HER2変異陽性NSCLCの1次治療、ゾンゲルチニブの奏効率77%(Beamion LUNG-1)/ESMO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/21

 

 ベーリンガーインゲルハイムは、2025年9月19日にゾンゲルチニブについて「がん化学療法後に増悪したHER2ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」を適応として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。本承認は、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」の既治療コホートの結果に基づくものである。本承認により、ゾンゲルチニブは既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する治療選択肢の1つとなったが、1次治療における有用性は明らかになっていなかった。そこで、Sanjay Popat氏(英国・Royal Marsden Hospital)が、本試験の1次治療コホートの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。HER2遺伝子変異陽性の進行NSCLCの1次治療は、免疫チェックポイント阻害薬±化学療法が標準治療であり、1次治療におけるHER2標的療法の有用性は確立していない。

 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ib相の中間解析の結果から1日1回120mgの用量が選択された。今回は、第Ib相の未治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート2)のうち、1日1回120mgの用量で投与された患者74例の結果が報告された。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効率(ORR)とし、副次評価項目は病勢コントロール割合(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)とした(いずれも中央判定)。

 主な結果は以下のとおり。

・ゾンゲルチニブ 1日1回120mgによる治療を受けた患者(74例)の年齢中央値は67歳(範囲:35~88)、65歳以上75歳未満の割合は40%、75歳以上の割合は18%であった。女性の割合は50%、アジア人の割合は46%であった。元/現喫煙者の割合は35%、脳転移を有する割合は30%であった。
・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは77%(CRは8%)であり(期待値40%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。DCRは96%であった。
・奏効が認められた患者(57例)のうち、データカットオフ時点で47%がゾンゲルチニブによる治療を継続していた。
・6ヵ月PFS率は80%、6ヵ月DOR率は79%であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は18%であった。主なTRAEは下痢(54%)、皮疹(23%)、ALT増加(18%)、AST増加(16%)、味覚異常(16%)であり、多くがGrade1~2であった。Grade4/5のTRAEは認められず、間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は2例に発現した(いずれもGrade2)。減量に至った有害事象(AE)の発現割合は15%、治療中止に至ったAEの発現割合は9%と低かった。

 本結果について、Popat氏は「ゾンゲルチニブは、未治療のHER2遺伝子変異陽性の進行NSCLC患者において、統計学的有意かつ臨床的に意義のある治療効果を示した」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLCの1次治療におけるゾンゲルチニブの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が進行中である。

(ケアネット 佐藤 亮)