世界の死亡パターン、過去30年の傾向と特徴/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/23

 

 米国・ワシントン大学のMohsen Naghavi氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Causes of Death Collaboratorsは、過去30年の世界における死亡のパターンを、改善された推定法を用いて調査し、COVID-19パンデミックのような重大イベントの影響、さらには低所得地域での非感染性疾患(NCD)の増加といった世界で疫学的転換が進んでいることを反映した、より広範な分野にわたる傾向を明らかにした。死因の定量化は、人々の健康を改善する効果的な戦略開発に向けた基礎的な段階である。GBDは、世界の死因を時代を超えて包括的かつ体系的に解析した結果を提供するものであり、GBD 2023では年齢と死因の関連の理解を深めることを目的として、70歳未満で死亡する確率(70q0)と死因別および性別の平均死亡年齢の定量化が行われた。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。

1990~2023年の292の死因について定量化

 GBD 2023では、1990~2023年の各年について、204の国と地域および660のサブナショナル(地方政府)地域における年齢・性別・居住地・暦年ごとに分類した292の死因の推定値を算出した。

 ほとんどの死因別死亡率の算出には、GBDのために開発されたモデリングツール「Cause of Death Ensemble model:CODEm」が用いられた。また、損失生存年数(YLL)、死亡確率、死亡時平均年齢、死亡時観測年齢および推定平均年齢も算出した。結果は件数と年齢標準化率で報告された。

 GBD 2023における死因推定法の改善点は、COVID-19による死亡の誤分類の修正、COVID-19推定法のアップデート、CODEmモデリングフレームワークのアップデートなどであった。

 解析には5万5,761のデータソースが用いられ、人口動態登録および口頭剖検データとともに、サーベイ、国勢調査、サーベイランスシステム、がん登録などのデータが含まれている。GBD 2023では、以前のGBDに使用されたデータに加えて、新たに312ヵ国年の人口動態登録の死因データ、3ヵ国年のサーベイランスデータ、51ヵ国年の口頭剖検データ、144ヵ国年のその他のタイプのデータが追加された。

死因トップは2021年のみCOVID-19、時系列的には虚血性心疾患と脳卒中が上位2つ

 COVID-19パンデミックの初期数年は、長年にわたる世界の主要な死因順位に入れ替わりが起き、2021年にはCOVID-19が、世界の主要なレベル3のGBD死因分類の第1位であった。2023年には、COVID-19は同20位に落ち込み、上位2つの主要な死因は時系列的には典型的な順位(すなわち虚血性心疾患と脳卒中)に戻っていた。

 虚血性心疾患と脳卒中は主要な死因のままであるが、世界的に年齢標準化死亡率の低下が進んでいた。他の4つの主要な死因(下痢性疾患、結核、胃がん、麻疹)も本研究対象の30年間で世界的に年齢標準化死亡率が大きく低下していた。その他の死因、とくに一部の地域では紛争やテロによる死因について、男女間で異なるパターンがみられた。

 年齢標準化率でみたYLLは、新生児疾患についてかなりの減少が起きていた。それにもかかわらず、COVID-19が一時的に主要な死因になった2021年を除き、新生児疾患は世界のYLLの主要な要因であった。1990年と比較して、多くのワクチンで予防可能な疾患、とりわけジフテリア、百日咳、破傷風、麻疹で、総YLLは著しく低下していた。

死亡時平均年齢、70q0は、性別や地域で大きくばらつき

 加えて本研究では、全死因死亡率と死因別死亡率の平均死亡年齢を定量化し、性別および地域によって注目すべき違いがあることが判明した。

 世界全体の全死因死亡時平均年齢は、1990年の46.8歳(95%不確実性区間[UI]:46.6~47.0)から2023年には63.4歳(63.1~63.7)に上昇した。男性では、1990年45.4歳(45.1~45.7)から2023年61.2歳(60.7~61.6)に、女性は同48.5歳(48.1~48.8)から65.9歳(65.5~66.3)に上昇した。2023年の全死因死亡平均年齢が最も高かったのは高所得super-regionで、女性は80.9歳(80.9~81.0)、男性は74.8歳(74.8~74.9)に達していた。対照的に、全死因死亡時平均年齢が最も低かったのはサハラ以南のアフリカ諸国で、2023年において女性は38.0歳(37.5~38.4)、男性は35.6歳(35.2~35.9)だった。

 全死因70q0は、2000年から2023年にかけて、すべてのGBD super-region・region全体で低下していたが、それらの間で大きなばらつきがあることが認められた。

 女性は、薬物使用障害、紛争およびテロリズムにより70q0が著しく上昇していることが明らかになった。男性の70q0上昇の主要な要因には、薬物使用障害とともに糖尿病も含まれていた。サハラ以南のアフリカ諸国では、多くのNCDについて70q0の上昇がみられた。また、NCDによる死亡時平均年齢は、全体では予測値よりも低かった。対象的に高所得super-regionでは薬物使用障害による70q0の上昇がみられたが、観測された死亡時平均年齢は予測値よりも低年齢であった。

(ケアネット)