アルツハイマー病(AD)の確定診断には、これまで高額なPET検査や身体的負担の大きい脳脊髄液検査が必要であり、より簡便な血液バイオマーカーの活用が期待されている。新潟大学の春日 健作氏らの研究グループは、日本人を対象とした多施設共同研究「J-ADNI」の臨床検体の解析により、血漿中のリン酸化タウ217(p-tau217)が、アミロイド病理の検出および将来のAD発症予測において、きわめて高い精度を持つことを明らかにした。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年2月6日号に掲載。
本研究では、認知機能正常者、軽度認知障害(MCI)、軽度ADからなるJ-ADNI参加者172人の血漿および髄液検体を用いた。血漿中のp-tau217をルミパルス法とSimoa HD-Xで測定し、アミロイド病理の有無を定義する基準として髄液中のAβ42/Aβ40比を用いて、血漿バイオマーカーの診断精度を曲線下面積(AUC)で評価した。また、最長36ヵ月の追跡調査を行い、MCIから認知症への転換予測能を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・血漿p-tau217およびp-tau217/Aβ42比は、いずれもAβ42/Aβ40比やGFAPよりも有意に高いAUCを示した(DeLong検定、p<0.05)。
・アミロイド病理予測の診断精度(AUC)は、Simoa p-tau217では0.978(95%信頼区間[CI]:0.959~0.998)、ルミパルスp-tau217では0.981(95%CI:0.961~1.000)、ルミパルスp-tau217/Aβ42では0.983(95%CI:0.965~1.000)であり、いずれもきわめて高い精度を示した。
・Youden指数に基づく単一のカットオフ値により、p-tau217とp-tau217/Aβ42は90%以上の感度と特異度を同時に達成した。また、米国食品医薬品局(FDA)が承認したp-tau217/Aβ42の2つのカットオフ値を用いるモデルも、日本人集団に適用可能であることが確認された。
・血漿p-tau217が高値の群は、低値の群と比較して、3年間での認知症への進行リスクが有意に高く(p<0.001)、ルミパルスp-tau217測定では約5倍(調整ハザード比[HR]:4.717)の転換リスクを示した。
・血漿p-tau217レベルは、BMI、腎機能(eGFR)、HDL-Cの影響を受けることが判明した。
著者らは、血漿p-tau217が日本の臨床においても、ADの正確な診断や予後予測、さらには抗アミロイドβ抗体療法の適応判断を支援する優れたバイオマーカーになりうると結論付けている。一方で、BMIや腎機能、HDL-Cなどの要因が測定値に影響を与える可能性があるため、実臨床での解釈にはこれらの背景因子を考慮する必要があると指摘している。
(ケアネット 古賀 公子)