brepocitinibは、皮膚筋炎への関与が知られているサイトカインシグナル伝達を遮断するfirst-in-classの経口選択的チロシンキナーゼ2(TYK2)/ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害薬。米国・ハーバード大学医学大学院のRuth Ann Vleugels氏らは「VALOR試験」において、従来の治療に抵抗性の皮膚筋炎の成人患者では、brepocitinibはプラセボと比較して複合筋炎指数を有意に改善するほか、皮膚疾患の重症度、グルココルチコイドの漸減、機能障害などに関して有意な有益性を示すことを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月28日号(同31日更新)に掲載された。
20ヵ国の第III相無作為化プラセボ対照比較試験
VALOR試験は、20ヵ国90施設で実施した第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2022年10月~2024年6月に参加者のスクリーニングを行った(Priovant Therapeuticsの助成を受けた)。
対象は、18~75歳、欧州リウマチ学会/米国リウマチ学会(EULAR/ACR)の特発性炎症性筋疾患(definiteまたはprobable)の分類基準(2017年)と皮膚筋炎の亜分類基準を満たし、活動性の筋疾患(MMT-8スコア[0~150点、点数が低いほど筋力が低下]80~142点)および皮膚疾患(CDASI-Aスコア[0~100点、点数が高いほど疾患活動性が重度]6点以上)を有し、少なくとも1つの従来治療(全身グルココルチコイド療法、従来型DMARD、静注免疫グロブリン療法など)で効果が不十分な患者であった。
被験者を、brepocitinib 30mg、同15mg、プラセボを、1日1回経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週であった。併せて標準治療を継続し、グルココルチコイドは漸減した。
主要エンドポイントは、52週の時点における、筋炎の活動性に関する6つの主要な指標を統合した加重複合筋炎指数である総合改善スコア(TIS、範囲:0~100点、点数が高いほど改善度が高い)の平均値とした。
30mg群でTISが有意に改善
241例(平均年齢50.6歳、女性77.6%)を登録し、brepocitinib 30mg群に81例、同15mg群に81例、プラセボ群に79例を割り付けた。ベースラインの疾患活動性は、患者の81.3%が中等度~重度であり、皮膚疾患(平均[±SD]CDASI-Aスコア19.8[±11.5]点)、筋疾患(平均MMT-8スコア122.6[±15.9]点)とも高い活動性を示した。210例(87.1%)が52週の投与期間を完了した。
52週の時点で、平均TISは、brepocitinib 30mg群が46.5点、同15mg群が37.5点、プラセボ群は31.2点であった。30mg群とプラセボ群のTISの最小二乗平均差は15.3点(95%信頼区間[CI]:6.7~24.0、p<0.001)と有意差を認め、15mg群とプラセボ群の最小二乗平均差は6.3点(95%CI:-2.4~14.9)であった。
9項目の主な副次エンドポイントはすべて、プラセボ群に比べ30mg群で有意に優れた。たとえば、52週時にCDASI-Aスコアの40%以上かつ4点以上の改善を達成した患者の割合の最小二乗平均差は17%(95%CI:1~32、p=0.04)、52週時にTIS≧40点で、かつ経口グルココルチコイドの使用が最小限または非使用の患者の割合の最小二乗平均差は26%(95%CI:11~40、p<0.001)、機能障害の指標であるHAQ-DIスコアのベースラインから52週目までの変化量の最小二乗平均差は-0.30点(95%CI:-0.49~-0.10、p=0.004)であった。
重篤な感染症が10%に
52週の投与期間に、重篤な有害事象はbrepocitinib 30mg群で13例(16%)、プラセボ群で10例(13%)に発現した。重篤な感染症の発生頻度は、プラセボ群に比べ30mg群で高かった(8例[10%]vs.1例[1%])。投与中止に至った有害事象は、30mg群で5例(6%)、プラセボ群で9例(11%)に認めた。
とくに注目すべき有害事象として、30mg群で心血管系が1例(1%)、ウイルスの再活性化が4例(5%)、ALT値またはAST値の上昇が1例(1%)にみられた。試験期間中に死亡の報告はなかった。
二重の利点をもたらす可能性を示唆
著者は、「治療効果の大きさは、全身性の筋炎活動性、機能障害、皮膚疾患活動性を含む複数の領域において、確立された臨床的に意義のある最小変化量(MCID)の閾値を上回った」「臨床効果は4週目までに現れ、52週間の試験期間を通じて持続した」としている。
また、「長期の全身グルココルチコイド療法は、重大な毒性(感染症、糖尿病、心血管疾患、骨粗鬆症のリスク増大など)を伴うため、その減量は重要な治療目標とされる」とし、「本試験の知見は、brepocitinibが疾患活動性を抑制すると同時に、グルココルチコイドへの曝露を低減するという二重の利点をもたらす可能性を示唆する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)