日本の中学生のピロリ検査、陽性率1.2%で半数は家族感染

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/10/21

 

 日本は胃がんの罹患率が高く、胃がんの大きな原因であるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の感染率は40%である。成人のH. pylori検査と除菌は一般的になり、近年では若年層を対象とした集団に対する検査が拡大している。日本の義務教育制度での定期健康診断を活用し、中高校生を対象とした包括的な検査が複数の自治体で実施されている。神奈川県横須賀市で実施された、中学生を対象としたH. pylori検査と除菌についての報告が、Journal of Gastroenterology and Hepatology誌2025年10月号に掲載された。

 本研究では、2019~21年の3年間に、横須賀市の中学2年生を対象としたH. pylori検査プログラムについて検証した。このプログラムは2段階アプローチを採用しており、まず尿中抗体検査を実施し、続いて尿素呼気試験による確認を行った。感染が確認された生徒は除菌治療を受け、その後のフォローアップ検査で結果を確認した。参加率、治療効果、副作用、家族内感染調査に関するデータが分析された。

 主な結果は以下のとおり。

・2019~21年に、横須賀市の中学生9,879例がH. pylori検査の対象となり、計6,270例が尿抗体検査を受けた。うち266例(4.2%)がH. pylori抗体陽性であった。その後、231例が確認の尿素呼気試験を完了し、73例(1.2%)が陽性と診断された。
・除菌治療の1次治療はアモキシシリン+クラリスロマイシン+エソメプラゾールの3剤併用(PAC療法)、2次治療はアモキシシリン+メトロニダゾール+エソメプラゾールの3剤併用(PAM療法)だった。1次治療後の成功率は52.9%であり、2次治療後に94.7%に上昇した。軽度の有害事象(主に下痢)は、1次治療の27.0%、2次治療の22.0%で報告された。
・家族調査では、陽性が確定した生徒の48.5%に少なくとも1人のH. pylori陽性の家族がおり、治療と並行して家族内感染への対策の重要性が示された。

 研究者らは「日本の都市部在住の中学生におけるH. pyloriの有病率は1.2%と低く、3年間の検診受診率は63.5%と、国内他都市の報告値よりも低かった。1次治療および2次治療後の除菌率は全体で94.7%であったが、1次治療の除菌成功率が低く、対策の必要性が示唆された。より良い成果を得るためには、検査参加率および追跡調査を強化するためのより体系的なプログラムが必要である」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)