ALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するアレクチニブは、海外第III相無作為化比較試験「ALEX試験」において、全生存期間(OS)中央値81.1ヵ月、奏効期間(DOR)中央値42.3ヵ月と良好な治療成績を示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が本試験のOSの最終解析結果を発表した。本試験は、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC患者を対象として、アレクチニブの有用性をクリゾチニブとの比較により検証する試験である。本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の最終解析結果はすでに報告されており、アレクチニブのクリゾチニブに対する優越性が示されている1,2)。今回は、PFSの最終解析時から約6年の追跡期間が追加された。なお、本結果はAnnals of Oncology誌オンライン版2025年10月17日号に同時掲載された3)。
・試験デザイン:海外第III相非盲検無作為化比較試験
・対象:未治療のStageIIIB/IV(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者
・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回) 152例
・対照群(クリゾチニブ群):クリゾチニブ(1回250mg、1日2回) 151例
・評価項目:
[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS
[副次評価項目]OS、DOR、安全性など
今回発表された主な結果は以下のとおり。
・StageIII/IVの割合は、アレクチニブ群2.6%/97.4%、クリゾチニブ群4.0%/96.0%であった。中枢神経系(CNS)転移ありの割合は、それぞれ42.1%、38.4%であった。
・OS中央値は、アレクチニブ群81.1ヵ月、クリゾチニブ54.2ヵ月であった(層別ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.56~1.08)。7年OS率は、それぞれ48.6%、38.2%であった。
・CNS転移の有無別にみたアレクチニブ群とクリゾチニブ群のOS中央値は、以下のとおりであった。
【CNS転移あり】
63.4ヵ月vs.30.9ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.40~1.15)
【CNS転移なし】
94.0ヵ月vs.69.8ヵ月(HR:0.87、95%CI:0.58~1.32)
・DOR中央値は、アレクチニブ群42.3ヵ月、クリゾチニブ群11.1ヵ月であった(HR:0.41、95%CI:0.30~0.56)。
・治療期間中央値は、アレクチニブ群28.1ヵ月、クリゾチニブ群10.8ヵ月であった。
・治療中止に至った有害事象の発現割合は、アレクチニブ群17.8%、クリゾチニブ群14.6%であった。減量に至った有害事象の発現割合は、それぞれ23.0%、19.9%であった。アレクチニブの中止または減量に至った主な有害事象は、血中ビリルビン増加(中止3.3%、減量5.3%)であった。クリゾチニブの中止または減量に至った主な有害事象は、ALT(6.6%、8.6%)であった。
本結果について、Mok氏は「アレクチニブは、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCに対する1次治療の標準治療であることを支持するものである」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)