医療一般|page:1

術前療法後の高リスクHER2+早期乳がん、T-DXd vs.T-DM1(DESTINY-Breast05)/ESMO2025

 術前療法後に乳房および/または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する再発リスクの高いHER2陽性(+)の早期乳がん患者を対象に、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の有効性と安全性を直接比較したDESTINY-Breast05試験の中間解析結果を、米国・University of Pittsburgh Hillman Cancer CenterのCharles E. Geyer氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。その結果、T-DXd群において無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無病生存期間(DFS)で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが明らかになった。

進行尿路上皮がん、アベルマブ維持療法前の化学療法3サイクルvs.6サイクル(DISCUS)/ESMO2025

 局所進行または転移を有する尿路上皮がんにおける、アベルマブ維持療法前のプラチナ化学療法の治療サイクル数について、3サイクルは6サイクルと比較してQOLが有意に良好であり、中間解析時点における全生存期間(OS)はともに18.9ヵ月であった。スペイン・Anderson Cancer Center MadridのEnrique Grande氏が、医師主導の第II相国際共同試験であるDISCUS試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。なお、本結果はAnnals of Oncology誌オンライン版2025年10月17日号に同時掲載された。

HER2変異陽性NSCLCの1次治療、ゾンゲルチニブの奏効率77%(Beamion LUNG-1)/ESMO2025

 ベーリンガーインゲルハイムは、2025年9月19日にゾンゲルチニブについて「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」を適応として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。本承認は、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」の既治療コホートの結果に基づくものである。本承認により、ゾンゲルチニブは既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する治療選択肢の1つとなったが、1次治療における有用性は明らかになっていなかった。そこで、Sanjay Popat氏(英国・Royal Marsden Hospital)が、本試験の1次治療コホートの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。HER2遺伝子変異陽性の進行NSCLCの1次治療は、免疫チェックポイント阻害薬±化学療法が標準治療であり、1次治療におけるHER2標的療法の有用性は確立していない。

若者の片頭痛、30年間で世界的な負担が急増

 片頭痛は、10〜24歳のAYA世代の心身的健康に重大な影響を及ぼす疾患である。中国・北京中医薬大学のYanPi Li氏らは、1990〜2021年のAYA世代における片頭痛の発症率、有病率、障害調整生存年(DALY)の世界的傾向を評価し、予防および政策の指針となるエビデンスを提供するため、本研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2025年9月1日号の報告。  過去30年間(1990〜2021年)の204の国と地域におけるAYA世代の片頭痛負担を性別、年齢、社会人口統計指数(SDI)、地域、年別に層別化した世界疾病負担(GBD)2021研究より、データを取得した。本評価では、発症率、有病率、DALYの分析を行った。

アブレーション後の再発予防、スタチンが最適か~ネットワークメタ解析

 心房細動(AF)はアブレーションや薬物療法を実施しても再発率が高く、大きな臨床課題となっている。AFの再発リスクには炎症が影響しているともされ、抗炎症作用を有する薬剤が再発抑制の補助療法として注目されている。今回、米国・ユタ大学のSurachat Jaroonpipatkul氏らは、コルヒチンとスタチンが炎症と心房リモデリングの軽減における潜在的な役割を担い、アブレーション後早期での最も有望な治療法であることを示唆した。Journal of Cardiovascular Electrophysiology誌オンライン版2025年7月9日号掲載の報告。

日本の中学生のピロリ検査、陽性率1.2%で半数は家族感染

 日本は胃がんの罹患率が高く、胃がんの大きな原因であるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の感染率は40%である。成人のH. pylori検査と除菌は一般的になり、近年では若年層を対象とした集団に対する検査が拡大している。日本の義務教育制度での定期健康診断を活用し、中高校生を対象とした包括的な検査が複数の自治体で実施されている。神奈川県横須賀市で実施された、中学生を対象としたH. pylori検査と除菌についての報告が、Journal of Gastroenterology and Hepatology誌2025年10月号に掲載された。

たとえ少量でも飲酒は認知症リスクを高める

 どんな量であっても飲酒は認知症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。予防効果がある可能性が指摘されていた少量のアルコール摂取でさえ、認知症リスクを下げる可能性は低く、リスクは摂取量に応じて増加することが示されたという。英オックスフォード大学のAnya Topiwala氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に9月23日掲載された。  研究グループは、「この研究結果は、軽度の飲酒が認知症予防に効果的である可能性を示した過去の研究に疑問を投げかけるものだ。われわれの研究結果は、種類を問わず、飲酒が認知症リスクに有害な影響を及ぼすことを裏付けており、これまで示唆されていた適度な飲酒の予防効果を裏付けるエビデンスは認められなかった」と述べている。

日本の大学生の過度な飲酒とうつ病との関連性は

 アルコール摂取とうつ病との関連性は、いまだ明らかになっていない。また、アジアの大学生を対象とした大規模研究で、この関連性の検証は行われていない。筑波大学の斉藤 剛氏らは、日本の大学生を対象に、過度な飲酒とうつ病との関連性を検証するため横断的研究を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。  2019年4月〜2020年1月に、日本の2つの大学で定期健康診断を受けた20歳以上の学部生および大学院生を対象に調査を実施した。自記式質問票を用いて、飲酒頻度、1日当たりの飲酒量、過去1ヵ月間の過度な飲酒、うつ病自己評価尺度(CES-D)スコア、人口統計学的データの評価を行った。

肥満症への胃バイパス手術の長期的効果は良好

 肥満症の治療に胃や腸の外科的手術が登場し半世紀以上が経った。術後の患者の健康状態や効果などに違いはあるのだろうか。このテーマについて、米国・ブリガムヤング大学運動科学部のTaggert J. Barton氏らの研究グループは、胃バイパス手術の健康への長期的な効果について評価を行った。その結果、術後10年を経てもBMIの低下が維持されていたことが判明した。この研究結果はObesity誌オンライン版2025年10月8日号に掲載された。  研究グループは、代謝・肥満手術(MBS)関連の減量が健康に及す長期的な影響を探るために前向き試験「the Utah Obesity Study」の一部から、MBS患者群(82例)と対照となる非手術群(88例)のデータを収集した。フィットネスは修正ブルースプロトコルを用いた最大・亜最大トレッドミル試験で評価した。亜最大運動試験は手術前(ベースライン)および11.5年後に実施した。170例の参加者から抽出したサブグループ(97例)は、ベースラインから2年後および6年後に最大トレッドミルテストも実施した。体重とBMIは各訪問時に記録した。群間比較におけるトレッドミル走行時間は、性別と体重で調整した。

日本人男性の遅漏有病率/日本性機能学会

 日本性機能学会 臨床研究促進委員会が実施した、日本全国の一般男性を対象にした大規模インターネット調査で、性交経験のある男性における遅漏(Delayed Ejaculation:DE)の有病率は5.16%であることが報告された。有病者の58.18%が治療を望む一方、実際に医療機関を受診したのは11.88%に留まり、潜在的ニーズとの乖離が明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院・泌尿器科の白井 雅人氏らによる本研究結果はSexual Medicine誌2025年8月号に掲載された。  研究者らは2023年5月29日~6月24日、20~79歳の日本人男性を一般パネルからリクルート、有効回答6,228例のうち性交歴のある5,331例を解析した。DEは「遅漏に関する苦痛の自覚がある」場合と定義し、多変量ロジスティック回帰で関連因子を同定した。

カンガルーケアが早産児の脳の発達を促す

 出生後の肌と肌のふれあいは、早産児の脳の発達を促す助けとなる可能性のあることが、新たな研究で示された。この種のケアは、カンガルーなどの有袋類が子どもをお腹の袋に入れて育てる様子にちなんで「カンガルーケア」とも呼ばれている。この研究では、32週未満で生まれた早産児において、カンガルーケアの時間が長ければ長いほど感情やストレスの調節に関わる脳の領域で著しい発達が見られたという。米バーク神経学研究所言語発達・回復研究室のKatherine Travis氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に9月24日掲載された。

心血管疾患は依然として世界で最多の死因

 心血管疾患(CVD)は依然として世界で最も多い死因であり、CVDによる死亡は世界中での全死亡の3分の1を占めていることが、新たな研究で明らかになった。米ワシントン大学心血管健康指標プログラムのディレクターを務めるGregory Roth氏らによるこの研究は、「Journal of the American College of Cardiology」に9月24日掲載された。  同誌の編集者である米イェール大学医学部教授のHarlan Krumholz氏は、「この報告は警鐘だ。CVDは依然として世界の主要な死因であり、その負担はCVDに対する対応力が最も低い地域で急速に増加している」と指摘している。その一方で同氏は、「ただし、CVDのリスクとその対策法については明らかになっている。各国が効果的な医療政策と制度をすぐにでも実行すれば、何百万もの命を救うことができる」と述べている。

多発性骨髄腫のグローバル試験の日本人サブセット結果/日本血液学会

 高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)においてダラツムマブと経過観察を比較したAQUILA試験の日本人集団解析が発表された。  2025年1月に発表された全体結果では、ダラツムマブ単剤療法は積極的経過観察よりも、SMMの進行または死亡までの期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間も延長を示している。  日本人患者は28例(DARA群15例、観察群13例)であった。日本人の5年PFS率はDARA群46.3%、観察群7.7%であった(ハザード比[HR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.10〜0.65)。全奏効率(ORR)はDARA群86.7%、観察群7.7%という結果を示した(相対リスク比:11.27、95%CI:1.70〜74.84)。

うつ病と就労:パーソナルリカバリーを目指した治療とは

 1992年、世界精神保健連盟はメンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定め、その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)となった。  2025年9月、世界メンタルヘルスデーに合わせてルンドベック・ジャパンによるプレスセミナーが行われ、慶應義塾大学の菊地 俊暁氏と株式会社ベータトリップの林晋吾氏が医師の立場、当事者の立場からそれぞれ講演を行った。

2025年度医療安全管理者養成研修のご案内/医療安全学会

 日本医療安全学会(理事長:大磯 義一郎氏)は、2025年度の医療安全管理者養成研修アドバンスドコースを開催する。  この研修は、現場で「使える」医療安全の知識を体系的に修得することを目的とし、実践的な事例や演習を通じ、知識を「行動」へとつなげる応用力とリーダーシップを培い、現場の医療安全をリードできる人材としての成長を目指す。講師は、医療や法学、医療安全のエキスパートが担当する。  主催学会の大磯氏は、「医療安全管理者としての基本的な理解に加え、より高いレベルでの医療安全管理への理解と実践の機会を提供することを目的に、本アドバンスドコースを企画した。本コースが、日本医療安全学会の医療安全管理者養成研修修了者に限らず、医療安全や質改善に関心を持つ多くの方にとって、有意義な学びと交流の場となることを願っている。現場の課題解決に直結する「次の一歩」を共に考える場として、ぜひご参加していただきたい」とコメントしている。

双極症患者の自殺予防に有効な薬物治療は

 双極症患者は、一般集団よりも自殺率および死亡率が高いことが知られている。韓国・Korea University College of MedicineのSol A. Park氏らは、同国の双極症患者におけるリチウム、バルプロ酸、非定型抗精神病薬の長期投与が自殺企図および自殺に及ぼす影響を検討した。Journal of Affective Disorders誌2026年1月1日号の報告。  研究チームは、2002〜20年に双極症と診断され、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、非定型抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾール、ziprasidone)を2回以上処方された韓国人患者4万4,694例(平均年齢31.09±9.81歳、女性58.07%)の医療保険請求データを用いて分析を行った。

定義変更や心肺合併症患者の分類に注意、肺高血圧症診療ガイドライン改訂/日本心臓病学会

 『2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症ガイドライン』が2025年3月に改訂された。本ガイドラインが扱う静脈血栓塞栓症(VTE)と肺高血圧症(PH)の診断・治療は、肺循環障害という点だけではなく、直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用や急性期から慢性期疾患へ移行していくことに留意しながら患者評価を行う点で共通の課題をもつ。そのため、今回より「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」「肺高血圧症治療ガイドライン」「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3つが統合され、VTEの慢性期疾患への移行についての注意喚起も、狙いの1つとなっている。

院内の騒音でせん妄リスク上昇か/大阪公立大

 病院内の騒音は、患者の睡眠を妨げるだけでなく、せん妄や不安、再入院などのリスクも上昇させる可能性が示された。園田 奈央氏(大阪公立大学大学院看護学研究科)らの研究グループは、病院内の騒音の影響に関するスコーピングレビューを実施し、その結果を報告した。本結果は、Worldviews on Evidence-Based Nursing誌2025年8月号に掲載された。  研究グループは、病院内の騒音が入院患者の健康アウトカムに与える影響を明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。本レビューでは、2014年1月〜2023年12月にPubMed、CINAHL Plus、Cochrane Libraryに登録された文献を検索した。また、検索で抽出された文献の参考文献、Google Scholarについてハンドサーチを実施した。キーワード(noise、sound、alarm、hospital、care unit、ward)検索およびハンドサーチで抽出された5,851件の文献から、重複などを除いた4,426件を対象にスクリーニングを実施し、最終的に研究目的に合致した28件の論文を抽出した。

ADHDに対する神経刺激薬治療後の精神疾患発症リスク〜メタ解析

 注意欠如・多動症(ADHD)患者は、神経刺激薬による治療後に精神疾患や双極症を呈することがある。しかし、その発現の程度は不明であった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのGonzalo Salazar de Pablo氏らは、ADHD患者における神経刺激薬治療後の精神疾患または双極症の発現を定量化し、その影響を調節する可能性のある因子を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年9月3日号の報告。  DSMまたはICDで定義されたADHD患者を対象に精神疾患または双極症のアウトカムを評価した、あらゆるデザインの研究を対象とした。2024年10月1日までに公表された対象研究を、PubMed、Web of Science、Ovid/PsycINFO、Cochrane Central Register of Reviewsより言語制限なしで検索した。PRISMAおよびMOOSEガイドラインに従い、プロトコールを登録し、ニューカッスル・オタワ尺度およびCochraneバイアスリスクツール2を用いて質評価を行った。ランダム効果メタ解析、サブグループ解析、メタ回帰分析を実施した。主要アウトカムは、精神症状、精神病性障害、双極症を発症した患者の割合とし、エフェクトサイズおよび95%信頼区間(CI)を算出した。アンフェタミンとメチルフェニデートの比較についても評価した。

ロボット支援直腸がん手術、術後1日目のCRPで合併症予測が可能に

 術後合併症や感染症への対応には、早期発見と迅速な対処が求められる。今回、直腸がんに対するロボット支援下直腸手術(RARS)後の合併症リスクが、術後1日目のC反応性蛋白(CRP)値で予測できるとする研究結果が報告された。術後早期のCRP測定が、高リスク患者の見極めや迅速な介入に役立つ可能性があるという。研究は国立病院機構福山医療センター消化器・一般外科の寺石文則氏らによるもので、詳細は8月28日付けで「Updates in Surgery」に掲載された。  RARSは、骨盤内の限られた視野で高い操作性を発揮し、従来の腹腔鏡手術や開腹手術と同等かそれ以上の成績を示すことが報告されている。しかし、依然として術後合併症は患者予後を左右する大きな課題であり、早期に高リスク患者を見極めることが重要だ。炎症マーカーであるCRPは大腸手術後の合併症予測に有用とされるが、ロボット支援手術における術後早期のCRP値の予測的価値は十分に検討されていない。このような背景を踏まえ著者らは、RARS後の合併症リスク因子を解析し、特に術後1日目のCRP測定の有用性を評価することを目的とした後ろ向きコホート研究を実施した。