術前療法後に乳房および/または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する再発リスクの高いHER2陽性(+)の早期乳がん患者を対象に、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の有効性と安全性を直接比較したDESTINY-Breast05試験の中間解析結果を、米国・University of Pittsburgh Hillman Cancer CenterのCharles E. Geyer氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。その結果、T-DXd群において無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無病生存期間(DFS)で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが明らかになった。
・第III相多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験
・対象:タキサン系化学療法と抗HER2療法による術前療法後に乳房および/または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する再発リスクの高い※HER2+の早期乳がん患者 1,635例
※「高リスク」は、(1)術前療法前にT4 N0~3 M0またはcT1~3 N2~3 M0で手術不能と判断された症例、または(2)術前療法後に手術可能であったが(cT1~3 N0~1 M0)、腋窩リンパ節転移が陽性(ypN1~3)であった症例 のいずれかと定義
・試験群(T-DXd群):T-DXd(5.4mg/kg)を3週間間隔で14サイクル投与 818例
・対照群(T-DM1群):T-DM1(3.6mg/kg)を3週間間隔で14サイクル投与 817例
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[重要な副次評価項目]DFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、無遠隔再発生存期間(DRFS)、無脳転移期間(brain metastasis-free interval)、安全性
・データカットオフ:2025年7月2日
主な結果は以下のとおり。
・試験期間中央値はT-DXd群で29.9(範囲:0.3~53.4)ヵ月、T-DM1群で29.7(範囲:0.1~54.4)ヵ月であった。
・ベースライン時の患者特性は、65歳以下がT-DXd群89.9%およびT-DM1群90.1%、アジア人が47.9%および46.5%、HER2ステータス IHC3+が82.6%および82.0%、HR+が71.0%および71.4%、手術不能が52.7%および51.9%、術前療法後のリンパ節転移陽性が80.7%および80.5%であった。
・主要評価項目であるiDFSイベントの発生は、T-DXd群51例(6.2%)、T-DM1群102例(12.5%)であり、T-DXd群で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.0001)。T-DXdによるベネフィットはすべてのサブグループで同様であった。
・3年iDFS率は、T-DXd群92.4%(95%CI:89.7~94.4)、T-DM1群83.7%(95%CI:80.2~86.7)であった。
・DFSイベントの発生は、T-DXd群52例(6.4%)、T-DM1群103例(12.6%)であり、T-DXd群で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.66、p<0.0001)。
・3年DFS率は、T-DXd群92.3%(95%CI:89.5~94.3)、T-DM1群83.5%(95%CI:79.9~86.4)であった。
・DRFSイベントは、T-DXd群42例(5.1%)、T-DM1群81例(9.9%)に発生した(HR:0.49、95%CI:0.34~0.71)。
・中枢神経系転移は、T-DXd群17例(2.1%)、T-DM1群26例(3.2%)に発生した(HR:0.64、95%CI:0.25~1.17)。
・OSイベント(成熟度2.9%)は、T-DXd群18例(2.2%)、T-DM1群29例(3.5%)に発生した(HR:0.61、95%CI:0.34~1.10)。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、T-DXd群408例(50.6%)、T-DM1群416例(51.9%)に発現した。死亡に関連するTEAEは3例(0.4%)および5例(0.6%)であった。新たな安全性の懸念は認められなかった。
・薬剤関連と判断された間質性肺疾患は、T-DXd群77例(9.6%)、T-DM1群13例(1.6%)に発現し、そのほとんどがGrade1または2であった。Grade5は2例(0.2%)および0例であった。
これらの結果より、Geyer氏は「術前療法後に浸潤性残存病変を有するHER2+早期乳がんにおいて、T-DXdが新たな標準治療となる可能性が示された」とまとめた。
(ケアネット 森)