大腸がん術後の運動プログラム、初のガイドライン推奨に/ESMO

提供元:ケアネット

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公開日:2026/03/06

 

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)は、2026年1月27日付で、術後の局所進行大腸がん患者に対し、術後の「構造化された身体的運動プログラム」を臨床的介入として正式に推奨するガイドライン更新を発表した。従来から、がん患者の生存改善に運動が寄与するとの報告はあったものの、明確なエビデンスを基に治療ガイドラインにおける正式な推奨となったのは初めて。

 今回のガイドライン更新の根拠となったのは、カナダの治験グループが実施したCHALLENGE試験。StageIIIおよび高リスクStageII大腸がんに対する構造化された運動プログラムが無病生存期間(DFS)を有意に改善し、全生存期間(OS)の有意な延長をもたらすことを示した。この結果は2025年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2025)で発表されると同時にNEJM誌に掲載され1)、話題を集めた。

CHALLENGE試験の概要と結果


・対象:StageIIIおよび高リスクStageII大腸がん患者、切除術を受け、その後2~6ヵ月に補助化学療法を完了:889例
・介入:構造化運動プログラム+行動支援を3年vs.標準的健康教育のみに1:1の割合で無作為に割り付け。運動介入は週当たり約150分の中等度~高強度運動量(目安として10MET・時間/週程度)を目標としたプログラム。
・主要評価項目:DFS、OS

・追跡期間中央値7.9年において、運動プログラム群はDFSの改善を示し(5年DFS率:80%対74%)、OSも運動プログラム群で有意に改善した(HR:0.63[95%信頼区間:0.43~0.94])。
・介入中は筋骨格系の軽微な副作用は観察されたが、重度イベントはまれであった。
これらの結果は、運動が単なる健康教育ではなく、構造化された介入として腫瘍学的な利益をもたらす可能性を示した。

 CHALLENGE試験を受けた今回のESMOガイドラインExpress Updateにおける新たな推奨は以下のとおり。

推奨事項
・StageIII/高リスクStageIIの大腸がんを切除した患者には、構造化された運動プログラムによる生存率の延長を示唆する入手可能なエビデンスについて知らせるべきである。
・医療従事者は、対象患者に構造化された運動プログラムへの参加資格を明確に伝え、必要なインフラとサポート内容を明確に説明する必要がある。また、医療従事者は、患者の病歴、希望、態度、そして運動プログラムの実施における潜在的な課題(アドヒアランスや経済的負担など)についても評価する必要がある。
・運動の強度と実行可能性について話し合い、共同で意思決定を行った後、対象となる患者には構造化された運動プログラムへの参加が推奨される。
・行動支援および運動プログラムの実施能力とインフラの構築、ならびに患者に対する必要な支援と指導のために、協調的な保健システム投資が推奨される。
・局所性大腸がんを切除した患者には、運動(週10MET・時間)、禁煙、過度のアルコール摂取の回避、野菜、果物、ベリー類を豊富に含む健康的な食事(胃腸機能に適応したもの)の採用など、健康的なライフスタイルの維持を奨励する必要がある。

 今回のESMOガイドライン更新は、運動が薬物治療と同様に、術後管理の重要な柱となる可能性を示している。とくに再発抑制や生存改善という臨床転帰の改善がエビデンスとして認められたことは、日本を含む臨床現場で注目される変化だろう。一方、運動プログラムの実装法や医療体制への統合、患者の長期的な遵守支援などにおける課題も多い。また、個々の患者に適した運動形式や強度の調整、合併症を持つ患者への安全なプログラム設計などの面でも、さらなる試験によるデータを蓄積する必要がありそうだ。

(ケアネット 杉崎 真名)

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