自己炎症性疾患とは、自然免疫系の遺伝子の異常で発症し、症状として発熱と眼、関節、皮膚、漿膜などに及ぶ全身炎症を特徴とする疾患である。その概念は比較的新しく1999年から提唱されている。現在では、診療技術の進歩などにより疾患分類なども整備されている。そして、その疾患の多くは希少疾病や難病として知られている。2017年に『自己炎症性疾患診療ガイドライン 2017』(編集:日本小児リウマチ学会)が発行され、遺伝学的検査など検査が一般的となり、日本免疫不全・自己炎症学会も創設された。その後、厚生労働科学研究などの研究班研究により、掲載疾患の改訂と新規疾患のガイドライン作成作業を経て『自己炎症性疾患診療ガイドライン2026』が発刊された。本稿では、本ガイドラインの統括委員長である西小森 隆太氏(久留米大学医学部小児科学講座 教授)にガイドライン作成の意義や改訂のポイントを聞いた。
非専門医も通読し、早く疾患に気付いてもらうことに期待
--ガイドライン作成の工夫と3団体連携の意義について
今回のガイドラインの形式は、2017年版から大きな変更はなく、治療を基盤としたクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、Minds診療ガイドライン作成指針に準拠して作成した。本ガイドラインに掲載された遺伝性疾患では、小児期から成人期まで継続的な診療を要する患者が多く、疾患の性質上、現時点の治療法で完治に至ることは容易ではない。成人後も長期的な診療継続が必要であり、とりわけ小児期から成人期への移行期診療の重要性は近年ますます強調されている。こうした背景を踏まえ、本ガイドラインは日本リウマチ学会、日本免疫不全・自己炎症学会、日本小児リウマチ学会の承認を得て発刊された。
--ガイドライン作成で腐心した点について
掲載疾患の多くは希少疾患であり、利用可能なエビデンスが限られているという課題があった。ランダム化比較試験(RCT)が乏しい、あるいは存在しない状況を踏まえ、ケースシリーズや症例報告も含めて文献検索を行い、現時点で示し得る見解を、Minds診療ガイドライン作成指針に準拠した手順を踏んで本ガイドラインを作成した。
--今回の改訂のポイントについて
新しい疾患としてA20ハプロ不全症(HA20)、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群)、中條・西村症候群(プロテアソーム関連自己炎症性症候群)の3つを追加した。また、家族性地中海熱(FMF)、周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)は、前回の内容からCQを立て、エビデンスの見直しと更新を行った。クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群・メバロン酸尿症)(MKD)、ブラウ(Blau)症候群の4疾患については、疾患の説明などのアップデートを行い、改訂した。
--非専門医が読むときのポイントや今後の展望について
遺伝性疾患を対象としているため、非専門の先生方にはやや読み進めにくい部分もあるかもしれない。ただし、本ガイドラインは丁寧かつ正確を期して記載しているので、ぜひ一度通読いただければ幸いである。とくにFMFについては、診断基準を明確化するとともに、その背景についても丁寧に解説しており、読後には本疾患への理解をより深めていただけるものと考えている。
次回改訂や今後の展望としては、比較的患者数の多い疾患を中心に検討を進める予定である。たとえば、自己炎症性疾患のうち成人患者の多いVEXAS(vacuoles、E1 enzyme、X-linked、autoinflammatory、somatic)症候群は重要な対象と考えている。近年、同疾患に関するエビデンスも着実に集積されつつあり、次回のガイドライン改訂で追加できることを期待している。
そのほか、非専門の医師が自己炎症性疾患に早期に気付き、適切に専門医へ紹介できるよう、
自己炎症性疾患サイトを開設し、疾患および診療に関する啓発を行っている。さらに、自己炎症性疾患を診療できる若手医師の育成や、病態解析による創薬を行っているAMEDなどの研究班や治療薬の開発を担う企業との連携も、今後一層推進していきたいと考えている。
【目次】
・CQ・根拠の確かさ一覧
・略語一覧
・作成組織・委員一覧
第1章 ガイドラインについて
I 背景・目的と使用上の注意
II 本診療ガイドライン作成組織
III 重要臨床課題・アウトカムとクリニカルクエスチョン
IV システマティックレビュー,エビデンスの質の評価と推奨の作成
第2章 疾患の解説と推奨
A A20ハプロ不全症(HA20)
B 化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群)
C 中條・西村症候群(プロテアソーム関連自己炎症性症候群)
D 家族性地中海熱(FMF)
E 周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)
・文献検索式
・スコープ
自己炎症性疾患診療ガイドライン2017年版より
F クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)
G TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)
H メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群・メバロン酸尿症)(MKD)
I ブラウ(Blau)症候群
・2017年版 文献検索式より
・2017年版 スコープより
・索引
(ケアネット 稲川 進)