うつ病の急性期治療期間と再発との関係~STAR*D研究の再解析

うつ病の維持療法を行っている際に、再発を予測することは難しい。慶應義塾大学の久保 馨彦氏らは、うつ病の急性期治療において寛解を達成するまでの期間がその後の再発率や再発までの期間に及ぼす影響を検討した。その結果、抗うつ薬治療に対し早期に治療反応が認められるうつ病患者では、長期的に寛解を維持する可能性が高まることが示唆された。このことから著者らは、「寛解までに比較的長い期間を要する患者においては、再発予防のために細心の注意を払う必要がある」としている。Journal of Affective Disorders誌2023年1月1日号の報告。
分析データの収集には、Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression(STAR*D研究)のデータセットを用いた。citalopramによる治療(最長14週)で寛解を達成した非精神病性うつ病外来患者1,296例を対象に、12ヵ月間の自然主義的フォローアップ調査を実施した。2、4、6、9、12、14週時点で寛解を達成した患者におけるフォローアップ期間中の再発率および再発までの期間を比較するため、一元配置分散分析とJonckheere-Terpstra傾向検定を用いた。寛解および再発の定義は、それぞれ自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR)スコア5以下および11以上とした。
主な結果は以下のとおり。
・再発率は、寛解達成までの期間別に有意な違いが認められた(F(5,1087)=4.995、p<0.001)。
・再発率は、4週目(25.7%)で寛解を達成した患者が最も低く、12週目(42.4%)で寛解を達成した患者が最も高く、それぞれ有意な差が認められた(p=0.006)。
・寛解達成までの期間と再発までの期間との間にも、有意な傾向が認められた(z=-6.13、p<0.001)。
(鷹野 敦夫)
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