心血管疾患は依然として世界で最多の死因

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/10/20

 

 心血管疾患(CVD)は依然として世界で最も多い死因であり、CVDによる死亡は世界中での全死亡の3分の1を占めていることが、新たな研究で明らかになった。米ワシントン大学心血管健康指標プログラムのディレクターを務めるGregory Roth氏らによるこの研究は、「Journal of the American College of Cardiology」に9月24日掲載された。

 同誌の編集者である米イェール大学医学部教授のHarlan Krumholz氏は、「この報告は警鐘だ。CVDは依然として世界の主要な死因であり、その負担はCVDに対する対応力が最も低い地域で急速に増加している」と指摘している。その一方で同氏は、「ただし、CVDのリスクとその対策法については明らかになっている。各国が効果的な医療政策と制度をすぐにでも実行すれば、何百万もの命を救うことができる」と述べている。

 この研究では、世界疾病負担研究(GBD 2023)で対象とされた375種類の疾患の中でCVDに焦点を当て、1990年から2023年までの間に、世界の204の国と地域におけるCVD全体の負担を評価した。また、虚血性心疾患、脳出血、脳卒中などのCVDの主要なサブ疾患や、CVDに影響を与える高血圧、喫煙、肥満、血糖異常、食事に関連するリスク(複数の食品・栄養素の不足や過剰摂取を総合した食事リスク要因)、大気汚染などの12種類の変更可能なリスク因子についても分析した。

 その結果、CVDによる障害調整生存年(DALY)は、1990年の3億2000万から2023年には4億3700万と1.4倍増加した。DALYとは、早期死亡による失われた年数と障害を抱えて生きた年数を合算した、疾患によって失われた健康な年数を示す指標である。また、CVDによる死亡者数も1990年の1310万人から2023年には1920万人に達していた。CVDによるDALYの79.6%(3億4700万)は生活習慣に関連するリスク因子に起因することも判明した。内訳は、肥満や空腹時高血糖などの代謝リスク因子が67.3%、喫煙や飲酒、偏食などの行動リスク因子が44.9%、大気汚染や鉛曝露などの環境・職業リスク因子が35.8%であった。

 さらに、2023年には世界でのCVD罹患者数は6億2600万人に達し、中でも虚血性心疾患(2億3900万人)と末梢動脈疾患(1億2200万人)の罹患者が多いと推定された。このほか、多くの地域で男性のCVDによる死亡率は女性よりも高いことや、リスクは50歳を過ぎると急激に上昇すること、CVDによるDALYの最も低い国と最も高い国の間には16倍の差が認められることも判明した。

 Roth氏は、「最も重要で予防可能なリスク因子に焦点を当て、効果的な政策や実証済みで費用対効果の高い治療を組み合わせることで、非感染性疾患による早期死亡を減らすことができる」と指摘する。同氏はさらに、「各国はわれわれの研究結果から、心血管の健康状態を改善するための信頼できるエビデンスと政策立案に向けた一種の提言を見つけることができる」と付言している。

 さらにRoth氏は、「本研究により、所得レベルだけでは説明できないCVDの負担の大きな地域差が明らかになった。こうした差を踏まえれば、地域ごとに最も関連性の高いリスク因子をターゲットにした健康政策を立てることが可能になる」と話している。

[2025年9月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら