PSMA陽性の転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)患者において、アンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)への[177Lu]Lu-PSMA-617(177Lu-PSMA-617)追加が画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善した。米国・Weill Cornell MedicineのScott T. Tagawa氏が、第III相PSMAddition試験の2回目の中間解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。
・対象:全身治療歴なしまたは全身治療歴の短い(術前/術後ADTおよび/または転移疾患に対する最大45日までのADT/ARPIは許容)PSMA陽性mHSPC患者(ECOG PS 0~2、ADT+ARPIに対する適格性あり)
・試験群(177Lu-PSMA-617群):177Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%を6週ごとに6サイクル)+標準治療(ADT+ARPI) 572例
・対照群:標準治療(ADT+ARPI) 572例
※盲検下独立評価委員会(BIRC)の評価により画像上の進行(rPD)が認められた患者は試験群にクロスオーバー可能
・評価項目:
[主要評価項目]PCWG3/RECIST v1.1に基づくBIRC判定によるrPFS
[重要な副次評価項目]OS
[その他の副次評価項目]RECIST v1.1に基づくBIRC判定による奏効率(ORR)、転移去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)/PSA progression/症候性骨関連事象発生までの期間、安全性、QOLなど
・層別化因子:CHAARTED基準に基づく腫瘍量(高vs.低)、年齢(≧70歳vs.<70歳)、原発巣に対する照射あるいは手術歴(ありvs.なし)
・観察期間中央値23.6ヵ月(データカットオフ:2025年1月13日)
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに68.0歳、PSA中央値は177Lu-PSMA-617群12.06ng/mL vs.対照群11.64ng/mL、高腫瘍量の患者が68.0%vs.68.2%、ECOG PS 0の患者が69.4%vs.71.2%を占めた。
・対照群の15.9%が177Lu-PSMA-617群にクロスオーバーした。
・BIRC判定によるrPFS中央値は177Lu-PSMA-617群NR(95%信頼区間[CI]:NE~NE)vs.対照群NR(95%CI:29.7~NE)で、177Lu-PSMA-617群で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.58~0.90、p=0.002)。
・177Lu-PSMA-617群におけるrPFSベネフィットはすべてのサブグループで一貫していた。
・OS中央値は、未成熟なデータではあるがともにNR(95%CI:NE~NE)で、177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた(HR:0.84、95%CI:0.63~1.13、p=0.125)。
・BIRC判定によるORRは177Lu-PSMA-617群85.3%(95%CI:79.9~89.6)vs.対照群80.8%(95%CI:74.8~85.8)、完全奏功(CR)は57.1%vs.42.3%であった。
・PSA progressionまでの期間(HR:0.42、95%CI:0.30~0.59)、症候性骨関連事象発生までの期間(HR:0.89、95%CI:0.62~1.26)、mCRPCまでの期間(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84)はいずれも177Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられた。
・Grade3以上の重篤な有害事象は177Lu-PSMA-617群26.6%vs.対照群22.8%で発現し、177Lu-PSMA-617群におけるGrade3以上の177Lu-PSMA-617関連有害事象は13.8%であった。Grade3以上の血球減少症が、177Lu-PSMA-617群でより多く認められた(14.4%vs.5.0%)。
・患者報告評価(FACT-P、BPI-SF)における、健康関連QOLと痛みの悪化までの期間に両群間で臨床的に意味のある差は認められなかった。
Tagawa氏は「これらの結果は、177Lu-PSMA-617とADT+ARPIの併用が、PSMA陽性mHSPC患者において臨床的に意義のあるベネフィットをもたらすことを示しているとし、安全性についても177Lu-PSMA-617の既知のプロファイルと一致しており、ADT+ARPIとの併用に関する新たな懸念は認められていない」とまとめた。OS解析は進行中となっている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)