用した患者で「胆管消失症候群」を含む重篤な肝機能障害が発現した症例が報告されており、死亡に至った症例が国内で20例報告*されたという。なお、2025年2月~2026年1月の国内の年間推定使用患者数は8,503例に上る。*2026年4月27日時点、キッセイ薬品工業の安全性データベースの集計(本剤との因果関係が不明なものを含む) 添付文書の追記は以下のとおり。【警告】(新設)胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されているので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。本剤投与中に重篤な肝機能障害がみられた場合には、本剤の投与を中止する等の適切な処置を行うこと。【重要な基本的注意】(下線部が追加)肝機能障害があらわれることがあるので、以下の点について十分注意すること。多くの場合、これらの事象は投与開始後3ヵ月以内に発現している。 本剤の投与開始前、投与開始後3ヵ月間は少なくとも2週間に1回、その後の3ヵ月間は少なくとも4週間に1回、その後も投与期間中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。 本剤投与中に基準値上限の3倍を超えるALT又はASTの上昇が認められた場合には、本剤の投与を中断し、速やかに患者の状態を評価すること。また、以下に該当する場合は本剤の投与を中止すること。・ALT又はASTが基準値上限の8倍を超える場合・ALT又はASTが基準値上限の5倍を超える状態が2週間を超えて持続した場合・総ビリルビンが基準値上限の2倍を超える場合・ALPが基準値上限の2倍以上の場合・黄疸やそう痒等の肝機能障害の徴候又は症状が認められる場合なお、胆管消失症候群が疑われる場合には、速やかに本剤の投与を中止すること。  なお、今回発出されたブルーレターでは、胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害の早期発見や重症化防止のため、肝機能検査の実施タイミングや頻度、投与中止基準などが明記。医療関係者に対して、以下のような注意喚起が示された。―――■胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害にご注意ください。■多くの場合、投与開始後3ヵ月以内に発現しています。肝機能障害の早期発見や重症化防止のため、以下の点に十分ご注意ください。○以下のタイミングで、肝機能検査を実施ください。・投与開始前・投与開始後3ヵ月間:少なくとも2週間に1回・その後3ヵ月間:少なくとも4週間に1回・6ヵ月目以降:定期的○以下の所見が見られた場合は、適切な対応をお願いいたします。なお、胆管消失症候群が疑われる場合には、速やかに本剤の投与を中止してください。・基準値上限の3倍を超えるALT又はASTの上昇が認められた場合 →本剤の投与を中断し、速やかに患者の状態を評価ください・ALT又はASTが基準値上限の8倍を超える場合・ALT又はASTが基準値上限の5倍を超える状態が2週間を超えて持続した場合・総ビリルビンが基準値上限の2倍を超える場合・ALPが基準値上限の2倍以上の場合・黄疸やそう痒等の肝機能障害の徴候又は症状が認められる場合 →本剤の投与を中止してください■患者の状態を十分に観察し、自他覚症状の発現に注意してください。異常が認められた場合はただちに医師・薬剤師に相談するよう、患者に対してご指導ください。―――

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ネランドミラスト、日本人IPF/PPFでもFVC低下を抑制/日本呼吸器学会

 厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は2026年4月27日に、ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド)について、特発性肺線維症(IPF)および進行性肺線維症(PPF)を効能・効果として承認することを了承した。これは、主に国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)および「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果に基づくものである。第66回日本呼吸器学会学術講演会では、両試験の日本人集団の結果が報告された。西岡 安彦氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野)が両試験の日本人集団を対象とした併合解析結果を報告し、近藤 康博氏(愛知医科大学 呼吸器・アレルギー内科)がFIBRONEER-ILD試験の日本人PPF患者サブグループ解析結果を報告した。 FIBRONEER-IPF試験は、%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLCO(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上のIPF患者を対象とした。FIBRONEER-ILD試験は、IPF以外の間質性肺疾患(ILD)と診断され、HRCTで10%超の線維化を認め、%FVCが45%以上、%DLCOが25%以上のPPF患者を対象とした。両試験とも、対象患者をネランドミラスト9mgを1日2回投与する群(9mg群)、ネランドミラスト18mgを1日2回投与する群(18mg群)、プラセボ群に1:1:1の割合で割り付けた。両試験の日本人集団は281例(IPF 135例、PPF 146例)で、主要評価項目は52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量、主要な副次評価項目は治験期間中におけるIPF/ILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生までの期間とした。【2試験の併合解析】 2試験の併合解析の主な結果は以下のとおり。・日本人集団281例の男性の割合は68.3%、平均年齢68.6歳、平均体重63.5kgで、喫煙歴ありの割合は71.2%であった。ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は45.2%、ピルフェニドンによる治療を受けていた患者は4.6%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、ピルフェニドン使用者が少ない傾向にあった。・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-158.3mL、9mg群-105.9mL、18mg群-70.5mLであった。プラセボ群との差は、9mg群52.4mL(95%信頼区間[CI]:-19.1~123.9)、18mg群87.8mL(同:18.0~157.7)であり、18mg群でFVC低下抑制効果がより大きい傾向となった。・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群37.3%(31/83例)に対し、9mg群24.7%(23/93例)、18mg群17.1%(18/105例)であり、プラセボ群に対するハザード比(HR)は、それぞれ0.71(95%CI:0.41~1.23)、0.45(95%CI:0.25~0.81)であった。・主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%CIは、以下のとおりであった。<初回急性増悪または死亡>9mg群:0.62(0.29~1.31)18mg群:0.30(0.12~0.73)<呼吸器疾患による初回入院または死亡>9mg群:0.72(0.41~1.24)18mg群:0.43(0.23~0.77)<死亡>9mg群:0.66(0.25~1.78)18mg群:0.45(0.15~1.35)・主な有害事象(いずれかの群で20%以上に発現)は、下痢(プラセボ群19.3%、9mg群36.6%、18mg群38.1%)、上咽頭炎(それぞれ15.7%、23.7%、23.8%)、COVID-19(それぞれ16.9%、36.6%、38.1%)であった。投与中止に至った下痢はそれぞれ0%、1.1%、3.8%にみられた。【FIBRONEER-ILD試験】 FIBRONEER-ILD試験の日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団146例の男性の割合は56.2%、平均年齢67.6歳、平均体重60.3kgで、喫煙歴ありの割合は50.9%であった。UIP(通常型間質性肺炎)パターン/UIP-likeパターンを有する割合は83.6%であり、ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は42.5%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、UIP/UIP-likeパターンが多い傾向にあった。・PPFの分類は、分類不能型特発性間質性肺炎(uIIP)32.2%、自己免疫性ILD 30.1%、特発性非特異性間質性肺炎が12.3%、線維性過敏性肺炎が11.6%、その他が13.7%であり、全体集団と比較して、uIIPが多く線維性過敏性肺炎が少ない傾向にあった。・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-179.2mL、9mg群-68.9mL、18mg群-122.3mLであった。プラセボ群との差は、9mg群110.3mL(95%CI:9.6~211.0)、18mg群56.9mL(同:-43.5~157.2)となった。・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、最終データベースロック時において、プラセボ群47.8%(22/46例)に対し、9mg群28.6%(14/49例)、18mg群27.5%(14/51例)であり、プラセボ群に対するHRは、それぞれ0.71(95%CI:0.37~1.36)、0.54(同:0.27~1.07)であった。・最終データベースロック時において、主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%は、以下のとおりであった。<初回急性増悪または死亡>9mg群:0.49(0.21~1.16)18mg群:0.33(0.13~0.86)<呼吸器疾患による初回入院または死亡>9mg群:0.71(0.37~1.36)18mg群:0.54(0.27~1.07)<死亡>9mg群:0.51(0.18~1.49)18mg群:0.48(0.16~1.41) これらの結果について、西岡氏は探索的な解析であり日本人の患者数が少ないという限界を指摘しつつ「FIBRONEER-IPF試験およびFIBRONEER-ILD試験の日本人集団の併合解析において、ネランドミラスト18mg 1日2回投与は、52週時のFVC低下を抑制し、主要な副次評価項目およびその構成要素の発生リスクを抑制する傾向を示した。また、今回示したすべての評価項目で、ネランドミラスト18mg 1日2回投与がより良好な有効性を示した。日本人患者におけるネランドミラストの有効性および安全性は全体集団と一貫していた」とまとめた。また、近藤氏は「ネランドミラストはFIBRONEER-ILD試験の日本人患者において、プラセボと比較して52週時のFVC低下を抑制し、試験期間中の臨床アウトカムのリスクを数値的に抑制した。これらの結果は、FIBRONEER-ILD試験の全体集団の結果と一貫していた」とまとめた。<FIBRONEER-IPF試験の概要>・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLCOが25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIPまたはUIP-likeパターンを有する)患者1,177例試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回  392例試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回  392例対照群(プラセボ群):プラセボ 393例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生<FIBRONEER-ILD試験の概要>・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLCOが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外のILD)患者1,176例試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回  393例試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回  391例対照群(プラセボ群):プラセボ 392例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生

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免疫介在性炎症性疾患患者のがんリスク、要因は炎症か

 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、乾癬などの免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者はがんリスクが高いことが知られているが、リスクが高いのはIMID診断後1年間であり、抗炎症薬による治療を開始するとそのリスクは経時的に低下する可能性が、新たな研究で示された。ガッルーラ地域保健局(イタリア)リウマチ科部長のDaniela Marotto氏らによるこの研究は、「Cancers」に3月23日掲載された。Marotto氏は、「初期段階でがんリスクがピークに達するということは、治療よりも慢性炎症そのものががん発症の重要な要因であることを示唆している」と述べている。 Marotto氏らは今回、イタリアで2018年1月1日から12月31日までの間にIMIDと診断された患者5万4,896人および非IMID患者30万1,126人を対象に、IMIDとがん発症との関連を検討した。IMIDは、RAとびまん性結合組織疾患(diffuse diseases of connective tissue;DDCT)を対象とした。DDCTは免疫の異常により全身の結合組織に慢性的な炎症が生じる疾患の総称で、SLEや強皮症、シェーグレン症候群などが代表例である。対象患者は2023年12月31日まで追跡された。 解析の結果、IMID群では非IMID群と比べて、5年間のがんリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.32、95%信頼区間1.27~1.38)。しかし、がんリスクは経時的に低下し、オッズ比は診断後1年目で1.83(95%信頼区間1.61~2.08)、2年目で1.53(同1.37~1.69)、3年目で1.40(同1.25~1.56)、4年目で1.37(同1.22~1.53)、5年目で1.20(同1.15~1.30)であった(全てP<0.001)。がん種ごとに検討すると、IMID群では白血病・リンパ腫(調整オッズ比1.98)、肺がん(同1.74)、膀胱がんとメラノーマ(いずれも同1.48)のリスクが高かった。一方、IMIDの種類別に検討すると、DDCT群はRA群と比べてがんリスクが高かった(調整オッズ比はDDCT群1.53、RA群1.20)。 共著者であるシエナ大学(イタリア)医療バイオテクノロジー分野のAntonio Giordano氏は、「今回の結果は、炎症ががんリスクを左右する決定的な要因であるという仮説を支持するものだ」と指摘している。 研究グループは、この知見から、IMID患者に対しては、特に診断後1年以内におけるがん検診の重要性を周知・促進する必要があると強調している。

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経皮的電気神経刺激療法は線維筋痛症の痛みの軽減に有効

 実臨床環境で実施された初の試験において、経皮的電気神経刺激療法(TENS)が線維筋痛症に伴う動作時の痛み(以下、動作時痛)の軽減に有効である可能性が示された。TENSは、皮膚に貼った電極を介して微弱な電流を流し、痛みを遮断または軽減する治療法で、外来で長年使用されている。論文の筆頭著者である米アイオワ大学理学療法・リハビリテーション科学分野のDana Dailey氏は、「本研究は、他の治療にTENSを併用することで追加的な効果がもたらされることを示している。研究参加者は全員、鎮痛薬の使用や理学療法も受けていたが、それでもなおTENSは追加的な症状緩和をもたらした」と述べている。この研究は、「JAMA Network Open」に3月27日掲載された。 これまでにも、線維筋痛症に対するTENSの効果を検討した研究は存在したが、いずれも厳密に管理された条件下で実施された臨床試験であった。今回の研究は、米国内の28の外来理学療法クリニックの患者384人(平均年齢53歳、女性91%)を対象に、外来での理学療法にTENSを追加することで、線維筋痛症に伴う動作時痛が軽減するかどうかが検証された。対象者は、理学療法にTENSを追加する群(TENS群、191人)と理学療法のみを受ける群(理学療法群、193人)にランダムに割り付けられた。TENS群では、電極を上・下背部に貼り付け、快適かつ十分な強度の刺激で1日2時間の治療が行われた。治療は連続して実施することも、1日の中で分割して行うことも可能であった。効果は、1日、30日、60日、90日、および180日時点に評価された。理学療法単独群にも60日目以降にTENSが追加された。主要評価項目は試験開始時から60日時点までの動作時痛の変化量とし、0(痛みなし)~10(これ以上想像できないほどひどい痛み)の尺度で評価した。 その結果、60日時点の動作時痛は、TENS群で理学療法群と比較して有意に低かった(群間差−1.2、95%信頼区間−1.6~−0.7)。TENSの効果は用量反応性であり、患者評価による改善度の指標(Patient Global Impression of Change;PGIC)で改善を報告した割合は、TENS群で有意に高かった(72%対51%、P=0.001)。動作時痛が30%以上改善した割合も、TENS群で有意に高かった(41%対13%、P<0.001)。さらにTENS群では、安静時の痛み、痛みによる生活支障、動作時疲労、安静時疲労、線維筋痛症の重症度などにも有意な改善が認められた。全体として、TENSを使用した患者の81%がTENSが有用であると評価し、180日時点でも55%がTENSを毎日使用していた。 論文の上席著者であるアイオワ大学理学療法・リハビリテーション科学分野のKathleen Sluka氏は、「理学療法群の患者にTENSの装置を提供し、使用を開始してもらったところ、TENS群と同様の改善が認められた。この点は非常に重要である」と述べている。 Sluka氏は、「痛みの軽減に加え、疲労も軽減したことに興奮した。現時点で有効な治療法はほとんどない疲労にも効果が及んだことは、非常に意義深い」と述べている。同氏はさらに、「ランダム化比較試験の結果を実臨床に移行すると、交絡因子が多過ぎて効果が再現されないことが少なくない。しかし、本介入は実臨床でも有効であった」と結論付けている。

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治療抵抗性の皮膚筋炎、新規経口TYK2/JAK1阻害薬brepocitinibが有効/NEJM

 brepocitinibは、皮膚筋炎への関与が知られているサイトカインシグナル伝達を遮断するfirst-in-classの経口選択的チロシンキナーゼ2(TYK2)/ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害薬。米国・ハーバード大学医学大学院のRuth Ann Vleugels氏らは「VALOR試験」において、従来の治療に抵抗性の皮膚筋炎の成人患者では、brepocitinibはプラセボと比較して複合筋炎指数を有意に改善するほか、皮膚疾患の重症度、グルココルチコイドの漸減、機能障害などに関して有意な有益性を示すことを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月28日号(同31日更新)に掲載された。20ヵ国の第III相無作為化プラセボ対照比較試験 VALOR試験は、20ヵ国90施設で実施した第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2022年10月~2024年6月に参加者のスクリーニングを行った(Priovant Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、18~75歳、欧州リウマチ学会/米国リウマチ学会(EULAR/ACR)の特発性炎症性筋疾患(definiteまたはprobable)の分類基準(2017年)と皮膚筋炎の亜分類基準を満たし、活動性の筋疾患(MMT-8スコア[0~150点、点数が低いほど筋力が低下]80~142点)および皮膚疾患(CDASI-Aスコア[0~100点、点数が高いほど疾患活動性が重度]6点以上)を有し、少なくとも1つの従来治療(全身グルココルチコイド療法、従来型DMARD、静注免疫グロブリン療法など)で効果が不十分な患者であった。 被験者を、brepocitinib 30mg、同15mg、プラセボを、1日1回経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週であった。併せて標準治療を継続し、グルココルチコイドは漸減した。 主要エンドポイントは、52週の時点における、筋炎の活動性に関する6つの主要な指標を統合した加重複合筋炎指数である総合改善スコア(TIS、範囲:0~100点、点数が高いほど改善度が高い)の平均値とした。30mg群でTISが有意に改善 241例(平均年齢50.6歳、女性77.6%)を登録し、brepocitinib 30mg群に81例、同15mg群に81例、プラセボ群に79例を割り付けた。ベースラインの疾患活動性は、患者の81.3%が中等度~重度であり、皮膚疾患(平均[±SD]CDASI-Aスコア19.8[±11.5]点)、筋疾患(平均MMT-8スコア122.6[±15.9]点)とも高い活動性を示した。210例(87.1%)が52週の投与期間を完了した。 52週の時点で、平均TISは、brepocitinib 30mg群が46.5点、同15mg群が37.5点、プラセボ群は31.2点であった。30mg群とプラセボ群のTISの最小二乗平均差は15.3点(95%信頼区間[CI]:6.7~24.0、p<0.001)と有意差を認め、15mg群とプラセボ群の最小二乗平均差は6.3点(95%CI:-2.4~14.9)であった。 9項目の主な副次エンドポイントはすべて、プラセボ群に比べ30mg群で有意に優れた。たとえば、52週時にCDASI-Aスコアの40%以上かつ4点以上の改善を達成した患者の割合の最小二乗平均差は17%(95%CI:1~32、p=0.04)、52週時にTIS≧40点で、かつ経口グルココルチコイドの使用が最小限または非使用の患者の割合の最小二乗平均差は26%(95%CI:11~40、p<0.001)、機能障害の指標であるHAQ-DIスコアのベースラインから52週目までの変化量の最小二乗平均差は-0.30点(95%CI:-0.49~-0.10、p=0.004)であった。重篤な感染症が10%に 52週の投与期間に、重篤な有害事象はbrepocitinib 30mg群で13例(16%)、プラセボ群で10例(13%)に発現した。重篤な感染症の発生頻度は、プラセボ群に比べ30mg群で高かった(8例[10%]vs.1例[1%])。投与中止に至った有害事象は、30mg群で5例(6%)、プラセボ群で9例(11%)に認めた。 とくに注目すべき有害事象として、30mg群で心血管系が1例(1%)、ウイルスの再活性化が4例(5%)、ALT値またはAST値の上昇が1例(1%)にみられた。試験期間中に死亡の報告はなかった。二重の利点をもたらす可能性を示唆 著者は、「治療効果の大きさは、全身性の筋炎活動性、機能障害、皮膚疾患活動性を含む複数の領域において、確立された臨床的に意義のある最小変化量(MCID)の閾値を上回った」「臨床効果は4週目までに現れ、52週間の試験期間を通じて持続した」としている。 また、「長期の全身グルココルチコイド療法は、重大な毒性(感染症、糖尿病、心血管疾患、骨粗鬆症のリスク増大など)を伴うため、その減量は重要な治療目標とされる」とし、「本試験の知見は、brepocitinibが疾患活動性を抑制すると同時に、グルココルチコイドへの曝露を低減するという二重の利点をもたらす可能性を示唆する」と指摘している。

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インフリキシマブとエタネルセプト、重大な副作用が追加/厚労省

 2026年4月21日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、インフリキシマブ(商品名:レミケードほか)とエタネルセプト(同:エンブレルほか)の重大な副作用の項に「自己免疫性肝炎」が追加された。自己免疫性肝炎の発生状況 各製剤における自己免疫性肝炎関連症例を評価した結果、因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意改訂が適切と判断された。[国内症例]インフリキシマブ:9例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例が2例あるが、1例は承認効能・効果外の症例)【死亡0例】エタネルセプト:4例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例2例)【死亡0例】[海外症例]インフリキシマブ:4例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例4例)【死亡0例】エタネルセプト:6例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例6例)【死亡0例】カルシウム注射薬の禁忌が削除 また、低カルシウム血症の治療などに用いるグルコン酸カルシウム水和物(同:カルチコール注射液8.5%5mLほか)と塩化カルシウム水和物(同:大塚塩カル注2%、塩化カルシウム注2%「NP」)においては、禁忌と併用禁忌が削除され、併用注意が新設された。<グルコン酸カルシウム水和物>禁忌の「強心配糖体の投与を受けている患者」→削除相互作用の併用禁忌の「強心配糖体」→削除相互作用の併用注意の「強心配糖体」→追記<大塚塩カル注2%、塩化カルシウム注2%「NP」>禁忌の「ジギタリス製剤(ジゴキシン等)を投与中の患者」→削除相互作用の併用禁忌の「ジギタリス製剤」→削除相互作用の併用注意の「強心配糖体」→追記 このほか、抗悪性腫瘍薬2剤に対しても、重大な副作用の項が新設され、アベルマブ(同:バベンチオ)には「重度の皮膚障害」が、レゴラフェニブ(同:スチバーガ)には「高アンモニア血症」が追記されている。

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第314回 1人の女性の3つの自己免疫疾患が元凶のB細胞を駆除する自己T細胞投与で解消

ドイツの1人の女性を苛む3つの自己免疫疾患が、それらの元凶の悪辣なB細胞を駆除するように仕立てた自己T細胞で雲散霧消し、かつては10あまりの治療を受けたのが嘘のように、さらなる治療なしで1年超を無事で過ごせています1-3)。3つの自己免疫疾患はどれも免疫系の狼藉なB細胞が作る自己抗体に端を発します。その1つの自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、自己抗体が赤血球を破壊することを原因とします。あと2つの自己免疫疾患の症状はまるで正反対で、その1つは血小板への自己抗体を原因とする免疫性血小板減少症(ITP)で、出血を生じやすくします。もう1つの抗リン脂質症候群は、凝固を防ぐタンパク質への自己抗体を原因とし、ITPとは反対に血栓症を生じやすくします。診断の後に女性は抗体薬、ステロイド、免疫抑制薬を含む9種類の治療を試みました。長期の高用量ステロイド投与は唯一のめぼしい治療ですが、免疫系全般を抑制する故に感染症の危険と背中合わせです。そのステロイドでさえ歯が立たず、さらには最先端も免疫抑制薬の手にも負えず、女性は診断から10年超を経た2025年、47歳のときにドイツのエルランゲン大学病院の血液専門医Fabian Muller氏のチームの下へ救急搬送されました。Muller氏のチームは、自己免疫疾患のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の先駆けの試験で知られ、2022年には全身性エリテマトーデス(SLE)患者5例がその治療で寛解したことを報告しています4)。貧血の治療に毎日の輸血を要し、血栓症を防ぐための抗凝固薬を続けていた女性にMuller氏らは、同氏いわく最後の砦であったCAR-T細胞療法を施しました。投与したCAR-T細胞は女性から採取したT細胞を加工して作られ、B細胞のタンパク質のCD19を認識します。その働きによりB細胞を見つけ出し、除去することができます。体内で分裂でき、その効果は投与後に数年、なんなら10年も持続しうることが知られます。痛みや疲れで何週間も寝たきりで過ごすこともあった女性へのCAR-T細胞投与の効果は目覚ましく、その投与の1週間後を最後に輸血が不要になりました。2週間も経つと女性はより力がみなぎっていると感じ、日々の所作が可能になりました。3週間後には赤血球のタンパク質のヘモグロビン量が倍増して正常域となり、どうやら免疫系は赤血球を破壊しなくなっているようでした。血栓と関連する抗リン脂質抗体は徐々に減って見当たらなくなり、血小板数も安定に推移するようになりました。一回きりのCAR-T細胞投与から14ヵ月経つ今日、女性は薬を一切使うことなく無症状で過ごせています3)。がんのCAR-T細胞療法の先駆者の1人のCarl June氏によると、今や種々の自己免疫疾患のCAR-T細胞療法の200あまりの臨床試験が進行中です。これまではCAR-T細胞療法といえば主に白血病などの血液がんが相手でしたが、自己免疫疾患を治療するCAR-T細胞療法の承認がSLE、筋炎、強皮症用途を皮切りにして続くだろうとJune氏は予想しています3)。いくつかは向こう2~3年以内に米国で承認に漕ぎ着けそうです。参考1)Korte IK, et al. Med. 2026 Apr 9. [Epub ahead of print]2)CAR-T therapy drives remission in patient with three autoimmune diseases / Eurekalert3)One woman, three autoimmune diseases: CAR-T therapy vanquishes ultra-rare disease trio / Nature4)Mackensen A, et al. Nat Med. 2022;28:2124-2132.

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『大型血管炎診療ガイドライン』改訂、治療のCQ推奨が新設/日本循環器学会

 大血管炎の高安動脈炎(TAK)や巨細胞性動脈炎(GCA)、そしてバージャー病に関する治療エビデンスや診断基準などをまとめた『2026年改訂版 大型血管炎診療ガイドライン』1,2)が8年ぶりに改訂された。第90回日本循環器学会学術集会(3月20~23日)会期中の3月20日に発刊され、本ガイドラインの研究班長を務めた中岡 良和氏(国立循環器病研究センター研究所副所長/血管生理学部長)が本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において、改訂点などを解説した。CHCC 2012における疾患分類と本ガイドラインで扱う疾患 血管炎は血管壁に炎症を認める疾患の総称で、多臓器を障害するため診療科横断的に多くの専門医の関与が必要とされる領域である。疾患分類は「CHCC 2012 血管炎の分類基準」に基づき、大型血管炎(TAKとGCA)、中型血管炎(結節性多発動脈炎[PAN]、川崎病)、小型血管炎(免疫複合体型小型血管炎、IGA血管炎ほか)3)とされる。一方で、バージャー病はこの分類には記載されていないが、「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究」4)の大型血管炎臨床分科会の調査対象であること、循環器医が関与する疾患であること、そして前版(2017年版)でも対象範囲としていたことから、本書でも大型血管炎の2疾患とともにバージャー病を対象疾患とした。ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨を設定 今回、本書で取り扱う大血管炎(TAK、GCA)の2疾患は、希少疾患であるもののエビデンス収集という難しい局面を乗り越え、治療レジメンに対する全9項目のクリニカルクエスチョン(CQ)とそれに対する推奨がPart1(診療ガイドライン)の項で取り扱われている。TAKとGCAはいずれもステロイド(グルココルチコイド:GC)により一時的な寛解に至るものの、減量過程で半数以上に再燃がみられるため、GC治療抵抗性症例の治療選択肢を明らかにするため、ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨が設定された。中岡氏は、「システマティック・レビュー(SR)チームがTAKとGCAのRCT論文をMindsのGRADEシステムに準拠した最新研究などのSR結果をガイドライン発刊に先駆けて論文報告した5)。そして、近年ではステロイド治療に加えて、IL-6阻害薬トシリズマブなどが汎用されるようになったため、エビデンスの確実性や益と害について各CQと推奨で言及している」と説明した。 なお、中型血管炎であるPANも循環器医が臨床現場で遭遇する可能性があること、『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』での記載がないことを踏まえ、本書第6章で取り上げている。また、バージャー病はPart2(各疾患の基礎と臨床)でのみの取り扱いであることには注意したい。 次に、本書を手に取るうえで理解しておきたい各疾患の特徴を以下のように示す。―――――――――――――――――――【高安動脈炎(TAK)】・病名:高安動脈炎に統一(大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などと呼ばれているため)・患者数:4,642例(2022年度難病受給者証所持者数)・男女比:1対8~9と女性が圧倒的に多い・発症年齢:女性は20歳前後にピーク、男性ははっきりしたピークがない・年齢分布:50代が多い・患者背景:HLA-B52陽性患者が多く、陽性者はグルココルチコイド治療抵抗性症例が多い・合併症:潰瘍性大腸炎罹患者が8%前後存在・地域差:アジアに多く、欧米に少ない【巨細胞性動脈炎(GCA)】・病名:以前は側頭動脈炎、Horton病などが使用されていた・患者数:2,850例(2023年度医療費受給者証所持者数)・男女比:1対2~3で女性がやや多い・年齢分布:50歳以上にみられ、70~80代でピーク・合併症:リウマチ性多発筋痛症が約30~40%にみられる・地域差:欧米に多く、アジアに少ない【バージャー病】・病名:閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる・患者数:2,259例(2019年度特定医療費[難病]受給者証所持者数)で、近年減少傾向・男女比:若年発症でヘビースモーカーの男性に好発する・原因:作用機序などは不明だが、喫煙との関連が推察される―――――――――――――――――――TAKでのトシリズマブ併用、GCAの大動脈瘤リスク 上記を踏まえ、TAKの治療について、「治療アルゴリズムでは、まず疾患活動性を評価したうえでステロイド治療を開始する。欧米のガイドラインでは初期から免疫抑制薬を併用することが推奨されているが、本書CQ1(TAKの治療ではどのようなレジメンが有用か?)では、GCの早期減量が必要な症例に対し、トシリズマブ併用を選択肢とする推奨を示した」と強調した。 続いてGCAについて、「全身症状に加え、血管分布に応じて症状が出現する。外頸動脈の領域では血管狭窄に伴い、側頭部の痛み(顎跛行、舌跛行など)がみられる。内頚動脈の領域では失明や脳梗塞の原因になるほか、近年では大動脈瘤などを来すため、循環器領域でも注目されている」と指摘。診断基準は、現状、国内では1990年ACR分類基準が利用されているが、2022年ACR/EULARベースに日本語版の策定を進めているため、従来の1990年ACR分類基準と欧米で用いられている2022年ACR/EULAR分類基準が併記されている。さらに、トシリズマブの適応について「(確定診断ならびに疾患活動性の評価後に)トシリズマブを併用することでステロイドが減量できる点は50歳以上の患者でステロイドによる副作用を回避できるメリットがあるため、治療アルゴリズムにおいて、矢印を太字で示した。なお、昨年のNEJM誌において有用性が示されたJAK阻害薬ウパダシチニブは今回のアルゴリズムには反映されておらず、改めて検討される予定となっている」と説明した。 バージャー病については、「早期診断のため、診断基準の改訂を望む意見が多くあったため、2024年に一度改訂を行っている。本疾患として相違ない症状を呈し、血管画像検査所見が本疾患の特徴と合致し、ほかの疾患と鑑別できれば、診断可能」と解説した。「妊娠・出産」に関するコラムを新設 本書はわが国の大型血管炎の診療レベルを標準化し、日本全国どこにおいても患者が同じような治療を受けられるようにすること、患者の生活の質(QOL)と予後を改善させることを目的とし、大型血管炎の診療に関わる医師、医療専門職および大型血管炎の患者を利用者と想定して作成された。 最後に、今回新たに盛り込まれたコラムのうちTAK患者の妊娠・出産の項目を例に挙げ、「TAKの発症は10~20代の若年女性に多く見られるため、患者に妊娠をすること自体がリスクを伴う現実を伝えることも必要と判断されたため、コラムで妊娠・出産にも触れている。TAKを有する患者では妊娠が禁忌とされていたが、妊娠前に炎症をコントロールすることで妊娠・出産が可能であることや管理の軸について記した」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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辛い食品は炎症性腸疾患リスクを上げるのか

 潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)は世界的に有病率が増加しており、その原因として食事の関与が指摘されている。今回、サウジアラビア・保健省のAnas Almofarreh氏らが、辛い食品の毎日の摂取とIBDリスクとの関連を検討したところ、クローン病とは関連を示したが、潰瘍性大腸炎との関連は認められなかった。Nutrition誌2026年5月号に掲載。 本研究は症例対照研究で、サウジアラビアの民間クリニックにおける潰瘍性大腸炎患者157例、クローン病患者226例、対照群390例を対象とした。IBDの診断には、臨床検査、生検を伴う内視鏡検査、画像検査を用いた。辛い食品は、唐辛子やホットソースを使用した料理と定義し、自己記入式質問票を用いて評価した。辛い食品の摂取とIBDリスクとの関連を評価するために多変量ロジスティック回帰分析を用い、調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・辛い食品の毎日の摂取は、クローン病の発症リスク上昇と有意に関連していた(OR:1.61、95%CI:1.11~2.33)が、潰瘍性大腸炎とは関連していなかった(OR:1.03、95%CI:0.67~1.60)。・辛い食品とIBDの病変範囲や重症度との間には有意な関連が認められなかった。

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活動性SLEがオビヌツズマブ上乗せにより改善/NEJM

 オビヌツズマブは、糖鎖改変されたII型抗CD20モノクローナル抗体で、強力なB細胞枯渇作用を有し、諸外国では活動性ループス腎炎の成人患者の治療薬として承認されている。米国・NorthwellのRichard A. Furie氏らは「ALLEGORY試験」において、活動性全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬として、プラセボと比較して同薬は、52週の時点で疾患活動性の指標などから成るSLEレスポンダー指数(SRI-4)の有意な改善をもたらし、重篤な有害事象の頻度に大きな差はないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月6日号で報告された。14ヵ国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験 ALLEGORY試験は、14ヵ国の施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。2021年7月~2024年9月に、年齢18~75歳、増殖性または膜性ループス腎炎を伴わない活動性SLEで、標準治療を受けている患者303例を登録した。 被験者を、オビヌツズマブ(1,000mg、1日目、2、24、26週目)の静脈内投与群(151例、平均[SD]年齢41.1[±12.3]歳、女性139例[92.1%])またはプラセボ群(152例、41.4[±12.6]歳、135例[88.8%])に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、52週目の時点におけるSRI-4奏効の達成とした。SRI-4奏効は、次の条件をすべて満たす場合と定義した。(1)SLE疾患活動性指数2000(SLEDAI-2K)のスコアが、ベースラインから少なくとも4点低下すること、(2)British Isles Lupus Assessment Group(BILAG)2004指数および医師による総合評価(Physician's Global Assessment:PGA)で疾患の悪化がないこと、(3)中間事象(主たる併用薬違反、レスキュー薬の投与、死亡・有効性の欠如・有害事象による試験参加の早期中止)がないこと。5つの主な副次エンドポイントも有意に優れる 52週の時点でのSRI-4奏効の達成率は、プラセボ群が53.5%であったのに対し、オビヌツズマブ群は76.7%と有意に優れた(補正後群間差:23.1%ポイント、95%信頼区間[CI]:12.5~33.6、p<0.001)。 死亡を除く中間事象が奏効に影響を及ぼさない状況での補完的な解析では、SRI-4奏効達成率は、プラセボ群の68.5%に対しオビヌツズマブ群は85.4%であり、有意に良好であった(補正後群間差:16.8%ポイント、95%CI:7.1~26.4、p<0.001)。 また、オビヌツズマブ群では、5つの主な副次エンドポイント(52週時のBILAGに基づく複合ループス評価[BICLA]の奏効[p<0.001]、グルココルチコイド用量の≦7.5mg/日への40~52週目までの持続的な減量[p<0.001]、40週時のSRI-4奏効の52週目までの持続[p<0.001]、52週時のSRI-6[SLEDAI-2Kスコアのベースラインから少なくとも6点の低下を含む]奏効達成率[p<0.001]、BILAGの定義に基づく初回再燃までの期間[p=0.002])のすべてが、プラセボ群に比べ有意に優れた。infusion-related reactionが多く発現 有害事象は、オビヌツズマブ群の88.7%、プラセボ群の81.5%で報告され、重篤な有害事象はそれぞれ24例(15.9%)および18例(11.9%)で発現した。オビヌツズマブ群で頻度の高かった重篤な有害事象は、肺炎(2.0%)、上気道感染症、尿路感染症、infusion-related reaction(各1.3%)であった。infusion-related reactionはオビヌツズマブ群で多くみられた(11.9%vs.3.3%)。 二重盲検の期間中に、オビヌツズマブ群で1例(軟部組織感染症と肺炎)、プラセボ群で3例が死亡した。薬剤関連好中球減少が、オビヌツズマブ群で7例に8件(Grade1:3件、Grade2:2件、Grade3:3件)、プラセボ群で3例に認めたが、いずれも平均35日以内に解消した。 著者は、「活動性SLEの成人患者の治療において、標準治療とオビヌツズマブの併用は、主要および5つの主な副次エンドポイントのすべてで、プラセボに比べ有意な改善効果をもたらした」「DORIS奏効(寛解の指標)およびLLDASスコア(低疾患活動性の指標)も、オビヌツズマブ群で改善の傾向がみられ、これはガイドラインが低用量グルココルチコイドによる寛解を目指す『目標達成に向けた治療(treat-to-target)』を強調していることを踏まえると重要な知見と言えよう」としている。

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3疾患を追加し8年ぶりに改訂「自己炎症性疾患診療ガイドライン2026」

 自己炎症性疾患とは、自然免疫系の遺伝子の異常で発症し、症状として発熱と眼、関節、皮膚、漿膜などに及ぶ全身炎症を特徴とする疾患である。その概念は比較的新しく1999年から提唱されている。現在では、診療技術の進歩などにより疾患分類なども整備されている。そして、その疾患の多くは希少疾病や難病として知られている。2017年に『自己炎症性疾患診療ガイドライン 2017』(編集:日本小児リウマチ学会)が発行され、遺伝学的検査など検査が一般的となり、日本免疫不全・自己炎症学会も創設された。その後、厚生労働科学研究などの研究班研究により、掲載疾患の改訂と新規疾患のガイドライン作成作業を経て『自己炎症性疾患診療ガイドライン2026』が発刊された。本稿では、本ガイドラインの統括委員長である西小森 隆太氏(久留米大学医学部小児科学講座 教授)にガイドライン作成の意義や改訂のポイントを聞いた。非専門医も通読し、早く疾患に気付いてもらうことに期待--ガイドライン作成の工夫と3団体連携の意義について 今回のガイドラインの形式は、2017年版から大きな変更はなく、治療を基盤としたクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、Minds診療ガイドライン作成指針に準拠して作成した。本ガイドラインに掲載された遺伝性疾患では、小児期から成人期まで継続的な診療を要する患者が多く、疾患の性質上、現時点の治療法で完治に至ることは容易ではない。成人後も長期的な診療継続が必要であり、とりわけ小児期から成人期への移行期診療の重要性は近年ますます強調されている。こうした背景を踏まえ、本ガイドラインは日本リウマチ学会、日本免疫不全・自己炎症学会、日本小児リウマチ学会の承認を得て発刊された。--ガイドライン作成で腐心した点について 掲載疾患の多くは希少疾患であり、利用可能なエビデンスが限られているという課題があった。ランダム化比較試験(RCT)が乏しい、あるいは存在しない状況を踏まえ、ケースシリーズや症例報告も含めて文献検索を行い、現時点で示し得る見解を、Minds診療ガイドライン作成指針に準拠した手順を踏んで本ガイドラインを作成した。--今回の改訂のポイントについて 新しい疾患としてA20ハプロ不全症(HA20)、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群)、中條・西村症候群(プロテアソーム関連自己炎症性症候群)の3つを追加した。また、家族性地中海熱(FMF)、周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)は、前回の内容からCQを立て、エビデンスの見直しと更新を行った。クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群・メバロン酸尿症)(MKD)、ブラウ(Blau)症候群の4疾患については、疾患の説明などのアップデートを行い、改訂した。--非専門医が読むときのポイントや今後の展望について 遺伝性疾患を対象としているため、非専門の先生方にはやや読み進めにくい部分もあるかもしれない。ただし、本ガイドラインは丁寧かつ正確を期して記載しているので、ぜひ一度通読いただければ幸いである。とくにFMFについては、診断基準を明確化するとともに、その背景についても丁寧に解説しており、読後には本疾患への理解をより深めていただけるものと考えている。 次回改訂や今後の展望としては、比較的患者数の多い疾患を中心に検討を進める予定である。たとえば、自己炎症性疾患のうち成人患者の多いVEXAS(vacuoles、E1 enzyme、X-linked、autoinflammatory、somatic)症候群は重要な対象と考えている。近年、同疾患に関するエビデンスも着実に集積されつつあり、次回のガイドライン改訂で追加できることを期待している。 そのほか、非専門の医師が自己炎症性疾患に早期に気付き、適切に専門医へ紹介できるよう、自己炎症性疾患サイトを開設し、疾患および診療に関する啓発を行っている。さらに、自己炎症性疾患を診療できる若手医師の育成や、病態解析による創薬を行っているAMEDなどの研究班や治療薬の開発を担う企業との連携も、今後一層推進していきたいと考えている。【目次】・CQ・根拠の確かさ一覧・略語一覧・作成組織・委員一覧第1章 ガイドラインについて I 背景・目的と使用上の注意 II 本診療ガイドライン作成組織 III 重要臨床課題・アウトカムとクリニカルクエスチョン IV システマティックレビュー,エビデンスの質の評価と推奨の作成第2章 疾患の解説と推奨 A A20ハプロ不全症(HA20) B 化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群) C 中條・西村症候群(プロテアソーム関連自己炎症性症候群) D 家族性地中海熱(FMF) E 周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)・文献検索式・スコープ自己炎症性疾患診療ガイドライン2017年版より F クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS) G TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS) H メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群・メバロン酸尿症)(MKD) I ブラウ(Blau)症候群・2017年版 文献検索式より・2017年版 スコープより・索引

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