脳梗塞発症後4.5時間を超えても、血管内治療(EVT)を迅速に受けられる環境にある患者において、EVT前のtenecteplase静注による血栓溶解療法の役割は不明とされる。中国・首都医科大学のYunyun Xiong氏らTNK-PLUS Investigatorsは、「TNK-PLUS試験」において、発症後4.5~24時間以内にEVTを実施可能な施設に直接搬送された近位中大脳動脈(MCA)閉塞による急性期脳梗塞患者では、EVT単独と比較して、EVT前にtenecteplase静注を行っても、機能的自立の達成率は改善しないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月8日号に掲載された。
中国の第III相無作為化優越性試験
TNK-PLUS試験は、中国の40施設で実施した第III相非盲検(エンドポイント盲検)無作為化優越性試験であり、2024年1月~2025年7月に参加者を募集した(北京市自然科学基金などの助成を受けた)。
対象は、年齢18歳以上、MCA-M1または近位M2の閉塞による急性期脳梗塞で、救済可能な脳組織(虚血コア体積<70mL、ミスマッチ比≧1.8、ミスマッチ体積≧15mL)を有し、最終健常確認時から4.5~24時間以内の患者であった。起床時および目撃者不在の脳梗塞も対象に含めた。
適格基準には、脳梗塞発症前の修正Rankinスケール(mRS)スコア(0[症状なし]~6[死亡]点)が0~2点、NIHSSスコア(0~42点、高点数ほど神経学的障害が重度)が6~25点を満たすことが含まれた。
被験者を、EVT前にtenecteplase(0.25mg/kg、最大用量25mg)の静脈内投与を受ける群またはEVT単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点)の達成割合とした。
90日時の機能的自立、tenecteplase群44.2%vs.EVT単独群43.2%で有意差なし
391例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:59~75]、女性155例[39.6%])を登録し、tenecteplase群に199例、EVT単独群に192例を割り付けた。入院時のNIHSS中央値は13点(IQR:10~17)、発症から無作為化までの時間中央値は10.0時間(IQR:6.5~14.3)、入院からtenecteplase静注までの時間中央値は90分(IQR:69~130)であった。
90日時の機能的自立は、tenecteplase群の88例(44.2%)、EVT単独群の83例(43.2%)で達成され、両群間に有意な差を認めなかった(補正後相対的比率:1.01[95%信頼区間[CI]:0.83~1.24]、p=0.89、リスク群間差:0.99[95%CI:-8.84~10.83])。
また、副次アウトカムである90日時の障害なし、mRSスコア0、1点(tenecteplase群30.2%vs.EVT単独群28.6%)、mRSスコア0~3点(62.8%vs.62.0%)、重度障害または死亡、mRSスコア5、6点(20.1%vs.22.4%)は、いずれも両群間に有意差はみられなかった。
症候性頭蓋内出血が数値上は増加
90日以内の死亡の割合は、tenecteplase群で12.7%(25/197例)、EVT単独群で14.2%(27/190例)に、36時間以内の症候性頭蓋内出血は、それぞれ5.1%(10/197例)および2.6%(5/190例)に発生した。また、重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めなかった。
著者は、「本試験の知見は、EVT前のブリッジング血栓溶解療法の分野に重要なデータを追加するものである」としている。
また、「重要な点として、本試験を含め、血栓溶解薬の投与から動脈穿刺までの時間が短かったいくつかの研究の結果は、病院間を転送された場合など、EVTへのアクセスの遅延が予測される患者には適用されない」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)