リウマチ性心疾患(RHD)は、低・中所得国(LMIC)の若年層における罹患および死亡の重要な原因で、駆出率が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連するとされる。RHD患者の心不全症状は、主にさまざまな程度の僧帽弁狭窄によって発生し、とくに心房細動の発症に伴い悪化する。インド・All India Institute of Medical Sciences(AIIMS)のGanesan Karthikeyan氏らDig-RHD Investigatorsは「Dig-RHD試験」において、症候性RHD患者では経口ジゴキシンの連日投与により、全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクが軽減し、毒性の発現は少ないことを示した。ジゴキシンは、その陽性変力作用が逆流性病変や心室機能障害を有する患者にも有用である可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2026年5月10日号掲載の報告。
インドの研究者主導型無作為化プラセボ対照比較試験
Dig-RHD試験は、インドの12施設で実施した研究者主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Indian Council of Medical Researchの助成を受けた)。2022年2月~2024年8月に、年齢18歳以上、心エコー図検査でRHDと確定され、すでにジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録した。
被験者を、通常治療に加え、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回、経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、36ヵ月以内または試験終了までに発生した全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合であった。
全死因死亡には差がない
主解析には試験薬の投与を1回以上受けた1,759例(ジゴキシン群880例、プラセボ群879例)が含まれた。ベースラインの全体の平均年齢は46歳、72%が女性で、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類クラスII~IV、85%が中等度~重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均左室駆出率は58%で、34%がすでにジゴキシンの投与を受けていた。
主要複合アウトカムのイベントは、プラセボ群の312例(35.5%)で発生したのに対し、ジゴキシン群は276例(31.4%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.97、p=0.02)。
主要複合アウトカムの構成要素のうち、心不全の新規発症・悪化の発生率はジゴキシン群で有意に低かった(227例[25.8%]vs.257例[29.2%]、HR:0.82、95%CI:0.69~0.98、p=0.03)。心不全の悪化のほとんどは、入院を要することなく、利尿薬(経口または静脈内投与)の増量で治療された。
一方、全死因死亡の発生には両群間に有意な差を認めなかった(88例[10%]vs.91例[10.4%]、HR:0.94、95%CI:0.70~1.26、p=0.69)。死亡のほとんどが心不全によるものだった。
安全で安価な治療法となる可能性
副次アウトカムのうち、心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(249例[28.3%]vs.284例[32.3%]、HR:0.82、95%CI:0.69~0.97、p=0.02)。
心不全関連死または心不全による入院の複合(ジゴキシン群80例[9.1%]vs.プラセボ群86例[9.8%]、p=0.49)、心不全関連死(41例[4.7%]vs.53例[6%]、p=0.16)、突然死(20例[2.3%]vs.16例[1.8%]、p=0.56)には両群間に差はなかった。
24例で、ジゴキシンが原因と疑われる毒性が発現した(ジゴキシン群17例、プラセボ群7例)。このうち11例(10例[1.1%]、1例)で、試験薬の投与が恒久的に中止された。
著者は、「通常治療として、β遮断薬とカルシウム拮抗薬を使用した基礎治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシンの追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを低減した。この良好な結果は、心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた」「ジゴキシンは、死亡リスクを増加させずに、心不全の悪化を軽減する安全で安価な方法と考えられる」としている。
また、「サブグループ解析では、ベースライン時にジゴキシンを服用していた患者(HR:0.61、95%CI:0.46~0.81)や心房細動を呈していた患者(HR:0.75、95%CI:0.62~0.90)で、ジゴキシンの有益性が大きかったが、この効果の差が生じた理由は不明である」「ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現が少なかったが、これは患者が比較的若く、併存疾患が少なく、腎機能も良好であったことで説明可能と考えられる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)