食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2014/04/28

 

 食事は、不良な健康状態の、修正可能な単一の主要因である。食事に含まれる特定の脂肪酸には健康に有益あるいは有害な作用があり、食事に起因する疾患には複合的な関連性があることが知られているが、食事由来の主要な脂肪酸/油脂の消費に関する全国的なデータを公表している国はほとんどないという。米国ハーバード公衆衛生大学院のRenata Micha氏らは、今回、大規模な調査を行い、食事由来の脂肪酸/油脂の世界的な摂取状況には、国によってきわめて大きな多様性があることを明らかにした。BMJ誌2014年4月15日号掲載の報告。

約163万人のデータを国別、年齢別に解析
 本試験は、1990年と2010年における食事由来の脂肪酸/油脂の世界的な摂取状況を定量的に検討することを目的に、2010 Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors(GBD)研究の一環としてNutrition and Chronic Diseases Expert Group(NutriCoDE)によって実施された。

 世界の食事関連調査の文献を同定し、健康に影響を及ぼす主要な食事由来脂肪酸(飽和、ω-6、魚介由来ω-3、植物由来ω-3、トランス)とコレステロールに関するデータを抽出し、国別、年齢別、性別の評価を行った。

 成人を対象とした266の調査(221[83%]件が全国代表的調査)に参加した163万69人(世界187ヵ国中113ヵ国、世界人口の82%に相当)のデータを使用し、解析には多段階階層ベイズモデルを用いた。

全般に推奨値の達成度は不十分だが、必須脂肪酸の摂取量は増加傾向に
 2010年の世界における、飽和脂肪酸の1日総エネルギー摂取量に占める割合(%E)の平均値は9.4%Eであり、ガイドラインなどで推奨される適正摂取量(<10%E)を満たしていたが、187ヵ国間で2.3~27.5%Eと大きなばらつき(最大が最小の12.2倍)がみられ、<10%Eの推奨値を満たしたのは75ヵ国(世界全体の61.8%に相当)であった。

 ω-6多価不飽和脂肪酸の摂取率の世界的な平均値は5.9%Eで、推奨値(≧12%E)の半分に過ぎず、国別で1.2~12.5%Eと広範囲(10.5倍)にわたり、≧12%Eを満たしたのは187ヵ国中1国(ブルガリア、0.1%)のみであった。また、≧5%Eを満たした国も94ヵ国(52.4%)に過ぎなかった。

 トランス脂肪酸の平均摂取率は1.4%Eと、推奨値(<0.5%E)を超えており、国別範囲は0.2~6.5%E(28.1倍)で、<0.5%Eを満たしたのは12ヵ国(0.6%)のみであった。

 一方、食事由来コレステロールの世界的な1日平均摂取量は228mg/日で、国別間で97~440mg/日と差があり(4.5倍)、推奨値(<300/mg/日)を満たしたのは155ヵ国(87.6%)であった。日本(347mg/日)は推奨値を上回っており、パラグアイと並び世界で7番目に摂取が過剰な国であった。

 魚介由来ω-3多価不飽和脂肪酸の平均摂取量は163mg/日、国別の範囲は5~3,886mg/日(840倍)で、推奨値(≧250mg/日)を満たしたのは45ヵ国(18.9%)であった。日本は718mg/日で世界8位であり、冠動脈疾患リスクとの関連の解析では994.6mg/日で世界3位であった。

 植物由来ω-3多価不飽和脂肪酸は1,371mg/日、2~5,542mg/日(2,731倍)で、52ヵ国(43.9%)が推奨値(≧0.5%Eまたは食事2,000kcal/日当たり1,100mg以上)を満たしていた。

 全般に、トランス脂肪酸の摂取量は若年層で多く、食事由来コレステロールや魚介由来ω-3多価不飽和脂肪酸は高齢層で多い傾向がみられた。また、摂取量に性差は認められなかった。

 1990年と2010年とでは、飽和脂肪酸や食事由来コレステロール、トランス脂肪酸の摂取量に大きな変化はなかったが、ω-6多価不飽和脂肪酸や魚介由来、植物由来のω-3多価不飽和脂肪酸の摂取量は20年間で増加していた。

 著者は、「食事に含まれる脂肪酸/油脂の摂取状況は、国によってきわめて大きな差があることが明らかとなった」とまとめ、「これらの新たなデータは、国際保健の改善に向けた施策や優先度を検討する際に有用な情報となるだろう」と指摘している。

(菅野守:医療ライター)